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2020年の世界経済が抱える4つの時限爆弾
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/01/2020-21.php
2020年1月7日(火)18時00分 キース・ジョンソン ニューズウィーク
世界各国で債務が積み上がる GARY CAMERON-REUTERS
<IMFや世銀の見通しはなぜか明るいが、「サプライズ」回避という前提条件が崩れれば下振れリスクが足を引っ張る>
思えば、2018年の世界経済は山あり谷ありだった。そして2019年はもっとひどかった。製造業は世界中で散々だったし、少なくともアメリカでは中国との貿易戦争で、農業部門が大きな打撃を受けた。それでも今年は意外や意外、大方の予測では世界経済の見通しは明るいという。
もう嵐のピークは過ぎたから、今年は(少なくとも世界全体で見れば)成長軌道に戻れるはずだ。そんな見立てである。だからIMFの予測する成長率は3.4%、世界銀行の予測でも2.7%となっている。その最大の根拠は、各国の中央銀行が今後も金融の量的緩和を続けると予想されること。そうであれば貿易戦争や投資の縮小による痛みの一部が相殺され、今年は緩やかな回復が期待できるというわけだ。
ただし、こうした強気の予想の前提には2つの、かなり恣意的な条件がある。このところ世界経済の足を引っ張っていた新興国、とりわけアルゼンチンやトルコの景気が回復すること、そして貿易戦争や財政破綻といったサプライズが回避されることだ。この2つの前提が崩れたら、2020年の世界経済は縮小に向かうだろう。
IMFも昨年10月の報告で「景気の下振れリスク」が複数あることを認めている。貿易戦争の火種はまだ残っているし、EU離脱後のイギリス経済や、転換期にある中国経済の行方も気掛かりだ。そしてもちろん、いくつかの地政学的リスクもある。
■貿易戦争
アメリカと中国は、少なくとも貿易戦争の「停戦」を約束する交渉の「第1段階」に合意した。それでも両国間の貿易戦争は収束には程遠い。合意はあくまで「暫定」であり、これまで何度も同様の合意が発表されたが、結局はまとまらずに来ている。
ドナルド・トランプ大統領と習近平(シー・チンピン)国家主席が最終的に何らかの協定に署名し、両国の貿易関係が部分的に改善したとしても、アメリカによる対中関税(と中国による報復関税)の大部分は残るだろう。
ピーターソン国際経済研究所は「高関税のニューノーマル(新常態)」と称して、米中間では今後も多くの品目について比較的高い関税が維持されると予想している。つまり多くの中国製品(部品や素材など)に依存する米製造業は今後も過大な負担を強いられ、アメリカの企業や消費者の経済的な痛みは今後も続くということだ。
そして貿易摩擦は、米中間の争いだけにとどまらない。北米の新貿易協定がまとまり、中国との停戦をほぼ手中に収めたトランプ政権は、EUとの貿易交渉に再び重点を置きつつある。
アメリカは昨年10月、エアバスに対する補助金をめぐる対立を理由に、新たにEUに対する報復関税を発動した(今後、EU側がさらなる報復関税を発動する可能性もある)。さらにフランスが導入したデジタル税(ほかにも複数の国が導入を検討中)に反発し、フランス製品に追加関税を課すとも警告している。
問題はまだある。イギリスは1月末で正式にEUから離脱するが、真に困難なプロセスが始まるのはこれからだ。2020年末までに自由貿易協定をまとめなければならないが、EU側は年内決着はほぼ不可能とみている。関税率や規制基準などの重要な問題で合意できなければ、イギリスのEU離脱問題(とそれに伴う投資や事業、消費者信頼感や経済成長などの問題)は再び崖っぷちに追い詰められることになりかねない。
