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ジャパンディスプレイ、債務超過寸前…年内が山場、中国企業の傘下入りを国が後押し
https://biz-journal.jp/2019/06/post_28199.html
2019.06.05 文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役 Business Journal
月崎義幸ジャパンディスプレイ社長記者会見(写真:毎日新聞社/アフロ)
「日の丸液晶」とまでいわれたジャパンディスプレイ(JDI)。ソニー、東芝、日立製作所の液晶事業統合会社となれば、その呼び名も当然である。そのJDIが台湾と中国の企業連合であるSuwaコンソーシアムの傘下に入ると4月に発表され、ショッキングに受け止められた。しかし、その後進展がなく、業界では「(傘下入り合意は)破棄されるのではないか」という憶測が広まった。
5月30日、こうした憶測を払拭するかのように、JDIは「6月14日に台中連合は支援を行うことを機関決定する」と発表した。ひとまずこれで当面の危機は回避したかにみえるが、本当にそうだろうか。
Suwaは、台湾のタッチパネル大手であるTPKと、中国・台湾の投資会社によって構成されている。JDIへの支援決定のネックになっているとみられているのは、中国の投資会社、嘉実基金管理(ハーベスト・ファンド・マネジメント)だ。ハーベストの関係者はJDIとの交渉テーブルに4月中旬からついていないのではないかという話も流れていた。米中貿易摩擦に出口が見えないこともあり「このままではハーベストが米国アップル向けにディスプレイを供給するJDIに出資することは難しいのではないか」と指摘する声には説得力があった。
■そもそも4月に正式合意したのではないか
Suwaからの出資受け入れは4月12日に合意していたはずだが、その後さらに市況が悪化するなか「(支援のための出資は)実行されないのではないか」という憶測が強まり、今回JDI側がSuwaに確認をとり、改めて約束をとりつけたのだ。
ただ、今回JDIが発表したのは「6月14日にSuwaが内部で機関決定を行う」ということだけである。言い換えれば、すでに正式合意はしていたのだが、市況悪化により難色を示しているとされる中国投資会社を含めて、改めてテーブルにつくことになったことを確認しただけともいえる。
6月14日に機関決定をしたら、中台連合各社が臨時株主総会でそれを承認、実際の資金注入は今年末までをメドに実施することとしている。一気に資本が入るわけではなく、実際の資本注入までは目を離せない。
JDIを取り巻く液晶市場の環境は引き続き厳しい。それでも中台連合が契約を破棄しなかったのは、政府系ファンドであるINCJ(旧産業革新機構)からの追加支援が決まったからだ。
JDIは、INCJから追加支援を受けるため、持分法適用会社として運用する有機ELディスプレイメーカー、JOLED(東京都千代田区)の保有する株式すべてをINCJに年内をメドに譲渡することを決めた。JDIは、JOLEDの発行済み株式の27.2%を保有しており、これをすべてINCJに譲渡する。株式譲渡はINCJからのブリッジローン債務200億円および劣後ローン債務246億円の代物弁済というかたちとなり、さらにINCJはJDIへの優先株式の引き受け額も総額750億円から1,020億円に増額する。
こうした支援により、Suwaは交渉テーブルに再びついたわけだが、米中貿易摩擦や液晶市場の悪化などJDIを取り巻く環境が変わったわけではない。「日の丸液晶」を政府系ファンドが必死に支えることで、台中連合から資金を得るという構図である。
■既に財務状況は債務超過寸前
JDIは、19年3月期も最終赤字となった。ついに5期連続である。赤字幅は半減したとはいえ、最終の赤字幅は1,094億円と1,000億円を超える大幅赤字である。赤字続きで今年3月末時点で純資産は70億円余にまで縮小しており、自己資本比率は0.9%となった。前期末で自己資本比率が1%を切るという状況は、足元では債務超過寸前といっていいだろう。
19年3月期の通期業績をみてみると、売上高が対前期比11.3%減の6,366億円となり、経常利益は441億円の赤字(前年は936億円の赤字)、これに主力の白山工場(石川県白山市)などで747億円の減損損失を実施したことなどから、最終では1,094億円の赤字(同2,472億円の赤字)となっている。
前年の18年3月期は事業構造改革費用1,442億円を特別損失で計上したことから大幅欠損だったため、そこから比べると19年3月期の欠損幅は半減しているが、それでも1,000億円を超える最終赤字となった。
JDIは前述のように2012年にソニー、東芝、日立製作所のそれぞれの液晶事業子会社だったソニーモバイルディスプレイ、東芝モバイルディスプレイ、日立ディスプレイズを統合して設立された。
当初は旧産業革新機構が70%、ソニー、東芝、日立製作所がそれぞれ10%出資、従業員数は6,200人という規模でスタートしたが、液晶市場の悪化で近年は赤字経営が続き、さらに昨秋からスマホ市場が一段と冷え込むなか、台湾・中国勢からの資金調達に活路を求めて再出発することになったというのが現状である。
(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)
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