http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/339.html
Tweet |
「科学技術人材不足」は、作られた危機だった? その背景は......
2019年10月9日(水)17時00分
秋山文野
29
0
理系人材は不足している、とよく言われているが......マサチューセッツ工科大学の卒業式 Brian Snyder-REUTERS
<6年も前の「STEM人材危機の神話」の記事がまだ取り上げられているが、外国人排斥を結びつける主張も絡み、事情は複雑だった......>
8月末、IEEE(米国電気電子学会)の学会誌であり科学技術雑誌であるIEEE Spectrumが「新学期前に、これまでで最も読まれた、そして議論になった記事」というツイートをした。『The STEM Crisis Is a Myth(STEM人材危機は神話だ)』というこの記事は、米国で叫ばれているSTEM(理系)人材不足は実態を反映していないという趣旨で書かれている。ただし、2013年8月の記事だ。
STEMとはScience, Technology, Engineering and Mathematicsの頭文字をとった語で、科学技術分野とその教育を受けた人材を指す。stemは植物の幹や茎のことで、社会を支えるという意味も込められている。STEM教育を受け、科学技術分野で働き社会を支える人材が足りない、という主張は宇宙開発の分野でもよく目にする。その主張が神話で実態のないものだとすれば気になるが、とはいえ6年も前の記事がなぜ今でも読み続けられているのか。
STEM学位取得者の3分の2は、専門の「仕事の口がない」
IEEE Spectrum記事の趣旨を見てみよう。STEM人材危機の論拠として挙げられるのが、オバマ政権時代の大統領科学技術諮問委員会が発表した「今後10年間で100万人のSTEM学卒者が求められる」という報告書だ。STEM人材育成のため、2020年までに10万人のSTEM教育者の育成と1万人の新規技術者の育成が政府、産業界両方に呼びかけられた。マイクロソフトは2012年に「2010〜2020年までの10年間、学士号以上のコンピューター専門職に120万人の求人がある」という数字を挙げたという。こうした需要を満たすため、マイクロソフトなどのテック企業は、高度外国人人材の就労ビザであるH-1Bビザを毎年6万5000件発行し、累計18万人の外国の人材がこのビザで就労できるよう求めた。
そもそもSTEM人材は米国にどの程度存在しているのか。米商務省の統計では2010年に760万人がSTEM関連職に就業しており、これは米国の労働人口の5.5%に相当するという。この中には、コンピューターサイエンス分野の研究開発職からテクニカルサポート職まで幅広く含まれる。
商務省統計の760万人中、STEM分野の学位を持っているのは330万人だが、ジョージタウン大学の調査によるとSTEM学位取得者の3分の2は、「仕事の口がない」ことから学位を取得した専門分野で働いていない。米経済政策研究所(EPI)の調査によるとSTEMの中でも最大のIT分野では、コンピューターサイエンスの学位を取った人の3分の1がSTEM職についておらず、かつその3分の1は「求人がないため」と回答したという。また、STEM人材不足を裏付けるはずの「給与の伸び」も観測されていない。
人材不足が声高に叫ばれる背景は......
