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かんぽ生命の不正販売は「中途半端な民営化」がすべての原因だ 根本的に議論をするときが来た
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66212
2019.07.31 加谷 珪一 現代ビジネス
郵便局が取り扱う「かんぽ生命」の商品で多数の不正販売があったことが明るみに出た。この問題は同社の販売手法といった個別の問題ではなく、中途半端な形で民営化してしまった日本郵政グループそのものの問題である。このまま経営の問題にメスを入れずに放置すれば、将来、同じようなトラブルが再発する可能性が極めて高い。
日本ではいまだにガバナンスという概念が定着していないが、稚拙な資本市場の運営は、結果的に消費者に大きな被害をもたらすという現実について、私たちはもっと理解しておくべきだろう。
高齢者にとって郵便局は今も「お役所」
かんぽ生命は2019年7月10日、保険の不正販売問題の発覚を受けて記者会見を行い、顧客に不利益があったとして謝罪した。半年以上にわたって顧客に新旧契約の保険料を二重払いさせていたケースや、本来であれば特約の切り換えで済むにもかかわらず新契約を結んでいたケース、旧契約を解除した後、健康状態などを理由に、新しい保険に乗り換えることができなくなったケースなど、内容は多岐にわたる。
一連の不正の背景となっているのが、販売を担当する郵便局員に課せられたノルマである。
例えば、二重払いのケースでは、新契約を結んでから6カ月以内に旧契約を解除すると乗り換えとみなされ、営業成績にカウントされないことから、6カ月が経過した後に解約させていた。旧契約の解約から3カ月以内に新契約を結んだ場合にも乗り換えとなってしまうので、3カ月経過してから、新契約を結ばせるケースもあったという。この場合、3カ月間は無保険状態なので、その間に何かあった場合には保険金は支払われない。
こうした不正販売が横行していたのは、顧客に高齢者が多いという郵便局特有の事情が関係している。高齢者にとって郵便局は今でも「お役所」であり、局員に言われるがままに契約をする人が少なくない。こうした状況を悪用し、不正契約を重ねていった可能性が高い。
一連の悪質な販売手法は、ごく一部の局員だけが行っていたというわけではなく、組織的だった可能性も指摘されている。
日本郵便が、全社員に向け「ソーシャルメディアへの機密情報などの書き込みを禁止する」という内容の文書を通知したことが明らかとなっており、経営陣が内部告発を強く警戒していることが分かる。
2900万件にのぼる全契約を対象に、手紙の送付や直接訪問などで契約内容の確認を行う方針を打ち出したことも考え合わせると、経営陣は広範囲にわたって不正契約が存在すると判断している可能性が高い。
郵便事業は儲からないが、インフラ維持は義務
ここまでは、過酷なノルマによる不正契約の横行という話だが、かんぽ生命の場合には、こうした単純な図式では済まされない事情がある。背景には、日本郵政グループのいびつな事業構造とガバナンスの欠如という根本的な問題があり、今回、不正契約を見直したところで、また別の形で問題が顕在化する可能性が高いからだ。
よく知られているように、日本郵政は2007年の郵政民営化以来、8年を経て2015年に上場を果たした。グループ内には、日本郵便、かんぽ生命、ゆうちょ銀行という事業会社があり、日本郵政はその持ち株会社だが、かんぽ生命、ゆうちょ銀行は独自に上場するという、いびつな構造となっている。
そうなっている理由は、民営化したとはいえ、ユニバーサルサービス(地域によって格差のない公平なサービス提供)が義務付けられた日本郵便の収益制が極めて低いという事情が存在しているからだ。
日本郵便は全国で約2万4000カ所の郵便局を運営しているが、同社が扱う郵便物の数は、過去10年で2割以上減っている。しかも、年賀状や暑中見舞いのハガキを送るのは高齢者が多いので、今後も郵便物の量は減っていく可能性が高い。一方で、郵便には書留など重要な役割を持ったサービスも残されており、基本的なインフラは維持しなければならない。
日本郵便における純粋な郵便事業は赤字に転落する期もあり、ゆうパックなどの宅配事業に加え、金融商品の販売といった付帯事業を加えることで何とか業績を維持しているのが実状だ。つまり日本郵政グループ全体にとって、金融商品の販売手数料は極めて重要な意味を持っており、そうであればこそ、郵便局員には過酷なノルマが課されていた。
