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大塚家具「ヤマダへ身売り」で、久美子社長に課せられた「試練」 いまの大出血を止められるか
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69265
2019.12.18 加谷 珪一 現代ビジネス
迷走を続けていた大塚家具がヤマダ電機の傘下に入ることが決まった。経営体力のあるヤマダに身売りすることで、とりあえず事業の存続が可能となり、創業家出身の大塚久美子社長も続投が決まった。だが、ヤマダは徹底的な成果主義の企業であり、一定期間内に結果を出せなければ、大塚家具が実質的に消滅してしまう可能性も残されている。
絶体絶命の大ピンチ
家電量販店大手のヤマダ電機は2019年12月12日、大塚家具が実施する第三者割当増資を引き受けると発表した。株式取得後の議決権の割合は51.74%となり、大塚家具はヤマダ電機の子会社となる。販売不振に苦しみ、十分な販路を開拓できていない大塚家具の現状を考えると、今回の資本提携はヤマダ電機への完全な身売りと考えてよいだろう。
ヤマダ電機が展開するLABI秋葉原パソコン館〔PHOTO〕Gettyimages
大塚家具は、創業者である大塚勝久氏と娘の久美子氏の間でお家騒動が勃発。最終的に久美子氏が経営権を掌握し、会員制を中心とした従来型ビジネスモデルからの転換を図ったものの、業績は悪化する一方だった。貸し会議室運営のTKPとの資本提携、中国の投資家グループからの資本受け入れといった措置を行ってきたが、一向に状況は改善していない。
2016年12月期決算は45億円の赤字、17年12月期は72億円、18年12月期は32億円と毎年赤字を垂れ流している状況で、直近の決算(2019年1〜9月期)でも赤字を計上。9月末時点での現金残高はわずか22億円と、まさに絶体絶命の大ピンチという状況だった。
大塚家具の最大の問題店は、新しいビジネスモデルがまったく機能しておらず、肝心の商品が売れていないという一点に尽きる。販路の開拓にことごとく失敗してきた大塚家具にとって、ヤマダ電機はまさに最後の駆け込み寺となった。
ヤマダ電機は全国に1000店舗近い直営店舗を持つ巨大量販店であり、この販売チャネルを使えば一定数の商品は確実に販売できる。その意味では、ヤマダ電機の傘下入りによって、迷走を続けてきた大塚家具にもようやく光明が差してきたといってよい。
だが、よく知られているようにヤマダ電機は、徹底的な成果主義の企業であり、一切の甘えが許されない社風である。久美子氏はヤマダによる子会社化後も社長を続投するが、成果が出なければ久美子氏のポストはもちろんのこと、大塚家具という企業そのものに対しても大ナタが振るわれるのはほぼ確実だろう。
ヤマダ電機は業態転換を模索している
一方のヤマダ電機はなぜここまで業績が悪化している大塚家具を支援するのだろうか。これには、ヤマダ電機が今後の社運をかける業態転換戦略が密接に関係している。
ヤマダ電機は店舗における販売力を生かして業容拡大を続けてきた企業だが、いくら販売力が強くても人口減少というマクロ的な流れに逆らうことはできない。基本的に家電というものは、人口分以上に売ることはできないので、ヤマダ電機に限らず家電量販店各社は、人口減少時代に備えた戦略の転換が求められている。
都市部の店舗が多いヨドバシカメラなどはアマゾンに対抗する形でネット通販強化に活路を見いだそうとしている。一方、ヤマダ電機は郊外型の店舗が多く、良くも悪くも店舗網を活用しなければ同社の強みを生かせない。人口減少による売上高の減少を食い止めるには、家電以外の分野も開拓する必要があり、同社が目を付けたのが住宅関連製品である。
同社は2018年6月、東証一部に上場していたヤマダ・エスバイエルホーム(現ヤマダホームズ)を完全子会社化するとともに、住宅関連事業を同社に集約化することで住宅事業を強化。2012年に買収した住設機器メーカーのハウステックホールディングス(現ハウステック)や、2018年に買収したリフォーム大手ナカヤマなどのノウハウを活用する形で、インテリアやリフォームを重視した店舗展開を進めている。