調査はSTEM人材不足が神話であることを示しているが、人材不足が声高に叫ばれる背景に何があるのか。アルフレッド・P・スローン財団の人口統計学者マイケル・タイテルバウムは、「アラーム、ブーム、バスト」というバブルと崩壊のサイクルがあると説明する。「他国は競争上優位に立っている。このままでは我が国は経済的に、また安全保障面で後塵を拝する」と人材危機が叫ばれる。1950年代のアメリカには「ソ連は9万5000人の科学者・技術者を養成しているのに対し、アメリカでは5万7000人しか育成されていない」という科学技術競争論があった。1980年代には競争相手は日本で、現在では中国とインドが脅威とされている。
次のページ移民排斥論者が、外国人材はいらないと主張
実際には、STEM危機が叫ばれ、人材育成が過多になれば得をするのは企業だ。供給の方が多ければ、高いサラリーを払ったり、企業内の教育プログラムを用意したり、何十年にも渡る安定した雇用を保証しなくても市場から必要な人材を必要なときに選べばよい。
記事の結論はシンプルだ。STEM人材不足の神話に乗じて労働市場から良いとこ取りするようなまねをするべきではない。企業は安定した職と継続的なスキル向上の機会を提供し、正当な給与を払えというものだ。この結論に反対する人はおそらくいないだろう。
移民排斥論者が、外国人材はいらないと主張
だが、現在になってIEEE Spectrum誌の報道の余波を調べてみると、記事掲載から6年経っても「議論になった」といわれる理由が見えてくる。STEM人材の中に含まれる、「H-1B」という専門知識と技能を持つ人のためのビザを取得して米国で働いている外国人の問題だ。STEMクライシスの記事で参考文献として挙げられているEPIの調査には、H-1Bビザに関連する外国人労働者の実態を調査したものがある。
H-1Bはいわば高度外国人人材で必ずしも理系を意味しないが、最も多いのは理系のインド人だ。最近でも、インドのエコノミック・タイムズ紙の記事では、H-1Bビザの取得者の70パーセントがインド系だと報じられた。
STEM人材危機が神話であるという説と、外国人排斥を結びつける主張がある。STEM教育を受けた米国人で米国内の需要は満たせるのだから、外国人材はいらないという主張だ。
2019年4月、PNAS(米国科学アカデミー紀要)に、米国でコンピューターサイエンス分野の教育を受けたアメリカ人大学生は、中国、インド、ロシアの学生に比して最もスキルが高いという調査が公表された。移民排斥論者は、こうした文献を利用して「だから外国人はいらない」と主張する。トランプ政権の元で、H-1Bビザには発給数や手続き上の制限が課されているが、アトランティック誌は、発給されたH-1Bが更新されず、大学研究者としての職を追われて帰国せざるを得なかった人のケースを報じた。
では、H-1Bビザによる移民を制限すれば、米国内のSTEMワーカーに仕事が戻るのか。2018年4月に公表されたデータでは、インドのテック系企業トップ7社のビザ発給数は2016年度から2017年度で9.5パーセント減となった。インド大手のITアウトソーシング企業Infosysでは49パーセントの大幅減となったという。だがインドIT企業による業界団体NASSCOMは、「IT系の開発業務を米国外に移すオフショア開発への移行か、イノベーションを遅らせるかの検討を迫られている」とコメントしている。米国内にIT人材を呼べないならば海外に開発拠点を移そうという発想が出てきているのだ。これは、IEEE Spectrumが主張していた米国内のSTEM雇用の問題解消にすぐにはつながらないのではないだろうか。
日本では理系分野の人材に需給ギャップはあるのか?
ここまでアメリカの事情を見てきたが、人手不足が叫ばれる日本では理系分野の人材に需給ギャップはあるのだろうか。少なくともIT分野に関しては、経済産業省が「IT人材の不足は、現状約17万人から2030年には約79万人に拡大すると予測され、今後ますます深刻化。」と発表している。だがその中身では「デジタル技術に対応した IT 人材(先端 IT 人材)は需要が供給を上回る一方で、従来型の需要に対応した IT 人材(従来型 IT 人材)は、供給が需要を上回る状況を生み出す可能性もある。」(『− IT 人材需給に関する調査 −調査報告書』みずほ情報総研株式会社より)といい、IT技術を持つ人材は「先端人材」と「従来型人材」に分けられ、先端人材では人手不足でも従来型は人あまり、ということも起きるというのだ。
先端人材とは、「AI、IoT、ビッグデータ等の先端 IT 技術の利活用に向けた需要」に対応でき、「第4次産業革命に対応した新しいビジネスの担い手」だという。「従来型 IT 人材から先端 IT 人材へのスキル転換が促進されれば、先端 IT 人材の需給ギャップが緩和される」との記述があることから、スキル転換の促進、支援が考慮されているとはいえる。ただ、スキル転換に必要なのはつまるところIEEE Spectrumの結論にある雇用者による「継続的なスキル向上の機会を提供」になるのではないだろうか。
