http://www.asyura2.com/19/hasan132/msg/903.html
Tweet |
銀行、ビジネスモデルが機能不全…独占してきた従来業務がスマホ・SNSに奪われる
https://biz-journal.jp/2019/08/post_115269.html
2019.08.26 文=真壁昭夫/法政大学大学院教授 Business Journal
「gettyimages」より
7月10日、地銀最大手の横浜銀行(コンコルディア・フィナンシャルグループ傘下)と第3位の千葉銀行が業務提携で基本合意した。現時点で両行の経営統合は検討されていないものの、地銀上位行同士の業務提携は地銀関係者に「業界の再編が加速するのでは」との緊張感を与えただろう。
冷静に考えると、今回の提携は経済合理性にかなっている。横浜銀行と千葉銀行は、共に首都圏を地盤とし共通点が多い。両行にとってシェアを競うよりも提携によってビジネス面での関係を強化しつつ、システムの共同開発などを進めることは経営効率を高める上で重要だ。また、今後予想される経済環境の変化に対する適応力を高めるためにも、今回の提携の意義は大きいはずだ。両行は提携を深め、新しいビジネスモデルの確立を目指すことになる。
■危機感高まる地銀を取り巻く経営環境
横浜銀行と千葉銀行が業務提携を発表した背景には、今後の事業環境への危機感がある。
国内では、少子化と高齢化、人口の減少が3つ同時に進んでいる。これは、日本経済の実力(潜在成長率)の低下にかかわる問題だ。潜在成長率が低下すると資金の需要は低迷し、銀行が融資などを行うことによって利ザヤを確保することは難しくなる。日本の銀行にとって、融資業務は安定して収益を稼ぐために欠かせない。人口減少は、従来の銀行のビジネスモデルの機能不全につながる。
時間の経過とともにオーバーバンキング(預金を取り扱う金融機関の数が多すぎるということ)の問題は深刻化するだろう。大手行に比べて経営規模が小さく体力が限られている地銀にとって、独力で期待収益の高い海外事業を強化したり、ITを用いたビジネス強化に取り組んだりするハードルは高いといえる。
2019年3月期の決算を見ると、地銀全体の70%が最終減益に陥った。資金需要の低迷から融資による収益確保が難しいなか、多くの地銀は内外債券のディーリングなどを重視して収益を確保しようとしている。
ただ、資産の価格には不確実性(リスク)が伴う。昨年9月から10月上旬に米金利が大きく上昇したことは、そのよい例だ。有価証券の運用に依存して持続的に収益を獲得し、経営を安定させることはかなり難しい。
収益の落ち込みをカバーするために、大手銀行だけでなく地銀も政策保有株(持ち合い株)を売却せざるを得なくなっている。まさに、資産の売却によって利益を捻出せざるを得なくなっているのが実情だ。政策保有株の売却に関しては、企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)においても削減に関する方針の説明が求められている。多くの地銀が、目先の収益をどう確保するか、深刻な状況に直面している。横浜銀行と千葉銀行は、アライアンスを通してより効率的にビジネスを行い、この問題に対応しようとしている。
■新しいビジネスモデルへの試みは急務
もうひとつ、横浜・千葉両行には、銀行の新しいビジネスモデルの確立を目指す考えもあるはずだ。重要なのが、先進のネットワーク・テクノロジーと金融理論を融合したフィンテック・ビジネスへの対応だ。人口の減少とは別の側面からも、銀行のビジネスモデルは変化している。
まず、ネットワーク・テクノロジーの進歩は、銀行に業務効率化のチャンスを提供している。銀行には、装置産業としての側面がある。つまり、システム投資にはかなりの資金と人手がかかる。一方、現在では分散型のネットワーク・システムであるブロックチェーンを用いることで、システム運営のコストを抑えつつ、より効率的にデータや情報を管理することが目指されている。ブロックチェーンの実用化が本格的に進めば、銀行は人員を他の業務に配置し直し、新しい取り組みの加速や顧客サービスの向上を目指しやすくなるだろう。
また、ネットワーク・テクノロジーの普及とともに、銀行への脅威も増えている。特に、スマートフォンの登場とSNSの普及は、銀行が一手に担ってきた資金決済や信用審査・創造が異業種に流れ出す契機となった。
スマホ決済や個人の信用力評価(スコアリング)を用いた与信、不特定多数の人から資金を調達するクラウドファンディングはその代表例だ。私たちの日常生活を振り返っても、スマホアプリの使いやすさ、アプリ使用によるポイントの獲得などは、どの企業・金融機関のサービスを使うか、判断を左右する。
見方を変えれば、与信管理などを強みとしてきた銀行が、ICT(情報通信技術)を用いたフィンテック・ビジネス開発競争を有利に進めることができるとは限らない。目先の収益獲得を追求するあまり、長期的なビジョンに立った銀行の経営改革が遅れてしまう恐れもある。これは地銀にも大手行にも共通するポイントといえよう。
■銀行に求められる“発想の大転換”
長めの目線で考えると、横浜銀行と千葉銀行は、提携によりビジネスの常識を根本から変えることを目指しているだろう。世界の金融業界では、ソフトウェア開発に関する意識が高まっている。将来的には、銀行免許を持ったソフトウェア会社が増える可能性がある。銀行が必要なソフトウェアを開発するのではなく、ソフトウェアを用いて新しい金融サービスを連続的に生み出していくことが重視されている。
すでにリーマンショックの前後から米ゴールドマン・サックスなどの大手金融機関は、情報工学などの学位を持つ人材を確保してきた。ウォール街では自動取引プログラムの導入とともに、システムを管理するエンジニア需要が高まっている。一方で、株式などのトレーダーの数は減っている。
ICTを用いた新しい金融ビジネスの創出は、世界的な変化だ。国内の銀行業界は、この変化に適応しなければならない。各行は経営基盤を強化し、長期の目線で人材を確保し、ソフトウェア開発力を高める必要がある。それは、銀行が蓄積してきた信用審査などのノウハウをクラウドファンディング向けに生かすなど、新しいサービスの創造につながるだろう。
それだけではない。日本の人口減少に伴い、企業はより高い成長が期待されるアジアの新興国など、海外進出を強化する。これは大企業だけでなく中小企業にも当てはまる。それは、地銀が収益を獲得するチャンスにもなる。そのチャンスをつかみ、生かすためには、海外展開を進めてきた大手行との業務提携や、異業種からの専門人材の登用などの必要性が増す。
横浜銀行と千葉銀行が、他の企業や金融機関を巻き込みつつ、どのような取り組みを進めていくか、今後の展開は興味深い。重複する業務の効率性を高めるなどしてシナジー効果の発揮を狙うことに加え、世界経済の変化に適応するためにも、銀行業界における業務提携などの重要性は高まる。このように考えると、両行の業務提携の先には、さらなる展開も十分に考えられる。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民132掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民132掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。