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消費税率“混在”で個人商店の廃業ラッシュか…企業と国民に多大な負担強いて大混乱
https://biz-journal.jp/2019/05/post_27803.html
2019.05.09 文=小川裕夫/フリーランスライター Business Journal
「Gettyimages」より
消費税10%への増税が目前に迫ってきた。生活に不可欠な食品類などは、現行の税率8%のまま据え置かれる。しかし、同じ食料品でも外食と見なされれば10%の税率が適用される。そのため、コンビニエンスストアやスーパー、ファミリーレストランやファストフード店などが消費税10%に神経をとがらせている。生活必需品としての食料品なのか、贅沢品としての外食なのかの線引きは不可能に近い。
コンビニなどのイートインコーナーをめぐる議論を見ても、それは実感できるだろう。イートインで食べる場合は外食扱いで消費税は10%、買って帰る場合は8%に決められた。しかし、コンビニの店舗外に設置されたベンチで食べる場合はどちらの扱いになるのか。またコンビニ店舗に隣接して公園があり、そこで食べる場合はどうか、といった議論は尽きない。
たとえば、ピザやラーメンの宅配は、自宅や友人宅などで食べることが前提になっているので消費税は8%。しかし、ホテルのケータリングサービスや会場に料理を届ける場合は外食扱いになるため、消費税は10%が適用される。しかし、学校の給食や高齢者施設における食事サービスは、8%据え置きのまま。8%と10%の線引きは、曖昧といわざるを得ず、それが混乱を大きくしている。
こうした8%と10%が混在する状況に頭を痛めているのが、個人経営の商店主たちだ。チェーンを展開する大手企業には経理の専門部署があり、教育を受けたスタッフが会計処理をしてくれるだろう。しかし、身内で切り盛りしているような個人経営店には経理専任スタッフを雇う余裕はない。教育を施す資金的余裕も時間的余裕もなく、消費税率が混在する状況に戦々恐々としている。
そして、その皺寄せは役所にも及ぶ。市町村には地域の商店、商店街・商工会との窓口になる商工課や地域振興課といった部署がある。そうした部署には、多くの相談が寄せられているのだ。ある市の職員は言う。
「消費税が10%に上がることも、個人店にとっては経営を揺るがす一大事です。それ以上に8%と10%が並立することによる混乱のほうが、個人経営店にとっては大きいと実感しています。特に、個人店の多くは高齢者が経営しているケースが多い。そうした高齢経営者は無理に営業を続けるよりも、『遠くない将来に店を閉めるのだったら、これを機に廃業してしまおうか』と考えがちです」
東京の商店街には活気があり、地方と比較すれば個人経営店が多く生き残っているといわれるが、そんな東京でも少しずつ空き家が目立ち始めている。商店街では事業承継が深刻な課題になっており、シャッターを下ろしたままの個人経営店は増加傾向にある。消費税10%と軽減税率の導入が、進退を迷っている個人経営店にトドメを刺す可能性は否定できない。
「今、政府はキャッシュレス化に取り組めと旗を振っています。消費税が10%と軽減税率の混乱だけでも、現場はてんやわんや。キャッシュレス化の推進で混乱に拍車がかかったら、もう現場は収拾がつきません」(同)
■消費者も混乱必至
8%と10%が混在することで、混乱するのは商店主ばかりではない。買い物をする私たち消費者も同じように混乱に陥ることは必至だ。
家に持ち帰る食料品でも、8%と10%の商品が混在している。たとえば煮物などに使用するみりんは酒税法が適用される調味料のため、消費税は10%。同じく、ノンアルコールビールはアルコール含有量がゼロであっても酒税法の対象商品なので、これも消費税は10%になる。栄養ドリンクも複雑で、医薬品や医薬部外品は消費税10%、それ以外は8%。食料品は8%といっても、家事代行サービスのスタッフによる食事提供の場合はケータリングと同じ扱いになるので、10%の消費税が課せられる。こうした線引きを正確に把握できる消費者は、ほぼ皆無だろう。
どうして、こんなややこしい軽減税率というシステムを導入するのか。消費税率が10%へと移行することが決められた際、庶民の負担を緩和する手立てとして軽減税率の導入が議論された。政界では、特に公明党が軽減税率の導入を強力に推進しており、自民党などへ強く働きかけてきた業界団体も少なくない。軽減税率の対象にはならなかったが、自動車業界・住宅業界などは減税という勝利の果実をもぎとった。また、食品関連でも軽減税率の対象外とされた団体は、今後も水面下で積極的に働きかけを続け、軽減税率の対象になろうとするだろう。
消費税率が8%から10%に引き上げられることを喜ぶ納税者は少数だろう。軽減税率の導入で、多少は金銭的な出費は和らぐかもしれないが、それと引き換えにして、私たち一般庶民に気の遠くなるような量の作業負担が押しつけられる。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)
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