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中国・習近平が狙う「仮想通貨」の覇権、米国をしのぐヤバすぎる思惑 米中の衝突はこんなところでも…
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67675
2019.10.09 加谷 珪一 現代ビジネス
中国政府が独自のデジタル通貨を発行することがほぼ確実な情勢となってきた。
米国政府は米フェイスブックの仮想通貨「リブラ」について「国家安全保障上の問題(ムニューシン財務長官)」とまで言及。表面的には敵意をむき出しにしているが、水面下では次世代の通貨覇権の確立に向けた激しい駆け引きが始まっている。
■「リブラ」をきっかけに一気に計画が具現化
中国は2014年からデジタル通貨について検討を続けてきたが、しばらくの間、状況は不明のままだった。だが今年8月に中国の中央銀行関係者が「(デジタル通貨について)発行準備が整った」と発言、一部では11月にも発行が開始されるとの報道も出ている。中国政府が正式に発表したわけではないが、中国がデジタル通貨の運用に乗り出す可能性はかなり高まったとみてよいだろう。
デジタル人民元の詳細は明らかではないが、匿名性があり、自由に送金できる仕様になっているとの見方がもっぱらである。使えるプラットフォームが限定され、個人の銀行預金と紐付けられている既存の電子マネーとは根本的に異なる存在であり、流通している現金通貨を置き換えることを目的とした、本格的なデジタル通貨と考えられる。
5年間も検討を続けていたにもかかわらず、ここに来て計画が一気に具現化してきたのは、米フェイスブックが「リブラ」の発行計画を発表したことと無関係ではない。
リブラはビットコインと同様、ブロックチェーンの技術を使って開発される仮想通貨だが、ビットコインとの最大の違いは、ドルやユーロなど既存通貨によって価値が担保される点である。
リブラはリブラ協会と呼ばれるコンソーシアムが通貨を管理する予定だが、リブラ協会はドルやユーロといった既存の法定通貨を保有し、この保有資産を裏付けにリブラを発行する仕組みとなっている。リブラと既存通貨の交換レートは変動するものの、各国通貨のバスケットになっているので、価格変動は穏やかなものになる。
IMF(国際通貨基金)には、主要通貨をバスケットにしたSDR(特別引出権)という、事実上の国際通貨があるが、リブラはこれに近い仕組みと考えてよいだろう。主要通貨をベースに通貨を発行するという点では、保有するドル資産などを裏付けに、政府ではなく民間企業が通貨を発行している香港ドルとも似ている。
日本では政府が発行しないと通貨ではないといった議論をよく耳にするが、それは単なる思い込みである。経済学的に見た場合、通貨というのは、それに価値があると多くの人が認識すれば、通貨として流通する性質を持っている。政府の方が民間よりも信用度が高いので、法定通貨の方が流通しやすいのは事実だが、民間が発行主体であっても、通貨の要件を満たさないわけではない。
では、なぜ中国政府はリブラの計画をきっかけに、デジタル通貨の発行を進める決断を行ったのだろうか。その理由は、リブラが持つ潜在力が想像以上だったからである。
■中央銀行が持つ「利権」が脅かされる
リブラについては、各国から様々な懸念が寄せられており、マネーロンダリング対策などで協議を進めていくとしている。だが、リブラにはマネロンに関する懸念があるという各国通貨当局の説明は、額面通りには受け取らない方がよいだろう。もちろん、匿名性の高い仮想通貨が世界に流通すれば、犯罪資金などの温床になる可能性はあるが、現金とは異なり、仮想通貨は理屈上、その行方を電子的に追跡できる。
現金ほど匿名性が高く、犯罪やテロに利用しやすい決済手段はほかにない。それにもかかわらず、現金が主な決済手段として全世界で使われている現状を考えると、仮想通貨が普及するとマネロン対策ができなくなるというのは杞憂に過ぎないことがお分かりいただけるだろう。
各国の通貨当局が本当に恐れているのは、マネロンなどではなく、リブラのような仮想通貨が普及することで、中央銀行が持つ巨大な利権が脅かされることである。
パウエルFRB議長〔PHOTO〕Gettyimages
現代の金融システムは、中央銀行が通貨を一元的に管理し、傘下にある民間銀行を通じてマネーの流通をコントロールすることで成り立っている。中央銀行はその気になれば、その国の経済を自由自在に操ることができるので、この仕組みは、中央銀行を頂点とした銀行による一種の産業支配システムと言い換えることもできるだろう。
実際、銀行は他の業種とは異なる位置付けとなっており、金融関係者は特別なエリート意識を持っている。経営危機となっても銀行だけは政府から救済してもらえるのは、銀行が特権的な立場にあるからにほかならない。
