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ソフトバンクが歴史的大赤字で「携帯料金値下げ」を拒否できないワケ 大勢に異常なし、と孫社長は言うが…
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68351
2019.11.12 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
「ぼろぼろ。真っ赤っかの大赤字」
モバイル通信会社から投資ファンド化へ大胆な業態転換を進めてきた孫正義会長兼社長が率いるソフトバンクグループが2019年度第2四半期(7〜9月期)決算で歴史的な赤字に転落した。
いつも強気の孫社長は11月6日(先週水曜日)の決算発表で、「ぼろぼろ。真っ赤かの大赤字」としながら、プレゼンテーションの最後を「大勢に異常なし」という言葉で自信たっぷりに総括して見せた。
この強気の発言を額面通りに受け止められない向きが多いのだろう。筆者のところにも、「これといった根拠はないが、」と前置きしたうえで、「納税額が少ないことへの批判や、携帯の値下げ要求をかわすために、意図的に評価損を多めに計上して、赤字決算を演出したのではないか」と勘繰る声が寄せられた。
そこで、筆者は大急ぎで決算資料に目を通してみた。プレゼンテーション資料によると監査法人のデロイトがお墨付きを与えたというし、開示資料を見る限り、わざと赤字にしたような形跡は見当たらない。
その一方で、ファンド事業の不振だけでなく、鳴り物入りで完全子会社化した英半導体メーカーのアーム社の赤字転落など、不振が長引けば、大きな問題になりかねない要因も散見される。そこで、今週は、ソフトバンクグループの決算のポイントを解説しておきたい。
1兆円の損失を生んだファンド事業
本題に入る前に、日本企業全体の決算を速報ベースで総括しておく。日刊紙(日本経済新聞社)が11月7日までに2019年度第2四半期(7〜9月期)決算を発表した上場企業972社(新興市場などを除く)を対象に先行きの見通しを集計したところ、目立ったのは製造業の不振と非製造業の底堅さだ。2020年3月期決算予測は、製造業の純利益が前期比12%減と落ち込む見込みなのに対して、非製造業は1%増を確保する見通しだという。
確かに、製造業については頷ける集計結果だが、非製造業の1%増はわずかの誤差でマイナスに転落しかねないリスクがありそうだ。そうしたリスクとして見逃せないのが、ソフトバンクグループの動向である。
2019年7〜9月期連結決算は最終損益が四半期ベースで過去最悪の赤字に転落した。4〜9月期の中間決算として見ても15年ぶりの赤字規模である。この決算は、楽天が11月7日に発表した2019年1〜9月期の連結決算で最終損益が前年同期の1079億円の黒字から一転、141億円の赤字に転落したこととあわせて、日本経済の牽引役として期待される役割を非製造業が果たせるのか、不安を呼ぶ決算になった。
概要を紹介すると、ソフトバンクグループの2019年度第2四半期(7〜9月期)連結決算は最終損益が7001億円の赤字と、前年同期の5264億円の黒字から一転、大幅な赤字決算となった。四半期決算として過去最大の赤字を計上した最大の要因は、“10兆円ファンド”の異名を持つ「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」などのファンド事業で1兆円近い巨額損失が発生したことだ。
ちなみに、同日発表の2019年度中間期(4〜9月期)の純利益は、前年同期比50%減の4215億円を確保して、赤字転落を回避した。この下支え要因は、前半(4〜6月期)に計上したアリババ株の売却益(1.2兆円)だ。前半の貯金のおかげで、中間期ベースの最終赤字転落をなんとか免れたというわけだ。
「ウィーワーク」の先行きは…
次に、セグメント会計を見ていこう。同社のセグメントは、毎年ころころ変わるが、今期はソフトバンク・ビジョン・ファンドなどのファンド事業、日本の携帯電話サービスが柱のソフトバンク事業、アメリカの携帯電話が中心のスプリント事業、鳴り物入りで買収したアーム事業、海外での携帯端末の流通事業を担うブライトスター事業、その他の6つの部門に分けて決算の内訳を開示している。
中でも、決算発表の席上、孫社長自身が多くの時間とスライドを使って重点的に説明したこともあり、マスメディアに注目されたのがファンド事業だ。
孫社長はファンド事業の投資先であるシェアオフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーの損益にスポットを充てて、これが引き金でソフトバンクグループの決算が「真っ赤か」「ボロボロ」になったと認めた。ただ、その直後に、ウィーカンパニーも、ファンド事業全体としてもV字回復できると強気の予測を展開、経営の「大勢に異常なし」と結論付けて、大きく胸を張ってみせた。
そのファンド事業のセグメント利益は、去年の中間期の6324億円の黒字から一転、今中間期は5726億円の赤字に転落した。差し引きでみると、1兆2050億円も損益の足を引っ張った格好だ。本当に、そんなに簡単にファンド事業は立ち直せるのだろうか。
カギのひとつは、決算発表前から経営危機とそのソフトバンクグループへの影響が懸念され、孫社長が躍起になって火消しに努めたウィーカンパニーの先行きだ。
孫社長の大きな誤算と新たな疑問
