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労働法がなくなる日〜だから日本人は「自助力」を磨かなればならない 老後2000万円問題が突きつけた現実
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65478
2019.06.29 大内 伸哉 神戸大学大学院教授
労働法の存在意義を考える
昭和の高度経済成長期の日本では、労働法の重要性はそれほど高くなかった。
正社員は企業への忠誠を求められ、ときにはそれが過労による健康障害をもたらしたが、終身雇用と年功型賃金という手厚い保障がこれを補って余りあった。
非正社員には、こうした保障はなかったが、その多くは主婦パートや学生アルバイトであり生計維持者ではなかったので、格差が社会問題となることはなかった。
ところが平成に入り、バブル経済が崩壊し、終身雇用が幻想だったことが顕在化する。
失業率が上昇し、平成の真ん中の2002年には5.4%に達した(それでも先進諸国間では低い水準だが)。リストラされた正社員の中には、非正社員に転落する者も出た。
一方、経営環境が厳しくなった企業には、正社員を増やす余裕はなく、リーマンショックがそれに追い打ちをかけた。非正社員率の上昇に歯止めがかからなくなった。
このような状況下で、労働法の存在意義は再び意識されるようになった。
政府が2007年以降、政権の違いに関係なく取り組んだのは、非正社員の保護のための規制強化だった(最低賃金の引上げ、正社員と非正社員の間の処遇格差の是正、有期の非正社員の無期転換、派遣社員の直用化など)。
労働法の歴史
ところで、労働法の歴史は、西欧で第1次産業革命により工業社会が到来したときに始まる。
それ以前の農業社会では、農民は領主と身分的な関係にあり、その自由は制約されていたが、一方で領主は農民を庇護する責務を負っていた。手工業のギルドにおける親方と職人・徒弟との間にも、同様の身分関係があった。
当時の身分関係は、支配はするが庇護もするという相互的なものだったのだ。
工業社会の到来により、農奴から解放された農民は、土地から引き離され、またギルドの解体により自由を得た手工業職人も、機械に仕事を奪われ、どちらも生活のために、工場で雇われて賃金を得る状況に追い込まれた。
そして、効率性を徹底的に追求した分業生産システムの下、機械のごとく単純業務に従事する毎日となった。
このときの経営者と労働者との関係は、形式的には自由で対等な立場で結ばれる雇用契約だった。これは「身分から契約へ」と進化したと言えそうだが、工場内で実際に起きていたのは「契約を通した身分の設定」だった。
契約上は、労働と賃金の交換がなされるにすぎず、経営者は労働者を支配はするものの、庇護の義務はなかった。
そこで、雇用契約に庇護の要素を取り込もうとしたのが、ドイツを中心として欧州大陸で展開された従属労働論だった。
企業に従属して働く労働者階級のために法が介入すべきとする従属労働論は、労働法の基本原理とされ、日本の労働法学にも大きな影響を及ぼした。
もっとも日本では、前述のように、高度経済成長期を通じて、労働法の存在感は大きくなかった。
多くの経営者は、あたかも領主や親方のごとく、労働者に忠誠心を求める一方で、生活の安定もしっかり保証していた。
「契約を通した身分の設定」はあるが、日本的な雇用システムが、労働法の代わりを果たしていたのだ。
ただ非正社員には、こうした庇護は及んでいなかったため、その地位に社会的関心が集まると、政府は労働法上の庇護を及ぼそうとしたのだ。
生産の現場で起こる「本質的変化」
こうして現在、労働法は「働き方改革」の波にも乗って、ちょっとしたブームだ。
しかし、それは長続きしないだろう。生産の現場では、本質的な変化が起きているからだ。
第4次産業革命は、雇用の創出もあるが、雇用の喪失も引き起こす。工場の無人化は既に広がっているし、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAIの活用は、オフィスの省人化を進めるだろう。
いなくなるのは単純業務の非正社員だけではなく、生産性の低い正社員も同じだ。ルーティンワークしかしていない多くの正社員は、機械との競争に勝てないからだ。仕事がなければ、労働法も無力だ。
もちろん、人間がやる仕事がなくなるわけではない。AIやロボットを活用するのに必要な人材の不足は深刻だ。さらにAIやロボットによって代替できない能力もある。
なかでも重要なのが、新たな発想で価値を生み出す創造力だ。いま求められる人材は、創造への貪欲な姿勢をもち、スキルは自分で磨きプロを目指すという企業家精神をもつ者だ。
こうした人材を、企業がこれまで重用してきた、指揮命令に従順な社員の中から見つけ出すのは困難だろう。彼ら/彼女らは、これまでの日本企業の枠におさまらないし、そもそも企業に雇用されることを望まない可能性も高い。
