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為替フォーラム2019年10月30日 / 17:48 / 1日前更新
動くFRB、逃げ切る日銀
熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト
4 分で読む
[東京 30日] - 円高になれば、躊躇(ちゅうちょ)せずに利下げする。円高リスクが遠のいている間は、現状維持。これが日銀の行動原理である。
その判断の鍵を握っているのは、FRB(米連邦準備理事会)の政策がドル/円レートJPY=EBSに及ぼす影響であるため、日銀の政策自体がFRBのさじ加減によって決まると言ってもよい。
ECB(欧州中央銀行)を見るとよい。退任するドラギ総裁は、9月にマイナス金利を深掘りした。それでも、もうそれ以上の追加的な利下げは難しいと思われている。日銀が9月に利下げしていたとしても、ECBと同じだとみられていただろう。
では、なぜ円高が進みにくいのか。様々な要因はあるだろうが、FRBの政策金利が2020年には据え置かれるとみられているからだ。7月と9月の利下げ、そして確実視されている10月の利下げは予防的なもので、先々の米経済を安定成長させる。
先手を打って利下げしたことが、かえって2020年の金利据え置きの予想を強くする。米長期金利は、9月から反転してきた。8月までの米長期金利の低下が円高予想を強める場面では、日銀は利下げする可能性が十分にあった。
<米経済と大統領の不安をどうみるか>
米経済はいまだ薄氷を踏むように不安定と言う人もいる。9月の小売売上高は、前月比の伸びが鈍かった。製造業の悪化も下げ止まらないと見る声もある。
しかし、FRBの利下げ効果はタイムラグを伴って効いてくるものだ。11月中旬から始まるクリスマス商戦の行方の方が気になる。ダウ平均株価.DJIが堅調であることは、個人消費を今後も支えていく要因になるだろう。
また、米中協議も「一発逆転」で決裂するリスクが否定できないという不確実性を重視する人もいるだろう。2019年の4、5月の協議は、すでに合意文書が出来上がったところから事態が暗転した。そのトラウマが、すべては不確実だと考えさせる。
この思考法は、2019年秋というタイミングがトランプ大統領にとって重要だという点を見落している。2020年秋に大統領選挙を控えて、トランプ大統領は何としても協議の成果が欲しい。クリスマス商戦の手前であるという認識があって、トランプ大統領本人が協議をまとめたがっている。
「トランプ大統領は何をするかわからない」と不安視するよりも、あの大統領だからこそ、今回は成果を欲しがっていると見る方が正しいと思う。
<日銀にとっての正念場>
円高という条件以外に、日銀が利下げする可能性はあるという見方は、成り立つだろうか。例えば、消費増税の反動減に対応するケースである。政府の経済対策と歩調を合わせて、利下げという可能性はどうか。安倍晋三首相が、黒田東彦総裁に暗にそのメッセージを送ると、日銀は動くだろう。
今のところ、黒田総裁は増税の影響を軽微と見ており、金融政策による対応は全く考えていない。11、12月になると、月次の経済指標の発表を見て「それなりに増税の影響は大きかった」と民間エコノミストが口々に弱気シナリオを唱えるだろう。本来は2020年前半まで評価を下すことはできないが、元々弱気派の人は過剰反応するに違いない。黒田総裁はその風向きに流されずに耐えられるかどうかが問われる。
2020年に入ると、今度は東京五輪の経済効果の方が話題となり、増税の後遺症はいったん、人々の関心事から遠のくだろう。経済対策の関心もキャッシュレス還元のような時限的対応の次をどうするかに移っていくと予想する。反動減対応の後処置という議論になっていくと、そこに日銀の利下げを加えるのは筋が違うという話になる。
このように考えると、黒田総裁は2020年初めまで約3カ月間が厳しい正念場となる。そこまでは「躊躇なく追加緩和する」という臨戦体制を敷いて、利下げを辞さない姿勢をアピールする。
<日銀は逃げ切れるか>
多くの人は、この局面で日銀は追加緩和をせずに逃げ切れないだろうとみている。筆者も、日銀が完全に逃げ切れると言う自信はない。予想として、逃げ切るつもりだと考えている立場だ。
日銀は、イールドカーブ・コントロールを採用してから、長期金利が低下するときは短期金利をより引き下げなくては逆イールド化するリスクを負ってしまった。海外経済が悪化して、米欧長期金利が下がると、マイナス金利を深掘りする対応を迫られる。短期金利を下げると、金融機関の収益に打撃を与える矛盾が生じた。これが今のように金縛りに陥る理由である。
では、この矛盾から脱出するにはどうすべきか。海外経済が良くなり、米欧長期金利が上がることである。2020年になって海外経済が好転すると、黒田総裁は「輸出環境が改善して、景気後退リスクが遠のいた」と景気認識を改めることで、「躊躇なく追加緩和する」モードをオフにすることができる。
これは出口戦略ではなく、政策スタンスをニュートラルに戻すアナウンスである。外部環境が変われば、「躊躇なく緩和」と発言したことは、うそを言ったことにはならずに済む。従来の強力な緩和を止めることでもないので、方針変更のハードルは低い。