注文住宅に住設機器、リフォーム、そしてもともとの本業である家電というリソースを持った同社にとって、残された商材は家具ということになるだろう。
大塚家具の商品は、輸入品を中心とした高級家具とニトリやイケアなどが展開する低価格な家具の中間に位置する「中級家具」というポジションである。昭和から平成にかけての時代には、庶民が背伸びして買うにはちょうどよい価格帯だったが、消費が二極化している今の時代には、中級家具という位置付けが大塚家具にとっては逆にマイナスとなっていた。
家電と家具の大きな違い
つまり大塚家具の商品は今の消費ニーズには合っていないということなのだが、だからといって、日本国内にこうした中級家具を欲しがる顧客がいなくなったわけではない。地方を中心に、それなりの注文住宅を発注する顧客はたくさん存在しており、こうした顧客層と大塚家具の顧客層は一致している可能性が高い。ヤマダ電機の業態転換がスムーズに進むのであれば、大塚家具の製品もそれに合わせて拡販が期待できるので、業績回復の可能性も見えてくる。
だがヤマダ電機の業態転換は予定通りに進んでいるとは言い難い。
同社は2017年以降、住宅や家電を融合した新業態店舗「家電住まいる館」の出店を急ピッチで進めており、2019年3月末時点では74店舗となっている。今後もテックランドからの業態変更という形で新型店舗を増やしたい意向である。
しかしながら、家電以外の販売は思ったほど伸びておらず、2018年3月期における非家電商品の販売比率は16%、2019年3月期は16.2%とほとんど変わっていない。店舗によっては住宅関係のスペースが広くなった分、本業の家電販売に影響が出ているケースもあるとされ、家電と住宅を融合するのは簡単ではないことをうかがわせる。
これは以前から指摘されてきたことであり、ヤマダ電機自身もよく理解していることだろうが、住宅と家電という商品は近い位置にあるように見えて、実はかなりの距離間がある。もっとも大きいのは商品サイクルである。
家電は数年、長くても10数年で商品が入れ替わる。AV機器などはさらにサイクルが短く、これらは耐久消費財の中でも、限りなく一般消費財に近い位置付けとなる。一方、住宅や住設機器の製品サイクルは、最低でも10年であり、長いものでは20年から30年にもなる。
商品サイクルが長い住宅関連製品は、顧客のライフイベントに合わせて商品が売れることになるが、家電やAV機器は季節の変わり目で商品が売れる。店舗における接客手法や販促活動など、何から何までバラバラというのが現実である。百戦錬磨のヤマダ電機がこの現実を把握していないはずはなく、時間をかけてこの壁を乗り越える算段であると思われる。
久美子社長に残された時間は少ない
その意味では、大塚家具についても、長い目で見ないと、ヤマダにとって意味のある出資なのか判断することはできないだろう。久美子氏を続投させたのもこうした理由からと考えられる。
とはいえ、大塚家具は現在、出血が続いている状況であり、早急に手を打つ必要がある。久美子氏に課された当面のミッションは、リストラを断行して出血を止めることと、ヤマダの販売ルートを使って、最低限の販路を確保することである。
ここをクリアしなければ、長期的な戦略を議論する段階に到達しない。久美子氏は、ここ1〜2年、仕事の多くを資金繰りへの対処に割いてきたはずであり、正直なところ、本業の販路拡大に費やす時間はあまりなかったはずだ。
ヤマダからの出資によって当面の資金を確保できたことで、久美子氏にはようやく本業に集中できる環境が整ったといえる。しかしながら、速やかに出血を止め、一定の販売量を確保できなければ、ヤマダはいよいよ大塚家具を本格的に自社に取り込む形になるだろう。ヤマダ電機による救済で一息つきたいところだろうが、久美子氏に残された時間は少ない。
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