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柳井正氏の怒り 「このままでは日本は滅びる」
大西 孝弘
ロンドン支局長
2019年10月9日
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全3947文字
日本の再成長への一手を考える「目覚めるニッポン」。今回は柳井正ファーストリテイリング会長兼社長。政治的な発言を控える経営者が増えるなか、柳井氏はあえて直言をやめない。怒りともいえる危機感を示し、企業経営から政治まで大改革の必要性を説く。
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柳井 正氏 Yanai Tadashi
ファーストリテイリング会長兼社長
1971年ジャスコ(現・イオン)入社。72年、実家の小郡商事(現・ファーストリテイリング)に転じ84年から社長。2005年から現職。01年からソフトバンクグループ社外取締役。山口県出身、70歳。(写真=竹井 俊晴)
最悪ですから、日本は。
この30年間、世界は急速に成長しています。日本は世界の最先端の国から、もう中位の国になっています。ひょっとしたら、発展途上国になるんじゃないかと僕は思うんですよ。
国民の所得は伸びず、企業もまだ製造業が優先でしょう。IoTとかAI(人工知能)、ロボティクスが重要だと言っていても、本格的に取り組む企業はほとんどありません。あるとしても、僕らみたいな老人が引っ張るような会社ばかりでしょう。僕らはまだ創業者ですけど、サラリーマンがたらい回しで経営者を務める会社が多い。こんな状況で成長するわけがない。
起業家の多くも上場して引退するから、僕は「日本の起業家は引退興行」と言っています。今、成長しているのは本当の起業家が経営している企業だけです。
結局、この30年間に1つも成長せずに、稼げる人が1人もいない、稼げる企業が1社もない。いや、1社はあるかもしれないですけど、国の大きさからいったらあまりにも少ないし、輸出に依存していてグローバルカンパニーにはなっていない。稼いでいる人がいなかったら家計は成り立たないでしょう。30年間、負け続けているのにそのことに気付いていません。
柳井会長はインタビューの冒頭から、怒りをみなぎらせた表情で日本の現状を語った。そして話は政治改革に向かっていった。
日本出身ということは必要で、日本のDNAはすごく必要だけど、強みが弱みになっています。例えば、みんなと一緒にやるという強みが弱みになってしまっている。たとえば忖度(そんたく)で公文書を偽造するのは犯罪で、官僚なら捕まって当然でしょう。
民度がすごく劣化した。それにもかかわらず、本屋では「日本が最高だ」という本ばかりで、僕はいつも気分が悪くなる。「日本は最高だった」なら分かるけど、どこが今、最高なのでしょうか。
新聞のスポーツ欄を見たらよく分かります。日本選手が3位や4位になったという記事ばかりで、1位は結局、誰かが書いてない。オリンピックなどにたきつけたお祭り騒ぎで、ローマ帝国の「パンとサーカス」と一緒ですよ。国民がそうした生活に明け暮れ、気が付いたらパンが全部なくなり、サーカスをする費用もなくなっていくということです。
いわゆる「ゆでガエル現象」というものが全部でき上がってしまった。私はそんな日本についてあきれ果てているけれど、絶望はできない。この国がつぶれたら、企業も個人も将来はないのですから。だからこそ大改革する以外に道はないんですよ。
まずは国の歳出を半分にして、公務員などの人員数も半分にする。それを2年間で実行するぐらいの荒療治をしないと。今の延長線上では、この国は滅びます。邱永漢さんも亡くなる前に「日本は政治家と生活保護の人だけになる」と言っていました。でも滅びると思っている人がほとんどいません。
参議院も衆議院も機能していないので、一院制にした方がいい。もっと言えば、国会議員もあんなに必要ないでしょう。町会議員とか村会議員もそう。選挙制度から何から全部改革しないと、とんでもない国になります。
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00357/?P=2
ご縁とは本当に不思議 ファストリ・柳井正氏(17・終) (1/2ページ)
2019.10.9 07:05
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ご縁とは本当に不思議
〈スポンサー契約を結ぶテニスの錦織圭選手の功績に平成26年、1億円を贈呈。うち5千万円を個人で負担した〉
昭和44年に世界一周旅行をしたときの同船者から、今年6月に届いた当時の船内ディナーの献立の写しを手に
昭和44年に世界一周旅行をしたときの同船者から、今年6月に届いた当時の船内ディナーの献立の写しを手に
