http://www.asyura2.com/19/hasan133/msg/319.html
Tweet |
孫正義氏、日本を憂う「このままでは忘れられた国に」
日経ビジネス
ソフトバンク コラム(ビジネス) スタートアップ ネット・IT AI
2019/10/8 2:00
ソフトバンクグループ会長兼社長。1957年8月、佐賀県鳥栖市生まれ。62歳。81年、日本ソフトバンク設立。96年ヤフー社長、2006年ボーダフォン日本法人(現ソフトバンク)社長、13年米スプリント会長に就任。17年、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを設立し、世界のAI関連企業に投資する。同年から現職。(撮影:村田和聡)
画像の拡大
ソフトバンクグループ会長兼社長。1957年8月、佐賀県鳥栖市生まれ。62歳。81年、日本ソフトバンク設立。96年ヤフー社長、2006年ボーダフォン日本法人(現ソフトバンク)社長、13年米スプリント会長に就任。17年、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを設立し、世界のAI関連企業に投資する。同年から現職。(撮影:村田和聡)
日経ビジネス電子版
世界で存在感が低下している日本企業の中で今、最も著名な経営者と言えばソフトバンクグループの孫正義会長兼社長だろう。世界の最前線で戦い続ける孫氏は今、日本の経済やビジネスの現状をどのように見ているのか。
──孫さんはたくさんの海外の会社を見ています。日本の現状をどう見ていますか。
孫正義氏(ソフトバンクグループ会長兼社長、以下、孫氏):非常にまずい。一番の問題は、戦前戦後や幕末に比べて起業家精神が非常に薄れてしまっています。「小さくても美しい国であればいい」と言いだしたら、もう事業は終わり。縮小均衡というのは、縮小しかありません。日本の中だけで、鎖国された江戸時代のような状況で完結できるならまだいいんですけど。
一方、世界は急激に動いています。米国は依然として技術革新は進んでいますし、中国は巨大化し、東南アジアも今急拡大してきている。それなのに、若いビジネスマンは国外に打って出るんだという意識が非常に薄れてしまっています。留学生もひところに比べて急激に減っていますよね。日本のビジネスマンがもう草食系になってしまった。それでは活力になりません。僕は、教育や思想的なものが非常に問題だろうと思います。
それから1980年代、90年代ぐらいまでは、日本は電子立国と言われ技術で世界を引っ張る力がありました。その勢いは全くなくなって、技術的な面で日本が世界のトップを取っている分野はどんどん減ってしまいました。今や部品や自動車が一部残っているくらいです。今は完全に影が薄れて、技術の日本というのがもう消えてなくなってしまったという感じです。
そういう状況下で、中国は欧米、日本のまねをして、安ければいいだろうというふうに言われていましたが、今や技術の面でもかなり世界のトップを争うところに来て、はるかに日本を抜いていってしまっている。これは日本が競争力を失ってしまったという意味で、非常に問題だろうと思います。半導体も日本は一時トップでしたけれども、もう今や完全にそのポジションを失ってしまった。そういう意味では日本経済は、特にこの30年間ほぼ成長ゼロで、非常にまずい状況だろうと思います。小さな村の小さな平和はいいんですけど、それでは世界から置いてけぼりになってしまう。いつの間にかもう完全に忘れ去られてしまう島国になってしまうような気がします。
──なぜ日本人はハングリーになれないと思いますか。満たされてしまったのでしょうか。
孫氏:一時日本のビジネスマンは「働き過ぎ」と非難されるくらい頑張っていました。世界のそうした声を聞いてしまい、今は働かないことが美徳のような雰囲気になっています。株式市場もバブル崩壊で「借金=悪」「投資=悪」のようなイメージが広がりました。半導体は設備投資産業ですが、それがぱたっと止まってしまいました。つまり競争意欲を持つということ自体に疲弊し、こうした精神構造が社会全体を覆ってしまいました。
2000年前後のネットバブルでは若い経営者が脚光を浴び、「お金があれば何でも買える」という発言が世間の総バッシングを浴びました。成長産業に若者が入りそうだったのに、みんなが萎縮してしまった。その中で、公務員が一番人気みたいな職種になってしまった。公務員が悪いと言っているのではなく、そこが一番人気で、若い成長産業に若者が行かなくなったら、これはもう自動的に産業構造自体が成長に向かわなくなります。
──ソフトバンク傘下のヤフーがZOZOの買収を決めました。前沢友作氏のように事業を作り出した創業者をネガティブに捉える風潮は、日本特有なのでしょうか。
孫氏:村社会のやっかみみたいなものというのは、長らくありますよね。米国では若い人たちが成功すると、「アメリカンドリーム」とたたえられますが、日本だと「成り金」と言われ、何かいかがわしいものを見るような目で見ます。「若くして成功してけしからん」とかね。
──世界で通用する日本の経営者を挙げるのが難しくなってきています。孫さんはご自身をどのように評価していますか。
