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落日のニッポン、「データ駆動型社会」でよみがえるか
宮田 裕章
慶応義塾大学 教授
2019年4月15日
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時代はこれから激変する――。
そんな予感は誰しも抱く。「いや、既に大変化の真っ最中だ」と見る向きだってあろう。
では来るべき次代とは、果たしてどんな姿をしているのか。
データがあらゆるものごとのベースとなる、「データ駆動型」の社会である。
そう見立てるのが、慶応大学医学部の宮田裕章教授だ。
現状を鑑みるに、データ・ドリブン社会が加速していくのは間違いないとする。どういうことか。
これは未来予測というより、既にそこにあるものを虚心に見れば導き出せることです。
20世紀を振り返ってみましょう。社会のあらゆる面で、文字通り「動力」となっていたのは、燃料や原料としての石油でした。21世紀に入ると、状況が一変します。社会を動かす原動力は、物質を伴わないデータという存在に取って代わったのです。
変遷をよく示しているのは、石油とデータのそれぞれを担う企業の時価総額です。
世界の石油メジャーの時価総額は、長らくほかの分野を圧倒していましたが、2010年代に王座から陥落します。
データを扱うメジャーであるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムという、いわゆる「GAFA」4社の時価総額が、石油メジャーの総額をあっさり抜き去りました。現在ではさらに、数倍の差がついてしまっています。
データこそ「21世紀の石油」であることは明らかです。データを軸に様々な価値が生み出され、データが世界を駆動させる時代は、既に到来しているといっていいでしょう。
この流れに、日本は乗り遅れてしまったというのが実情です。
データ駆動型社会の中心的なプレーヤーは既に上位が固まっており、世界には3つの「極」ができています。「米国」「中国」、そして「EU(欧州連合)」です。
米国では、先に挙げたGAFAが世界を席巻しているのはご承知の通り。その中でも成長著しいのはアマゾン・ドット・コムで、子会社のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)で知られるクラウドビジネスの伸びによるものです。この分野で米国企業のシェアは圧倒的です。先を見据えての投資が功を奏した結果でしょう。
中国は、国家と企業が一体となってビッグデータを徹底的に集め、活用し始めています。
国家に情報を一元管理される危うさはありますが、注目すべきデータ活用法も芽吹いています。アリババ集団など巨大企業のサービスとして展開されている、「芝麻(ゴマ)信用」という社会信用スコアです。
社会的にプラスとなる善行をするとポイントが付与され、逆ならば減らされる。個人の信用が可視化・共有され、ポイントの多寡が子どもの進学など個々人の生活に影響を及ぼす。貨幣より信用こそ価値を持つ社会が、ここから生まれそうです。
EUでは2018年に、一般データ保護規則(GDPR=General Data Protection Regulation)が施行されました。個人のデータ保護を強化するルールをつくり、国家や巨大企業が保有していたデータを個人に取り戻そうというのです。
市民一人ひとりが個人データのコントロール権を持つ「データポータビリティー」は、21世紀の基本的人権になると目されます。
果たして日本はどうすればいいか。
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「三方よし+未来もよし」は実現可能なのか
企業が主たるプレーヤーとなり市場価値の創出を重視する米国型、国家が前面に出て社会における価値実現を目指す中国型、あくまでも個人の権利を尊重するEU型。これらの長所をよく知り、バランスよく導入していくべきでしょう。
しかも日本には、データ駆動型社会の構築に向けて真剣に取り組まなければならない喫緊の事情があります。
「社会を変革しない限り、もはや日本は先のない国である」
これが、実際のところです。
それはそうでしょう。超高齢化、少子化、経済成長の鈍化、人口減少と、現在の日本ではあらゆることがネガティブな方向に進んでいます。そしてどの項目を見ても、解決策のモデルが世界中のどこを探してもありません。
現状の延長線上に発展を考えればよかったこれまでのようにはいかないのです。社会全体の構造を変えないと、もうどうしようもありません。独自に道を切り開くしか、道はないのです。
「市場の価値」「社会の価値」「個人の価値」を実現する「三方」に加えて、未来への見通しもよくしなければなりません。つまり日本は、「三方よし+未来もよし」を目指すよりほかないのです。
手本とするものもないまま、道なき道を進まなければならない日本の現状は、普通に見ればピンチです。けれど、それは考えようによって、大きなチャンスと捉えることもできます。世界中のどの地域よりも先行して、未来型社会をつくることに全力でチャレンジできるのですから。
「21世紀の石油」たるデータを活用して、いかに持続可能な社会をつくっていくか。その構想を、私は考え続けてきました。専門分野である医療・ヘルスケアで先んじて、これを社会全体へと広げていく。そんな道筋を描いているところです。
では具体的に、どんな取り組みをしているのか。次回は私の専門分野である医療・ヘルスケアの世界で起こりつつあるイノベーションについて説明します。
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#イノベーション
コメント2件
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石田修治
定年退職
中国の場合、独裁政権が『国家に情報を一元管理される危うさ』どころか、その為に開発企業を全面的に支援しているのだから怖い。8年前に深センで働いていた時に感じた『異様な程に多い監視カメラ』も当時はどうか知らず、今は全てがリアルタイムで監視可能となっているであろう事と合わせて、益々生き辛い国になっている。心ある中国人はさぞや息が詰まっていることと思うが、彼らはどの様にその不安を解消しているのだろうか?世界一の人口を誇る中国軍人の第一の目的は『中国共産党の独裁継続』であり、対米などの対外的な軍事はその次なのだ。警察官は軍人ほど多くは無いが、やはり徹底的に共産党への忠誠を誓わされている。『共産党への忠誠』が就業への大前提となっている。習近平政権になってから、『共産党独裁』を表に出して個人独裁を推進している国には行く気がしない。再び中国が『訪れたい』国になる事を祈るのみ。
2019/04/15 08:05:341返信いいね!
