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トランプ大統領が「政府機関閉鎖」で読みきれなかった大誤算 支持率が、ついに…
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59619
2019.02.02 海野 素央 明治大学教授 現代ビジネス
ドナルド・トランプ米大統領は1月25日(現地時間)、米国・メキシコ国境沿いの壁の建設費を「含まない」暫定予算案に署名し、昨年12月22日から1カ月以上、史上最長の35日にわたって続いた連邦政府機関の一部閉鎖を解除しました。
とはいえ、これは「2月15日までのつなぎ予算」なので、依然として予断を許しません。とりあえず、トランプ大統領が議会民主党に譲歩した形になりましたが、ではいったい何が大統領をそうさせたのでしょうか。
さすがに支持者も、うんざり
まずは、予想外に大きかった「支持率低下の影響」です。大統領就任から3年目に入ったトランプ大統領の支持率に、ここ最近、地殻変動の予兆がみられます。
米ワシントンポスト紙とABCニュースが実施した共同世論調査(19年1月21−24日実施)によると、トランプ大統領の最新の支持率は37%と、40%を割り込みました。しかも、共和党支持者の支持率も78%で、これまで維持してきた80%のラインを切っています。
AP通信が実施した世論調査(2019年1月16−20日実施)においても、同様の傾向がみられます。大統領支持率は34%まで落ち込み、昨年12月の42%から8ポイントも下がりました。共和党支持者における支持率も77%と、80%を下回りました。
ダメ押しで、米CBSニュースが行った世論調査(19年1月18−21日実施)も見ておきましょう。こちらも支持率36%と、やはり40%を切っています。
連邦政府機関の一部閉鎖が長期化すれば、支持率は下げ止まらず30%を切り、20%台の「危険水域」に突入する可能性が高くなります。支持率低下をくい止めるため、大統領は議会民主党に譲歩する決断を下したのでしょう。
さらに、先に紹介したワシントンポスト紙とABC ニュースの共同世論調査では、連邦政府機関の一部閉鎖の「責任の所在」について、53%が「トランプ大統領と議会共和党」と回答し、34%が「ペロシ下院議長と議会民主党」と答えています。国民の間には、トランプ大統領への「責任論」が噴出しています。
トランプ大統領が、これまで保守派の支持を獲得してきた「国境管理」と「不法移民」に対する政策についても、変化の兆しが見えます。同調査では、「国境管理についてどちらを信頼できますか」という質問に対して、42%が「ペロシ下院議長と議会民主党」、40%が「トランプ大統領と議会共和党」を挙げており、わずか2ポイント差ながら、前者が後者を上回りました。
同じく「不法移民」に関しては、47%が「ペロシ下院議長と議会民主党」、42%が「トランプ大統領と議会共和党」を信頼できると答え、5ポイントの差をつけられています。これまでトランプ大統領が保ってきた「アドバンテージ」が消えつつあるのです。
CBSニュースの世論調査においても、66%が「国境の壁建設資金が盛り込まれていない予算案に同意するべきだ」と回答したのに対して、「国境の壁建設の予算が含まれていなければ予算案を否決すべきだ」と答えたのは31%にすぎず、トランプ大統領の立場の劣勢が浮き彫りになっています。
しかも、約7割が「壁建設は、連邦政府機関の一部閉鎖に見合わない」と回答しています。すでに米メディアが再三報じているように、約80万人にのぼる連邦政府職員が1カ月間、無給で勤務するか自宅待機という状態が続いていました。トランプ支持者といえども、やはり「壁よりも給料」が本音なのです。
もしテロでも起きたら
支持率低下と責任論の噴出に加えて、トランプ大統領の態度を変えた要因とみられるのが、米経済悪化の懸念です。
保守系の米FOXニュースによる世論調査(19年1月20日−22日実施)で、特筆すべきが経済に関するものでした。「1年後の米経済はより強くなるか、それとも弱くなるか」という質問に対して、37%が「強くなる」、38%が「弱くなる」と回答し、拮抗しています。ちなみに、17年2月に実施された同調査では、55%が「強くなる」、35%が「弱くなる」と答え、「強くなる」が20ポイントも上回っていました。
ご存知の通り、FOXはトランプ大統領にきわめて親和的なメディアです。大統領の支持率を岩盤のごとく支えてきた「経済の好調さ」について、ついに支持者の間でも、懐疑的な見方が広がりつつあるのです。
米世論調査会社ギャラップが1月に発表した世論調査でも、回答者の48%が「米経済は悪化する」と見ており、昨年10月の36%と比較して12ポイントも上昇しています。これから再び政府機関が一部閉鎖するとなれば、その影響を直接受ける約80万人の連邦職員に加え、一般国民の購買意欲までも低下し、さらなる経済の失速は避けられません。
トランプ大統領は昨年11月の米中間選挙の際、支持者を集めた集会で「米国を再び安全にする」と繰り返し訴えました。しかし政府機関の閉鎖により、現実には正反対の事態が起きています。テロを取り締まる沿岸警備隊の職員までが無給勤務を強いられ、空港で保安検査を行う職員や航空管制官も給料未払いの状態に陥り、欠勤が増加しています。
空港では便のキャンセルや離着陸の遅延が相次ぎ、旅行者は怒りや不快感を示しています。万が一このような状況下で、空港でテロなどが発生した場合、大統領に厳しい非難が向けられることは避けられません。