ポイントは、やはりFRBの政策姿勢である。今は2020年に政策金利を据え置き、2021年になって利下げをゆっくり始める方針である。これが、2019年12月あるいは2020年3月のタイミングで上方修正されると、日銀にとって少しずつ外部環境が変わってきたことになる。つまり、日銀が「躊躇なく追加緩和」のモードを切り替えるのは、FRBの政策スタンスの変化を待つことになるのだろう。
(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
熊野英生氏(写真は筆者提供)
*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。
https://jp.reuters.com/article/column-frb-hideo-kumano-idJPKBN1X90TS
コラム2019年10月31日 / 09:54 / 6時間前更新
FRB連続利下げ、経済情勢とそぐわず 市場動向依存にリスク
Anna Szymanski
2 分で読む
[ニューヨーク 30日 ロイター BREAKINGVIEWS] - パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が金融市場の動揺を防ぐために実施する利下げ、つまり「パウエル・プット」は、むしろ「パウエル・パント」と改称するべきだろう。パントとは、アメリカンフットボールで十分に前進できなかったために攻撃権を手放す際に行うキックだ。
市場参加者は30日、追加利下げという望み通りの結果を手に入れた。だがS&P総合500種は今週、終値ベースの過去最高値を更新し、米経済は目を見張るほどではないにしてもしっかりした足取りで推移、物価も上向きだ。その意味で、FRBがデータに基づいていると明言する政策運営方針は、実際には市場の動きにどっぷりと依存している側面がより目立っている。
同日発表された第3・四半期の米国内総生産(GDP)は、年率1.9%増で、特筆するほどの強さでないとはいえ、多くのエコノミストの予想は上回った。雇用情勢もそれほど悪くはなく、失業率は3.5%と引き続き50年来の低水準だ。11月1日には最新の雇用統計が発表されるが、今年これまでを見ると雇用増加ペースは鈍化しながらも着実さを持ち、大規模減税効果がなくなっても堅調な経済動向と一致する。
そしてインフレも、反論はあるだろうが、まだ消えてしまったわけではない。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア個人消費支出(PCE)物価指数は第3・四半期の前年比上昇率が2.2%と、FRBが目標とする2%を超えた。これは持続しないかもしれなくても、足元では物価上昇率が適切な範囲の近くに収まっている。
9月は耐久財受注が打撃を受けたのは間違いない。しかし不振の多くの部分は、ボーイングの737MAX運航停止問題に帰せられる。企業投資の減少が成長率の足を引っ張ったとはいえ、その原因を貿易に関する不透明感というFRBに解決不能な要素以外に求めるのも難しい。一方でGDPの大半を占める個人消費は、底堅さを維持している。
米経済の成長軌道は、減税で加速した後の成熟段階に入りつつある。もっともこれは想定された事態だ。そこで1回の利下げであれば、保険とみなされるだろう。ところが3回連続なら、もはやトレンドの様相を帯びる。半面、データとそうした連続利下げに整合性はない。だからFRBが、金融市場が利下げを99%織り込んでいたから動いたのだとの勘ぐりが入りやすい。FOMC声明からは、将来の利下げを示唆する「適切に行動する」との文言が削除された。それでも市場にばかり目を向けていると、パウエル氏は政策運営の主導権を取り戻すのが難しくなるのではないか。
●背景となるニュース
10月30日、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が金融市場の動揺を防ぐために実施する利下げ、つまり「パウエル・プット」は、むしろ「パウエル・パント」と改称するべきだろう。写真はニューヨーク証券取引所のモニターに映るパウエル議長の会見の様子。10月30日、ニューヨーク市で撮影(2019年 ロイター/Brendan McDermid)
*米連邦準備理事会(FRB)は30日に終わった連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の誘導目標を1.50―1.75%に引き下げることを決めた。7月以降3会合連続の利下げ。一方、声明からは景気拡大を維持するために「適切に行動する」との文言は削除され、当面の利下げ休止を示唆した。
*米商務省経済分析局が30日発表した第3・四半期国内総生産(GDP)速報値は、年率1.9%増で、主に在庫復元や消費、政府支出が寄与した。企業投資は2期連続で減少した。第1・四半期と第2・四半期のGDPはそれぞれ3.1%増と2%増だった。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