TS
電子エンジニア
AIとデータ分析が今後の社会で重要になるのは理解出来ますが、日本に取って最重要の技術か疑問です。
例えば、有効求人倍率のデータを見ると、事務職は1以下で人手余り、介護や建設は4以上で人手不足なので、日本で現在不足しているのは「脳」ではなく「体」だと分かります。
なので、技術レベルを度外視して日本に必要な事を考えると、脳であるAIより体であるロボットを低コストで作るイノベーションが出来れば、人間がオフィスに座ってロボットを遠距離操作する事で事務職の供給と介護・建設の需要をマッチングする等の案が出ます。
技術的実現性を考えると上記は絵空事ですが、シリコンバレーがAIだというからAIだ、という短絡思考でAI人材育成に補助金を突っ込んだ挙句、国際競争力の無いガラパゴスAI産業が生まれて生産性が上がらない、なんて半導体やITの二の舞は止めて欲しいものです。
先端技術や他国を学ぶのも良いですが、日本の現状と未来についてもっと突っ込んで考えた方が良いのではと思います。
2019/04/15 12:28:46
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https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00045/041000001/?P=2&mds
2019年4月15日 鈴木一之 :株式アナリスト
「MaaS」とは何か?日本の課題を解消する巨大技術革新の胎動
https://diamond.jp/mwimgs/b/3/650/img_b3daa5af253216620cf513ab74413f1b79504.jpg
トヨタのe-Palette Concept
令和元年は通信業界における「5G元年」だが、同時に「MaaS(マース)元年」でもある。世界規模の巨大な技術革新の動きとは。写真はトヨタのe-Palette Concept?Photo:TOYOTA
あと戻りすることのない変化
「MaaS」という巨大技術革新
まもなく「令和元年」が始まります。時代はどのように変わるのか、新しい変化が始まるのかと今からわくわくしています。
株式市場における「変化」には2種類あります。循環的な変化と構造的な変化です。循環的な変化は景気サイクルに基づくもので、世界的に下向きの動きが最近強まっているのは否定できません。
一方、構造的な変化は、世界的なパソコンの普及、その後に続いたスマホの爆発的な普及など、いわば「あと戻りすることのない変化」です。令和元年は通信業界における「5G元年」でもありますが、同時に「MaaS(マース)元年」でもあります。世界規模の巨大な技術革新の動きが始まっています。
「MaaS」は「モビリティ・アズ・ア・サービス」の略で、利用者は移動方法としての自動車は所有せず、使った分だけ料金を支払う方式です。自家用車から電車、バス、タクシー、自転車まで、あらゆる交通手段を1つに貫き、移動をトータルサービスとして提供するという考え方であり、ソフトウエアの世界ではクラウドの普及とともによく使われるアイディアです。
最近のびっくりニュースの1つに、トヨタ自動車とホンダがソフトバンクを間に挟んで協業を開始するというものがあります。これも来たる「MaaS」を睨んでの動きだとされており、産業全体の勢力図を大きく変える破壊力を持っていると見られます。
世界ではドイツ、フィンランド、オランダなど欧州諸国でMaaSが先行しており、1970年代から取り組んできた歴史があります。すでに30年以上が経過してフィンランドやスイスではMaaSが実用化されています。
MaaSの目指す姿は、移動の手段をマイカーに頼らずに、できるだけ公共の交通機関に誘導しようというものです。欧州を中心に温暖化ガスの排出を少しでも食い止めようとする意志もありますが、生活圏としての地方都市の競争力の回復、さらには新しい街づくりの視点もあります。
日本も欧米も、地方へ行くほどマイカーへの依存度が高くなる傾向にあります。自動車は移動手段としては便利ですが、保有するコストが高いわりには、ほとんど利用されていません。大気汚染や渋滞による社会的ロスは言うまでもなく、交通事故の死亡者数は世界全体では年間100万人を超えています。
日本では、公共の交通機関の運営が、マイカー保有により危機に瀕しています。乗り合いバスの利用者は近年大きく減少しており、赤字に耐え切れず路線廃止に陥るケースが長年にわたって続いています。公共交通路線の廃止のために、移動の手段がますますマイカーに頼ることになり、それが公共交通機関の運営を苦しくさせるという悪循環が繰り返されています。
