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日本の造船業、世界市場で消滅危機…国による設備縮小指導、韓国勢の市場独占許す
https://biz-journal.jp/2019/05/post_27784.html
2019.05.08 文=編集部 Business Journal 「Gettyimages」より 日韓通商摩擦が韓国の造船再編の後押しをした。日本政府は2018年秋、韓国政府が経営悪化した大宇造船海洋に約1兆2000億円の公的支援するのは、国際的な貿易協定に違反しているとして、世界貿易機関(WTO)へ2国間協議を要請した。造船業界は船舶の供給過剰問題に頭を悩ませている。 韓国政府による公的支援が安価な受注につながり市場価格をゆがめているとして、日本政府は是正を求めてきた。しかし韓国政府は「これらの措置は政府の介入によるものではない」の一点張り。あくまで韓国産業銀行と大字造船の両社が決めたこととして、韓国政府の関与を否定しているが、説得力には乏しい。業を煮やした日本政府がWTOの2国間協議に持ち込んだ。 日本側は支援措置の早期撤廃を求めたが、韓国政府は協議に応じず決裂。日本政府はWTOに小委員会(裁判の第一審に相当)の設置を求め、1年半から2年かけて争っていくことになる。新日鐵住金(現・日本製鉄)に元徴用工への損害賠償を命じた韓国大法院(最高裁)判決に続く、新たな日韓通商摩擦だ。 韓国政府は日本政府に対する意趣返しとして、国内造船業の再編を打ち出した。世界最大手の現代重工と同3位の大宇造船海洋が3月、経営統合で合意した。計画では、現代重工グループの持ち株会社が新会社を設立し、大宇造船の株式約56%を保有する政府系金融機関の韓国産業銀行が新会社に大宇造船株を譲渡。代わりに新会社の株式を受け取る。さらに大宇造船が実施する第三者割当増資を新会社が引き受け、新会社が約68%の大宇造船株を握ることになる。 国土交通省がまとめた世界の建造量シェア(17年)によると、現代重工業が15.6%で首位。2位が韓国サムスン重工業の7.3%。3位が大宇造船海洋で7.3%。現代重工による大宇造船の買収によりシェアは22.9%に高まる。2000年以降、最大手が20%以上の世界シェアを持つことはなかったが、文字通り“巨艦”の誕生である。 日本勢は、今治造船がシェア5.8%で4位。ジャパンマリンユナイテッド(JMU)が3.2%で6位と韓国勢の後塵を拝している。 ■韓国勢に市場を奪われた日本の造船業 1990年代半ばまで30年強にわたって日本が世界の造船市場の主役を務めた。まさに“造船王国ニッポン”だったが、韓国勢が追い上げてきた。日本勢が国の指導で設備を縮小するなか、韓国側は90年代後半から大々的に設備を拡張。安値受注で日本勢を駆逐し、一気に市場を奪っていった。 たとえば、採算の合わない安値での船舶受注を繰り返し、経営難に陥った大宇造船に対し、公的金融機関の韓国産業銀行が2015年、1兆2000億円の大規模な金融支援を実施した。この金融支援で債務を圧縮した大宇造船を、今回、現代重工に買収させたわけだが、韓国政府には2つの狙いがある。一つは大宇造船という長年の懸案を処理すること。もう一つは、日本政府が大宇造船への公的支援に異議を唱えていたが、大字を消滅させてその批判を封じ込めるためである。 造船の花形は、1隻当たりの船価が200億円程度と高く技術的にも難しい液化天然ガス(LNG)運搬船だ。かつて日本勢の十八番だったが、16年以降は1隻も受注していない。 「韓国の業界関係者によると、日本勢が成長の柱に掲げる単価の高い液化天然ガス(LNG)運搬船は、19年年始の受注残が現代重工と大宇海洋の2社で世界の約6割(72隻)を占める」(3月9日付日本経済新聞より) LPG運搬船はサムスン重工業を含めた韓国勢の独壇場となっているのだ。 中国も負けてはいない。傘下に多くの造船所を抱える国有の2大メーカー、中国船舶重工集団(CSIC)と中国船舶工業集団(CSSC)の統合がささやかれている。実現すれば、世界2位に躍進する。中国勢はタンカー船やバルク船(鉄鉱石や石炭など輸送するバラ積み船)で世界トップだ。 一方、日本は韓国や中国で進む造船再編から取り残されてしまった。JFEホールディングス傘下だった旧ユニバーサル造船とIHIの造船部門が13年に統合しJMUが誕生して以降、大掛かりな再編は起きていない。 国内の最大手の今治造船とJMUの2社がリードしている。全国に6カ所の造船所を抱え高コスト体質の改善に懸命なJMUと、主力のLNG船を1隻も受注できていない三菱重工は追い込まれている。三菱重工とJMUの母体企業であるJFEとIHIは、トンネル掘削事業を16年に統合している。今後、造船事業で三菱重工がJMUに合流することは十分にあり得る。 国内大手2社と距離を置く川崎重工や三井E&Sホールディングス(旧・三井造船)の動きも焦点だ。川崎重工と三井造船は13年に統合寸前までいったが、川崎重工の社内のクーデターで破談になった経緯がある。 中韓両国の攻勢で日本勢はグローバルな競争の土俵から姿を消そうとしている。JMUを核に大同団結する日が来るのだろうか。 (文=編集部)
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