『The STEM Crisis Is a Myth』の記事が掲載されてから6年経っても、また日米で理系人材を巡る状況が異なるとしても、今でも読む価値のある記事ではないかと思われる。
次のページSTEM人材危機という動画と危機は神話か?という動画
https://www.youtube.com/watch?v=vDpXeZ7KHiY
https://www.youtube.com/watch?v=lf1DhyOZ1FE
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/stem6.php
青山学院大、院生40人を「助手」雇用の狙い
文系の研究者育成
★ クリップ
青山学院大の青山キャンパス(同大提供)
青山学院大の青山キャンパス(同大提供)
青山学院大学は2020年度から博士後期課程学生の約40人を“院生助手”として雇用する新制度を始める。学部生の授業補佐に対して月給16万円で、履歴書に教育歴として記せるため就職時の後押しになる。同大は英米文学や史学など文系の研究職の志望者が多く、学生の研究費支援でも採択は文系が理系の2倍だ。学生を雇用する制度は研究大学の一部の理系であるが、同大は文系の若手研究者育成を意識して全学で実施する。
新制度の対象は11学部の入学定員に合わせた分野別の枠で、計42人分を用意した。博士研究を優先しつつ、学部生の講義や実習、国際会議の運営など、修士学生によるティーチングアシスタント(TA)より高度な補佐業務を行う。指導教員の雑務対応にならないよう学部長が監督する。他大学の非常勤講師も可能で、合わせて研究職キャリア構築の後押しになる。
大学は給与のほか社会保険料、超勤手当、通勤費手当(学割使用後の分)などに対応する。教員増となり、きめ細かな教育の指標となるST比(学生・教員比率)がよくなるメリットもある。
今春からの博士後期課程1年生には、給付型奨学金の形で授業料免除を始めており、この対象外となっている学生を新制度で支援する。また19年度には大学院生(博士前期課程を含む)の国際学会発表の渡航費支援を開始。最大15万円、最大60人で進めている。
一方、若手研究者向けの「アーリーイーグル研究支援制度」を17年度に開始しており、競争率約3倍と人気が高い。18年度予算は計1000万円で22件を採択。「助手・助教1人に年70万円」の支援は理系が多いが、「博士後期課程学生に25万円」のケースは、文系が理系の倍で採択されている。
<関連記事>
●国立大が生き残っていくための「卓越」という選択
●私大600校 生き残り戦略インタビュー一覧
日刊工業新聞2019年10月3日
https://newswitch.jp/p/19491
稼ぐ人になるために、義務教育で優先すべき6つのこと
Thumbnail allabout2019/10/08 21:40
この春から進学するお子さんをお持ちの人もいると思いますので、子の選択肢を広げて将来成功するために、重視したい子どもの教育を提案したいと思います。
この春から進学するお子様をお持ちの人もいると思いますので、子どもの選択肢を広げて将来成功するために、重視したい子どもの教育を提案したいと思います。
将来「稼げる大人」になるために、義務教育で大切にすべきことは?
◆1. 知的好奇心を育てる国語力を伸ばす
義務教育の範疇に限定しますが、学校での勉強科目で重視したいことは、まず国語です。
読み書き能力は、あらゆる学習の基礎です。テストだって問題文が正確に理解できなければ、正当は難しいでしょう。
正確に読むことができれば、正確に伝えることができます。そして読解力がつけば、自分であらゆる文献を読み解くことができますから、知識が増えます。
知識が増えると、疑問が湧きます。疑問が湧くということは、知らないことがあることに気がつくことです。知らないことがわかれば、もっと知りたいと思い、ますます知識が増えて世の中を理解する枠組みが増えるというループが起こります。
つまり知的好奇心は、正確な日本語運用能力と語彙の豊富さから生まれると言っても過言ではないからです。
◆2. 論理的思考を育てる理数系科目に注力する
次に理数系科目のウエイトを高くすることです。理系科目は論理的思考力の基礎となるからです。
もちろん文系の人でも論理力の高い人はいますが、一般論において理系人材は仮説検証の習慣があり、理路整然と思考することができ、想像力や予測力も優れています。
反対に、私が知る限り所得が低い人の多くは、数学や物理などの理系科目が苦手です。もちろん全員ということではなく、一般的にという意味です。それはつまり、論理的に考えることが苦手であることを意味します。
そのため、「とにかくダメだ」などと理由のない命令をします。感情や思いつきで判断したり、よく子どもを怒鳴ったり、自分の行動がどういう結果を招くのかという想像ができないことが多いといえます。
だから、カッとなって議論を打ち切るとか、別れを切り出すとか、チャンスや人間関係をぶちこわすということをやりがちです。一方、論理性の高さは感情の起伏を抑え、冷静なメンタルを養います。なので論理性の獲得は、日本語能力の獲得に匹敵するぐらい重要なのです。
◆3. プログラミングなど、今後必要とされる能力を磨く