たとえば地方都市の駅前は、近郊からやってくるマイカーのための駐車場だらけという街も珍しくありません。地方都市の中心部で魅力が薄れると、休日は郊外にあるショッピングモールにマイカーで出かけて行くしかないという悲しい現実があります。これは日本の地方都市の大半が抱えている問題です。
公共交通の活性化は
地域全体の活性化に繋がる
長年にわたって地方都市の公共交通を重視してきたヨーロッパの地方都市では、街の中心部に公園やカフェ、学校があるほか、マーケットが立ち並び、散歩で行ける範囲内に歩いていて楽しい街があります。
公共交通が整備されると、ご高齢の方でも出歩いて人々と言葉を交わすことができます。それだけで病気のリスクが低下すると言われており、日々の買い物に不自由することもありません。公共の交通機関が整備されると人々の流れが変わり、ガソリンや駐車場代に向けられていた支出が、交通サービスを提供する事業者に回るようになります。それによって地域全体がさらに活性化します。
渋滞や交通事故の発生が減少すれば、社会全体のロスも低下します。交通データを通じて人々の行動履歴をビッグデータとして把握できれば、道路や都市計画に活用することができます。
免許を返納した高齢の方でも移動に困ることがなく、ハンディキャップを抱えた方々のサポートも容易になります。運転ができるかできないかで住む場所が限定されるという不自由さもなくなってきます。マイカーに偏る今の社会の在り方からMaaSにシフトすれば、個人の暮らしはより改善し、街の中心部も活性化して地域が抱える問題の多くが緩和する方向に向かうと思われます。
MaaSを実現するには、現代社会のテクノロジーを結集しなければなりません。何よりも自動車の進化が不可欠です。「CASE」(つながる、自動運転、シェアリング、電動化)と総称される未来テクノロジーが最初の基盤となり、その上に公共交通機関の時刻表データ、路線検索や車両の位置情報、運行情報データ、さらには予約・決済システム、個人認証などが加わります。現代社会の社会基盤システムをまるごと改良し、それらをシームレスに繋げて行く必要があります。
5Gや自動運転技術は、その最初の一歩に辿り着いたというところでしょう。MaaSという理想の未来が完成するにはまだ時間がかかりますが、交通手段が変わることによって、エネルギー、都市、観光、小売、金融、保険、医療・介護、保育、不動産など、あらゆる産業に大きな変革がもたらされます。
社会に対するインパクトは極めて大きく、MaaSが実現することで究極の「スマートシティ」が姿を現し、私たちの意識や行動の変化を促して、地球環境に配慮した暮らしが可能になります。世界全体のMaaSの市場規模は、2050年に700兆円を越えると試算されています。
鉄道会社も実証実験を開始
動意づく日本のMaaS関連銘柄
日本の株式市場では、MaaS関連銘柄として経路検索のジョルダン(3710)の株価がすでに動意づいています。JR東日本(9020)、小田急(9007)、東急(9005)という民間鉄道会社が次々に実証実験を始めている模様で、米国では配車サービスのリフトが上場し、ウーバーテクノロジーも上場申請を行いました。
楽天(4755)がリフトの大株主として注目を集めたばかりですが、ソフトバンクグループ(9984)はウーバーの大株主というだけでなく、「MaaSオペレーター」として今後の活躍が期待されます。
MaaSの全体像が見えてくるのはまだ先の話です。それでも課題先進国の日本が抱える問題のかなりの部分が、MaaSの実現によって解決されると見られます。
社会全体の情報インフラ基盤としてNEC(6701)、富士通(6702)、日立(6501)、地図データのゼンリン(9474)、人工知能のALBERT(3906)、自動運転に欠かせない位置測定のレーザー技術で浜松ホトニクス(6965)、イリソ電子工業(6908)などの株価の動きからは、今後も目が離せません。
【参考文献】MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ
(株式アナリスト 鈴木一之)
*本稿は、ダイヤモンド・オンラインの特設サイト「政策・マーケットラボ」に掲載されたものです。
https://diamond.jp/articles/-/199785
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