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地方、百貨店消滅…金沢、北陸新幹線開通で“東京に客流出”が深刻化か
https://biz-journal.jp/2019/10/post_121160.html
2019.10.03 文=編集部 Business Journal
8月に閉店した大和高岡店(「Wikipedia」より)
地方百貨店の閉鎖の流れが止まらない。9月末時点で閉鎖した店舗は12店に達した。2019年中に10店舗以上が閉店する見込みだ。リーマン・ショックで消費の低迷が深刻化した10年に2ケタの閉店があったが、それ以来、9年ぶりのことだ。
富山県第2の都市、高岡市で唯一の百貨店だった大和(だいわ)高岡店が8月25日に店を閉めた。大和高岡店は1943年に開業。94年から第三セクターの再開発ビル「御旅屋セリオ」の核テナントとして営業してきたが、近年はインターネット通販や郊外の大型商業施設に押され、2019年2月期の売上高はわずか38億円。ピーク時の3分の1以下に激減した。3期連続で赤字に陥っていた。
4年前の北陸新幹線の金沢延伸で3時間以内で東京に行けるようになり、都内の大手百貨店に客が流れたほか郊外の大型ショッピングモールが大幅な増床を計画したことで、客離れに歯止めがかからないと、店をたたむことを決めた。
大和は1923年創業の北陸を代表する百貨店。最盛期には新潟県を含む7店舗を経営していたが、市場の縮小とともに店舗を整理に追い込まれた。10年には新潟県の長岡店や上越店、新潟店のほか石川県の小松店を閉店した。高岡店の閉店で、今後は旗艦店の香林坊店(金沢市)、富山店(富山市)の2店舗体制となり、収益改善を目指す。
ただ、高岡店の賃貸契約は20年4月まで。閉店後も家賃の負担が続く。19年2月期に無配に転落し、20年同期以降も無配を継続する。
北九州市が地盤の老舗百貨店、井筒屋も状況は同じ。主要5店舗のうち、18年末に山口井筒屋宇部店(山口県宇部市)を閉めたのに続き、19年2月末にJR小倉駅前の商業施設コレット(北九州市)をクローズした。黒崎店(同)も閉める方針だったが、地元の要望を受け、8月から規模を半減して再開した。
コレットは、もともとは93年に開業した小倉そごう。その後、九州が地盤の玉屋、次に伊勢丹に引き継がれたが、いずれもうまくいかなかった。2008年に井筒屋がコレットをオープンしたが、約10年間、赤字から脱却できなかった。
北九州市は高度経済成長時代、八幡製鉄所(現日本製鉄)を核とする北九州工業地帯として栄えた。その後は、産業構造の転換が進み、地盤低下が進んだ。
人口95万人の政令都市だが、年齢65歳以上の高齢化比率は30.5%(19年3月末時点)と、政令都市では断トツ。人口減や高齢化で経営環境は厳しい。駅前の一等地にある百貨店といえども、新幹線で20分とかからない商業都市・福岡市に買い物客を奪われている。
北九州市内では、八幡製鉄所の遊休地に開業した宇宙テーマパークのスペースワールドが17年末に閉園。イオンモールが同パーク跡地で21年に西日本最大級の複合商業施設を開業する。これが、井筒屋が3店(最終的には2店)の閉鎖を決める一因となった。
井筒屋の筆頭株主は西日本鉄道。第3位の株主が福岡銀行。10位以内に北九州銀行と、みずほ銀行が入っている。
主力の小倉店に経営資源を集中し、生き残りを図る。1999年2月期に年5円配当をした記録があるが、2000年からは無配。ずっと配当ゼロの状態だ。
■街の顔が次々と消えていく
郊外の大型商業施設やネット通販との競合に加え、人口減と高齢化が地方百貨店の閉店に共通する要因になっている。
今年に入り、すでに棒二森屋(ぼうにもりや、北海道函館市)、中三(なかさん)青森店(青森市)などが閉店。3月末にJ.フロントリテイリング傘下の大丸山科店(京都府京都市)、6月にななっく(岩手県盛岡市)、8月には大沼米沢店(山形県米沢市)、大和高岡店(富山県高岡市)、ヤナゲン大垣本店(岐阜県大垣市)の3店。9月にヤナゲンFAL店(岐阜県大垣市)、三越伊勢丹ホールディングス(HD)の伊勢丹相模原店(神奈川県相模原市)と伊勢丹府中店(東京都府中市)、山交百貨店(山梨県甲府市)の4店が営業を終えた。
新潟三越(新潟市)は20年3月に店を閉じる。売上高はピークの1997年3月期の250億円から18年3月期は129億円に半減していた。三越伊勢丹HDの連結子会社、新潟三越伊勢丹が、新潟三越と新潟伊勢丹を経営してきた。新潟三越伊勢丹の19年3月期の売上高は前期比3億円減の440億円。不振の新潟三越は閉鎖するが、新潟伊勢丹は営業を続ける予定だ。
日本百貨店協会が売上高を集計する全国の店舗数は08年末段階で280店あったが、19年7月末で215店と2割以上減った。8月以降、8店が撤退する。かつて9兆円を超えていた百貨店の年間売上高は、16年以降は6兆円を下回る。閉店が相次ぎ、5兆円を割り込むのは時間の問題とされる。百貨店がなくなる県庁所在地も出てくるだろう。
地方百貨店は、その地域のシンボル的存在だっただけに、百貨店が消えた後の街づくりが地域にとって、大きく重い課題となる。
(文=編集部)
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