ICTの発達は、こうした企業から独立した働き方を促進し、5G時代の到来がそれに拍車をかけるだろう。
かつての工場労働のような多くの労働者が集まりやっていた仕事は、機械で代替できる。機械で代替できない創造的な知的貢献は、ネットでつながっていれば、いつ、どこででも可能となる。
これは、時間的にも場所的にも自由な働き方だ。しかも上司の監視はなく、組織の歯車から解放されるので、仕事は自己実現の場となりやすい。
もちろん、自由になることで失うものもある。それは手厚い庇護だ。独立して働く者には、庇護を与える雇用主はいないし、雇用されずに働く者に、労働法による庇護は適用されない。
「身分から契約へ」の再来
新しい個人の働き方は、「身分から契約へ」の再来だ。そこに労働法の誕生時と同じ状況をみる人もいる。
確かに、クラウドワークやギグエコノミーの現状をみると、それも理解できないではない。
とくに単純労働に従事する低スキルの者であれば、発注企業やレイバー・プラットフォーマーとの間に「契約を通した身分の設定」があるとして、そうした企業に庇護を義務づける発想が出てきても不思議ではない。
ただ、将来に向けた政策を考えるときには、こうしたアプローチは的を射たものではなかろう。
労働法は「公助」を基本とするアプローチだが、これからの自由な働き方に適合的なのは「自助」の精神によるアプローチだ。
折しも「老後2000万円問題」は、老後に向けた資産形成で、公助から自助にシフトしなければならない現実を、国民に突きつけた。これは労働に関しても同じなのだ。
将来の予測の難しいデジタル経済社会において、自分たちの職業人生の未来を政府の政策に依存するのはとても危険だ。政府は庇護者になることはできないし、なるべきではない。国民が頼りにできるのは自分自身しかないのだ。
もちろん、このことが、国民を自助の海に放り込んで終わりとするものであってはならない。
政府は、国民が政府の力に頼らなくても変化の時代に適合していけるような自助力を高めるシステムを構築すべきなのだ。
海で泳げない人を、船で特定の目的地に運んでしまうような政策ではなく、泳ぎ方を教えて本人が好きな目的地に行けるようにする政策が必要なのだ。
具体的には、政府は、国民が職業人としての基礎的なリテラシー(契約や法律、金融、情報に関するリテラシーなど)や知的創造性を発揮するために必要な教養(Steam教育など)を習得したりできる教育カリキュラムを整備すべきだ。これは、「親方」として自立するための「修行」の場を設定するようなものだ。
このほか、個人で取引する際の契約ルールを整備すること(書面での契約締結の義務化など)や、どうしても職業人としてうまくいかなかったときのセーフティネット(その点では、会社員に有利すぎる社会保障システムは見直す必要があろう)も、政府が提供すべき公助に含まれよう。
令和の時代に合った輝き方
独立した働き方にともなうリスクを完全に取り除くことはできない。
政府が庇護者のように優しい顔をした政策は、人気取りのためだけではないかと疑ったほうがいい。そうした政策は、国民をリスクに脆弱にさせるだけの無責任なものとなる可能性が高いからだ。
残念ながら、日本が、昭和の時代の高度経済成長のような輝きを取り戻すことは期待すべくもない。
ただ令和の時代には、それに合った輝き方があるはずだ。少なくとも平成の時代の停滞を繰り返してはならない。
そのためには、国民がまず意識を変え、政府に何を求めるべきかをよく考えてみる必要がある。
大内伸哉氏は雇用システムの中で保護するのは困難という認識なのだろうけど、従来の雇用関係以上に買い手独占的な状況の中で、政府は個人の能力を最大限発揮させる政策だけすればよい(あとは最低限のセーフティーネットだけ)って、すごい労働法学者もいるものだな。 https://t.co/StgbCV4TbN
— 2C1Pacific (@2C1Pacific) 2019年6月29日
今でも守られていない法律を無くすとどうなるのかな?
— seiji-w (@kuromaru6912) 2019年6月29日
労働法がなくなる日〜だから日本人は「自助力」を磨かなればならない @gendai_biz https://t.co/Gd6NawrGCv #現代ビジネス
労働法がなくなる日〜だから日本人は「自助力」を磨かなればならない 老後2000万円問題が突きつけた現実
— ともみん (@tomomin6262) 2019年6月29日
これ読んで。
どー思う?
自助でやっていけない人たちは相変わらずの底辺の生活しか見えてこないんだけど。
自由てなに? https://t.co/J85tmyqznA
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