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東京・新宿区と渋谷区で“子どもが増えている”…「東京=低出生率」の終焉か
https://biz-journal.jp/2019/08/post_113327.html
2019.08.08 文=池田利道/東京23区研究所所長 Business Journal
西新宿の超高層ビル群(「Wikipedia」より/Morio)
新宿区、渋谷区、豊島区(池袋)と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。大ターミナル、盛り場、百貨店。どれも間違いではない。だが、データにハッキリと現れてくる大きな特徴がもうひとつある。ひとり暮らしの多さだ。
全世帯数に占めるひとり暮らし世帯の割合は、全国平均で34.6%(2015年、以下同)。23区の平均は50.6%で、2軒に1軒はひとり暮らしという勘定になるのだが、新宿(64.9%)、豊島(63.5%)、渋谷(63.0%)、中野(61.9%)の各区は、さらに輪をかけてひとり暮らしが多い。中野区を副都心と呼ぶのは抵抗があるかもしれないが、ひとり暮らしが多いという点では、ほかの副都心区と似通っている。
ひとり暮らしには、さまざまなタイプがある。学生、若い独身者、中高年の未婚・離婚者、単身赴任、配偶者に先立たれた高齢者。全国ベースで見ると、ひとり暮らしの年齢構成は65歳以上がもっとも多い。これに対して、東京23区では25〜44歳が4割以上を占める。
実は、副都心各区は、前述したどのタイプのひとり暮らしも多い。住宅の供給も、商店の構成などまちの構造も、ひとりで暮らす人たちにとって便利な「ひとり暮らし天国」になっているからだ。なかでも、最大のボリュームゾーンである若い独身のひとり暮らしの集積は、副都心区が抱える課題を象徴的に示す存在だといっていい。
■ 実利重視の男性、ブランド重視の女性
若い独身者が多いといっても、渋谷区と豊島区ではずいぶんイメージが違う。女性100人に対する男性の割合を示す「性比」を見れば、その謎が解ける。性比を狂わす理由はいろいろある。たとえば、65歳以上の高齢者の性比は全国平均も東京23区も、ともにおよそ76。100を下回っているということは女性のほうが多いということで、それは女性の方が長生きだから。一方、若い世代では、ひとり暮らしのうち男女どちらが多いかで、性比の高低が決まってくる。
25〜44歳の性比を記した図表2は、まちに対する男女間の選好度の違いを明快に示している。男性はもっぱら実利重視。給与住宅(社宅や官舎など)が多い千代田区は少し性格が異なるものの、中野区、豊島区、新宿区、台東区など性比が高く、つまり男性が多い区は、交通が便利なわりには家賃が手頃であり、飲食店などが多いという共通した特徴がある。
これに対して、女性が多いのは、世田谷区、中央区、港区、目黒区、文京区、杉並区、渋谷区。女性のまち選びはブランド重視であることが、手に取るように理解できるだろう。
■ファミリー層が少ない副都心区
性比が高い豊島区は、若い女性が少ないから消滅の可能性がある。では、若い女性が多い渋谷区は大丈夫かというと、そう単純な話ではない。若い女性が多くても、カップルができて子どもが生まれなければ、やはり消滅の可能性は残る。
実際、副都心区の合計特殊出生率(以下、「出生率」と略称する)は低い。17年の23区別のランキングは、渋谷区が17位、新宿区が18位、豊島区が21位、中野区が22位。かつてはもっと深刻で、11年までは渋谷区がほぼ最下位を独走し、その後も副都心区のいずれかが23区の最下位に名を連ねるという状態が続いていた。
誤解がないようにつけ加えておくと、副都心区に住む独身の若者たちが結婚しないのではない。やがて彼らも結婚し、子どもを生む。この過程で、もっと広い住宅を求めて郊外に転出していく。後に残った空いた住宅に、次なる独身者が入居する。出生率が低いのは、この繰り返しの結果にすぎない。
