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日本人ビジネスマンは、決まった仕事をこなすだけの「レイバー」へ退化していないか
https://diamond.jp/articles/-/201078
2019.4.29 校條 浩:ネットサービス・ベンチャーズ・マネージングパートナー ダイヤモンド・オンライン
学生も企業も、新卒採用で人生が決まるという考えは捨てるべきだ。それよりも楠木建教授の言うように「やりたいことをやる」という意識を持つべきだ 写真:森田直樹/アフロ
先日、「NHK就活生応援キャンペーン」というテレビ番組を見た。企業の人事担当者が、「就職試験での問題の意図は何か」「企業はどんな人物を求めているか」などを、懇切丁寧に解説する内容だった。
新聞や雑誌での新卒採用特集などの記事を読んでみると、多くの企業で求められている人材とは、夢や志を持ち、挑戦と変革により新たな価値を創造して未来を切り開き、世界で戦えるイノベーターなのだという。こんな人材がいたら私がすぐに採用したいくらいだが、見つけるのは竿竹で星を打つほど難しいだろう。
日本にある、新卒採用に対して、学生も企業も極端なほど重視する「新卒採用信奉主義」ともいえる風潮は、最初の就職で人生が決まってしまうという考えが根強く残っていることが背景にある。そのため就職ではなく「就社」といった考え方をする。「就職は大切な25歳までの選択だ」と唱えている有識者もいた。
確かに、高度成長期での終身雇用であれば、最初に就職した企業で人生が決まっていたかもしれない。それに経済が成長していたため、どの会社に入社しても人生は何とかなった。就職に勝ち組も負け組もあまりなかったのである。
しかし、今は違う。高度成長は遠く過去のものとなり、各企業は生き残りが課題となった。だからこそ、学生にとっては安定した会社に就職することが、勝ち組になる鍵だと思うのだろう。しかし、産業が大きく転換する過程にある現在は、残念ながら将来が見通せる安定した会社などない。シャープや東芝の例を見れば、誰もが納得するだろう。
われわれは優良企業でさえどうなるか分からない時代にいる。終身雇用や年功序列が成り立たないことは明白で、いよいよ「就社」の発想は捨てるべきだ。
レイバーとワーカーの違い
一橋大学大学院教授の楠木建氏の著書『好きなようにしてください』(ダイヤモンド社)には、日本の新卒採用や雇用について違和感を覚える者にとって、膝を打つ内容がふんだんに盛り込まれている。
例えば、どの会社に就職するかで運命が決まり、「勝ち組、負け組」との思考は、置かれた会社の環境により自己が形成されるという間違った考えだと述べている。つまり、環境に多少は影響されるにしても、本人の本質は変わらないといっているのだ。
加えて楠木教授は、仕事は自分のやりたいことをやればよいと述べている。仕事の選択が良かったかどうかは実際に働いてみないと分からない。だから、向いてないとなれば次に行けばいいだけの話だと喝破している。
まったくその通りだと思うのだが、先のNHKの番組では「学生にとって就活は人生を大きく左右する一方で、大卒者の約3割が3年以内に離職し、企業とのミスマッチも指摘されています」と問題視していた。この懸念は、一般社会の通念を代表していると考えていいだろう。つまり、楠木教授の「離職は好きにすべし」と一般社会の「離職は問題だ」という主張は真っ向から対立しているのだ。これは、NHKはじめ日本では働く人を十把一絡げで考えていることが理由だろう。
これに異を唱える説を楠木教授が著書で述べているので、そこからひもといてみよう。
命令されたことを忠実に実行するのが労役であり、「レイバー」(labor)と呼ばれる。それが、産業革命を経て20世紀になって進化したのが「ワーク」(work)の概念だ。何らかのスキルを労働市場に提供して対価を得る。ワークには自由意思による相互の契約があり、職業選択の自由もあるのがレイバーと違うところだ。
さらに先に「プレイ」(play)がある。余人をもって替え難い独自のセンス、能力が求められる仕事だ。「プレイヤー」は、プロスポーツ選手や音楽家を考えれば分かりやすいが、ベンチャー企業の創業者や研究者、技術者などわれわれの周りにもたくさんおり、特定分野に収まらない。経営者もワークよりもプレイだという。