孫氏:僕の実績はまだまだ上がっていない状態で、恥ずかしいし、焦っています。やっぱり米国や中国の企業の成長を見ると、この程度ではいかんという思いは非常にあります。米国や中国の市場の大きさを羨ましいと思ったこともありましたが、東南アジアのように自国市場が小さい国からも熱く燃えて急成長している会社がたくさん出てきている。僕を含めて日本の起業家が言い訳をしている場合ではないのです。
──孫さんですら道半ばですか。最終的にはどこを目指しているのでしょうか。
孫氏:僕は、今は自分の事業というより戦略的な持ち株集団をつくろうとしています。ビジョン・ファンドを通じて志を共有する起業家たちを集め、「群戦略」で大きく勢力を伸ばす。「人工知能(AI)が成長の源泉」とビジョンを絞ってグループを構築しつつあります。始まったばかりですが、非常に大きな可能性を感じています。
■AI革命は日本のラストチャンス
──その群れが世界のAIを治める、という形になるのでしょうか。
孫氏:そうです。世界では急激な産業構造の転換が起きています。米アマゾン・ドット・コムはもう完全に米ウォルマートの時価総額を抜きました。ウォルマートはまだ頑張っている方ですが、それ以外のリアルの店舗を中心とした企業は、どんどんと倒産をしている状況です。それはメディアもそうですよね。
紙媒体を中心としたところは、米グーグルや米フェイスブックなどにどんどん抜かれてしまった。特に小売りとメディアの世界でインターネットによって産業が置き換わりつつあります。それがもっと大きな流れとして、AIが残りの産業全部をひっくり返しにいくという時代が始まると思っています。既に激震が起きていますが、AIが残りの産業全部をひっくり返すと、そのインパクトははるかに大きなものになっていくでしょう。
産業革命は、人間の体で言えば手や足、目、耳、口など、いわゆる五体の各部分を拡張させました。筋肉の拡張だったと思いますが、情報革命は脳の働きの拡張です。脳の働きを大きく2つに分けると、知識と知恵というものがあります。今までのインターネット革命は知識の革命だった。ですからあんまり丸暗記しなくても、検索で済むようになりました。これからは知恵の革命になると思います。
どちらがより大きな付加価値のある働きをするかというと、肉体労働はその賃金ほどしか対価を得ないわけです。それに対して頭脳労働の人は、平均的により大きな賃金を得ます。でも同じ頭脳労働の中でも、物知りだという人が得られる賃金の対価の平均より、知恵を働かせ、人よりもたくさん考えて深く洞察し、新しいものをつくり出していく人の方がはるかに大きな対価を得ますよね。
人間が普通に知恵を働かせてやるよりも、AIを使って洞察、予測した成果物はより大きく力を発揮する時代が来ると思っています。そういう時代に日本は、ラストチャンスとして打って出るべきです。これは日本に最後に残された一発逆転のチャンスでしょう。問題は、政府や教育者などのリーダーたちが、そのことを十分に認識していないことです。
──トランプ米大統領や韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領にも会える孫さんが、日本政府に働きかけないのでしょうか。
孫氏:かつて政府の諮問委員などに名を連ねたことがありますが、最終決定する政治家に強い意識がないと難しいと思いますね。社会全体が起業家を褒めたたえる風潮にならないと政治家も動きません。ネット新興企業はいかがわしいという雰囲気が残ったままでは、言えば言うほどいかがわしいと思われてしまう。
──「物言えば唇寒し秋の風」だと。
孫氏:そうすると僕らは海外の方に出稼ぎに行ってしまう。米国や中国、東南アジア、インドの起業家たちと建設的な話をしている方が早く成果が出ます。
──AIの群戦略が完成した時、アマゾンやグーグルとは、どのような関係になりますか。
孫氏:パソコンの時代にトップを走っていた企業が、ネット時代にトップであり続けたわけではありません。同じようにネットで活躍した会社が、AI時代に成功できるかは分かりません。例えば医療や交通、建設、不動産などの産業で、必ずしも成功できないかもしれません。新しい時代には新しい若いヒーローが続々と生まれる。私はそこに賭けたいのです。
(聞き手は日経ビジネス編集長 東昌樹)
日経ビジネス2019年10月7日号特集「目覚めるニッポン」では、孫正義氏や日本電産の永守重信氏ら50人による日本の再成長に向けた提言を紹介している。
日経ビジネス電子版セット
週刊経済誌「日経ビジネス」の記事がスマートフォン、タブレット、パソコンで利用できます。雑誌発行日の前週の水曜日から順次記事を公開。日経電子版とセットで月額650円OFFです。
特集 目覚めるニッポン 再成長へ50人の提言
特集 リブラ・インパクト お金と国の進化論
行動するリーダーのためのNo.1経済・経営情報誌「日経ビジネス」
類似している記事(自動検索)
記者会見する(右から)ZOZO創業者の前沢氏、沢田社長、ヤフーの川辺社長(12日、東京都目黒区)
前沢氏「社長退任、悩みまくった」 ZOZO会見詳報(3)[映像あり]
2019/9/12 22:54
「物事を常に問い続けよ」 家入一真 CAMPFIRE代表取締役
2019/6/28 6:30
ガイアックスの管大輔氏 大学生からの人気も高い
安定志向だからベンチャー 若手リーダーの就活時代
2019/6/21 5:40
「拝啓ベゾス様」 アマゾンを呼び込んだメール
2019/1/15 2:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50592160U9A001C1000000/