https://jp.reuters.com/article/breakingviews-fed-idJPKBN1XA02U
黒田日銀総裁、必要あればマイナス金利の深堀りは可能
伊藤純夫
2019年10月31日 15:58 JST 更新日時 2019年10月31日 16:42 JST
緩和方向を意識した日銀のスタンスを明確にしたー指針修正
必要なら副作用対策も検討、個人の預金金利マイナスにはならない
黒田日銀総裁
黒田日銀総裁 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
日本銀行の黒田東彦総裁は31日、金融政策決定会合後に会見し、短期の政策金利について「マイナス0.1%でこれ以上深掘りできないことはない」と述べ、必要あればマイナス金利の深堀りは可能との認識を示した。
日銀は同日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的緩和の枠組みによる政策運営方針の維持を賛成多数で決定。一方、政策金利のフォワードガイダンス(指針)について「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」とし、必要と判断した場合には追加緩和を辞さない姿勢を一段と鮮明にした。
黒田総裁は、政策金利のフォワードガイダンス修正に関しては、「緩和方向を意識した日銀のスタンスを明確にした」と述べ、緩和スタンスが後退したということではないと説明した。
さらに、追加緩和手段は金利引き下げなどさまざまなオプションがあり、政策金利に限られているわけではないと説明。金融政策はデータディペンデントであり、副作用などの政策コストがあるから追加緩和できないとは考えていないと指摘した。また、必要なら副作用対策も検討していくと付け加えた。個人の預金金利がマイナスになることはないとも述べた。
10月の日銀会合に関する記事はこちらをご覧ください
(発言内容を追加して更新しました)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-31/Q082RFDWRGG201
日銀、フォワードガイダンスに利下げ可能性明示−現行政策維持
伊藤純夫、藤岡徹
2019年10月31日 12:42 JST 更新日時 2019年10月31日 14:38 JST
長短金利は現行水準下回る推移も想定、物価モメンタムに注意必要
19年度から21年度までの成長率・物価見通し下方修正−展望リポート
日本銀行は31日の金融政策決定会合で、現行の政策運営方針の維持を賛成多数で決めた。物価目標へのモメンタムが損なわれる恐れに引き続き注意が必要な情勢として、政策金利のフォワードガイダンス(指針)を修正し、将来の利下げの可能性を明示した。
声明文で示した新たなガイダンスは時期のめどを削除し、注意が必要な間は「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」とした。片岡剛士審議委員が「物価目標と具体的に関連付けた強力なものに修正することが適当」として反対した。前回会合までは、「当分の間、少なくとも2020年春ごろまで、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定している」だった。
金融政策運営は、現行マイナス0.1%の短期政策金利と「ゼロ%程度」の長期金利目標を維持し、指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J−REIT)の買い入れ方針も据え置いた。ブルームバーグのエコノミスト調査では、6割が金融政策の現状維持を決めると予想。3割がマイナス金利の深掘りを見込んでいた。
第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは、追加緩和・政策調整がなく「やや肩透かし」だったが、円の対ドル相場の安定を考慮すると、驚くことではないと指摘。ガイダンス変更については、「日本以外の国は緩和局面に入っており、日本だけ何もしないと市場に見透かされる」とし、円高リスクを回避するため、将来の利下げの可能性をにおわせたのだろうと分析した。
経済・物価見通しを下方修正
声明文と同時に公表した新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、実質経済成長率と消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)の見通し(政策委員の大勢見通し)を、いずれも2019年度から21年度まで全て下方修正した。こうした経済・物価見通しは、引き続き「下振れリスクの方が大きい」としている。
実質GDP 消費者物価指数(除く生鮮食品)
2019年度 0.6%(0.7%) 0.7%(1.0%)
2020年度 0.7%(0.9%) 1.1%(1.3%)
2021年度 1.0%(1.1%) 1.5%(1.6%)
(注)対前年度比、政策委員の見通しの中央値、かっこ内は7月時点の見通し
