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街から本屋が消えた…「書店ゼロ自治体」急増、セブンは“読みやすい”500円新書発売
https://biz-journal.jp/2019/12/post_131882.html
2019.12.16 文=山田稔/ジャーナリスト Business Journal
「Getty Images」より
東京にいるとさほど不便さを感じないが、地方に行くとものすごく不便なことがある。書店探しもそのひとつである。全国各地で書店が次々と閉鎖に追い込まれ、書店がない自治体が増えている。
街に書店が1軒もない自治体が増え、取次大手のまとめでは全国46都道府県、420の自治体、行政区にのぼるという。「書店ゼロ自治体」が多いのは、北海道、長野、福島、沖縄、奈良など。全国の約2割の自治体から書店が消えたということだ。日本出版インフラセンターの「都道府県別書店店舗数登録一覧表」(2019年6月19日)によると、全国の書店登録数は1万2803店舗(総登録数から海外分を差し引いた数字)。前年同月は1万3274店舗だったから、471店舗減少したことになる。10年前(09年)の1万7282店舗と比べると4479店、26%も減ったことになる。
過去1年間の登録数の減少が多いのは、東京都(65)、大阪府(61)、愛知県(33)、福岡県(27)、兵庫県(25)、北海道(17)の順。人口が多くても書店数の減少に歯止めがかからない。アマゾンをはじめとするネット通販の攻勢や、その利便性に屈するかたちでリアルな書店が減り続けている。
■入場料を取る書店も出現
購入したい本が決まっている人にとって、アマゾンなどのネット通販は便利だ。スマホで注文すれば翌日には手元に届く。ネット上で著者のプロフィールや本の内容を確認したり、読者のレビューも見ることができる。だが、本好きの人には、リアルな書店でさまざまな書物を手に取り、お気に入りの一冊を見つける楽しみや喜びがある。じっくりと本選びができるようにカフェを併設したブックカフェが増えている。さらに、東京・六本木の「文喫」のように入場料を取る有料の書店まで登場している。
書店という知の空間で自分の時間を過ごすというニーズが、まだまだあるということだ。
リアルな書店ニーズがあるのに、現実はどんどん減少している。こうした状況のなかで、コンビニの書籍の扱いに関心が集まる。従来は雑誌売り場の片隅に申し訳程度に実用書や雑学本が置かれている程度だったが、様相が一変。書棚を設けて文芸書や話題本等を揃える店舗が増えている。書店との一体型のコンビニや、書籍の出版を本格的に手掛けるコンビニ企業も出てきた。
■「マチの本屋さん」展開するローソン
ローソンの「マチの本屋さん」が最近、増えている。14年から近隣に書店のない地域の店舗を中心に、横幅60cm、高さ120cmの書籍棚を2台設置し、著名作家の文庫本や映画・テレビドラマの原作本、雑学、健康の実用書、料理本など80−120アイテムを取り揃えている。現在は沖縄県を除く全国の約4500店舗に拡大中という。
都内の店舗を訪れてみると、雑誌コーナーの横に2台の書籍棚があり、表紙が見えるような陳列や平積みのスタイルがとられていた。話題作や有名作家の本が主流だ。従来のおまけ程度の扱いだったのに比べれば大きな進化だ。
書店との一体型店舗も増えている。今年3月、02年から日本出版販売グループのブラスが千葉市内で開業していた「多田屋稲毛店」を、ファミリーマートとの一体型店舗に改装した。ファミマは昨年、日販子会社のNICリテールズと包括提携し、佐賀県内に一体型店舗を開業している。ローソンは「文教堂書店」と組んで、一体型店舗を10店舗展開している。
セブン−イレブンはオリジナルの新書の出版を本格的にスタートさせた。10月、セブン&アイグループ限定で販売するオリジナル新書(セブン&アイ出版)を創刊した。タレント、脳科学者、産業医の本を1冊500円(税別)で販売している。通常の新書よりも文字を大きくし、読みやすくしている。
地方に限らず都会でもリアルな書店が減り続けていくなかで、コンビニの情報発信機能の強化がどれだけ支持されるのか。コンビニの本部が売りたい本ばかりを置くのであれば、ネット書店や大型書店に太刀打ちできない。書店のない地域住民の要望に応えられるような書籍選びの目利きが必要になってくる。
■渋谷パルコに書店はない
11月22日、東京・渋谷の公園通りに再オープンした渋谷パルコから書店が消えた。改装前のパルコには、優れた品揃えの「パルコブックセンター」があった。パルコ劇場も座席数を増やして帰ってきたのに書店はない。ギャラリーやその機能を備えた店舗はあるのに、書店はないのだ。書店は集客力が期待され、大型商業施設の必須なアイテムだったが、今はもう書店の集客力に期待する小売業は皆無だ。
(文=山田稔/ジャーナリスト)
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