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鳥貴族、ついに初の赤字転落…客数減に歯止めかからず“策なし”、消費増税ショックが追撃
https://biz-journal.jp/2019/10/post_121033.html
2019.10.04 文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント Business Journal
鳥貴族の店舗(「Wikipedia」より)
鳥貴族が2014年の上場以来、初の赤字に転落した。9月13日に発表した19年7月期の単独最終損益は、2億8600万円の赤字(前期は6億6200万円の黒字)だった。不採算店の閉鎖に伴う減損損失14億円を計上したことが響いた。
売上高は前期比5.5%増の358億円、営業利益は29.2%減の11億円だった。増収だったものの、増収率は前の期(15.8%増)から大きく低下した。営業利益は大幅減となり、売上高営業利益率は3.3%(前の期は5.0%)と、近年まれに見る低水準に陥った。
17年10月に実施した値上げ以降、低迷が続いている。既存店売上高は18年1月から19年8月まで20カ月連続でマイナスだ。客数は最近こそ回復傾向にあるものの、客単価が18年10月からマイナスが続いており、売上高は依然として低空飛行が続いている。
8月の既存店実績は、客数が前年同月比1.1%減、客単価が3.0%減となり、売上高は4.1%減だった。19年7月期(18年8月〜19年7月)は客数が4.2%減、客単価が1.1%減、売上高は5.2%減だった。
値上げのほかに自社競合も影響した。鳥貴族は大量出店を進めた結果、自社店舗同士での顧客の奪い合いが目立つようになった。
鳥貴族は既存店の不振を受け、21年7月期までの中期経営計画を3月に取り下げた。大量出店を改め、新規出店を抑えて不採算店の閉鎖を進め、既存店の立て直しに専念するようにした。この方針を受け、増加傾向にあった店舗数は減少に転じた。中期経営計画取り下げ直前の2月末時点には全国に678店を展開していたが、8月末時点では659店まで減った。
自社競合が理由で業績悪化に苦しむ外食チェーンは少なくない。最近でいえば、ペッパーフードサービスが展開するステーキチェーンの「いきなり!ステーキ」が最たる例だろう。「いきなり!ステーキ」は、大量出店で生じた自社競合が一因で、既存店の業績が低迷するようになった。
ただ、「いきなり!ステーキ」の国内店舗数は8月末時点で478店と、鳥貴族ほど多くはなく、また鳥貴族が3大都市圏(首都圏、東海、関西)に限って出店しているのに対し、「いきなり!ステーキ」は全国的に展開しているため、「いきなり!ステーキ」の自社競合は鳥貴族ほどではないだろう。そのためか、「いきなり!ステーキ」は現在も新規出店を進めており、店舗数は増加傾向にある。
■抜本的対策は見当たらない
鳥貴族は不採算店の閉鎖を進めているが、それでも既存店の不振は今後も当面続くと考えられる。10月の消費増税が立ちはだかるためだ。鳥貴族は増税分を価格に転嫁するとみられるが、そうなれば価格高騰を嫌って客足はさらに遠のく可能性がある。また、消費増税に合わせて実質値下げをする外食チェーンもあり、こうした競合店に客が流れる懸念もある。
たとえば、サイゼリヤはボトルワインなど一部メニューを除いて現行の税込み価格を据え置く。店内飲食の場合は、本体価格を下げて調整する。この場合は実質値下げとなる。サイゼリヤはワインなどの酒類を扱っており、一般的な居酒屋よりも安く飲めるとして人気が高まっている。サイゼリヤのように酒類を扱う外食チェーンのなかに、実質値下げをするところがあるため、鳥貴族は顧客を奪われる可能性がある。
消費増税時に、酒類や外食を除く飲食料品の税率が据え置かれる「軽減税率」が導入されることも、逆風となりそうだ。
コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどで販売する飲食料品は、持ち帰りの場合は税率が8%に据え置かれる。酒類は軽減税率の対象外のため税率は10%となるが、自宅で飲む「家飲み」需要が拡大すると見込まれている。酒類に関しても、10月の消費増税と同時にキャッシュレス決済のポイント還元策を始める小売店では安く買える。
つまり、10月の消費増税を機に、実質値下げなどの対策を行わなければ、鳥貴族も価格が相対的に高くなり、さらなる競争力低下が懸念される。
受動喫煙対策を強化する改正健康増進法も頭痛の種だろう。改正健康増進法は20年4月に全面施行され、原則屋内禁煙となる。喫煙客が多い居酒屋では大きな影響が出るとみられる。鳥貴族も例外ではなく、喫煙客の流出が起きそうだ。
このように、好材料を見いだすことが困難な状況だが、鳥貴族としてはこれ以上の業績悪化はなんとしても食い止めたいところだ。とはいえ、抜本的な改善策が見当たらないのが現状ではないだろうか。
もちろん、これまでただ手をこまねいていたわけではない。メニューの改編を年2回から3回に変更したほか、既存メニューの「ハイボール」の2倍量の「メガハイボール」を同価格で販売を始めたり、エビの串焼きなど新メニューを投入するといった対策を講じてはいる。だが、抜本的な改善には至っていない。
■米国進出に活路を求める
もっとも、不採算店の閉鎖を進めたことで、以前と比べれば既存店の業績は回復している。これを受けてか、鳥貴族は9月18日、24年7月期までの5カ年の中期経営計画を新たに発表した。それによると、凍結していた新規出店を再開するという。これまでは3大都市圏に出店してきたが、今後はそれ以外の地域を中心に展開を進めていくという。
海外にも打って出る。22年7月期中に米ロサンゼルスに鳥貴族を出店する方針だ。食材は現地で調達し、均一価格で販売するという。
中期経営計画の最後となる24年7月期に売上高450億円、営業利益率8%を目指す。長期的には、国内外で店舗数2000店以上、チェーン全店売上高1800億円を達成したい考えだ。
ただ、米国進出に関しては、成功するかは不透明だ。確かに米国は人口増加が続き、魅力的な市場ではある。それゆえ、日本の大手外食チェーンが争って進出している。だが、多くが辛酸を舐めさせられるなど四苦八苦している状況だ。
ペッパーフードサービスは17年2月に「いきなり!ステーキ」の米国1号店をオープンした。18年 9月には米ナスダック市場への上場を果たしている。しかし、消費者からの支持は得られなかった。今年2月には11店舗を展開していたが、大半の閉鎖を余儀なくされ、7月には上場廃止に追い込まれている。
回転ずしチェーン大手のくら寿司は、09年に米国1号店を出店した。ただ、現在の店舗数は23店(8月末時点)にとどまる。出店を加速させるため、8月に米国法人をナスダック市場に上場させた。上場により米国での認知度と信用度を高めて条件の良い立地を確保したり、優秀な人材を獲得したい考えだ。
牛丼チェーン大手の吉野家ホールディングスは、米国で現在約100店を展開する。それなりの店舗数だが、1号店出店が1975年であることを考えると物足りない。また、ここ数年は出店が停滞しており、手詰まり感が漂っている。
このように、米国は難しい市場だ。そこに鳥貴族は打って出る。難しい挑戦となりそうではあるが、チャンスもあるといえ、進出を試みる価値はあるだろう。日本での動向もさることながら、米国への挑戦の行方も注視していきたい。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。
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