事態をさらに複雑にする可能性があるのは、アメリカがイギリスと独自に自由貿易協定の交渉を行いたいと考えていることだ。これは経済的な規制という点でイギリスをこれまで以上にアメリカ寄りに引き寄せることを意味する。そうなればイギリスがEUと具体的な協定を結ぶのはますます難しくなる。
大国間の貿易関係の緊張が今後も高まり、WTO(世界貿易機関)が実質的に無力化されれば、世界経済は各国が恣意的に関税を課していた時代に回帰しかねない。高関税が世界の新常態になれば、その影響は深刻だと世界銀行も警告している。
■中国経済
中国に関してはいくつか懸念がある。なにしろ規模が大きいから、それが世界経済に及ぼす影響も深刻だ。
まず、中国経済の減速は明らかだ。その原因はアメリカの関税による打撃だけではない。気になるのは、既に30年ぶりの低水準にある成長率だ。IMFは今年の中国のGDP成長率をわずか5.8%と予測しているが、これは近年の実績を大きく下回る。一方、世界銀行は5.9%の成長率を見込んでいる。
中国政府はこれまで、財政出動による景気刺激策で人工的に成長率を維持してきた。しかし結果として企業や地方政府が膨大な債務を抱え込むことになり、これが中国経済の足を引っ張っている。財政出動は短期的に功を奏するかもしれないが、収益性も生産性も低い企業を生き残らせるリスクがあり、将来の成長に悪影響を与えるだろう。
中国経済が大幅に減速した場合、他の諸国、とりわけ世界経済の牽引役と期待される多くの途上国に負の影響が表れるだろう。
「イギリスのEU離脱後に予想される混乱に比べれば、中国経済の急激な失速のリスクは高くない。だがそれが起きた場合は、他国の経済や世界全体に大きな影響を与えるだろう。中国は他の経済大国と密接に結び付いているからだ」と、ハーバード大学の中国専門家ジュリアン・ゲワーツは言う。
中国経済の見通しは暗い ALY SONG-REUTERS
中国経済の未来についてはさらに大きな懸念がある。中国は今後も世界経済との深い結び付きを維持するのか、それとも他地域との経済的相互依存関係を解消する試みを強化するのか。
「唯一の、そして大いなる懸念は米中が離れることだ」と言うのは、コンサルティング会社ユーラシア・グループのクリフ・カプチャン会長だ。「両国がたもとを分かつことは、少なくとも技術分野では避けられない。さらにそれがエスカレートすると、関税を武器にすることが常態化し、他の国を対立に巻き込み、経済成長の本格的な障害となる恐れが出てくる」
それは単なるトランプ効果の問題ではない。カプチャンの言う米中関係の「硬直化」は、現在、米政治における既定路線となり、議員や民主党の大統領候補者はみな中国に対してより厳しい姿勢を取ろうとしている。「それは世界経済と世界の安定に対する真の脅威だ」と彼は言う。
中国は貿易相手国から部品などを調達するのをやめて、代わりに国内で主要産業のサプライチェーンを構築しようとしている。その先頭を走るのが華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)だ。
しかも中国政府は、こうした保護政策を全産業に広げようとしている。そうなると世界経済の見取り図は大きく変わるだろう。「指導者が相互依存を根底から見直すことが中国経済の未来にとって何を意味するか。それが大きな疑問だ」と、ハーバード大学のゲワーツは言う。
このような動きは大規模な国家資本主義を伴い、主要産業における国内サプライヤーの育成やグローバルなサプライチェーンの解体、産業政策の強化につながる。またアメリカ製ミサイル配備の件で韓国を牽制したり、ツイッターで香港デモを支持したNBAを脅すなど、経済的な圧迫による他国への攻撃も増えるだろう。そしてアメリカの金融支配からの脱却を図るこれまでの中国の取り組みも活性化する。
「トップダウンで動く国が、商品からテクノロジー(潜在的には金融)に至る複数の領域で自立性を高める必要があると判断した場合、それは2020年に非常に大きな変化をもたらすだろう」とゲワーツは言う。「そうなったら、以前からの懸念が現実のものになる」
■債務残高
