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製造業の利益縮小と賃金低下、日本経済は「縮小局面」に入った
野口悠紀雄:早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問
政策・マーケット 野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る
2019.11.7 5:10
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アベノミクスの期間に目覚ましく増加した製造業の営業利益が、いま減少している。
また、これまではほぼ上昇を続けていた名目賃金が下落している。
日本経済の様相が大きく変わり始めた。
米中貿易戦争の影響で、
日本の輸出も大きく減少
アベノミクスの期間に、日本企業の利益は顕著な増加を続けた。全産業の営業利益は、第一次安倍政権が発足した2012年10〜12月期の10.6兆円から、19年1〜3月期の19.5兆円まで、ほぼ2倍になった。
しかし、製造業の利益には、18年以降、明らかに変調が見られる。
営業利益の対前年同期比は、18年7〜9月期以降、マイナスになっている。
19年4〜6月期には、対前年同期比がマイナス22.4%という大きな落ち込みになっている。
この結果、19年4〜6月期における製造業の営業利益(4.2兆円)は、15年前半頃の数字に戻ってしまった(図表1)。
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対中輸出は19年から前年比マイナス
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なぜこのように製造業の利益が減少しているのか?
第一に考えられるのは、米中貿易戦争の影響で輸出が減少したことだ。
そこで輸出の動向を見ると、確かに、落ち込んでいる。
対前年同月比の推移を見ると、図表2に示すように、17年夏頃がピークだった。
その後、対前年同月比は低下傾向で、18年10月以降は、マイナスの月が多くなっている。
19年9月の対前年比は、マイナス5.2%だ。
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輸出額で見ると、18年4〜6月期には20.2兆円だったのが、19年4〜6月期には19.1兆円になった。したがって、1.1兆円の減少だ。
なお、中国に対する輸出は、17年には大きく増えたが、19年から対前年比がマイナスになっている。
このように、米中貿易戦争の影響は、米中間の貿易だけではなく、日本の輸出にも大きな影響を与えているのだ。
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原油価格上昇も利益の減少に影響
輸出の落ち込みと同額だけ
製造業の売り上げと利益が減少
以上で見た輸出減少と、製造業の売り上げや利益との関係はどうか?
図表3は、製造業の売上高の対前年同期比を示す。2018年夏以降、前年同期比が低下し、19年4〜6月期にはマイナスになっている。
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額で見ると、19年4〜6月期では、97.9兆円だ。これは、18年4〜6月期の99.1兆円に比べ、1.2兆円(1.2%)の減少だ。
これは、先に見た輸出減とほぼ同額だ。
したがって、輸出減がそれと同額の売り上げ減を引き起こしたといえる。
次に、製造業の営業利益の額の変化を見よう。
19年4〜6月期には4.2兆円だ。これは、18年4〜6月期の5.4兆円に比べて1.2兆円の減少だ。
したがって、対前期比で見て、売り上げとほぼ同額だけ営業利益が落ち込んでいることになる。
以上のように、輸出、売り上げ、利益の減少は、時系列的にも、額でも同じであることから、輸出が減少して製造業の売上高を減少させ、それが営業利益を減少させたということができる。
原油価格上昇も
利益の減少に影響
しかし、輸出の落ち込みだけが製造業の営業利益減少の原因ではない。
なぜなら、図表3に見るように、営業利益の対前年同月比は、2018年7〜9月期からマイナスになっているが、売上高が減少するようになったのは、図表1に見るように、19年4〜6月期になってからのことだからだ。
18年後半に売上高が減らなかったにもかかわらず、営業利益が減ったのは、図表4に見るように、売上原価の伸びが高まったからだ。
これは、原油価格上昇の影響である。
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19年に入って名目賃金の低下続く
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原油価格は、19年になってからは落ち着いたが、今度は、先に見たように、輸出が減少したのだ。
これまで指摘したことをまとめると、18年には原油価格の上昇により、そして、19年になってからは輸出の減少による売上高減少のために、製造業の営業利益が減少したことになる。
このように、世界経済の変動の影響により、日本の製造業の営業利益が減少したのだ。こうした状態は一時的なものではなく、今後も引き続くものと考えられる。
なお、19年4〜6月期には、非製造業の営業利益の対前年比もマイナスになった。この結果、全産業の営業利益の対前年比もマイナスになった。
名目賃金の低下続く
世界経済の変動に脆弱な体質
日本経済が縮小局面に入ったことを示すのは製造業の状況だけではない。賃金が低下している。
非製造業では、2018年7〜9月期から、製造業では、18年10〜12月期から、1人当たり人件費(賃金)の対前年同期比がマイナスになっている(図表5)。
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製造業では、19年4〜6月期には、マイナス2.4%という大きな落ち込みになっている。
人件費総額の対前年同期比は、19年4〜6月期には、非製造業と全産業でマイナスになった。
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失業率や有効求人倍率にも変化
賃金の下落は、図表6のように、毎月勤労統計調査のデータでも顕著に見られる。
名目賃金が19年になってから低下を始めたのだ。そして、6月を除けば、対前年同月比がマイナスの月が、8月まで継続している。
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14年以降、名目賃金がこれだけの期間にわたって減少を続けたことはなかった。これは、労働市場に大きな変化が生じていることを示している。
