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老後に死ぬまで好きな趣味を、思う存分楽しむための“お金の貯め方”
https://biz-journal.jp/2019/05/post_27774.html
2019.05.05 文=山崎俊輔/フィナンシャル・ウィズダム代表 Business Journal
「gettyimages」より
■予算を管理できないからこそ趣味なのだ、と趣味人は豪語するが、それでいいの?
いきなりですが、私はオタクです。アニメもマンガもゲームも好きで、どんなに少なく見積もっても、1000万円以上はこの世界にお金を払ってきました(月3〜4万円くらいを22歳以降はずっと使っていて、学生時分も月1万円は使っていたので、累計すると1000万円は軽く超えるという計算)。
今回、自分でも概算してみてちょっとギョッとしましたが、特に後悔はしていません。むしろ新しいマンガを読んだときの幸福感といったら、たまらないものがあります(特に新人のすごいマンガをみつけたときの高揚感といったら!)。新作アニメも何年かに一度「これはすごい!」という作品をみつけられれば、十分元が取れていると思ってます。
しかし、私はファイナンシャルプランナーでもあります。お金の専門家と名乗っている以上、オタクのお金の使い方についても語らなくてはなりません。
趣味にどっぷりハマった人は、「予算のリミッターを振り切ってようやく趣味人といえる」とうそぶきます。使いすぎの予算の言い訳なのですが、そこまでハマっているのかと感心され、趣味の世界では褒め言葉をもらうこともありますが、やはりこれはマネープランの観点では間違っていると思います。
今回は、しっかり趣味と向き合いながら趣味に関するお金の問題を考えるヒントを紹介しましょう。
■趣味にかけている予算を把握し、コントロールするクセをつけよう
「趣味は無駄遣い!」として断じて、コレクションを売って笑い飛ばしたり、趣味の予算を認めないような人がいますが、私は反対です。趣味は大いに楽しんでもいい、というのが私のオタクFPとしての基本スタンスです。
ただし、趣味にかけるお金はそれなりのコントロールが必要です。まず大前提としては、「収入を上回る支出にならないよう趣味予算はコントロールされなければいけない」ということです。
あなたがどんなにハマっている趣味があったとしても、そしてそれが金のかかる趣味だったとしても、自分の稼ぎと貯蓄を超えての出費だけはいけません。これは借金をつくるだけであり、早晩あなたの人生は詰みます。
カネがかかる趣味なら何カ月かガマンして貯めて買うというように、予算管理をしなければいけません。
そして「(手取りの収入)>(生活費+趣味予算)」の範囲に必ず収めなければいけませんし、むしろその状態を維持し、「趣味以外」のお金のやりくりも健全にしていく必要があります。
ただし趣味人の選択肢としては「生活費+趣味予算」の合計でやりくりすればいいわけですから、趣味予算を増やしたいなら、生活費を下げる、という方法が残されています。
趣味に金はじゃんじゃん使うけれど、服はユニクロでほとんどまかなう(といってもうまくやればユニクロだけでも結構オシャレな格好はできる)とか、食費については徹底的に節約して閉店直前のスーパーと仲良しになるとか、そういうバランス感覚を持つことが大事です。
また、長い目でみれば貯蓄癖をつけておくことも重要です。「え、オタクなのに、なんで貯金なんかしなくちゃいかんの?」と思うかもしれませんが、実は貯金をすることはあなたのオタク道を一生続けるための布石なのです。
■人生は「貯金ゼロ」では成り立たない
20代から30代前半にかけては、貯金ゼロでも生きていくことができます。ボーナスで過去半年分のマイナスをリセットするようなやりかたもできるでしょう。しかし、貯金ゼロで人生を最後までクリアしていくことは不可能です。
それは結婚しても、おひとりさまの人生でも同じです。例えば、あなたはどこかで家を確保する必要がありますが、頭金ゼロで家を買うのは将来に苦しいローンを残す可能性が高いでしょう。頭金を用意するということはつまり、貯金をする、ということです。
また、結婚して子どもができれば、子どもを卒業させるまでのお金を趣味より先に負担しなければいけませんが、これも高校と大学の学費だけで約1000万円かかり、全部を奨学金にして子どもに背負わせるわけにはいきませんから、計画的に半分以上を貯めておく必要があります。
そして、あなたの人生の最後にやってくるセカンドライフです。あなたが平日の夜に毎日2時間くらい、週末は毎日15時間くらい趣味に没頭したとしても、22歳から65歳で使う時間は合計でおよそだいたい9万時間です。
