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給料から強制徴収される“隠れ税金”がグングン上昇している…介護保険料率、1年前から10%増
https://biz-journal.jp/2019/07/post_28516.html
2019.07.04 文=北沢栄/ジャーナリスト Business Journal
「gettyimages」より
政府が「戦後最長の景気拡大」と発表した1月以後、米中貿易紛争の影響も加わって、景気は次第に悪化の様相を濃くしている。日本経済が力強く好転するには、伸び悩む実質可処分所得が増えなければならない。
日本の国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費が、経済動向のカギを握る。経済の好循環がもたらされるためには、勤労者の実収入から税金や社会保険料を差し引き、物価変動下で「自由に使えるお金」となる実質可処分所得が増えなければならない。
ところが近年、「女性の働き方」が変わった世帯以外では、これが減少していることが判明した。大和総研の調査によると、2011〜18年の間、実質可処分所得は14年まで下落したあと増加傾向をたどり、18年は設定した5つのモデル世帯すべてで増加した。だが、この増加は専業主婦だった妻がパートや正社員として働くなど「女性の働き方」が変わった少数の世帯により、大幅にもたらされたためという。
逆に、「女性の働き方」が変わらない多数の世帯では実質可処分所得はむしろ若干減少している。女性の就職増で、世帯の可処分所得がようやくプラスに転じたかたちだ。事実、働く女性の割合は18年平均で51.3%と5割を超え、女性就業者数は前年比87万人増の2946万人に達した(総務省「労働力調査」)。非正規雇用が圧倒的に多いが、ともかく低迷していた世帯の可処分所得を押し上げたのだ。
とはいえ、可処分所得の水準は17年時点でリーマン・ショック時の08年を8000円近く下回る。2人以上の世帯のうち勤労者世帯の1世帯当たり1カ月間の可処分所得は、17年平均で43万4415円(総務省「家計調査」)。08年当時は44万2749円で、3年連続して上昇していた。
女性就業世帯の増加で家計は持ち直してきたものの、なお広がりに欠け、経済の好循環をもたらすに至っていない。家計の負担が軽くならなければ内需の拡大はあり得ず、GDP成長も見込めない。そうなると、膨らむ社会保障費や少子化対策費、教育費などの財源を賄う税収も増えない。
国際通貨基金(IMF)による世界経済見通しで、日本は19年に実質GDP成長率が1.0%、20年に0.5%と先進国中最下位。経済の勢いは再びゼロに近づく。長い間、経済政策の基本設計を誤っていたのではないか。経済政策の重心を可処分所得――個人の豊かさの増大に移す必要があるのだ。
“隠れ税金”の負担増が家計を圧迫している
実質可処分所得を増やすには、収入を増やすか家計の負担を減らさなければならない。家計の負担となるのは、税金と社会保険料だ。収入に占めるこの負担率が高まるほど、生活が厳しくなる。
ここで注意しなければならないのは、社会保険料は毎月強制的に徴収される点で、“隠れ税金”にほかならないことだ。この隠れ税金の負担が増大し続け、家計を圧迫しているのだ。
社会保険料は、被保険者とその事業主が納入する負担金。税と共に社会保障給付費の主要財源となる。勤労者が月給・ボーナス(標準報酬月額)に応じた保険料から毎月、厚生年金や健康保険、雇用保険、介護保険(40〜64歳の人の健康保険料に上乗せ)などが、会社との折半負担で支払われる。
年金保険料のうち、厚生年金と自営業者や非正規雇用者らが納入する国民年金は、04年から17年9月まで毎年段階的に引き上げられ、厚生年金保険料率の場合、現在18.3%の高水準に張り付いた。
目下、保険料が急上昇中なのが高齢化に伴う介護保険。協会けんぽによると、今年5月の納付分から適用された介護保険料率は前年比10%増の1.73%。10年前に比べて45%急増した。大企業の会社員らが加入する健康保険組合の被保険者が1年間に負担する1人当たり平均保険料は、19年度に49万5732円。平均保険料率は過去最高の9.218%に引き上げられた。3年後には同保険料は5万円以上増え、約55万円になる見通し。
大和総研の家計負担調査によると、「平成の間の家計負担増は、ほぼ社会保険料の増加によってもたらされた」ことがわかった。税・社会保険料負担率は平成の間に20.6%から25.7%に上昇した。しかも、その上昇率5.1ポイントのうち4.2ポイント分は、直近10年間(07〜17年)に生じたという。これが、急速に家計負担を増やした要因だ。
家計を豊かにするためには、政府・議会は“隠れ税金”の膨張抑制と財源創出の再設計に本腰を入れなければならない。旧来の社会保障制度の微調整ではない全面的な制度設計と所得の二極化が進むなか、消費増税よりも超富裕層への課税を柱とする税制改革が必要だろう。
まずは、19年度政府予算が34兆円規模の社会保障関係費のうち12.1兆円と最大を占め、問題が多い年金の抜本的な制度改革に取りかかる。夫婦の老後資金として公的年金以外に「約2000万円が必要」との試算が金融庁から発表され、国民の年金不信・不安が深まったばかり。制度の不備から全就労者の4割近い非正規雇用者らの無年金者、低年金者が年々増え、生活保護になだれ込んでいる状況がある。30代後半〜40代までの就職氷河期世代の非正規問題はとりわけ深刻だ。
日本の年金評価は34カ国中29位
日本の公的年金に対する国際的な評価は、依然かなり低い。世界最大級の米年金コンサルティング会社、マーサーの18年度の評価で日本は世界34カ国中、なんと29位。特に持続可能性が問題視されているのだ。
評価のトップはオランダ、2位デンマーク、以下フィンランド、オーストラリア、スウェーデンと続く。上位の多くは、若いうちに年金資金を積み立て、老後にこの積立金を運用益と共に自分の生活資金に充てる積立方式を基本にする。
政府は、年々改良を重ねる海外先進国の優れたニューモデルを取り入れ、現役世代の負担を減らすと共に老後の希望を持たせる責任がある。「令和」を迎え、旧来の失敗続きの慣行的思考と制度を改めるときだ。この国の形をつくり直す新時代の始まり、と心すべきである。
(文=北沢栄/ジャーナリスト)
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