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物流業界、エンジン車からEVへ移行本格化…絶大なコスト削減&人手不足解消の効果
https://biz-journal.jp/2019/06/post_106335.html
2019.06.28 文=舘内端/自動車評論家 Business Journal
クロネコヤマトの宅急便の配送車(「Wikipedia」より/天然ガス)
■EVで物流革命勃発
ヤマトホールディングス(HD)傘下のヤマト運輸が首都圏の宅配に小型のEV(電気自動車)を導入する。人手不足や燃料高を解決するばかりか、物流業界にさまざまな恩恵をもたらすと考えられる。果たしてEVの導入は物流革命を起こすだろうか。
ヤマトが導入するEVトラックは、独ストリートスクーター製だ。ヤマトの使い方に合わせた独自設計である。今秋にも本格導入し、約4万台ある集配車を徐々にEVに転換する。ストリート社は国際的な物流大手のDHLが、2014年に将来の物流のEV化を見据えて買収したスタートアップだ。
EVトラックは運転が容易で、疲労が少なく、人手不足の解消策になるばかりか、維持費の安さが魅力だ。たとえば三菱ふそうトラック・バスのEVトラックであるeCanterは、1万キロメートル走行で1000ユーロ(12万3000円)の経費削減が可能だという。
■必要な自動車は自分たちでつくる
事業にEVを導入する動きは日本でも起きつつある。佐川急便は日産からすでに16台のEVを導入している。また、日本郵便は19年から20年度にかけて1200台の導入を予定している。車種は三菱自動車のバン型のEV軽トラック、MINICAB MiEVである。日本郵便はかつてスバルサンバーの改造EVの導入を計画したが実施されなかった。いよいよ本格的な導入である。
一方、DHLは既存の自動車メーカーに専用EVの生産を依頼するも、願いはかなわなかったという (日本経済新聞報道より) 。それなら自分たちの使い方に合った独自の商用車を自分たちでつくろうと、ストリート社を買収したということだが、これはEVだから可能なのである。この「自分たちが使う自動車は自分たちでつくる」ことを可能にするのが、EVの産業構造破壊力である。自動車は自動車メーカーがつくるという産業構造が、EVの登場で崩壊するということである。
■EVは新型車の開発費を激減させる
最初のEVの開発には時間がかかるが、バリエーション展開はきわめて容易である。
たとえば独フォルクスワーゲン(VW)はe-Golf、e-UP!の既存のエンジン車の改造EVを送り出し、十分なデータを取得すると、EV用の専用プラットフォームであるMEBコンセプトを発表した。これはエンジン車用のMQBのEV版であり、MQBが小型のポロ(Aセグメント)からパサート(Dセグメント)までカバーしたことを考えると、MEBもまた多くのモデルの共通プラットフォームになると考えられる。
MEBでは、FFばかりか容易にAWDの展開も可能だ。後輪を駆動する1個か2個のモーターを取り付けるだけでよく、エンジン車のAWDに必要なプロペラシャフトが不要だからである。さらに、モーターはインバーターのプログラムの変更で出力、トルクを容易に変えられる。AセグメントからDセグメント、さらに個数を1台から4台へと増やすことで大型SUVにも同じモーターを使える。うまく設計すれば、動力系は1種類のモーター、インバーターですみ、開発費の大幅な軽減が可能となる。
こうしたEVの特長を使うと、低費用でさまざまな商用車の開発、展開が可能になる。参入障壁が低いEVは、業務車両の開発・生産にも革命を起こすのは必定だ。
■疲労が少なく運転が容易なEVトラック
EVは運転の疲労が少ないことはよく知られている。騒音、振動が少ないことに合わせて、変速が不要で、トルクが大きいので発進、加速でもたもたせず、軽快だからである。しかも、BMWのi3に始まり、リーフ、e-Golfはアクセルペダル一つで加速、減速、場合によっては停止も可能である。もちろん、EVトラックも同様だ。
このEVの特性は、トラックでは長距離を運転するベテランドライバーの疲労を軽減するばかりか、運転に不慣れな女性を含めた新人ドライバーの物流業界への参入を容易にする。特に街中の配達では頻繁に繰り返さなければならない変速操作が不要という特徴は、大きなメリットである。運転の疲労が少ないことは、事故の削減にもつながる。これもまた業者の経費削減効果が大きい。
