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海野素央の Love Trumps Hate
国境の壁建設と、トランプの本当の壁
2019/01/09
海野素央 (明治大学教授、心理学博士)
トランプ大統領ツィッターより
今回のテーマは「トランプの『国境の壁』建設と政府閉鎖」です。2016年米大統領選挙でドナルド・トランプ大統領が掲げた「公約の中の公約」であるメキシコとの「国境の壁」建設実現に赤信号がともっています。トランプ大統領は、昨年の米中間選挙で下院において多数派を奪還した議会民主党の激しい抵抗に遭い、予算に壁建設費用を盛り込むことができません。その結果、政府機関の一部閉鎖が17日間(現地時間19年1月7日)続いています。
1995年クリントン政権下で、27日間政府が閉鎖されました。トランプ大統領は今回の政府閉鎖が「1カ月ないし1年間続く可能性がある」と語り、民主党との対決姿勢を崩していません。その結果、今回の閉鎖期間が新たな記録を作るのか、注目が集まっています。
本稿では国境の壁建設を巡る問題を、トランプ大統領とナンシー・ペロシ下院議長に焦点を当てながら分析します。
「国家非常事態宣言」検討の意味
クリスマス休暇をホワイトハウスで過ごしたトランプ大統領は、年が明けると早速、国境の壁建設実現に向けて動きました。まず、ホワイトハウスの報道室に1月3日、全国国境パトロール会議の幹部とともに姿を現し、「昨年、1万7000人の犯罪者が国境を越えようとした」と説明し、壁建設の緊急性と必要性を訴えました。
トランプ大統領は翌4日、記者団の質問に対して、壁建設を早めるために「自分には国家非常事態を宣言する権限がある」と述べました。同大統領は非常事態宣言の可能性を6日、改めて示唆しています。
この一連の言動はトランプ大統領の「ディールパターン」です。自ら危機的状況を意図的に作り、緊張を高めます。そこには交渉相手を脅し、自分が優位に立って譲歩を引き出す狙いがあります。一言で言ってしまえば、非常事態宣言は「交渉カード」です。
実はトランプ大統領は、中間選挙直前の18年10月22日、自身のツイッターの中で国家非常事態宣言を行い、中米から米国とメキシコの国境を目指して北上している移民キャラバンの流入を阻止するために、5000人以上の米軍を国境に派遣しました。トランプ支持者に影響力がある保守系コメンテーターは、同大統領のこの決断を高く評価しています。
米FOXニュースの人気番組「ハニティー」の司会者ショーン・ハニティー氏は1月2日に放送された番組の中で、2018年のトランプ大統領の成果の一つに、「キャラバンをしっかり国境に踏みとどまらせたこと」を挙げました。トランプ大統領には再度、国家非常事態を宣言しても、支持者から支持を獲得できるという計算が働いています。
保守派コメンテーターの圧力
トランプ大統領は国境の壁建設に、異常なまでのこだわりを見せています。その背景には、支持者に影響力を持つ保守派コメンテーターからの圧力があります。例えば、保守系政治解説者のアン・コールター氏は、「壁の建設が実現しなければ、トランプにはレガシー(政治的功績)はない」「壁の建設が進まないなら2020年、トランプには投票しない」とまで言い切っています。
そこで、トランプ大統領は是が非でも壁を建設しようと必死になっています。壁の効果に関して、「イスラエルでは壁は99.9%機能している」と主張しています。
壁建設費については、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を通じて、メキシコが費用を支払うというのです。しかし、どのようにしてメキシコが支払うのか、具体的な説明を行っていません。
さらに、「コンクリートではなく、(米国製の)鋼鉄の壁建設を目指す」「製造業の雇用を創出する」とも語り、国内の鉄鋼業界で働く労働者に向けてアピールをしています。
トランプ大統領の壁建設に対するこだわりはポスターにも現れています。「THE WALL IS COMING(壁が建設されつつある)」というメッセージが印刷されたポスターを作成しました。ポスターのレイアウトを壁にして、「COMING」の「O」の文字の中にも壁を描き、不法移民の流入を防ぐという意味を含めています。