日銀は今回会合で、前回会合で約束した経済・物価動向の再点検を行った。物価のモメンタムを構成する重要な要素である需給ギャップについて「いったんプラス幅を縮小する」ものの、「景気の拡大基調が続く下で、ならしてみれば現状程度のプラスを維持する」と分析した。
もっとも、海外経済の下振れリスクが顕在化した場合には、「需給ギャップなどの経路を通じて、物価にも相応の影響が及ぶ可能性がある点には留意しなければならない」と注意喚起した。
午後3時半に黒田東彦総裁が定例記者会見を行う。決定会合の「主な意見」は11月11日、「議事要旨」は12月24日にそれぞれ公表される。
長短金利操作(賛成7反対2)
資産買い入れ方針(全員一致)
短期金利:日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%適用
長期金利:10年物金利がゼロ%程度で推移するよう国債買い入れ。金利は経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動し得る
片岡剛士、原田泰両審議委員が反対
ETFとJ?REIT:保有残高がそれぞれ年間約6兆円、約900億円相当で増加するよう購入。市場の状況に応じて上下に変動し得る
(詳細やコメントを追加して更新しました)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-31/Q062ZUDWLU6C01
経済・物価情勢の展望(2019 年10 月)
【基本的見解】 1
<概要>
1 各政策委員の見通しを踏まえた経済・物価情勢の展望や金融政策運営の考え方について、10 月30 日、31 日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定されたものである。
? 日本経済の先行きを展望すると、当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需要への波及は限定的となり、2021 年度までの見通し期間を通じて、景気の拡大基調が続くとみられる。輸出は、当面、弱めの動きが続くものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくもとで、基調としては緩やかに増加していくと考えられる。国内需要も、消費税率引き上げなどの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、増加基調をたどると見込まれる。
? 先行きの物価を展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、原油価格の下落の影響などを受けつつも、見通し期間を通じてマクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。
? 従来の見通しと比べると、成長率については、海外経済の成長ペースの持ち直し時期の遅れから、幾分下振れている。物価については、原油価格の下落などを背景に、見通し期間の前半を中心に下振れている。
? リスクバランスをみると、経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、経済の下振れリスクに加えて、中長期的な予想物価上昇率の動向の不確実性などから、下振れリスクの方が大きい。2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているが、なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要がある。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1910a.pdf
ビジネス2019年10月31日 / 13:24 / 3時間前更新
日銀がフォワードガイダンス修正、政策金利引き下げの可能性を明記
Reuters Staff
2 分で読む
[東京 31日 ロイター] - 日銀は30─31日に開いた金融政策決定会合で、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる恐れについて、引き続き注意が必要な情勢にあるとして、政策金利に関するフォワードガイダンスの修正を決定した。
これまでの「当分の間、少なくとも2020年春頃まで、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」を「物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定」に変更。「現在の長短金利の水準を下回る」という文言を新たに追加することで、政策金利を引き下げる可能性があることを明記した。
これに対して、片岡剛士委員は「政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けた強力なものに修正することが適当」として反対した。
<物価モメンタム評価>
日銀は新たなフォワードガイダンスを導入したものの、現時点では物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れは「一段と高まる状況ではない」と評価している。
