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中国経済、自業自得で窒息寸前…米国、中国からの全輸出品に制裁関税を検討
https://biz-journal.jp/2019/05/post_27892.html
2019.05.14 文=渡邉哲也/経済評論家 Business Journal
米国のドナルド・トランプ大統領(写真:AP/アフロ)
中国が米国の追加関税引き上げに対して、600億ドル相当の米国製品の関税を5〜10%から最大25%に引き上げる報復措置を取ることを発表した。これは、米国が2000億ドル分の中国製品に対する追加関税を10%から25%に引き上げたことを受けての報復関税で、6月1日に発動するという。
米国が強硬姿勢に出たことで、中国も対抗せざるを得ないという事情はよくわかる。しかし、600億ドル分の内訳を見ると、中国の厳しい現状が浮き彫りになっている。報復措置の対象となるのは5140品目。液化天然ガスや大豆、落花生油、石油化学製品、冷凍野菜、化粧品など2493品目に対する追加関税は25%に、そのほかの1078品目は20%となる一方で、原油や大型航空機などは追加関税の対象外だという。
関税が上がる製品のほぼすべてが生活必需品であり、代替手段が取りづらいものである。そのため、関税引き上げは中国の消費者物価を直撃することになる可能性が高く、メンツを重視した中国は自分で自分の首を絞めることになりかねない。また、この動きを見て、企業の投資計画などが変更される可能性も高く、サプライチェーンの切り替えが進むものと思われる。
■米国は対中輸出の規制を強化
また、米国による対中輸出の規制も強化され始めている。米商務省は、中国企業6社、パキスタン企業1社、アラブ首長国連邦(UAE)が本拠の企業5社による、米国からのハイテク製品などの輸出を禁止したことを5月13日に発表した。同省によると、中国企業のうち4社は、米国の輸出規制に違反するかたちでイランの大量破壊兵器と軍事プログラムに転用可能な米国のコモディティを調達しようとした疑いがあり、ほか2社は制限されている技術の輸出に関与し、中国人民解放軍の関係団体に供与した疑いがあるという。
さらに、近いうちに米国輸出管理改革法(ECRA)も発動すると見られている。これは昨夏に米国防権限法に盛り込まれて成立した新法であり、米国の安全保障にとって必要な新興技術や基盤技術を輸出規制の対象とすることなどを定めたものだ。これまでも兵器転用可能な技術に関しては規制が設けられていたが、それに「バイオテクノロジー」「人工知能および機械学習技術」「測位技術」など14分野が新たに加えられた。これは、習近平国家主席が掲げる「中国製造2025」に指定されている分野とほぼ同じであり、中国に対する強烈な牽制といえる。
また、この分野や品目は今後も対象が拡大すると思われ、米国は先端技術に関しても、国家の安全保障にかかわるものとして「中国に渡さない」という意思を明確にしている。かつて、主に旧ソ連をターゲットにした対共産圏輸出統制委員会(COCOM)という規制があったが、ECRAは中国を狙い撃ちにした現代版COCOMといえる。これは日本にとっても他人事ではなく、そのため今後は中国向け全般の投資と輸出計画の変更を余儀なくされるケースが増えるだろう。
加えて、米通商代表部(USTR)は対中関税の「第4弾」として、3805品目3000億ドル分の中国製品に対し、最大25%の上乗せを検討することを発表した。従来は対象外だったスマートフォンなども含まれ、中国からの輸入品のほぼすべてに制裁関税が発動されることになる。品目や税率は6月の公聴会を経て調整される可能性があるが、いずれにせよ、ここ数日の進展で米中貿易戦争の落としどころはさらに難しくなったといえる。
ちなみに、「中国は最後の手段として保有する米国債を売ればいい」などという主張も見かけるが、それは現実的ではない。まず、中国の外貨準備には国有銀行保有分も含まれている。中国の国有銀行の対外債務は1.6兆ドル(3カ月以内の短期1.1兆ドル)で、米国債は1.1兆ドルとなっている。つまり、ドルだけで見れば債務超過の状態であり、米国債を売れば国有銀行が破綻するという構図になっているからだ。
また、米国はその気になれば米国債の売買そのものを無効化することもできる。米国は国際緊急経済権限法(IEEPA)や米国自由法により、米国の安全保障に重要な影響を与えると判断される経済活動を制限することができ、その対象となる資産を凍結することなどもできるためだ。さらに、現在の米国債は債券の現物がなく、米財務省に登録されている電子データにすぎないため、中国が不穏な動きを見せれば、米国側はボタンひとつで無効化することも可能である。
これらの事情に鑑みても、やはり中国のほうが分が悪いといわざるを得ないが、果たして対立の着地点は見つかるのだろうか。
(文=渡邉哲也/経済評論家)
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