要するに、トランプ大統領はジェームズ・マティス前国防長官、ジョン・ケリー前首席補佐官及びH・R・マクマスター前大統領補佐官といった退役軍人の助言には聞く耳を持たず、支持者に影響力のある保守派コメンテーターの意見には耳を傾けるわけです。
本当の「壁」
第116連邦議会が1月3日に始まり、下院で多数派になった野党民主党のナンシー・ペロシ議員が下院議長になりました。ペロシ氏は2007年から11年まで下院議長を務め、08年米大統領選挙でバラク・オバマ上院議員(当時)を大統領にした立役者の一人でもあります。このとき、ペロシ氏はヒラリー・クリントン上院議員(当時)と対峙し、オバマ支持に回りました。
ペロシ下院議長は嗅覚に優れた政治家です。前回の16年米大統領選挙においてトランプ大統領は、「国境の壁」を主要な争点にして勝利を収めました。ペロシ氏は、次の20年米大統領選挙では同じ「壁」を争点にすれば、今度は民主党候補が勝利できると読んでいるフシがあります。「壁を建設させない」「メキシコが壁建設費用を支払わない」の2つが、民主党が来年の大統領選挙を有利に戦う絶対条件になるといってもよいでしょう。
ペロシ氏はまず政府機関の一部閉鎖を終了し、全面再開させ、次に壁建設の予算について協議を行うという提案をトランプ大統領にしています。一方、トランプ大統領は政府機関の再開と壁建設予算を同時進行させる姿勢を崩していません。
余談になりますがトランプ・ペロシ両氏の対立構図は、北朝鮮に対して非核化実現を要求し、その後で経済制裁の解除に踏み切る米国と、双方を同時進行させようとする北朝鮮の衝突と類似しています。ただし、国境の壁建設の交渉では、前述したように、ペロシ氏は段階的解決を望み、トランプ大統領が同時進行の立場をとっています。
話を戻しましょう。仮にトランプ大統領が国家非常事態宣言を行えば、米議会の承認を得ずに国防総省の予算を使って、米軍が国境の壁を建設することができます。ところが、同大統領は移民キャラバンの中にテロリストがいると主張していますが、確固たる証拠を示していません。従って、ペロシ下院議長は、非常事態宣言を「権力の乱用」とみなし、トランプ大統領を非難する可能性が高いです。
下院議長に選出されたペロシ氏は、再び議長の木槌を手にしました。その瞬間から、同氏のレガシー作りの戦いが始まりました。20年米大統領選挙においてトランプ大統領の再選を阻止し、民主党候補を勝たすことができれば、それは間違いなく同氏のレガシーになります。
トランプ大統領に立ちはだかる本当の「壁」は、ペロシ下院議長になりつつあります。
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From LA
「最安値2ドル」米国に上陸した欧州発格安長距離バスの実力
2019/01/08
土方細秩子 (ジャーナリスト)
LA発、ラスベガス行きのフリックスバス(筆者撮影)
欧州で格安のバスサービスを提供するフリックスバスが、昨年5月からカリフォルニアを中心にサービスを開始した。ウーバーが中長距離をカバーするワンストップ交通アプリの一環としてフリックスと提携するなどと話題になった。現在はロサンゼルスーサンフランシスコ間のほかラスベガス、アリゾナ州フェニックス、ツーソンなどを結ぶサービスを提供している。
ちょうどCESのためロサンゼルスからラスベガスに行く必要があったため、このフリックスバスを試してみることにした。まず予約はオンラインから。フリックスのアプリをスマホにダウンロードしてそこから予約することもできる。ホームページでは「ロサンゼルスーラスベガス間が最安値で2ドル」ととんでもない広告がされていたが、1月6日の予約では料金は9ドル99セントだった。それでも格安だ。
ちなみに同じような格安バスを提供しているメガバスの同日の料金は26ドル、少しラグジュアリーなサービスであるラックスバスは73ドルだった。およそ300キロの距離を走るのだから、9ドル99では商売が成り立つのか? と疑問に思うほどの価格だ。