孫社長は、ファンドとソフトバンクグループ本体の両方からウィーカンパニーに投資しているので、ファンド側で約3600億円、本体側で同5000億円の損失が出たと明かしたうえで、記者会見の場で、投資の判断が「まずかった。高すぎた。反省しなければならない」と潔く認めた。
ビジョン・ファンドは、投資先に対する自由放任主義が仇となって、投資先の乱脈経営を放置して投資資金の回収が困難になったなどと批判を浴びた。巨利を生むはずだったウィーの上場計画の失敗は、巨額赤字をもたらしただけでなく、ビジョン・ファンドに運用戦略そのものの見直しを迫る、大きな誤算だったと言わざるを得ない。
しかし、ビジョン・ファンドが自由放任姿勢を転換して積極的に経営に関与すると言えば、介入を嫌う投資先のユニコーン企業との軋轢が予想され、ビジョン・ファンドの投資戦略が成り立たなくなる恐れもある。ウィー問題は、解決が容易でない課題をビジョン・ファンドに突き付けたのだ。
さらに、今後を厳しく見なければならない。というのは、孫社長が強調したV字回復の根拠のひとつが、これまでは投資したビルの完成から時間さえ経てばウィーワークが投資回収をできたという経験則だからである。その議論で、投資戦略の抜本変更議論への深入りを避けたことは、不安を掻き立てる。
そして、もう1つが、過去のビジョン・ファンドの運用成績の高さを誇示したことだ。この2つによって、孫社長はソフトバンクグループの経営は問題ないと結論付けた。
しかし、そうした議論には大きな疑問符が付く。いずれも過去の話であり、状況が大きく変わり、IMF(国際通貨基金)のような国際機関や世界中の多くのエコノミストが米国を含む世界経済の減速懸念を表明している中で、果たして、過去の経験則が通用するのかという疑問である。
3.3兆円で買収したアーム社も大苦戦
ファンド以外の事業分野も気掛かりだ。その第一が、アーム社の業績だ。およそ3年前になるが、記憶している読者も多いだろう。このアーム社には、ソフトバンクグループがおよそ3兆3000億円という日本企業としては過去最大の資金を投入して買収した経緯がある。昨今、世の中に出回っているスマホはほとんどがアーム社製のCPUコアを備えている。
当時は、あらゆるモノがインターネットを通じて接続され、そのモニタリングやコントロールが遠隔地から可能になるという概念IoT(インターネットオブシングス)が持て囃され、関連機器の供給に強みを持つアームの時代が到来すると言われていた。それゆえ、孫社長が買収に固執。上場企業だったアームの全株式を買い取ることで完全子会社化した会社である。買収後、孫社長は5年以内に、その株式を再上場して収益化すると言及したこともあった。
ところが、今回の中間期決算を見る限り、ここでも業績はぼろぼろで、アーム神話にも陰りが出ている。アーム事業のセグメント利益は、去年の中間期の1412億円の黒字から一転、268億円の赤字に転落したのである。差し引きでみると、1680億円損益の足を引っ張った格好となる。
これでは再上場どころか、明らかなお荷物だ。背景には、世界的な半導体不況や米中、米欧貿易戦争があり、速やかな回復が可能か、ここでも疑問符が付く。
さらに、米携帯電話4位のスプリント事業のセグメント損益である。こちらは、前期比908億円の減益ながら1024億円と相応の利益を稼ぎ出した。ところが、近い将来、この収益源が、ソフトバンクグループの連結決算の対象から外れる見通しなのだ。というのは、同社は売却が決まっているからである。
スプリント社は設備投資の遅れから、買収以来、ソフトバンクグループのお荷物で、当初は吸収合併するつもりだったT-モバイルUSに逆に買収されることで合意に至った、誤算続きの事業である。
米司法省、FCC(連邦通信委員会)及び18の州の公益事業委員会がようやくドイツ・テレコム傘下の米携帯電話3位T-モバイルUSによるスプリント買収を承認、残る障害はカリフォルニア州の公益事業委員会の承認とコロンビア特別区による差し止め訴訟の2つというところまで漕ぎ着けている。
紆余曲折を経て、それなりに利益に貢献するようになったら、模索してきた売却が実現するという、皮肉な顛末を迎えつつあるのだ。
増収増益の携帯電話事業だが
こう見て来ると、問題含みの事業分野が多く、孫社長が決算発表で強調したほど「大勢に異常なし」と言えるのか、首を傾げざるを得ない。
そうした中で、最後に触れておくべき点が、ユーザーの多くが携帯通信料の値下げを期待しているソフトバンクモバイルを含む、ソフトバンク事業のセグメント利益だろう。この事業のセグメント利益は昨年中間期の5241億円から今回の中間期は5609億円と368億円の増益になっている。
ソフトバンクグループの決算短信には、この部門について、「増収増益を達成しました。ソフトバンク、ワイ・モバイル、ライン・モバイルの3ブランドを擁するスマートフォンの累計契約数が前期末比95万件増の2303万件」となるなど、「コンシュマー向けのサービスが伸び、セグメント利益は増益になりました」と誇らしげに書かれている。
自ら誇示するほど国内の携帯電話事業ではしっかり儲けたのだから、ファンド事業や海外ビジネスが振るわなかったことは値下げをしない理由にはならないと考えるべきだろう。
値下げがソフトバンクグループ全体の厳しい業績の足を引っ張る可能性はあるが、一方で国策を無視する形でこのまま値下げをしないと、新規参入する楽天にユーザーを奪われかねないのも、また事実だ。ジレンマをどう克服するか、孫社長の手腕が問われている。
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