モメンタムを評価する上で重要な要素となるマクロ的な需給ギャップについては「景気の拡大基調が続くもとで、ならしてみれば現状程度のプラスを維持する」との見通しを示したほか、もうひとつの重要な要素である中長期的な予想物価上昇率も「先行き、マクロ的な需給ギャップがプラスを維持していくもとで、上昇傾向をたどる」との見方を示している。
ただ「海外経済の下振れリスクが高まりつつあるとみられるもとで、成長ペースの持ち直し時期がさらに遅れたり、一段と減速するなど、下振れリスクが顕在化した場合には、マクロ的な需給ギャップなどの経路を通じて、物価にも相応の影響が及ぶ可能性がある」と警戒感も示した。
この評価については、片岡委員が「物価安定の目標に向けたモメンタムはすでに損なわれている」として反対を表明した。
<マイナス金利は維持>
長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)と資産買い入れ方針は維持した。短期金利は日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用。長期金利は10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買い入れを実施する。
これについて、原田泰委員と片岡委員が反対を表明。原田委員は「長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎる」と主張した一方、片岡委員は「短期政策金利を引き下げることで金融緩和を強化することが望ましい」として反対した。
日銀は声明文で「先行き、物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく、追加的な金融緩和措置を講じる」とあらためて強調した。
https://jp.reuters.com/article/boj-forward-guidance-idJPKBN1XA0GN
脆い世界経済、火遊びする政策立案者せめて「ばかなこと」はするな
――マーティン・ウルフ
2019.10.23(水)
Financial Times
世界情勢?政治?経済
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年10月16日号)
いまやイタリアですら30年間の借金を金利2%で借りられる(写真はベネチア)
ギャラリーページへ
「Don’t do stupid shit(クソみたいなことはしない)」
この表現は、最後の単語が「stuff(もの、こと)」という穏当なものに変えられたうえで、「ばかげたことはするな」という意味の「オバマ・ドクトリン」として知られるようになった。
前任の大統領が進めた無益なイラク戦争からバラク・オバマ氏が学んだ教訓を反映した言葉だった。
多くの人はこのドクトリンを敗北主義的だと受け止めた。今日、筆者にはその良さが分かる。
あまたあるこの世の困難に対して理知的な行動を取ることができれば大変素晴らしいだろうが、それでも今は、このオバマ・ドクトリンを適用することが一つの救いになる。
このことが特によく当てはまるのが世界経済だ。
国際通貨基金(IMF)の専務理事に新たに就任したクリスタリナ・ゲオルギエバ氏が、米ワシントンでの年次総会に先立つ会見で述べたように、「2019年は世界全体の90%近くで経済成長の鈍化が予想される。グローバル経済は現在、同時進行の減速過程にある」。
米ブルッキングス研究所と本紙フィナンシャル・タイムズが行った合同調査はさらに悲観的で、現状を「景気の同時停滞」と形容している。
産業と貿易の分野で特に明確になっているこの減速の主因は何なのか。その答えの大きな部分は、不確実性の高まりに求められるようだ。
ブルッキングス研究所の執筆陣によれば、減…
ブルッキングス研究所の執筆陣によれば、減速は「なかなか収まらない貿易摩擦、金融政策の景気刺激の効果が限定的であることへの懸念、政治の不安定性、地政学リスク」のせいだという。
本紙ブログに寄稿しているギャビン・デービス氏は、こうした不確実性が「定着した」と指摘している。
IMFは最新の「世界経済見通し(WEO)」で、今年の世界経済の成長率がわずか3.0%にとどまり、2018年実績の3.6%を下回ると予想している。
高所得国全体の成長率は1.7%で、これも昨年の2.3%を下回るという。新興国全体の成長率は3.9%で、やはり昨年の4.5%より低下すると見込んでいる。
さらに、今年の世界貿易量の伸び率はわずか1.1%にとどまり、昨年の3.6%よりも小さくなる。貿易量の伸びは世界経済の成長率を大幅に下回り、少なくとも貿易の面では脱グローバル化の前触れとなっている。
決定的に重要なのは、リスクがすべて下振れリスクであることだ。
米国とその主要な貿易相手国との貿易摩擦は、さらに激しくなるかもしれない。
もしそうなれば、統合されたサプライチェーン(供給網)はひどく混乱する恐れがある。ハイテク製品の場合は特にそうだ。
また英国の欧州連合(EU)離脱、いわゆるブレグジットも大混乱をもたらすかもしれない。
地政学リスクは特に中東に多いが、アジアに…