他にも、プログラミングが必修化されることになっており、親の関心も高い教科です。これも根本は理数系科目と同じく、論理的思考力の育成にあります。たとえば「こういう命令を記述すれば、プログラムはこう動く」という訓練は、まさしく論理です。
それに、今後はAIやロボットなどの需要はますます高まるでしょう。そのため昨今、子どものSTEM教育(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マスマティクスの頭文字による造語)が注目を集めており、それらを教えてくれる講座は人気のようです。
STEM教育では、プログラミングやデータサイエンスなど、AIやロボットが社会を激変させる未来を生き抜くために必要な、ハイテク分野に重点が置かれています。
最近ではさらに、ArtのAを加えたSTEAM教育と呼ばれることも増えています。アート、つまりデザイン思考が重要になるという意味ですね。
◆4. 理数系科目を捨てないこと
ただ、必修科目になるのは学びのきっかけとしては望ましくても、教える側のリテラシーによってはIT嫌いになる子が増えるのではないかという危惧があります。
とはいえ、数理的な思考を必要とするのは、プログラミングに限ったことではありません。
たとえば、金融は応用数学なしには成り立ちませんし(金融工学という学問領域もあるくらいです)、生物分野では遺伝情報の解析に統計学が必要だし、行動経済学やビッグデータの活用でも統計学が必要です。
統計学を学ぶには、線形代数や微積分の知識が必要となります。つまり今後は、ますます理数的知識や数理的思考が必要になっているということです。
しかし現実では、「数学が苦手だから文系に進む」という逃げの姿勢で選択している人が多いようです。すると、新しい時代に必要な知識を身に着けることができず、その後に広がる大きなチャンスを放棄することになってしまう危険性をはらんでいます。
◆5. 算数・数学は、早めのキャッチアップで苦手意識を克服
そのため算数・数学は、苦手意識を持たないよう、キャッチアップしておく必要があります。
社会などは、どこから勉強してもキャッチアップできますが、理数系科目は前に習った知識を応用し、より高度な学習内容になる積み上げ型の教科です。そのため、どこかの学年でつまずけば、その後はずっと苦手科目になってしまいます。
だから、つまずいているところまでいったん戻って基礎からやり直し、苦手意識を克服しておきたいものです。これは学習塾などを活用する価値があるでしょう。算数・数学は、わかるようになると俄然楽しくなる科目です。
◆6. 余裕があれば英語を学ぶ
必修化といえば英語も挙げられ、こちらも親の関心が高い科目だと思います。特に英語にコンプレックスを持っている親ほど、子の早期英語教育に熱心になるようですが、余裕があればやる程度で問題ないというのが私の認識です。
というのも、コミュニケーションのための英語なら、大人になってからでも十分マスターできるからです。
それよりも、まずは日本語で論理力、自分の価値判断基準を持つことです。それがないと、母語であっても外国語であっても、人を説得したり動かすなど、信頼関係を築くことはできないからです。
外国語がペラペラだとしても、伝えたいメッセージや論理性がなければ何も伝わりません。伝わらなければ、何も話していないのと同じです。つまりその英語力は、そもそも持っていないのと同じということになります。
だからまずは日本語の軸をしっかり作る、日本語でじっくり思考できる土台を作ることが大切です。日本語で論理的思考ができ、細かなニュアンスが表現できるようになることです。
ただし、ナチュラルな発音はどうしても幼少期のほうが習得しやすいですから、やるとしたら発音でしょう。
文=午堂 登紀雄(マネーガイド)
本記事は「All About」から提供を受けております。著作権は提供各社に帰属します。
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
関連リンク
RECOMMEND
新着記事
ライフプランのプロが教える「いま、できる、こと」 第2回 「消費税増税」で考える「人生の3大支出」
2019/10/09 21:02
稼ぐ人になるために、義務教育で優先すべき6つのこと
2019/10/08 21:40
米9月雇用統計レビュー - 失業率は低水準の3.5%に改善、賃金の伸びは鈍化
2019/10/08 14:14
19年最新版!レストラン株主優待ランキング
2019/10/08 12:20
モノを減らすことは自由への第一歩
2019/10/07 21:40
老若男女8割超が「お金を増やしたい」と回答 - 興味のある投資方法は?
2019/10/07 14:57
https://news.mynavi.jp/article/20191008-906732/
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民133掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民133掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。