下院議長に「一本取られた」
トランプ大統領が政府機関閉鎖の解除に踏み切った理由として、「支持率低下」「責任論の噴出」「経済の悪化」「安全性の確保」を挙げてきましたが、筆者は、トランプ大統領が政府閉鎖の解消に踏み切った本当の理由について、民主党のペロシ下院議長が発した「ある一言」が効いたと見ています。
ペロシ下院議長は23日、議長権限を行使し「連邦政府機関の一部が閉鎖している限り、トランプ大統領が下院本会議場で行う1年間の施政方針演説、いわゆる一般教書演説を認めず、延期する」と提案しました。
一般教書演説は、大統領が下院議長の招待を受けて行われます。そこでは、大統領が米国のおかれた現状を説明し、内政と外交政策に関する提言を行い、国民に支持を訴えます。
ペロシ下院議長が示した一般教書演説延期の主たる理由は、「米国土安全保障省の政府職員(20万人)が無給勤務になっており、演説が行われる当日の警備が不十分になる恐れがある」というものでした。しかし、これは表向きの理由にすぎません。
ペロシ下院議長は、一般教書演説をトランプ大統領との「交渉材料」に使い、「政府機関閉鎖の解除」を取引したのです。
ペロシ下院議長(Photo by gettyimages)
一般教書演説は1913年、ウッドロウ・ウィルソン第28代米大統領が行ったのが始まりです。過去の演説を調べると、レーガン政権下で1986年に起きたスペースシャトル「チャレンジャー号」の爆発事故により、一般教書演説が一時延期になりました。ただこれは、今回のような大統領と議会による政治的対立が原因ではありません。もし延期となれば、1986年以来の事態となります。
トランプ大統領を観察していると、大統領には「自分の名誉に関わり、かつ身近な課題を最優先する」という行動原理があることが分かります。名誉や名声について非常に敏感なのです。
ペロシ下院議長がトランプ大統領を下院本会議場に招待しなければ、「一般教書演説をさせてもらえなかった、初めての大統領」として、国民の記憶に残ってしまいます。ペロシ氏はプライドが高いトランプ大統領のメンタリティを見抜き、そこを見事に突いたわけです。
加えてペロシ下院議長が巧妙なのは、「トランプ流交渉術」の秘訣を逆に利用している点です。
トランプ大統領が自伝の中で、交渉相手に対して「レバレッジ(てこの力)」を使うことの重要性を強調していることに、筆者は以前触れました。大統領いわく、レバレッジとは「交渉相手に対する優位性」あるいは「相手が望んでいるもの」です。「一般教書演説の延期・中止」がトランプ大統領に対するレバレッジになると気づいたことは、ペロシ下院議長の大きな手柄といえるでしょう。
1月1日掲載記事「『トランプ政権の良心』マティス辞任でアメリカは右派の天下になる」で紹介した、保守派の論客アン・コールター氏は、トランプ大統領の支持者に対して大きな影響力を持っています。そのコールター氏は、今回のトランプ大統領の議会民主党に対する譲歩に関して、「ブッシュパパにとっていいニュースだ。彼はもはや、『史上最低の弱腰大統領』ではない」と自身のツイッターに投稿しました。
コールター氏(Photo by gettyimages)
ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領は、妥協ばかりしていたために、在任中は「弱腰」と揶揄されていました。一時は「保守派のアイドル」とまで言われたコールター氏が、「トランプ大統領こそ、史上最低の意気地なし大統領だ」というメッセージを発信していることは、大統領にとってはかなりの痛手です。
今後トランプ大統領は、保守派コメンテーターや支持者から、これ以上「弱いリーダー」と見られないような言動をとるはずです。
「非常事態宣言」は出せるのか?
トランプ大統領がホワイトハウス内のローズガーデンで政府機関閉鎖の解除を発表した際、演説の最後に「もし議会と公正な取引ができなければ、2月15日に再び連邦政府が閉鎖するか、それとも法律と合衆国憲法の下で私に与えられた権限を使って、非常事態を宣言するかだ」と述べ、ペロシ下院議長と議会民主党にプレッシャーをかけました。
大統領が国家非常事態宣言を出せば、議会の承認を経ることなく、国防総省の予算を使って米軍が国境の壁を建設することができます。
メキシコ・ティフアナとカリフォルニア州の国境の壁(Photo by gettyimages)
ただ、先に紹介したFOXニュースの世論調査でも、国家非常事態宣言については56%が「反対」と回答し、国民のほとんどが否定的です。強硬措置をとれば、世論を完全に敵に回すことになります。大統領にとっては、議会民主党の結束を固めてしまうデメリットも生じます。
35日間にわたる史上最長の「連邦政府機関一部閉鎖」は、図らずもトランプ大統領がおかれた「窮状」を露呈したのです。
トランプ大統領が「政府機関閉鎖」で読みきれなかった大誤算 : https://t.co/DTSLLIVXyP #現代ビジネス
— 現代ビジネス (@gendai_biz) 2019年2月1日
トランプ大統領が「政府機関閉鎖」で読みきれなかった大誤算
— ミッチー (@mitugu999) 2019年2月2日
・・・・・アメリカの人たちも馬鹿じゃなかったということだな。安心したよ。
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