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2023年7月21日 22時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/264654?rct=national
米軍横田基地(東京都福生市など)で発がん性が疑われる有機フッ素化合物(PFAS、ピーファス)を含む泡消火剤が漏出した問題で、防衛省は21日、2010〜2012年に発生した計3件の漏出を2019年1月に把握していたと発表した。都や周辺市町に伝えたのは今年6月で、漏出の把握から公表まで4年半を要した。同省は「省内の連携ミスで公表が遅れた。速やかに情報提供すべきだった」と釈明した。
PFAS 泡消火剤やフライパンの表面加工などに使われてきた有機フッ素化合物の総称。約4700種類以上あるとされる。PFOS(ピーフォス)やPFOA(ピーフォア)は人体や環境への残留性が高く、腎臓がん発症や胎児・乳児の成長阻害、コレステロール値の上昇、抗体反応の低下などの健康リスクがあるとされ、国際的に規制が進む。
同省によると、2018年12月の漏出事故の報道を受け、2019年1月に米側から漏出についての報告書を入手した。公表内容をどうするか米側と調整を始めたが、同省担当者の異動時の引き継ぎミスなどもあり、米側から回答を得たのは2022年12月だった。
東京都などに、漏出を伝えたのはその半年後の今年6月。同省の担当者は「省内の連携が不十分で、反省すべき点だと考えている」とした。米側には漏出の再発防止と速やかな情報提供などを要請したという。
浜田靖一防衛相が今月7日の会見で「今後の調整に支障を及ぼす恐れがある」と述べ、情報の把握時期を明らかにしてこなかったことについて、担当者は「言えることはしっかり説明したい、と米側と調整した」と話した。
また、2020年5〜11月に消防車両から3件、計約103リットルの漏出があったことを新たに公表した。泡消火剤に、国内で規制されているPFOS、PFOAは含まれていないという。基地内への立ち入り調査は「環境省の専門家による検討等をふまえ、防衛省としても関係省庁で連携しつつ対応していきたい」とした。(奥野斐)
◆「基地の外に漏出していない」と説明するが…
米軍横田基地でのPFAS漏出が速やかに公表されなかったことについて、市民団体や自治体の関係者からは「対策が遅れ汚染が広がった可能性がある」と批判が出ている。
米軍は今回公表された6件の泡消火剤の事故について、いずれも「基地外には漏出していない」と防衛省に説明する。しかし、市民団体が行った多摩地域の住民の血中PFAS濃度の調査では、基地から地下水が流れる方向の立川市や国分寺市の住民の濃度が高い傾向にあり、団体は「基地が汚染源」とみている。
こうした中、市民団体の根木山幸夫共同代表は公表の遅れについて「国民に対して背信的だ。都や周辺自治体の動きも遅れ、汚染がより広がった可能性もある」と指摘した。その上で今後は「国や都は米軍と交渉し、多摩地域の汚染との関係を徹底的に調べてほしい」と注文した。
防衛省が把握した後、都は2019年12月〜今年6月、横田基地の事故の有無について4回にわたって問い合わせていた。都基地対策部の担当者は公表遅れに「多くの都民の関心事なのに、誠に遺憾だ」と批判。立川市の担当者は「PFASは健康被害も心配されているのに公表が遅過ぎる。今後は都と5市1町の協議会と足並みをそろえて立ち入り調査の要請なども検討していきたい」と語った。(渡辺真由子、昆野夏子、松島京太)
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