地政学リスクは特に中東に多いが、アジアにもある。中でも、米国と中国の関係が悪化している。
非金融法人企業による多額の債務などがもたらす、金融面の脆弱性も深刻だ。サイバー攻撃や大規模なテロの脅威もある。気候変動への対処も遅々として進んでいない。
気のめいる話だが、世界経済を脅かしていることの大半は「ばかげたこと」のせいだ。
ドナルド・トランプ大統領の貿易政策は、二国間の貿易収支の均衡という愚かな目的のために第2次世界大戦後の通商システムを破壊しており、そうすることで多大な不確実性を生み出している。
ブレグジットもばかげている。英国の近隣諸国や貿易相手国との有益な協力関係を破壊してしまうからだ。
にわかに激しくなった日本と韓国の摩擦もばかげている。中国の存在感がかつてないほど大きくなっているあの地域で、どちらの国も弱体化するからだ。
我々の世界は火遊びをしている。さらに悪いことには、引火しやすい建物の中で火遊びに興じている。
ローレンス・サマーズ元米財務長官が語っているように、危険なのはグローバル経済の減速ではなく、むしろそれにしっかり対処することの難しさだ。
その文脈で見るなら、米連邦準備理事会(FRB)が先日行った金融政策の転換(利下げ)とそれに伴う金利予想の低下は、特に示唆に富んでいる。
米国でさえ、FRBが今回の景気サイクル内…
米国でさえ、FRBが今回の景気サイクル内に短期金利を2.5%より高くすることができず、その前に利下げを余儀なくされた。
ほかの高所得国では、景気減速に対する従来型の金融政策を行える余地は米国以上に限られている。
重要なことに、この状況からは総需要の構造的な不足――これについては、一部の識者が2007〜08年の世界金融危機以前から取り上げて論じている――が今日でもあまねく存在していることが読み取れる。
そしてこの状況ゆえに、前述の「ナショナリスト−ポピュリスト−保護貿易主義者」というばかげたことのみならず、同じくらい破壊的な「世俗信仰としての緊縮政策」というばかげたことを私たちは認識せざるを得ない。
この信仰は、積極的な金融政策に対する恐怖感だけでなく(この恐怖感については、ジャン・クロード・トリシェ前欧州中央銀行=ECB=総裁が正しくはねつけている)、それに代わる政策――すなわち財政政策――の受け入れ拒否の姿勢に垣間見える。
資金の貸し手が利息を「払う」覚悟でいるにもかかわらず、人々は、政府がお金を借りるのを怖がっているのだ。
価格が重要であることは経済学の基礎だ。
驚いたことに、今日では規模の大きな高所得国の上位6カ国が――今では、あのイタリアまで含めて――期間30年の借り入れを2%近くかそれ以下の固定金利で行うことができる。
中央銀行がインフレ目標を達成すると仮定するなら、物価上昇率を差し引いた実質ベースでは0%かマイナス金利になる計算だ。
そんな条件でも多額の借り入れを管理するこ…
そんな条件でも多額の借り入れを管理することは不可能だと考えるためには、経済成長の見通しについて相当悲観的にならねばならない。
借り入れが高度な人材や無形資産、有形資産を生み出すために使われているのであれば、特にそうだ。それに即して言うなら、財政赤字の削減に執着するのは本当にばかげたことだ。
もし実質金利が再び上昇したら、それは経済成長の機会が改善してきたと思われていることの反映だろうし、政府支出の抑制も正当化(および促進)される。
一方では、過去の借り入れのコストは低位で固定される。さらには、経済学者のオリビエ・ブランシャール氏が指摘したように、安全資産の利率は経済成長率を下回るのが普通だ。
今日の状況は、この現実の極端なバージョンでしかない。
今は壊れやすい時代である。これは、ポピュリスト・ナショナリズムの波が高所得国に押し寄せていることの反映でもあるが、正統派の不毛さの反映でもある。
緩やかな景気減速と、私たちが愚かであるがゆえに向き合おうとしない急激な景気減速とは、全く別物だ。
IMFのゲオルギエバ氏が言うように、私たちには「国際協調を改めて約束して行動すること」が求められている。
これは米国のブレトンウッズ委員会が先日刊行した論文集のテーマでもある。
今日においては、これは野心的すぎる目標かもしれない。しかし、「ばかげたこと」を止めるぐらいのことは、我々にもできるはずだ。
By Martin Wolf
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もっと知りたい!続けて読む
米国の後退はトランプ大統領以降も続く
共産党支配の70周年を記念する式典での中国の軍事力の披露は、はっとさせられる瞬間だった。新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含む高度な兵器のラインアップは、強国を目指す中国の野望について多くを物語っていた。だが、戦車が大きな音を立てて天安門広場を進むなか、欧州はよそを向いていた。目下、ドナルド・トランプ米大統領の命運を推測することが唯一の関心事なのだ。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58012
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