先進国でも途上国でも企業や家計、国家の抱える債務が途方もなく膨らんでいる。多くの国の中央銀行による過剰な金融緩和がその一因だ。既に金利を下げてしまった各国は、また新たな債務問題に直面したとき、衝撃を和らげるための余裕を欠く。
世界銀行によると世界中の債務残高は2018年に対GDP比230%という過去最高の水準に達し、その後も増え続けている。特に新興国・途上国は計50兆ドル以上の債務残高を抱え、景気減速や貿易戦争に起因する金融市場の調整から打撃を受けやすい。
途上国諸国は1980年代、1990年代、2000年代と、既に3回の債務危機に見舞われ、そのたびに痛い思いを味わった。世銀は恐るべき4回目の到来の可能性ありとし、「規模、速度、債務残高の範囲においてより一層困難な第4波」が新興市場を襲うと警鐘を鳴らした。
これほど債務残高が大きいため、金融市場で何らかの調整が生じるとその影響は瞬く間に広がる。貿易戦争のほか、企業の破綻や債務不履行も市場の調整の引き金になる。世銀は「債務残高が上昇している折に、改めて金融市場から多大なストレスが加わると、顕著かつ広範に影響が増大する恐れ」を指摘している。
アメリカのような先進国も、企業債務が膨らんでいるから弱い立場に置かれるかもしれない。企業による債務不履行が増えれば、過大評価されてきた株価が急落し、消費者心理に響くだろう。
米経済の成長予測も変わる。大手格付け会社フィッチ・レーティングスはその場合に、今年の米経済成長率の予測値を半分の0.8%にまで下げると言う。「中国経済の失速、貿易関連の不確実性といったリスク要因が消えないものと思われるなか、米国株の長期的な水準は史上最高レベルに近いため、調整の可能性が高まっている」からだ。
■地政学リスク
加えて世界には相変わらずのトラブルが満ちている。イラン、サウジアラビア、アメリカによる三つどもえの緊張関係、北アフリカ全域に広がる混乱のほか、アジアでは北朝鮮の核開発や、中国の南シナ海・香港・台湾に向かう野心で緊張が高まる。
古今東西おなじみの政治的リスクにも事欠かない。世界各国でポピュリズムが台頭し、市場経済を攻撃する。そこで過去数十年の経済成長を促してきた力が損なわれる。「第4次産業革命という現実から逃避する世界の指導者たちは代償を払うことになる」とカプチャンは言う。「自動化の問題やグローバル化への反動、土着的で排外的なポピュリズムに対抗するにはどんな取り組みが必要かをきちんと考える必要がある」
それがアメリカやハンガリーなど、一部の国の問題にとどまるなら、それだけのことだとも言える。だが政治的な激変が広がれば、第二次大戦後の繁栄を支えてきた経済秩序も脅かされる。「ポピュリズムは市場を信頼しない。市場から構造的な推進力を奪い、長期的に厄介な問題となる」とカプチャンは言う。
短期的にも心配事はたくさんある。米トランプ政権がイランに最大の圧力をかけた結果としてさらなる緊張激化なり武力衝突などがあれば、石油価格は上昇する可能性が高い。それは世界経済の成長にブレーキをかけることになる。中東から北アフリカにわたる広い地域で抗議運動が激化し、リビアでまた戦闘が起こり、トルコが一段と大胆な行動に出るといった具合では、新興経済圏の成長回復もおぼつかない。そうなれば今年の世界経済の見通しは暗い。
アジアでは中国が国内経済の問題を解消するために外交を利用するかもしれない。その舞台が南シナ海であれ香港であれ台湾であれ、その影響で市場は動揺し、経済への信頼感が揺らぐだろう。ゲワーツが言う。「中国経済が失速し、そこで指導部が外交面のナショナリズムと冒険主義をさらに強めるなら、その深刻な影響は世界中に及ぶ」
From Foreign Policy Magazine
<本誌2020年1月14日号掲載>
【参考記事】2019年、トランプが世界貿易体制を転覆させた
【参考記事】2020年、中国に押し寄せる大規模リストラの波
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