ただし9ドル99というのは最低料金で、実際には席を指定するのに2ドルほど、またサービス料として3ドルが加算されるので、合計の支払いは往復で27ドルほど。キャンセルや時間変更を行うには3ドルの手数料がかかる。またオンライン上で「環境オフセットに賛同するか」という項目があり、バスによる排気ガスをオフセットするための乗客の負担として2ドルほどを加算することもできるが、これは任意だ。
いよいよ当日、集合場所はロサンゼルスダウンタウンの鉄道駅であるユニオンステーションのすぐ横手。日本のバスターミナルのような施設を予想していたが、実際には何もない駐車場で係員もいなければ看板もない。大勢の人々が寒い中「ここでいいんだよね?」とお互い確認し合いながら集まっていた。とにかくトイレもなければ近くにコンビニもないような場所である。夜の出発なら危険だと感じたかもしれない。
隣に立っていた女の子と話すと、彼女はサンフランシスコ行きのバスを待っていたが、30分遅れになる、と当日になって携帯メールで連絡が来たという。ラスベガス行きが朝の7時半、サンフランシスコは7時の予定が同時刻出発になっていた。ちなみにサンフランシスコ行きの料金は16ドルだったという。
しかし7時15分になってもバスが来る気配はない。出発15分前には必ず集合、とチケット(といってもオンラインのQRコードだが)には書かれていたのだが。するとサンフランシスコ行きの彼女が「オーノー! また30分遅れて8時出発だって」と言う。私の携帯には連絡は来ていない。不安に思いながら待っていると、7時半を少し過ぎた頃バスが登場。しかし係員のような人はおらず、ドライバーが降りてきて「ラスベガス!」と呼びかけ、1人1人のチケットをチェックし始めた。荷物はバスの横の扉を開けてくれたものの、各自で積み込む。
ドライバーのワンオペ
ようやくバスに乗り込んだが、ドライバーが1人で全員のチェックをしているため出発できたのは8時過ぎ。座席は前から6列目までが予約席で、後ろは自由席。後ろがかなり混み合っていたので数ドル余分に支払っても予約しておいて良かった、と思った。
バスはきれいではあるが、座席は狭くシートポケットやテーブルなどもなし。つまり手荷物を置く場所は確保されていない。足元に置くか膝に乗せるしかない。一般的な観光バスと比べても座席の間隔は狭く、飛行機のエコノミークラス並み。窓にはシェードも何もなく、朝日がまともに顔に当たる。
ようやく出発するときも、アナウンスなどは一切なく、バスの設備についての説明もない。無料WiFiあり、という説明だったので確認すると本当にWiFiは利用可能だったが、電源は座席に用意されていない。
最初のうちは隣が空席でそれなりに快適だったが、アナハイムで数人が乗り込み、さらにビクタービルでついに隣に人が来たのだが、これが巨大な人でぐいぐいと押されてかなり窮屈に。これだけ安いのだから1人分の座席に収まらない人は2席買うとかなんとかならないのか、と思うがどうしようもない。このビクタービルからラスベガスまではノンストップ、とドライバーが説明すると後方から「食べ物を買いたい、トイレに行きたい」と不満の声が上がり、ドライバーがしばし考えたあとで「ではここで10分間の休憩」と言い出すなど、スケジュールが遅れている割にはのんびりとしている。ドライバーには交代要員もおらず、すべて1人で采配しているのだ。
その後は特に問題もなく、予定時刻より30分遅れでラスベガスに到着。荷物はやはり各自で下ろすのだが、自分の荷物がかなり奥になっていて取りにくかった。
結論から言えば、サービスは最低限で快適なバスの旅、とはとても言えない。しかし自分で運転してもガソリン代だけで40~50ドルはかかるのだから、窮屈でもうたた寝しながらたったの10ドルと少しでラスベガスまで移動できたわけで、文句を言う内容ではない。時間にルーズなようなのでどうしてもこの時間に到着したい、という人には勧められないが、時間に余裕があり節約旅行をしたい人には悪くない選択だ。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/14997
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