仕事の違いをこのように理解すると、先の就社により人生が決まるという考え方は、レイバーに近い。すなわち日本では、特定の会社にレイバーとして入社し、経験を積む中でワークができるように成長していくことが期待されているともいえるのだ。就職試験に臨む学生も企業の採用担当者たちも、将来、果敢に挑戦する「ワーカー」に成長するかもしれないレイバーの選定のために会しているわけだ。
変革やイノベーションが求められている現代の企業には、プレイヤーが求められている。既成概念を打ち破り、新たな価値を見いだすには高度なスキル、自立した精神と失敗を厭わないプロ根性が必要だ。レイバーはもとより、決まった仕事に打ち込むワーカーでは物足りないのである。
プレイヤーが生まれ始めた
ところが、現実はプレイヤーどころか、仕事がワークではなくレイバーに逆戻りしている。
IT産業はその典型だ。システム開発を請け負うIT企業は、その実行を下請け企業に依頼する慣行があり、下請け企業では多くの技術者が納期に追われレイバーとして働いている。
世界中で高度な知識を持つIT技術者が求められているのに、日本ではレイバーとして働かされるため、日本の学生の間ではIT関係の専攻や仕事は人気がなくなってきていると聞く。米国や中国でIT関係の人気が高いのとは対照的だ。
それでも最近、シリコンバレーには光が差し込んでいる。ここ数年、シリコンバレーに進出した日本企業の駐在員は自社の新規事業や企業変革のヒントを探ろうと活発に動き始めている。まだほとんどがワーカー発想で、「情報収集して本社に報告する」ことにとどまっているが、その中から新たな事業をつくり出すプレイヤーが生まれようとしているのだ。
NHKは、就活生だけではなく、シリコンバレーでのプレイヤーに目を向けて、真に日本に必要な人材はどのような志を持った人なのかを考えさせるような番組を制作してほしいものだ。
*「週刊ダイヤモンド」2019年3月30日号より転載。「シリコンバレーの流儀」は隔週連載です。
日本人ビジネスマンは、決まった仕事をこなすだけの「レイバー」へ退化していないか https://t.co/kwMWi2u53V いや、まさしく退化したんだと思います。日本の頂点は高度経済成長期だったのであって、バブル期からすでに退化は始まっていたんだと思います。
— こまきち (@mukasimatiaruki) 2019年4月28日
劣悪な開発環境しか提供せず、人をコストとしてしか見ていないところでは「レイバー」にならざるを得ない、って感じてる。
— オクダ テツジ (@pedalclecle) 2019年4月29日
日本人ビジネスマンは、決まった仕事をこなすだけの「レイバー」へ退化していないか(ダイヤモンド・オンライン)
-Yahoo!ニュース https://t.co/vlz0j8AiG9 @YahooNewsTopics
プレイヤー:余人を持って変えがたいプロのことを言っている。いい響きだ。
— とらひこ@おっさん (@chitokarano) 2019年4月29日
日本人ビジネスマンは、決まった仕事をこなすだけの「レイバー」へ退化していないか(ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース https://t.co/ZxqnAbzHr6 @YahooNewsTopics
考えている様で、実は何も考えてない人がいっぱいいる。 / 日本人ビジネスマンは、決まった仕事をこなすだけの「レイバー」へ退化していないか (Diamond Online) #NewsPicks https://t.co/uvAZImbpga
— Takuya Tada(多田拓弥) (@4Crusaders4) 2019年4月29日
会社を選ぶ視点として、主体的なキャリアパスが描ける事は重要だと思う。
— Okuken | コンサルファーム【データサイエンス×量子物理×留学🇺🇸】✈ 🌏 (@CantOkuyama) 2019年4月29日
採用するのは会社でも、キャリアの責任は自分自身にある。
以前「面接でやりたい事を話したら落とす」という会社の話を聞いたことがあ... #NewsPicks https://t.co/asE4I7SPPP
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