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ゆうちょ銀、認知症高齢者に高額外貨保険販売…歪んだ郵政グループの構造的問題
https://biz-journal.jp/2019/11/post_127570.html
2019.11.12 文=編集部 Business Journal
日本郵政・長門正貢代表執行役社長(ロイター/アフロ)
日本郵政グループの転落が著しい。かんぽ生命での大規模な不適切営業を端緒に、同グループのゆうちょ銀行の投資信託商品の不適切販売も発覚するなど、常軌を逸した事態になっている。一連の報道では過剰なノルマが一因とされ、日本郵政はかんぽ生命の保険商品販売におけるノルマ廃止を表明するなど、対応に追われている。
■指導不足による営業社員の認識不足が原因?
同行と日本郵便は9月13日、「投資信託の不適切な取扱いに関する社内調査結果および今後の対応について」と題するプレスリリースを発表した。70歳以上の高齢者に対する不適切な販売行為の社内調査結果の概要と、今後の再発防止策を以下のように公表した。
「ゆうちょ銀行および日本郵便は、窓販開始(2005年10月)以降、全ての高齢のお客さまに対して、投資信託の個別商品の理解状況等を確認するため、購入に係る申込受付前に管理者による承認を実施してきたところです。
その後、日本証券業協会から高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン(2013 年10 月)の考え方が示されて以降は、勧誘前に状況を確認し、勧誘すべきでないお客さまは勧誘しないとの趣旨を踏まえ、高齢のお客さまに対して、申込受付前に加えて、新たに勧誘前にこの観点からの管理者承認を行うことを社内規則に追加していたにもかかわらず、この取扱いを多数怠っていたというものです。
【調査結果】
違反件数(割合※1) 違反店・局数(割合※2)
ゆうちょ銀行 17,700 件(43%) 213 店(91%)
日本郵便 1,891 件 (7%) 187 局(12%)
※1 調査対象の高齢者対面取引件数に対する割合
※2 投資信託取扱店舗数に対する割合
発生原因・背景としては、ゆうちょ銀行、および日本郵便本社の指導不足による営業社員(管理者含む)の認識不足等があり、社員のコンプライアンス意識を向上させるために、研修、マニュアルの改正等にゆうちょ銀行、および日本郵便が全社を挙げて取り組んでまいります」
■認知症の高齢者に外貨建て保険販売
一方、ゆうちょ銀行の内部資料を入手した西日本新聞は今月5日、『認知低下70代に1億円保険 ゆうちょ銀 家族抜き、取り消しも拒否』と題する記事を掲載した。
同記事では、「79歳の母が500万円の外貨建て保険を契約していた。認知症の母にそのようなリスク商品を販売するのは違法ではないか」「貯金の手続きに行ったら強引に投資信託の話をされ、訳も分からないまま契約に至ってしまった」などという被害者の声を紹介。投資信託や外貨建て保険契約で高齢者から苦情が多数寄せられていることを明らかにした。
また、「未曽有の低金利が続く中、同行は元本割れのリスクがある金融商品の販売強化を打ち出すが、現場の行員は『営業目標を達成するため、一部で顧客の意に沿わない販売が行われている』と証言する」として、ゆうちょ銀行の内幕を明かしている。
■持株比率が業務範囲に影響
経済ジャーナリストの森岡英樹氏は一連の不祥事の背景に関して、次のように解説する。
「この問題の背景には、日本郵政グループの構造的な問題があります。日本郵政グループは持ち株会社の日本郵政の傘下にかんぽ生命、ゆうちょ銀行、日本郵便の3つの子会社を置く体制になりました。ちなみに米国でも民営化はされましたが、郵便業務だけは国営のままです。日本の場合、日本郵便を含めあまりに大きな組織になってしまったため、組織としての矛盾が生じています。
現在、国は日本郵政の株を持ち、日本郵政がゆうちょ銀行の株をもっているという構造です。国は少しずつ持ち株比率を下げるため、株の売却を進めています。ここで問題になってくるのが、日本郵政が保有するゆうちょ銀、かんぽ生命の持株比率が50%を下回らないと、両社の業務範囲は自由(新規業務は登録制に移行)とならないことです。新規業務を行う際、郵政民営化委員会の許認可を得なければなりません。
そうした状況下にもかかわらず日本郵政は上場しました。国としては少しでも売却時の株価を上げたい。このことが日本郵政グループ経営陣のプレッシャーになっています。この株の売却益は東日本大震災などの復興財源になる予定で、ある意味『おしりが決まっている財源』のため必要額を確保することが至上命題になっています。
かんぽ生命、ゆうちょ銀行、日本郵便には民営化後もユニバーサルサービスとして全国一律で同質のサービスを提供することが求められています。新規事業を自由に行えず、しかも地理的、経済的な要因を加味したスタイルをとることもできない中で、確実に利益を上げなければいけないため、無理な営業につながっている懸念があります。
また、子会社3社には民間から経営者を招聘しましたが、その手足となるのは民営化前から勤めている元公務員の社員です。売上増進のため、高いノルマを課し、歩合給の割合を引き上げました。このインセンティブにより、稼げる人と稼げない人との間には大きく差がつくことになりました。つまり業績不振だと年収の大幅な減額を招く可能性があるのです。
トップがいくら指導しても、現場は収益を上げる事業のノウハウを積み重ねてきたわけではないのです。また元公務員だった職員らは、ある意味でまじめにノルマを達成しようと無理な営業をかけてしまっているのだろうと思います。
しかも、銀行や保険業界など異なる業界からグループ3社のトップに就任した経営陣間のコミュニケーション不全も深刻です。現在発生しているさまざまな不祥事に関して、各社の経営陣はお互いに責任を回避しようとしています。国などが経営陣を刷新しようとしても、前述のように明らかに困難な業務であることがわかりきっているので、後任に手を挙げる人はいないでしょう」
ゆうちょ銀行と日本郵便が示した改善策は「不足したしていた指導を営業社員に行う」ということだが、効果はあるのだろうか。
(文=編集部)
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