いいところまでは行くんですけど、いつも肝心なところで負けている。最近も会いましたが、僕が「頑張れよ」というもんだから、プレッシャーになっているかも。
〈趣味のゴルフは〉
週末にやっています。ハンディと実力は違うので、ハンディは公表しません。商談でも回ることはありますが、やはりゴルフが本当に好きな人と回るのが大事だと思います。息子と回ることも時々あります。自宅に打ちっ放しのケージも作って使っていますが、これだけゴルフに投資して、これほど下手な人もいないんじゃないかな。
〈東証1部に上場したのは11年。その5日後に父、等氏は79歳で他界した〉
父が死んだときの定期預金の残高は6億円でした。こつこつためてぜいたくをせず、事業に金を投じ、子供たちに金を残した。私は財産を使い切って死のうと思いますが、さあ何に使うか。私もぜいたくはできないが、上場して好きなだけ高価な本を買えたことが一番うれしかったですね。
創業は昭和24年で僕が生まれた年。結構古くなりましたね。自分は何周年とか、一度も気にしたことがない。還暦祝いとかも全て断ったんです。あんなのやるなと。健康法は、風呂に入って2キロとか軽いバーベルを回して、ストレッチしています。孫もいてかわいいんですけど、遊びに来ても僕が仕事をやっている最中が多いので、嫌がられています。
〈経営学者P・F・ドラッカーの著書に感銘を受けたという〉
今でも読み返しますよ。学生の頃も1回くらい読んだと思うけど、全然ぴんとは来ませんよ、仕事をやっていないと。最近は、ライシャワー元駐日大使の自伝を読んでいます。日米、日中、先の大戦、日本を中心にした世界史ですね。
〈大学4年生のとき、父から支援を受け、世界一周の旅をした。ハワイ経由の船旅で米サンフランシスコに入り、パリ、ロンドン、カイロ、ニューデリー、香港を経由し帰国。世界を認識する「原体験」だった〉
昭和44年に世界一周旅行をしたときの同船者から、今年6月に届いた当時の船内ディナーの献立の写しを手に
昭和44年に世界一周旅行をしたときの同船者から、今年6月に届いた当時の船内ディナーの献立の写しを手に
その旅で家内とも出会いました。でもそれより、すごい手紙を今年6月に受け取りました。そのときの船で同じ部屋だった方からです。資料を整理して出てきたと、コピーを同封してくれました。私の早稲田大学時代の名刺、1969(昭和44)年8月3日に船上で出されたディナーのメニュー。平成21年10月6日掲載の前回この欄に登場したときの産経紙面も。同じページには経済学者の中谷巌氏が「正論」を執筆していますが、彼も同船者でした。この船を運航していたアメリカン・プレジデント・ラインは、客船からコンテナ船になって、シンガポール政府系ファンドが買収して、弊社の合弁相手のトップが会長になっていました。ご縁というのは、本当に不思議ですよね。(聞き手 吉村英輝)
https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/191009/wsa1910090705001-n2.htm
ユニクロ柳井氏の革命的ビジョン 日本、世界がやっと追いついた (1/3ページ)
秋月涼佑
秋月涼佑
2019.10.8 07:00
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ユニクロの成長を同時代にビジネスマンとして生活者として身近に見てきました。思い出されるのは2005年。ユニクロを展開するファーストリテイリングの当時会長だった柳井正氏自身が誰よりも認め、その3年前社長につけた、評判の良い当時まだ43歳の玉塚元一氏を事実上解任した件です。「玉塚氏は安定的な成長を求めていた。私としては、もっと変化して成長したいという思いがあった」との理由を柳井氏は語りました。当時のメディアの論調や世間の反応は、オーナーの気まぐれとか、何もそこまでしなくても、というものであったと記憶しています。
ユニクロの店舗
ユニクロの店舗
ユニクロの店舗
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ドライEXポロシャツ(ユニクロ公式オンラインストアより)
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50色ソックス
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LifeWear magazine 8月23日(金)創刊号(ユニクロHPより)
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ユニクロの店舗
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LifeWear magazine 8月23日(金)創刊号(ユニクロHPより)
