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奨学金、一律で保証料“強制”徴収は支援機構の“問題隠し”だ…延滞者への取り立て、さらに厳しく
https://biz-journal.jp/2019/06/post_28456.html
2019.06.23 文=真島加代/清談社 Business Journal
今年1月、財務省と文部科学省は日本学生支援機構(以下、支援機構)の貸与型奨学金の仕組みを一部見直すことを発表した。その内容は、奨学生が保証人や連帯保証人を指定する「人的保証制度」を廃止して、保証人が不要な「機関保証制度」に一本化するというもの。2020年の春に正式に制度化されると、すべての奨学生から借入額に応じて一定額を保証料として徴収することになるという。
現在、支援機構の奨学金制度を利用している学生は卒業後の返済を保証するために「人的保証制度」と「機関保証制度」のどちらかを選ぶことになっている。
「『人的保証制度』とは、親族を連帯保証人・保証人に指定するもの。もうひとつの『機関保証制度』は、保証人・連帯保証人を必要とせず、保証機関が本人の連帯保証を請け負う代わりに、学生から一定額の保証料を徴収する制度です。今回の発表は、『人的保証』を廃止して『機関保証』に一本化するというものですね」
そう話すのは、奨学金問題対策全国会議の共同代表を務める中京大学国際教養学部教授の大内裕和氏だ。
「国や支援機構側は、見直しの理由を『長期の返済延滞者が増えて制度を圧迫しているため』『制度を安定させるため』としています。言い換えると、『奨学金を借りて返さないほうが悪い』というのが国側の主張です。しかし、実際に適用された場合は“すべての奨学生”から保証料を徴収することになります。奨学金の貸与額に応じて金額は変動しますが、貸与額の3〜5%ほどを保証機関に支払わなければならず、学生の負担増は免れません」(大内氏)
奨学金に頼るしかない学生からさらに保証料を徴収して、奨学金制度を安定させる……。なんとも本末転倒に思える策だが、大内氏は「制度の安定は、あくまで表向きの理由。本当の目的は“奨学金制度の問題隠し”では」と分析する。
「機関保証制度は、延滞している本人に代わって連帯保証機関が『元金・利息・延滞金』の残額を支援機構に一括で返済するのが特徴です。支援機構は保証機関を通して資金を回収できるので、表面上は延滞率を減らすことができてしまう。まさに“抜け道”というわけです。長く批判を浴びていた『延滞』の事実がなくなれば、支援機構の奨学金制度が表面上は『問題がない』と判断されかねません」(同)
本人に代わって保証機関が返済するため、支援機構は資金回収率100%をうたうことができ、世間の批判をかわす口実になってしまうのだ。当然ながら、保証機関が奨学金を返済しても奨学生の借金がチャラになるわけではない。
「お金を返す先が変わっただけで、本人の状況は一切変わりません。それどころか、保証機関の取り立てが今より厳しくなる可能性もあります。人的保証の廃止は、なんの解決策にもなっていないんです」(同)
本気で延滞率を下げたいのであれば、「国の予算を使ってでも対応するべき課題」と大内氏は話す。
「延滞率を下げる方法はほかにもあります。ひとつは、現在は無利子の第一種奨学金の返還者のみが対象になっている『所得連動返還型奨学金制度』をすべての奨学生対象にすることです。同制度は所得に応じて無理なく返済ができるので、自ずと延滞率は下がるはずです」(同)
■海外から「教育ローン」と言われる日本の奨学金
大内氏が共同代表を務める奨学金問題対策全国会議の活動やメディアによる批判を受け、18年には「給付型奨学金制度」が導入されるなど、奨学金制度は改善に向けて動き出していた。その矢先に、今回の発表が行われた。
「この数年、支援機構は延滞者と連帯保証人への督促を強化してきました。しかし、17年の時点で2万件以上の督促対象のうち、強制回収できたのは175件のみです。無い袖は振れないのですから、それも当然。また、高齢化で連帯保証人が返済することも難しい。奨学金制度の改革が始まったタイミングで若者の現状を示す指標だった『延滞率』が不透明になると、若者の低所得や未婚化・少子化など、奨学金問題と関連する社会問題の存在も隠されてしまう危険性があります」(同)
日本の経済状況を鑑みれば、若者たちは奨学金が返せなくて“当たり前”ともいえる。その事実としっかり向き合った上で、奨学金制度の構造改革に取り組まなければならないのだ。
「海外では、『日本の奨学金制度は教育ローンだ』と揶揄されています。それほど、本来の奨学金という意味からはかけ離れているのです。奨学金が本来の意味を取り戻し、日本経済を立て直すには、すべての学生が『給付型奨学金』を受けられるような大規模な制度改革が必要なんです」(同)
16年、支援機構は奨学金返還を3カ月以上延滞している人を対象に「延滞が継続している理由」についての調査を実施している。もっとも多かったのは「本人の低所得(64.5%)」というものだった。若者たちの「返したくても返せない」という悲痛な叫びを耳にしているはずだが、保証料徴収によって学生の負担がさらに重くなることは必至だ。奨学金問題の解決は、また遠のいてしまったのかもしれない。
(文=真島加代/清談社)
【参考資料】
「平成28年度奨学金の返還者に関する属性調査結果【概要】」(日本学生支援機構)
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