自治体とすれば、将来のまちの担い手となる子どもを生み育ててくれるファミリー層の定着が望ましい。しかし、副都心区にファミリー層が少ないのは、前述した社会メカニズムの結果だ。磨き抜かれた戦略なしに、この流れを逆転させ、ファミリー層を増やすことはできない。
■イメージ一新!副都心戦略の成果
独身男性が多く、華やかさに欠ける豊島区と中野区は、まちのイメージを大きく変えるショールームづくりに戦略の重点を置いた。取り組みが先行した中野区では、12年に中野駅至近の場所に「中野四季の都市(まち)」がオープン。「オタクのまち」が一新される。
豊島区では、池袋全体を劇場空間化する一連の取り組みが、ファミリー層居住の受け皿となる住機能の更新と併せて進行中だ。華やかさ不足は中野区以上という実態を考慮してか、17年以降2年連続で待機児童ゼロを達成した保育所の充実をはじめ、親子でくつろげる公園の整備、さらには公衆トイレをきれいにする「パブリックトイレプロジェクト」まで、取り組みの範囲は幅広くかつきめ細かい。
もともとまちのイメージ評価が高い渋谷区では、同時多発的に進む渋谷再開発を通じた「渋谷ブランド」の一層の向上に的が絞り込まれている。渋谷ほどではないにせよ、やはりまちにブランド力がある新宿区は、ミライナタワーのオープン(16年3月)に代表される、渋谷型のブランド向上戦略を先行させるとともに、第2段階として四谷や飯田橋駅前で居住機能併設型の再開発を進めつつある。
図表3では、それぞれのデータの出所が異なるため単純な数値比較はできないものの、副都心各区で幼児人口が23区平均を上回るペースで増加している傾向を読み取ることができる。副都心戦略の成果が実を結び始めた証だ。
■幼児人口の増加が顕著な新宿区
図表3をもう少し詳しく見ると、10〜15年は12年に「四季の都市」がオープンした中野区で特に幼児人口が大きく増加したが、その後23区の平均並みにペースダウンしている。一発打ち上げ花火の限界が現れた感、なきにしもあらずだ。
ただし、同区では、中野駅の南北両側で住宅を含む複合型再開発が新たに動き出した。「四季の都市」が生んだタマツキ効果といえるだろう。渋谷区や豊島区でも、シンボリックな再開発でまちが変わると次々に新たな変化が生まれてくるという、まち再編のタマツキが進み始めている。
副都心区の中で、16〜19年に幼児人口が一番増えたのは新宿区。山手線の内側で、特にその傾向が強い。中野区はもとより、渋谷区も豊島区も山手線の内側に位置するのは3割程度。これに対して、新宿区は6割以上が山手線内にある。
中央区で一番人口が増えているのは湾岸エリアではなく、日本橋地区。千代田区では、ブランド力の高い麹町地区よりも神田地区のほうが人口増加率が高い。これと同じような、地の利を生かした小さな地区更新の動きが新宿区に広がり始めたのだろう。こちらはタマツキではなく個の積み重ねだが、四谷や飯田橋の再開発によって、「新宿居住」が注目されるようになると、個の動きが加速化するという、これまたタマツキが期待できてくる。
■東京23区の出生率は全国平均並みになる?
いずれにせよ、副都心区でファミリー層が増え、子どもが増えていることはまぎれもない事実だ。前述した通り、副都心区の出生率は23区の中で相対的な低位にあるが、その絶対数は近年、全国平均値を大きく上回るペースで上昇を示している。
かつて、都心区と副都心区の低出生率が東京の出生率全体を押し下げていたが、今や都心区は全国平均並みとなり、副都心区でも急速な改善が進みつつある。早晩、23区の出生率が全国平均と肩を並べる日が訪れそうな勢いだ。もちろん、それは若いファミリー層の奪い合いの結果にすぎず、我が国の少子化問題の解決が進んだわけではない。全国平均並みといっても、人口が減らないために必要なボーダーライン(人口置換水準、我が国ではおおむね2.1)と比べると、まだ絶望的に低い。
しかし、少なくとも、「東京は出生率が低い」という単純な発想から脱却すべきときが来たことは間違いなさそうだ。
(文=池田利道/東京23区研究所所長)
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