競合企業にわざわざ資本参加する理由
手数料を何としても確保したいというグループの焦りは、企業戦略にも大きな影響を与えている。日本郵政は2019年3月、米保険大手アフラック・インコーポレーテッドの株式を7%取得する資本提携契約を締結している。
傘下にかんぽ生命という保険会社を擁していながら、ライバルともいえる企業にわざわざ資本参加するのは、アフラックが得意としているがん保険の販売を強化することで販売手数料を獲得するとともに、アフラックの収益を自社の決算に反映させるためである。
アフラックは日本におけるがん保険のパイオニアであり、現在もがん保険では6割以上のシェアを握っている。一方、かんぽ生命はがん保険を取り扱っていないのだが、これには日米間の特殊な事情が関係している。
突出した規模を持つかんぽ生命ががん保険に乗り出してしまうと、アフラックの収益が脅かされる危険があり、米国政府はかんぽ生命の業容拡大に懸念を示してきた。このためかんぽ生命は、アフラックとの競合商品をあえて投入してこなかったという経緯がある。
かんぽ生命とアフラックで商品の棲み分けが出来ているとはいえ、かんぽ生命が独自に上場し、親会社として日本郵政が二重に上場しているという図式において、さらにアフラックをグループ会社にするというのは、ガバナンス上、好ましくないのは言うまでもないだろう。
今回の不正販売を受けて日本郵政グループは保険営業を当面、自粛する方針を固めたが、アフラックの商品については引き続き販売を継続する意向だという。一部からは、無理な販売の対象となる商品が、かんぽ生命からアフラックにシフトするだけだというシニカルな声も聞こえてくる。
いずれにせよ、何らかの商品販売手数料がないと収益を確保できないという日本郵便の基本構造は変わっていない。このため、無理な販売をやめれば業績悪化を招く可能性があり、逆に販売手法の見直しが進まなければ、同じようなトラブルが再度、発生するリスクがある。
中途半端な民営化と上場がすべての原因
今回のトラブルによって日本郵政グループの株価は大きく下落しており、政府による株式売却シナリオも狂い始めている。結局のところ、一連の問題は、公共事業としての性格を残しながら、中途半端な状況で民営化と上場を進めたことがすべての原因といってよい。
郵政民営化は小泉政権時代に国論を二分するテーマだったが、最終的に政府が下した結論は、(その決断が正しいものかどうかはともかくとして)完全民営化はしないというものであった。
もし完全民営化を実施しないのであれば、収益を犠牲にしても、公共性を重視すべきなので、株式の上場もあり得ないし、ましてや金融商品を高齢者に無理に販売するなどもってのほかということになる。
一方、完全に民営化するのであれば、ユニバーサルサービスの維持は難しくなるので、過疎地域におけるインフラ対策は別の施策として考えなければならない。
足して二で割るような施策は、成長が続いている昭和の時代であれば、大きな問題にはならなかったが、人口が減少し、経済規模の縮小が見込まれる今の時代においては、時間稼ぎの効果しか得られない。
今回の不正販売をきっかけに、日本郵政グループをどう位置付けるべきなのか、過疎地のインフラをどう維持するのか、もう一度、ゼロから議論をやり直す必要があるだろう。
「中途半端な民営化」がすべての原因だ
— DADA21C (@DADA21C) 2019年7月31日
かんぽ生命の不正販売
根本的に議論をするときが来た
加谷珪一
https://t.co/C1cw3o8Slx
郵政省時代から続く『優績者無双』をぶち壊すのが肝要かと。 https://t.co/cmHOlzxCh3
— 天網恢恢、疏而不失 (@no_water_river) 2019年7月30日
かんぽ生命の不正販売は「中途半端な民営化」がすべての原因だ(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース
— のんかん (@nonkan541317) 2019年7月31日
「中途半端な民営化」論は、専ら民営化推進論者から盛んに言われるが、今一度誰のための民営化だったのか、それは国民にとって必要だったのか、から不正を紐解く必要がある。 https://t.co/pJYKilwIVA
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