これによって、19年7月の名目賃金指数(118.7)は、18年7月(119.9)より約1%低下した。
これまで、物価上昇で実質賃金が低下することはあったが、いまは名目賃金が低下し、それが実質賃金を低下させているのだ。
最近では、失業率や有効求人倍率にも、従来の傾向からの変化が見られる。
9月の完全失業率は上昇した。また、有効求人倍率は低下した。
不況色が強まってくると、金融緩和や、MMT(現代貨幣理論)のような財政拡大に頼る無責任な議論が出てくることが懸念される。
世界経済の変動によって、利益が大きく変動してしまう日本経済の体質が問題なのだ。
こうした構造を改革していくことが、経済政策の目標とされなければならない。
(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)
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債券小幅安、日銀スティープ化策への警戒感重し−米中懸念は下支え
三浦和美
2019年11月7日 15:44 JST
債券相場は小幅安。米中貿易合意の後ずれ懸念や米長期金利の低下を背景に買いが先行したものの、日本銀行が利回り曲線をスティープ(傾斜)化させる姿勢にあるとの見方から上値が抑えられた。
新発10年債利回りは前日比1.5ベーシスポイント(bp)低いマイナス0.105%で取引を開始したが、徐々に売りが優勢となり、一時は1.5bp高いマイナス0.075%まで戻した
長期国債先物12月物の終値は3銭安の153円20銭。取引開始直後に23銭高の153円46銭を付け、午後には一時20銭安の153円03銭まで売られる
市場関係者の見方
三井住友トラスト・アセットマネジメントの押久保直也シニアエコノミスト
米中の貿易合意に関しては期待に水を差す材料もある中で、日米とも金利上昇に一服感が出ている
ただ、米長期金利が低下する中でも、円債に関しては超長期債買い入れオペの減額など独自の日銀要因の影響が大きい
日銀が明確にスティープ化策のような措置を取る中では、なかなか継続的に金利低下しにくくなっている
背景
米中の貿易合意署名、12月にずれ込む可能性−会談場所は米国外か
米国の10年債利回りはこの日のアジア時間の取引で一時1.80%と、2営業日ぶりの水準まで低下
日銀買いオペ、残存10ー25年を減額−超長期金利の低下をけん制
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
-0.195% -0.210% -0.090% 0.265% 0.405% 0.430%
前日比 横ばい +0.5bp 横ばい +0.5bp +0.5bp +1.0bp
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-07/Q0L49UT0AFBB01?srnd=cojp-v2
世界の主要中銀「緩和のピーク過ぎた」−ソブリン債利回り底打ちか
Liz McCormick、John Ainger、David Goodman (London)
2019年11月7日 13:17 JST
米金融当局は緩和休止を示唆、ECBと日銀はもはや限界に接近
財政政策と金融政策の協調に焦点が移行−シティのヘネバーグ氏
世界各国・地域の中央銀行は今年に入り、金融緩和を進めてきた。だが、一時は奔流にも見えた緩和の動きは現在、緩流に落ち着きつつある。当局としてリセッション(景気回復)回避に十分手を尽くしたと判断しているためで、そのことが投資家にとってソブリン債利回りがようやく底に達したと考える理由となっている。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は先週、今年3回目の利下げ決定後、金融政策が「適切な」水準に達したと語った。また、欧州中央銀行(ECB)の場合、マイナス金利に対する批判拡大を背景に、ラガルド新総裁には追加緩和を手控えるよう圧力がかかっており、日本銀行の黒田東彦総裁はさらに金融政策の限界に近づいている可能性がある。
Fed Chairman Jerome Powell Holds News Conference Following FOMC Rate Decision
記者会見したパウエル議長(10月30日)Photographer: Al Drago/Bloomberg
シティグループのエコノミストが「ハト派的局面のピーク」到来を宣言し、先行き中銀による積極的な景気支援はこれまでよりも絞られてくると想定する投資家は、手持ち債券を手じまう形で対応している。
世界的な指標である米10年債利回りは約2%と、9月に付けた3年ぶり低水準の1.43%から上昇に転じ、他国でもこれに追随する動きが見られる。
Taking Flight
Government debt yields rise around the world
Source: Bloomberg
RBCキャピタル・マーケッツのグローバル・マクロストラテジスト、ピーター・シャフリク氏は「中銀による緩和のピークは過ぎた」と指摘。「あちこちで多少の追加利下げはあるかもしれないが、極端な利下げ局面は終わった。これに伴い、米国をはじめとする各国・地域の利回りには一段の上昇のリスクがある。今では債券について私は慎重になっている」と話した。
一方、追加利下げをしようにもそれには限度があることを金融当局者も認識しており、マイナス金利を採用している国・地域では銀行や政治家から反発の声が強まっている。ラガルド、黒田両氏を含む金融当局者の多くは、需要喚起の必要性が生じた場合、政府にもっとそれを分担してもらいたい考えだ。
シティグループのエコノミスト、パーニル・ヘネバーグ氏は「さらにどの程度の景気支援が可能かという点で、各国・地域の中銀は限界に近づきつつあるだろう」とコメント。「金融当局者は貿易戦争を起因とするあらゆる不確実性に対処しようとし、恐らく現時点では十分手を尽くした。焦点は今や財政政策と金融政策の協調によって何ができるかに移っている」との考えを示した。
原題:Central Banks Hitting ‘Peak Dovishness’ Prick Bond-Market Bubble(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-07/Q0KWD36JTSEA01
日本との軍事情報協定破棄、48.3%が支持−韓国の世論調査
Shinhye Kang
2019年11月7日 11:40 JST
GSOMIAを維持すべきだとの回答は37.6%
6日実施の世論調査結果をリアルメーターが発表
An honor guard member holds a South Korean flag in Washington, D.C., U.S..
