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米中貿易戦争は世界経済を揺るがしかねないレベルまで緊張が高まった
https://diamond.jp/articles/-/203024
2019.5.21 真壁昭夫:法政大学大学院教授 ダイヤモンド・オンライン
ワシントンでの米中通商協議は合意至らず交渉継続となった。劉鶴副首相(左)とロバート・ライトハイザー米国通商代表部(USTR)代表 Photo:REUTERS/AFLO
合意できなかった
米中の閣僚級の貿易協議
5月9〜10日、米国・ワシントンで開催された米中の閣僚級の貿易協議にて、両国は合意することができなかった。両国は交渉が建設的であり協議を継続すると表明しているものの、次回交渉の日程などは決まっていない。今回の交渉で、両国の溝の深さを浮き彫りにする結果となった。
今後の展開について楽観は禁物だ。
当初、合意間近とみられていた閣僚級の交渉が合意に至らなかったことは大きい。今後、米中はトップ同士の会談で妥結を図ることになるだろうが、交渉は一筋縄にはいきそうにない。特に、有力企業に対する政府の補助金の扱いなどは、中国にとって国家資本主義の根幹に関わる問題だ。そう簡単には譲歩するとは思えない。
今回の交渉の経緯の背景には、中国、習近平国家主席の思惑があったとみられる。経済改革を重視する交渉責任者の劉鶴副首相は、米国に妥協案を示し合意にこぎつけたかったとの見方が有力だ。しかし、土壇場になって習近平国家主席は「全責任を取る」として、副首相の譲歩案をひっくり返したようだ。
足元で中国経済が想定以上に減速し国内の不満が高まっているとみられ、習主席が米国に譲歩すると“弱腰”との批判が増える。批判や不満を回避し権力を維持するために、同氏はどうしても、対米交渉で強硬路線を取ることが必要になっているとみられる。
これは、“国家資本主義”を重視し、補助金政策にこだわる中国国内の保守派の主張が、改革派を上回ったことを意味する。中国が、米国の求める補助金の削減などに応じることはできないだろう。
米中貿易戦争には
2つの側面
米中の貿易戦争には、2つの側面がある。
まず、米国は対中貿易赤字を削減したい。トランプ大統領はそれを有権者の支持獲得につなげたいのだ。
2018年、米国の対中製品輸出額は約1200億ドルだった。一方、モノの輸入額は約5400億ドルに達した。数字を見ればわかる通り、制裁関税の発動余地という点では、米国に分がある。中国が同額の報復関税を発動することはできない。
短期的に考えると、米国は対中輸入が多い分、制裁関税という圧力(脅し)をちらつかせ、相対的に有利に交渉を進めることができる。加えて、大統領選挙などの重要政治イベントを控え、米国の政治家が通商問題を持ち出すのは点数稼ぎの常とう手段だ。中国はそうした米国の事情をしっかりと理解し、米国から大豆などを購入することでトランプ大統領に譲歩した。
もう1つ、米中の貿易戦争には、大国同士の“覇権争い”という側面がある。
今後の経済、安全保障などにおいて決定的に重要と考えられるITの先端分野において、中国は競争力の向上を狙っている。中国は産業振興策である“中国製造2025”を推進し、5G通信システム等の分野での世界シェア奪取に向けて、積極的かつ大規模に補助金を支給してきた。補助金は、中国共産党主導による経済運営=国家資本主義の“キモ”だ。
米国にとって、中国は安全保障上の脅威だ。IT先端分野の技術力は、今後の安全保障、軍事力に大きく影響する。シューマー上院院内総務がトランプ大統領に中国に強硬に迫るよう求めるなど、民主党には共和党以上に中国強硬論者がいる。大統領選を控え、民主党は、政権の対中強硬姿勢に関して使えるところは使い、経済への影響など批判する部分は徹底的にたたこうとするだろう。
トランプ大統領は、第4弾の制裁関税の発動準備を進め、中国にさらなる圧力をかけ始めた。その狙いは、早めに対中交渉の落としどころを探ることにある。同氏は、大統領選挙に向けた論戦が本格化する前に米中交渉にめどをつけ、成果を世論に誇示したいはずだ。
中国が譲れない国家資本主義の根幹
=補助金政策
今回の米中交渉の目玉の部分は、中国の産業補助金政策だ。この点に関して、中国は一切譲歩できない。