ここでリブラのような仮想通貨が広く流通する事態になると、状況が一変する。
中央銀行による統制が効かないマネーの比率が増えれば、金融政策の効果は半減し、中央銀行が持つ権力も大きく削がれることになる。金融機関にも十分な情報が入らなくなり、一般企業に対する支配力も大きく低下してしまうだろう。日本のような小国の場合、金融システムと産業界との力関係の話に過ぎないが、米国や中国といった覇権国になると状況がまるで変わってくる。
■「通貨覇権」の影響力はすさまじい
米国は常に巨額の貿易赤字を垂れ流しているが、それは多額のドルを世界にバラ撒いていることと同じである。つまり米国は貿易赤字を通じて全世界にドル経済圏を構築しているわけだが、世界経済におけるドル覇権の影響力はすさまじく、各国企業はドルなしでは経済活動を継続できない。
日本がいくら物作り大国だといっても、日本製品を日本円で買ってくれる顧客はおらず、ほとんどの日本企業はドルで代金を受け取り、金融機関を通じて日本円に替えなければならない。世界のすべての取引にドルが介在するので、米国は圧倒的な影響力を世界に行使できる。
近年、グローバル化が進み、海外にも気軽に送金できるようになったが、銀行間の送金ネットワークも実は米国がドルベースで構築したものであり、ドル覇権と密接に関係している。海外送金が簡単になったのはドルが普及したことが要因であって、多国籍という意味でのグローバル化が進んだ結果ではない。
ドル覇権が続く限り、米国には金融機関を通じて世界のあらゆる情報が集まってくるが、インテリジェンス(諜報)の世界において、これほど有益な仕組みはほかにないだろう。保守的な日本人にはまったく理解できない話かもしれないが、通貨覇権国というのはお金の動きをチェックするだけで、全世界の情勢をほぼリアルタイムに把握できてしまうのだ(たいていの政治的な動きにはお金が関係する)。
近年、このドル覇権に対して公然と挑戦状を叩き付けたのが中国である。中国は人民元をベースにした独自の銀行送金ネットワークの構築に乗り出しており、ドル覇権を周辺から突き崩そうとしている。もし中国が米国に準じる金融覇権の確立に成功すれば、日本のような小国はひとたまりもないだろう。
このような現実を考えると、全世界で27億人の利用者を持つフェイスブックが、本格的な仮想通貨の計画を打ち出したことのインパクトが、米中の通貨当局にとっていかに大きいことなのかお分かりいただけると思う。
■すでに戦争は始まっている
これまで規模の小さい途上国は、ドル覇権の下にぶらさがる形でしか通貨システムを構築できなかった。内戦が続き国土が荒廃したカンボジアでは、国連による暫定統治で経済を復活させたが、金融システムはドルと現地通貨の二本立てとなっている。現在、カンボジアはめざましい経済発展を遂げているが、これはカンボジアがドル経済圏であることと無縁ではない。
中国はカンボジアを中国経済圏に引き入れようと、莫大な資金を投下しているが、企業における決済や預金、投資がドルになっている以上、中国もそのルールに従わざるを得ない。通貨覇権を握っていることは、何兆円もの経済援助をはるかに上回る効果がある。
もしリブラが世界に普及した場合、自国通貨とリブラの二本立てで金融システムを構築する新興国が出てきても不思議ではない。こうした新興国は、リブラを交渉材料に、ドル覇権を狙う米国と人民元覇権を狙う中国を上手くてんびんにかけ、双方から好条件を引き出そうとするだろう。
つまりリブラという仮想通貨は、これまで構築してきたドル覇権を脅かす存在であり、そのドル覇権に対して挑戦状を叩きつけている中国にとっても、それは同じことである。
中国は発行を計画している人民元のデジタル通貨を用いて、国際的な人民元の普及を画策する可能性がある。表面上はリブラとは対立関係にあるが、この世界は「蛇の道は蛇」であり、リブラとデジタル人民元が共存することも十分にあり得るし、米国政府が水面下でフェイスブックとの交渉を進めている可能性も否定できない。
さらに言えば、ユーロ陣営や英国の動きにも注目する必要がある。
ユーロ圏各国は、表面的には仮想通貨規制で各国と足並みを揃えるというスタンスだが、ユーロ圏内では、ビットコインなどの仮想通貨を自由に流通させている(英国も同様)。欧州各国が、仮想通貨に対して警戒感を示しつつも、ドル経済圏に対する牽制球としての役割を仮想通貨に期待している面があるのは明らかだ。
日本では相変わらず、仮想通貨に対して感情的な議論ばかりだが、国際社会では、水面下で次の通貨覇権の確立に向けた権力闘争が始まっているのだ。
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