しかし、65歳から老後の生活をスタートし毎日15時間を25年使えるとしたら、なんと自由時間の合計は13.7万時間になります。
老後のほうが自由に使える時間は多くなりますから、趣味人ほど楽しみがありますが、そのとき「オタク趣味に使えるお金」があるかどうかは別問題です。
国の年金でオタク出費がまかなえるはずがありませんから、自分で貯めておかなければならないのです。
■生涯オタクであり続けたいなら、オタクこそお金を貯め増やそう
現役時代、月4万円趣味に使っていた人なら、引退後フルに趣味に没頭すれば月8〜12万円以上欲しくなってもおかしくありません。しかし、老後が長期化している現在、25年(65歳から90歳まで)の趣味予算に置き換えると、これは「2400〜3600万円」にも膨れ上がります。
よく「老後に3000万円必要」といいますが、これは生活費のちょっとした不足の穴埋め、長寿リスクや病気、ケガに備える予算も含まれています。つまり、オタクはもっと上積みが必要ともいえます。
さすがに全額を揃えられなくても、貯蓄をがんばった人ほど老後のたっぷりある時間は、バラ色の楽しい時間と化すことは間違いありません。
何せ仕事には行かなくていいですから、やりたいゲームを好きなだけログインしていいですし、徹夜して海外のゲーマーと遊んでも誰も文句をいいません。むしろゲームは知覚を鈍らせないものとして推奨される世の中になっているかもしれません。
クリアし損ねていた往年の名作ゲームをのんびりやるもよし、新作ゲームを若い世代と共に競い合う手もあるでしょう。アニメもためまくっているウォッチリストを片っ端から片付けても、時間はあり余っています。
むしろ最後の課題は「予算があるか」です。お金がほとんど必要にならないのは、地元の郷土史家くらいです。地域の古老の話を聞いたり、図書館に通って郷土史を読むだけですむので、郷土史家はローコストの老後の趣味になりますが、みんなが郷土史家になるはずはありません。
やっぱり趣味を楽しむというのは、お金が必要です。あなたが旅を楽しむ人であったり、お布施をどんどん入れることに幸せを感じているなら軍資金がなければ、その趣味は維持できません。そして軍資金がないことは「オタクとしての死」になってしまうわけです。
ここまで力説していることは、みなさんが「死ぬまで趣味を楽しむ」「生涯オタク」であるために欠かせないことなのです。
■たとえば、このペースでオタク軍資金を1450万円確保してみよう
あなたがもし、本気で老後に備えてもいいと考えるなら、毎月2.3万円を節約してiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入するといいでしょう。
35歳で加入し65歳まで積み立てると(現状では積立は60歳までですが、法律改正が近く予定されているのであえて65歳まで積立できるものとして試算します)、30年の積立期間が得られます。
iDeCoは働き方によって積み立て額の上限が異なりますが、企業年金のない会社員であったとして、月2.3万円の上限をフル活用したとすれば、30年後の元本は822万円です(口座管理手数料として月167円を控除)。
ちなみにiDeCoの掛金には所得税・住民税がかかっていないので、普通の手取りの感覚的には1万8400円を積み立てたのに、本来引かれるはずの3600円が上乗せされて2万3000円になっている、という感じです(実効税率が掛金の20%相当だった場合)。制度に加入して積立をするだけで、月4600円の30年分、人生を通じて165.6万円も税金を納めないですみ(合法的に!)、それを自分の老後のオタク資金とできるわけですから、これは相当お得な貯め方です。
さらに、年3.5%で運用(実績)とすると、30年後の受け取り額は1450万円まで増えます。本来なら運用益には約20%の税金がかかり、3.5%の運用成績も手元に残るのは2.8%の利回りになってしまいます。しかしiDeCoは運用益が非課税なので、さらに有利にお金を増やせるわけです。
会社の退職金にiDeCoを追加すれば老後のオタク軍資金もそれなりに確保できるでしょう。つみたてNISA(年40万円)も使えるとなお効果的です。
iDeCoの解説本はたくさんありますが「あなたのオタクの老後のためにこれを使え」とはどこにも書かれていません。しかし老後になんの目的で使おうと自由です。
「生涯一オタ」として死ぬまで趣味を楽しむために、「今月のオタク出費」を少しセーブし、備えてみてはどうでしょうか。
これも立派なマネープランなのです。
(文=山崎俊輔/フィナンシャル・ウィズダム代表)
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