でも今のユニクロを見れば誰もが柳井氏の当時のコメントの意味が理解できます。ああ、柳井さんには現在のユニクロの姿がビジョンとして明快に見えていたんだなと。正直玉塚さんだけではなく、我々日本のビジネスマンのほとんどが、柳井氏ほどのスケール感や具体性をもってユニクロの現在をイメージできなかったはずですし、それゆえに柳井氏はそのビジョンを実現するためには自分が陣頭指揮を執る他なかったわけです。
そう考えると、後講釈の“しゃらくささ”でユニクロについて語ることは憚られるのですが、ここは大いなる敬意を込めてブランディングという視点でも大変優れたお手本と言えるユニクロの取り組みを振り返りたいと思います。
「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」
ブランディングというと、ロゴやツール、パッケージのデザインを考えたり、ユニークな企業広告を作ったりする取り組みというような、ちょっとお化粧するような感覚で受け取られることがよくあるのですが、実際にはあらゆる企業の活動に首尾一貫した企業価値を込め、それをお客様はじめとするすべてのステークホルダーに伝える取り組みです。
つまり、メーカーで言えば商品、サービス業で言えば社員こそが企業のブランド価値を伝える最大の接点(コンタクトポイントとかタッチポイントと呼ぶ)となるのです。
その点、ユニクロの製品の進化は年々すさまじいものがあり、今や雄弁に自らのブランド価値を訴求していますね。筆者もご多分に漏れずユニクロの製品を日常的に多く愛用させてもらっていますが、付き合いの古い友人や家族からは相当に驚かれます。実は筆者はサラリーマンの当時から、相当な無理をしてファッションにお金をつぎ込んできた人間です。どこか哲学性を感じさせる山本耀司や川久保玲をリスペクトし、海外の主なデザイナーの洋服もあらかた自腹で袖を通してきました。そんな筆者からすると、ユニクロの服はかつてアンチファッションというか、そんな服飾文化やこだわりを否定する邪悪と言って良い存在とさえ思えてならなかったのです。確かにそんな感性はちょっと極端であったにしても、世間一般にも「ユニばれ」という言葉が存在したように、安いし品質は悪くなさそうだからまあ買うかな、というやや消極的な位置づけだったように思います。
例えば、今春夏シーズン販売されていた、「ドライEX」素材のポロシャツ。まず驚くのが素材の質感、発色です。品質面で世界のハイエンドには例えばフランスのエルメスやイタリアのロロピアーナなどがありますが、それら製品の高番手(繊維が細い)綿製品と見まがうようなツヤと手触り、深い発色なのです。パターン、カッティングも考え抜かれていてディテールまで追求したデザインとなっていることが分かります。着ると襟立ちもしっかりしていますし、ドライEX素材のまさに「着ればわかる」というサラッとした爽やかさに手放せなくなるというレベルの仕上がりです。そして何よりハイエンド製品と違う点は洗濯機でも洗えることと、もちろん値段。これで1990円はやはり顧客の期待をはるかに超えています。
ユニクロの店舗
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ドライEXポロシャツ(ユニクロ公式オンラインストアより)
ドライEXポロシャツ(ユニクロ公式オンラインストアより)
50色ソックス
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LifeWear magazine 8月23日(金)創刊号(ユニクロHPより)
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ユニクロの店舗
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ドライEXポロシャツ(ユニクロ公式オンラインストアより)
50色ソックス
LifeWear magazine 8月23日(金)創刊号(ユニクロHPより)
他にも、50色の靴下。靴下の色に差し色を使えるようになればファッション上級者でしょうが、今までそれだけ凝った色味の靴下は腕を磨こうにも小物にもかかわらず結構なお値段で、お試しで履くハードルは結構高かった。これも一足290円ならばどんな色味でも心置きなく試せますし、50足セットでプレゼントなんて言うのも楽しいかもしれません。
つまり、ファーストリテイリングの「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」というステートメントを、ユニクロは年々愚直に製品に表現しているのです。私もあるときにその品質の高さに気付き、宗旨替えし今では「常識」を変えられた一人です。
良きパートナーによる一貫したブランディング活動
