http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/823.html
Tweet |
日本経済「大幅落ち込み」の足音、政府の経済対策では解決できない
https://diamond.jp/articles/amp/223824
2019.12.19 5:10 野口悠紀雄:早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 ダイヤモンド・オンライン
Photo:PIXTA
製造業に続いて、非製造業の売り上げも減少を始めた。製造業の営業利益は大きく落ち込んでいる。
これに対応して、企業は人件費を圧縮し始めた。
政府は12月5日に、国や地方からの財政支出が13.2兆円となる経済対策を閣議決定した。
しかし、日本経済の落ち込みは短期的現象ではなく、中長期的な問題によるものだ。政府が決めた経済対策では対処できない問題だ。
非製造業の売上高も減少に転じ
製造業の利益は大幅落ち込み
2日に公表された法人企業統計調査は、日本経済の落ち込みが本格化してきたことを示している。
全産業の売上高の対前年伸び率は、2019年4〜6月期にはほぼゼロだったが、19年7〜9月期にはマイナスになった(図表1)。
営業利益の伸びは、18年10〜12月期から(19年1〜3月を除いて)マイナスになっている。
製造業の売り上げの伸び率は、19年4〜6月期からマイナスになっており、19年7〜9月期にはマイナス1.4%になった(図表2)。
製造業の営業利益は、18年7〜9月期からマイナスの伸びが続いている。19年1〜3月期からは、2割程度という大きな落ち込みになっている。
後述するように輸出が減少しているので、この傾向は今後も続くだろう。
注目すべきは、これまでプラスだった非製造業の売上高の対前年比が、19年7〜9月期にはマイナスになったことだ(図表3)。
非製造業の営業利益の対前年比は、19年4〜6月期にはマイナスで、19年7〜9月期にはほぼゼロだ。
製造業の業績悪化はすでに明らかになっていたが、このように、非製造業の業績も悪化してきたのだ。
後述のように10月には小売りの売り上げも減少しているので、この傾向は今後も続くだろう。
売上高と利益の減に対応して
企業が人件費を圧縮し始めた
もう1つの重要な変化は、企業が人件費を圧縮し始めたことだ。
これは、売り上げや利益の減少に対応しようとする動きだろう。
全産業の人件費総額は、2017年から18年にかけては4%程度の伸び率だったが、18年10〜12月期から伸びは鈍化し始め、19年4〜6月期からは対前年比がマイナスになっている(図表4)。
製造業では人件費総額の伸びはまだプラスだが、非製造業では19年4〜6月期から対前年比がマイナスになっており、19年7〜9月期にはマイナス2.7%になっている。
これまで続いていた給与水準の下落は、19年7〜9月期には止まった。しかし、今度は人員が減り始めたのだ。これによって、人件費の圧縮が続いているわけだ。
毎月勤労統計調査によると、実質賃金指数(現金給与総額)は、19年1月から8月まで連続して、対前年比がマイナスとなった。19年9月における指数84.2は、12年9月の指数88.2に比べて4.5%ほど低くなっている。
アベノミックスの期間に賃金はこれだけ低下したわけだが、最近では上述のように人員削減による人件費圧縮が進んでいるので、実質賃金は今後さらに落ち込むだろう。
このため、今後は、家計所得と消費支出がさらに落ち込んでいくと考えられる。
米中摩擦で中国輸出企業の業績悪化
日本の輸出が減少
製造業でこのような状況がもたらされたきっかけは、輸出の減少だ。
輸出入の対前年同月比は、図表5のとおりだ。
輸出は、2017年には10%を超える高い伸び率を示していたが、18年には10%を下回るようになり、18年12月以降は継続してマイナスになっている。
19年10月は、マイナス9.2%だ。
他方で輸入も減っている。このため、国際収支統計における経常収支は黒字になった。
ただし、これは、所得収支の黒字が増えたことによるものだ。
生産活動への影響という点では、貿易収支の影響が大きい。
16年には原油価格下落の影響で輸出が減少し、貿易収支が黒字になった。しかし、18年以降、黒字が減少し、18年後半以降は赤字の月が増えている。
中でも対中輸出は、大きく落ち込んでいる。19年10月の対前年同月比は、マイナス10.3%だ。
これは、アメリカの追加関税を中国の輸出企業が負担せざるを得なくなって採算が悪化した結果、設備投資を先送りしたり、工場を海外に移転したりしていることの影響だと考えられる(「いよいよ激化の米中貿易戦争で、中国が『負けている』と言えるワケ」参照)。
こうしたことを反映して、10月の中国向け工作機械受注は、前年同期比マイナス44.9%という大きな落ち込みになった。
11月の工作機械受注総額(速報)は前年同月比37.9%減だ。
鉱工業生産指数は、19年6月頃以降、下落基調になっている(図表6)。
19年9月の鉱工業生産指数は98.9となったが、これは、13年9月の101より低い水準だ。
ここで注目すべきは、中国の対世界輸出は伸びていることである。減っているのは輸入なのだ。そのため、日本の輸出が減る。
米中貿易戦争は、このような形で日本の製造業に大きな影響を与えている。
非製造業の売り上げ減も中長期に
消費減は賃金が上昇しないため
秋以降、消費関連指標の落ち込みが顕著だ。
6日発表の家計調査では、10月の消費支出は前年同月比5.1%減となった。
商業動態統計速報によると、10月の小売り販売額は、前年同月比7.1%の減となった。これは4年半ぶりの落ち込みだ。
日本自動車販売協会連合会(自販連)によれば、新車販売台数の前年同月比は、10月が26.4%減少、11月が14.6%減と、大きくて落ち込んだ。
消費の落ち込みは、消費税率の引き上げと大型台風の影響と言われる。そうした一時的要因が影響しているのは事実だ。しかし、基本的な原因は、これまで指摘したように賃金が上昇しないことだ。
だから、非製造業の売り上げ減も中期的な傾向であり、停滞が長引く可能性がある。
内閣府が6日に発表した10月の景気動向指数で、景気の現状を示す一致指数が94.8と、6年8カ月ぶりの低水準になった。
政府は、5日に、国や地方からの財政支出が13.2兆円となる経済対策を閣議決定した。民間の支出も加えた事業規模は26兆円になる。海外経済が落ち込む将来のリスクへの備えや災害からの復旧・復興の公共事業、小中学校の児童・生徒へのIT端末配布といった事業が盛り込まれている。
しかし、日本経済の落ち込みは短期的現象ではなく、賃金下落や企業の人件費圧縮という中長期的な問題によるものだ。だから、このような経済対策では解決できない。
(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民133掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民133掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。