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ZOZO前澤社長肝いりのPB事業、売上目標2千億円に対し現実は17億円…現金流出超過
https://biz-journal.jp/2019/05/post_27954.html
2019.05.19 文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント Business Journal
ZOZO前澤友作社長(AFP/アフロ)
4月25日に開催されたZOZO(ゾゾ)の2019年3月期決算説明会で、前澤友作社長は神妙な面持ちで「今日は話が盛りだくさん」と話を切り出した。そして、19年3月期の振り返りと今期の方針について話を続けた。終始、控え目な態度だったのが印象的だった。
昨年4月27日に開催された18年3月期決算説明会の時とは対照的だったように思う。この時は女優の剛力彩芽さんと交際を始めたことがメディアに大きく取り上げられた時期だったが、前澤社長は壇上で「前日プライベートな情報が少し出てしまいまして、大変お騒がせしました」「公私共々充実しているんだということで見過ごしていただければと」と笑顔で話していた。何もかもが順調に進んでいるかのように見えていた時期で、自信満々の態度が印象的だった。
しかし状況は一変し、19年3月期決算は厳しいものとなった。期初の段階で前期比49.3%増を見込んでいた売上高は、20.3%増の1184億円にとどまった。22.4%増を見込んでいた営業利益は、21.5%減の256億円と一転して減益となった。営業減益は上場以来、初となる。このような状況だったため、控え目な態度だったのかもしれない。
プライベートブランド(PB)商品の不振が足を引っ張った。同社のPB商品は、全身採寸用ボディースーツ「ゾゾスーツ」を着てスマートフォンで撮影して全身を測定し、それをもとに「ぴったりサイズ」の服が買えることを売りとしていた。しかし、需要が少なかったほか、ゾゾスーツの発送が遅延するトラブルなどにより、200億円を見込んでいた19年3月期のPB事業売上高は27億円にとどまった。前澤社長は「ゾゾスーツを着て12回も写真を撮るのは(利用者にとって)ハードルが高かった」と悔やむ。
PBは海外でも苦戦した。そのため、ドイツとアメリカを拠点に行っていた海外向けのPBからは撤退することを決定。それに伴い、固定資産に係る減損損失として9800万円、たな卸資産評価損として6億9100万円、事業整理損失で8億2200万円を計上した。
こうした状況を受け、今期のPB事業売上高の目標を前期比38.5%減となる17億円とした。昨年4月発表の中期経営計画では21年3月期に2000億円という壮大な目標を立てていたが、達成はほぼ不可能な状況だ。事実上の事業縮小で、将来的には撤退もあり得るだろう。
■ARIGATOサービス失敗でゾゾ離れ加速
PB事業に見切りをつけてか、ゾゾは新たに「マルチサイズプラットフォーム(MSP)事業」を始める。アパレル企業と共同で20〜50程度のサイズをそろえる商品を開発し、ゾゾが運営する衣料品通販サイト「ゾゾタウン」で販売するという。セレクトショップのビームスやベイクルーズ、ジーンズのリーバイスなど複数のブランドが参加を表明しているという。MSP事業の今期の売り上げ目標は10億円とした。
何かと話題になった「ZOZOARIGATOメンバーシップ」は5月末をもってサービス提供を終了する。同サービスでは、年間3000円または月500円の会員料を支払うと、ゾゾタウンにおいて常時10%引きで買い物ができる。割引分はゾゾが負担し、利用者は割引された額の一部または全部を、日本赤十字社をはじめとするゾゾ指定の団体の中から選んで寄付することができる「社会貢献型サービス」として展開してきた。
しかし、割引によるブランド価値の低下や自社サイトからの顧客流出を危惧したアパレル大手のオンワードホールディングスなど一部の企業が反発、出品停止が相次ぐ事態となった。こうした状況を受け、値引き前の通常価格や値引き後の価格などサイト上に表示する価格を出店企業が選べるようにするなどして配慮を示し、事態の沈静化を図った。
だが、こうした対応も実らず、昨年末のサービス開始からわずか5カ月でサービス終了に追い込まれた。出品停止が相次ぐなど出店企業からの評価が低かったことに加え、「費用対効果が悪かった」(前澤社長)ことがサービス終了の引き金となった。
ARIGATOサービスの影響を受けた19年3月期の第4四半期に関して、同サービスの値引き額を控除する前の金額である商品取扱高は前年同期比19.8%増と前年同期の14.9%増からはわずかに伸びたものの、同値引きを控除した後の売上高は前年同期比4.0%増と前年同期の21.2%増と比べて大きく伸びが鈍化した。一方、営業利益は売上高が伸び悩んだことに加えてPBの評価損などが影響し、前期比44.9%減と大幅に減少した。
ARIGATOサービスが大きく影響し、出店ショップ数が減少に転じたことも見逃せない。19年3月期の第3四半期までは増加が続いていたが、第4四半期は前四半期と比べて10ショップ少ない1245ショップに落ち込んだ。同サービスに端を発した「ゾゾ離れ」が数字として如実に現れた格好となった。
ARIGATOサービスでの失敗を教訓に、今後は出店企業との「共創・共有・共感」を大切にしていくという。前出のMSP事業がその最たるものだろう。ほかに、出店企業の通販サイトを支援するサービスで一定の条件で手数料を無料化することなどを打ち出した。出店企業に配慮を示し、ゾゾ離れを食い止めたい考えだ。
■回復傾向も、まだ予断を許さない
今期の業績予想は、商品取扱高が前期比13.6%増の3670億円、売上高は14.9%増の1360億円、営業利益が24.7%増の320億円とした。PBの評価損などが減るため、純利益は40.8%増の225億円を見込む。
決算発表日と同日、前澤社長は中止していたツイッターの投稿を再開した。業績の下方修正を余儀なくされるなどで雲行きが怪しくなった2月上旬、前澤氏は本業に集中することを理由にツイッターの投稿を中止していた。再開後の投稿では今期の業績見通しについても触れている。「信頼を取り戻せるよう、また期待に応えられるよう、今期も集中して頑張る」と記し、目標達成への意気込みを示している。
だが、予断を許さない。ゾゾの稼ぐ力は衰えている。19年3月期の営業活動で稼いだ資金の変動を示す「営業キャッシュフロー(CF)」は148億円と前期と比べて50億円少ない。投資に投じた資金の変動を示す「投資CF」は前期と比べて20億円少ない61億円と投資面での資金流出は抑えられているが、営業CFのマイナス幅のほうが大きく、営業CFから投資CFを差し引いた「フリーキャッシュフロー(純現金収支=FCF)」は前期より29億円少ない86億円にとどまっている。また、資金の調達や返済など財務活動における資金の変動を示す「財務CF」は、前期より28億円多い120億円だった。
19年3月期は流入する資金よりも流出する資金のほうが多かったため、現預金は減少となった。19年2月末時点で215億円と1年前から30億円減っている。危機的水準にあった昨年末時点の82億円からは増えているが、今後また減らないとも限らない。予断を許さないだろう。
ゾゾはPB事業を縮小し、新たに始めるMSP事業などで巻き返しを狙う。だが、新たに始める事業はどれも小粒の感が否めない。大きな収益の柱に育つかは疑問を覚えざるを得ない。視界不良はまだまだ続きそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。
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— biz-journal (@biz_journal) 2019年5月18日
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