外需低迷 景気にブレーキ動向指数、8月再び「悪化」
経済2019/10/7 23:00
景気の不透明感が強まっている。8月の景気動向指数では、国内景気の基調判断が4カ月ぶりに「悪化」となった。外需の低迷で製造業が減速していることを示す指標が続き、消費増税のあった内需とともに不安がぬぐえない。専門家の間では戦後最長とされる景気回復局面は終わり、後退局面に入っているとの見方も出ている。
画像の拡大
「市況が戻ると思ったら米国と中国の間で問題が起きる。中国企業は設備投資をするかどうか様子見をしている」。DMG森精機の現地法人、DMGMORI中国のフランク・ベアマン総裁はため息をつく。
米中の貿易摩擦が日本の景気に落とす影は色濃くなってきている。8月の景気動向指数は製造業の生産や出荷が鈍って下押し要因となった。農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「国内景気は18年秋に景気の山を付けた後、輸出の減少ですでに後退局面入りしている」とみる。
画像の拡大
今回の判断は8月までの景気指標に基づく。増税前の景気を映したものだが、足元では一段と厳しくなっている可能性がある。英調査会社IHSマークイットが発表するグローバル製造業PMI(購買担当者景気指数)は、9月まで5カ月連続で景気判断の節目とされる50を下回っている。
景気動向指数で見ても、先行きは明るくない。数カ月先の景気を映すとされる先行指数は8月に前月比2.0ポイント低下の91.7となり、約10年ぶりの低水準だった。経団連の中西宏明会長は7日の記者会見で「先が読みにくく難しい局面だ」と述べた。
外需の不振に伴う生産の停滞は、堅調だった雇用にもじわりと波及している。8月の新規求人数は前年同月比6%近く減った。中でも製造業は15.9%減と落ち込みが大きく、減少も7カ月連続と陰りが目立つ。
消費税率が上がった10月以降は、これまで日本経済をけん引してきた個人消費が足踏みする懸念もある。キャッシュレス決済のポイント還元やプレミアム付き商品券など増税後の需要を下支えする施策があるものの、消費者心理は悪化が続き、消費の基調は強くない。
画像の拡大
今後の焦点は外需の持ち直しだ。ある大手工作機械メーカーの幹部は「ほぼ全ての仕向け先で良くないが、半導体製造装置向けの受注は相当動き始めた」と語る。
内需をとりまく環境も今のところ底堅い。雇用は製造業の一部に陰りがあるものの、有効求人倍率は1970年代以来の高い水準にある。日経平均株価は2万1000円台にあり、市場の混乱が消費者心理を冷やすといった状況にはない。
今後、景気がしっかりした回復軌道を取り戻すには、米中貿易摩擦に伴う外需の停滞が持ち直し、消費増税後の内需が早期に回復するというシナリオが前提となる。ただ、いずれもまだ不透明な段階にあることは否めない。景気指数による「悪化」との判断が今年3〜4月と同じように一時的なものにとどまるかどうかは、微妙な局面にある。
関連記事
政府、景気の公式判断「回復」 指数悪化で見直し焦点[有料会員限定]
2019/10/7 23:00
点灯する米景気後退のシグナル、最後のとどめは[有料会員限定]
2019/10/7 2:00
日経平均、米雇用の改善が支え
2019/10/7 6:56
類似している記事(自動検索)
世界で需要縮小 8月輸出8.2%減、増税後の景気に影
2019/9/18 11:30
8月の街角景気、製造業冷え込む 増税後に増す不安
2019/9/9 20:07
製造業に停滞感、生産増でも在庫高水準 新規求人は減少
2019/6/1 1:31
景気判断6年ぶりに「悪化」、一致指数、外需が低調
2019/5/13 23:06更新
関連キーワード
• 南武志中西宏明景気動向指数国内景気DMG森精機農林中金総合研究所IHSマークイット外需低迷動向指数ブレーキ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50702620X01C19A0EA2000/
点灯する米景気後退のシグナル、最後のとどめは
田村 正之編集委員2019/10/7 2:00日本経済新聞 電子版
米景気の今後を巡る思惑が株式相場を揺らしている。JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳氏は「米景気後退入りの事前シグナルが幾つも点灯していて、さらに最後の"とどめ"が出ると危ない」と話す。
すでに点灯しているシグナルは、過去の景気後退入りの多くの予兆となった米長短金利の逆転と米サプライマネジメント協会(ISM)による製造業の景況感指数の50割れ。今回もこの2つのシグナルがそろって点灯したこと…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50630670U9A001C1000000/
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民133掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民133掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。