■EVに替えると燃料代が激減
全バス・トラックの電動化を目指す三菱ふそうトラック・バス (MFTBC)は、すでにEVトラックのeCanterをヤマト運輸、セブン-イレブンに納入、国内で38台販売し、19年中に50台に増やす計画である。
eCanterは、1万キロメートル走行当たりの経費を1000ユーロ(およそ12万3000円)削減できることを売り物にヨーロッパに進出している。年間10万キロメートル走るとすれば、1万ユーロ(123万円)の経費削減だ。
燃料代はどうだろうか。エンジン(ディーゼル)車のCanterの燃費は市街地でおよそリッター8キロメートルである。年間10万キロメートル走ると燃料代は155万円となる。
一方、eCanterの電費はメーカー発表でキロメートル当たり521Wh(ワット時)である。10万キロメートルでは5万2100kWhとなる。小規模事業者の契約電力価格を1kWh当たり14.99円とすると、10万キロメートル走行の電気代はおよそ78万1000円である。
エンジンCanterからeCanterに代替すると、年間10万キロメートル走る事業者は1台当たり76万9000円の燃料代の削減が可能だ。10台保有では769万円もの削減となる。
■削減は燃料代だけではない
そればかりかエンジンや変速機のオイル代、オイルフィルター代、クラッチ、ブレーキの整備代などが削減可能になる。Canterは2トン積みの小型トラックなので、上記の整備もやりやすいが、10トン積み等の大型トラックになると、クラッチの交換やブレーキパッドの交換などは重整備になり、費用もかさむ。
EVトラックのメリットはそればかりかドライバーの疲労を軽減する。結果としての事故の減少は保険代の削減も可能にする。荷物を満載したトラックは上り坂でスピードが落ちる。変速ギアを1段下げるとエンジンの回転数が上がり、牽引力が増し運転が楽になるのだが、エンジンの回転数はなるべく下げるように管理されており、ギアはやたらには下げられない。ドライバーは神経をすり減らす。一方、トルクが大きなEVは楽々坂を上がる。そうした運転の容易さが他のドライバーに伝わると、ドライバーも集めやすくなり、人手不足も解消する。
ただし、実際の経費の増減にはエンジンCanterとeCanterの価格の差額や電池の寿命などを考え合せなければならないのだが、いずれ解決に向かうことは確かである。となれば、EVトラックの登場は物流業界に革命を起こすことになるに違いない。
■中国製バスの輸入が始まった
自動車産業は日本の基幹産業であり、品質と技術の高さはアジアの新興国の追従を許さず、中国製自動車の日本上陸は考えられないとされてきた。しかし、こうした常識は崩れた。中国製のEVバスが沖縄、京都、会津を走り始めた。評判が良い。
輸入されたのは中国のBYD社製のEVバスだ。今後は台数の増大のほか、他の地域にも広がりそうである。BYDはリン酸鉄のリチウムイオン電池を開発、生産し、自動車メーカーを買収して一躍、中国のEVメーカーとしての地位を築いた。現在ではEVのバス・トラックの開発、生産に集中している。日本国内にも支社を出し、7人乗りのマイクロEVバスの輸入を計画している。
■始まるEVバス・トラックの開発、生産
BYDには小型から大型までのバスとトラックのフルラインEVモデルがある。中国政府のEV戦略に乗ったものだ。
EVバス・トラックを手掛けるのはBYDだけではない。世界の商用車の2大巨頭であるダイムラー(eActors/eCitaro)とボルボ(Vera)も開発、虎視眈々と市場の拡大を狙っている。その先頭に立つのが、ダイムラー傘下の三菱ふそうバス・トラックと、ボルボ傘下のUDトラックス(元日産ディーゼル)である。ここに米国のテスラ(セミ)、フォード(Eトラック)、VW傘下の独MAN(Lion’s City 12E)等が加わり、EVのバス・トラックの開発、販売はすでに戦闘モードである。
それにもかかわらず、日野自動車、いすず(注:「ず」の正式表記は踊り字)からはEV開発の槌音が聞かれないのは、国産EV乗用車開発の大幅な遅れとともに残念である。
(文=舘内端/自動車評論家)
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