それにしても柳井氏はすいぶん孤独だったはずです。一番認める部下玉塚氏でさえ自分のビジョンの全貌までは理解できない。私の身近な転職組や業界内の事情通を通しても、もどかしがる柳井氏の様子が伝わってきたものです。でもそんなとき何人かの柳井氏をして信頼を置くCD(クリエイティブ・ディレクター)が、彼の良きパートナーとなったことは有名です。かつてのジョン・ジェイ氏や、現在の佐藤可士和氏と、スティーブ・ジョブズを彷彿とさせるスタイルでのマンツーマンコミュニケーションを経てのブランディング活動は、柳井氏のビジョンを生活者に、社員に、ジャーナリストに、株主に伝えることに大いに役に立ったことは間違いがありません。
何より、現在のユニクロのブランドロゴデザインは圧倒的にシンプルにして新鮮です。まさに、従来のファッション業界の“○○ for men”とか“○○ pour homme”といった類の欧米社会上流階級のライフスタイルへの憧れを露わにした価値観からの決別をロゴで主張しています。海外でも“ユニクロ”というカタカナのフォントも活用し、白地に「金赤」という最も鮮烈なカラーリング。柳井氏の一見ケレン味、派手さはないけれど革命家的と言っていいほどの反骨心を感じる由縁です。
そんな、シンプルだけれども強いメッセージをお店、ショッパー、広告などあらゆるコンタクトポイントに一貫させる姿勢の徹底さもまた、ブランディング活動のお手本のようで、力強く生活者にブランド価値が浸透していく理由かと思われます。
「LifeWear magazine」創刊で、さらに進化
そしてユニクロブランドのさらなる進化を確信させられたのが、元ポパイの編集長をヘッドハンティングし、マガジンスタイルのリッチな無料カタログ「LifeWear magazine」を8/23に創刊したことです。
ユニクロの店舗
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ユニクロの店舗
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ドライEXポロシャツ(ユニクロ公式オンラインストアより)
ドライEXポロシャツ(ユニクロ公式オンラインストアより)
50色ソックス
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LifeWear magazine 8月23日(金)創刊号(ユニクロHPより)
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LifeWear magazine 8月23日(金)創刊号(ユニクロHPより)
ユニクロが標榜する“LifeWear”(*脚注)の世界観やファッション性を具体的なビジュアルや記事で伝えるマガジン、この手法、従来は間違いなく付加価値の高いハイエンドブランドだけに許されていたものだったはずです。この常識さえもユニクロは打ち壊そうとしているようです。
ブランディング的にも、あまりにもストイックなブランドアイデンティティの徹底は、ともするとちょっと彩のないドライなものになりかねません。そこに、このマガジン、豊かで人間味やあえて生活感を感じさせる写真や記事で、装うことの楽しさを伝えてくれるさすがに素晴らしい仕上がりです。写真や編集のクオリティの高さもさることながら、凝った印刷技法や、紙、ページ数。これを無料で配ることに震撼としない業界関係者はいないはずです。
LifeWearというブランドポジショニングの強さ
あらためてユニクロブランディングのすごさを振り返ると、何より“LifeWear”というブランディング活動最上位概念(ポジショニング・ステートメントと言ったりします)のスケール感、先進性と強さにあると思います。この価値観がはっきりしていてブレないからこそ一貫性のある力強いブランディングができるわけです。
このコンセプトが革新的であればあるほど、マーケティング活動はある意味布教活動とも言えるレベルになりますし、実際にユニクロは服やファッションに対する生活者の価値観自体を変えようとしているように思います。
今秋にはインドへ進出するなど、さらに世界へ日本発の力強いブランド価値の“布教”を加速させるユニクロに、ますます期待したいと思います。
(※)LifeWearは、あらゆる人の生活を、より豊かにするための服。美意識のある合理性を持ち、シンプルで上質、そして細部への工夫に満ちている。生活ニーズから考え抜かれ、進化し続ける普段着です。(LifeWear magazineより)
秋月涼佑(あきづき・りょうすけ)
秋月涼佑(あきづき・りょうすけ)
ブランドプロデューサー
大手広告代理店で様々なクライアントを担当。商品開発(コンセプト、パッケージデザイン、ネーミング等の開発)に多く関わる。現在、独立してブランドプロデューサーとして活躍中。ライフスタイルからマーケティング、ビジネス、政治経済まで硬軟幅の広い執筆活動にも注力中。
秋月さんのHP「たんさんタワー」はこちら。
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