韓国政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めたことに関する韓国の世論調査によると、回答者の約48.3%は政府の決定を支持し、37.6%は協定を維持すべきだと回答した。
世論調査会社リアルメーターが7日、6日実施の調査結果を発表。502人から回答を得たという。
GSOMIAは今月23日に効力を失う。
原題:CORRECT: 48.3% of SKoreans Want to End Intel Pact W/ Japan: Poll(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-07/Q0KTJDT0AFBJ01?srnd=cojp-v2
1年前の世界よりずっと良い、米利下げと米中合意期待で−ラジャン氏
Anirban Nag
2019年11月7日 15:34 JST
FOMCは「成長に関する多くの懸念にとても敏感」
ECBには政策をさらに緩和する余地はほとんどない
Birds fly past the Marriner S. Eccles Federal Reserve Board building in Washington, D.C.
米中貿易協議合意への期待や米連邦公開市場委員会(FOMC)による一連の利下げで、世界は短期的にずっと良くなっているとの認識のラジャン元インド準備銀行(中央銀行)総裁が示した。
国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストも務めたラジャン氏はシンガポールでブルームバーグテレビジョンのインタビューに答え、FOMCは「成長に関する多くの懸念にとても敏感」で、「一連の保険的な利下げを行った。貿易を巡る難しい局面に対する一定の解決策を待ちながらであっても、市場を安心させたように見える」と述べた。
Opening Day Of World Economic Forum 2019
ラグラム・ラジャン氏写真家:サイモン・ドーソン/ブルームバーグ
ラジャン氏は米中貿易協議で一定の進展があるが、恒久的な解決策にも、多くの人が望んでいるようなものにもならないと分析。
その上で、昨年の年末に向かう時期と比べるとある意味で「われわれはずっと良い場所にいる」と語った。
一方、欧州中央銀行(ECB)には政策をさらに緩和する余地はほとんどないとも話し、今は政治家が成長を回復させ雇用創出を促すべきだとの見方を示した。
Rajan Discusses Fed, Global Economy, BOE, Brexit
ブルームバーグテレビジョンに出演したラジャン氏Markets: Asia.” (Source: Bloomberg)
原題:
Rajan Says World Is in Better Place After Fed, Trade Moves (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-07/Q0L365T0AFBA01?srnd=cojp-v2
過去の勝者に賭けるクオンツファンド、過去最大の資金流出に直面
Sarah Ponczek
2019年11月7日 15:06 JST
• モメンタム重視のETFから10月に約16億ドルの資金引き揚げ
• ここ数年は主にモメンタムが主役、いずれ必ず逆戻りする−バーク氏
上場投資信託(ETF)の投資家は、今年の勝者が勝ち続けることに賭ける戦略の負けを認めたようだ。
モメンタム重視のETFから10月に約16億ドル(約1740億円)が引き出された。ブルームバーグ・インテリジェンスの2012年以降のデータによると、これは月間の資金流出としては過去最大。先月のスマートベータ型の中では最大の流出で、2四半期の純流入後のペースの変化を浮き彫りにした。
Mad Dash
Momentum ETFs suffer worst monthly outflow on record
Source: Bloomberg Intelligence
資金流出の中心は「iシェアーズ・エッジ・MSCI米国モメンタム・ファクターETF」(運用資産89億ドル、ティッカーはMTUM)。ブルームバーグの集計データによると、ロングオンリー戦略の同ファンドは、投資家が10億ドル強を引き出し、過去最悪の月となった。
パーソナル・キャピタルのクレイグ・バーク最高投資責任者(CIO)は「この極めて長期にわたる強気相場は成長が、そしてここ数年は主にモメンタムが主役だった。いずれこうしたサイクルは必ず逆戻りする」と指摘した。
原題:Quant Trade Betting on Past Winners Suffers Record Exodus(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-07/Q0KZN1T0AFB401
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