現在、中国は経済成長の限界に直面している。その中で、習近平国家主席は、社会心理の悪化や党内の不満・批判を抑えたい。補助金政策を通してIT先端分野の成長を加速させ、景気を持ち直させることは、不満の解消に欠かせない。
補助金政策には習主席の政治生命がかかっている。同氏にとって、補助金政策は権力基盤を維持し、強化するために不可欠な手段だ。その考えが強くなったため、習主席は、米国が要求する地方政府の補助金政策の修正をのめなくなった。その結果、交渉を目前に控え、習主席は姿勢を硬化させ、「全責任を取る」との意を固めたようだ。
閣僚級交渉において、経済の開放や市場原理の導入を重視する劉副首相は、トップの考え以外のことを米国に伝えることができなかった。それが、副首相に“特使”の肩書が与えられず、同行人員も絞られた理由だ。
交渉終了後、劉鶴副首相が発言した内容を見ると、共産党指導部の姿勢はかなり強硬だ。
劉氏は米国の制裁関税引き上げに「必ず報復する」と表明した。加えて同氏は、(1)交渉合意後に追加関税を即時撤廃すること、(2)米国からの輸入規模の縮小、(3)協定本文における中国の主権の尊重に関して一切譲歩しないこと、を明確に示した。中でも、中国の尊厳が取り上げられたことは重大な意味を持つ。
それは、「自国の経済運営に口出しするな」という中国から米国への警告だ。
中国の主張をもとに考えると、「交渉が建設的だった」という両国の見解を額面通りに受け止めることは難しい。次回の閣僚級協議の日程も未定だ。米中の対立は深刻だ。
中国にとって、補助金政策の修正を求め、国家資本主義の変革を求める米国の要求は、受け入れられるものではない。習主席にとって、国家資本主義の体制こそが、権力基盤を固め、長期の独裁体制を敷く基礎だ。習主席はそれを手放せない。閣僚級協議を通して、米中の溝が一段と深まったことが確認できる。
懸念される
世界経済・金融市場の先行き
昨年12月の首脳会談にて、米中は貿易戦争を一時休戦した。市場参加者は、「米中の通商問題は事実上の棚上げ状態が続き、そのうちに合意に至るだろう」と楽観を強めた。5月9日と10日の閣僚級協議で米中が合意できなかった後も、市場には先行きへの楽観が漂っている。
ただ、今後の展開を考えると、楽観は禁物だ。
トランプ大統領は、交渉を急ぎたい。中国はそれがわかっているから、時間をかけて交渉に臨み、長期戦に持ち込みたい。表向き、米中は建設的な対話を装うだろう。水面下では双方が互いに脅しをかけあい、どちらが先に手を引くか、見極めたいはずだ。状況は、チキンレース化している。
もし、米国が脅しに屈しない中国にいらだち、第4弾の制裁関税を発動すれば、世界経済には無視できない影響が及ぶ。
IMFは米中双方が全輸入品に25%の関税を適用すると、米国のGDP成長率が0.6ポイント、中国の経済成長率が1.5ポイント落ち込むと試算している。関税による報復の余地が少ない中国が、25%よりも高い関税をかけて米国に応酬することも考えられる。
そうなれば、米中だけでなく、世界経済がさらに傷つくだろう。閣僚級会議の内容を冷静に読み解くと、まったくもって、先行きは楽観できないと思う。
また、米中貿易戦争は、米国の金融政策にもかなりの影響を与えると考えなければならない。それは世界の為替市場を混乱させる恐れがある。
トランプ大統領は点数稼ぎのために株価を上昇させたい。米中の摩擦が激化すれば、米国の株価は下落する可能性が高い。トランプ大統領はFRB(連邦準備制度理事会)に対して、さらに強く利下げなどの金融緩和措置を求めるはずだ。
その結果として、世界経済の先行き懸念と米利下げ観測の高まりから、米金利には低下圧力がかかりやすい。金利差の縮小から、ドルは円などの主要通貨に対して軟調に推移する展開が見込まれる。リスク回避の動きから、新興国市場の不安定感も増すだろう。
米中貿易戦争は、世界の経済と金融市場にとって無視できないリスク要因である。先行きは慎重に考えるべきだ
(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
色々盛り上がってきた。米国と中国の間にいる日本色々チャンスあり。
— Teppei Seki@Terra Drone COO (@Tepstar1107) 2019年5月20日
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