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異端の経済理論「MMT」を恐れてはいけない理由
すべての経済活動は「借金から始まっている」
中野 剛志 : 評論家 2019年04月02日
「現代貨幣理論」(MMT)をめぐって、古くて新しい「貨幣とは何か」という問題が議論されています(写真:HIT1912/PIXTA)
前編「アメリカで大論争の『現代貨幣理論』とは何か」でも解説したように、いま、アメリカでは「現代貨幣理論」(MMT)をめぐって、オカシオコルテス下院議員やサンダース大統領候補のブレーンを務めたステファニー・ケルトン教授たちと、クルーグマン、サマーズ、パウエルFRB議長たちの間で、論争が展開され、議論が沸騰している。彼らは、どのような点で考え方が異なるのだろうか。
著書『富国と強兵 地政経済学序説』で、MMTをいち早く日本に紹介した中野剛志氏が、理論のポイントとともに解説する。
180度違う貨幣の考え方
筆者は「現代貨幣理論(MMT)」の登場を、以前、地動説や進化論のようなパラダイム・シフトになぞらえたが(アメリカで大論争の『現代貨幣理論』とは何か)、これは大げさな比喩ではない。
『富国と強兵』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)
現代貨幣理論は、その名のとおり、「貨幣」論を起点とする経済理論であるが、この現代貨幣理論と主流派経済学とでは、貨幣の理解からして、180度違うのである。
まさに、地動説と天動説の相違と比肩できるほど、異なっているのだ。
では、ここで、現代貨幣理論が立脚する貨幣論について、ごく簡単に解説しよう。
今日、「通貨」と呼ばれるものには、「現金通貨(お札とコイン)」と「預金通貨(銀行預金)」がある。
「銀行預金」が「通貨」に含まれるのは、我々が給料の支払いや納税などのために銀行預金を利用するなど、日常生活において、事実上「通貨」として使っているからである。
ちなみに、「通貨」のうち、そのほとんどを預金通貨が占めており、現金通貨が占める割合は、ごくわずかである。
ここまでは、主流派経済学でも異論はないであろう。
問題は、通貨のほとんどを占める「銀行預金」と貸し出しとの関係である。
通俗的な見方によれば、銀行は、預金を集めて、それを貸し出しているものと思われている。
しかし、これは銀行実務の実態とは異なる。
実際には、銀行の預金が貸し出されるのではなく、その反対に、銀行が貸し出しを行うことによって預金が生まれているのである(これを「信用創造」という)。
驚かれたかもしれないが、これは事実である。
銀行の貸し出し増加が中央銀行の準備預金を増やす
例えば、A銀行がα企業に1000万円を貸し出すとする。
この場合、A銀行は手元にある1000万円を貸すのではない。
A銀行は、単に、α企業の銀行口座に1000万円と記帳するだけである。
いわば、銀行員が万年筆で記帳するだけで1000万円という通貨が生まれるというわけだ。それゆえ、預金通貨のことを「万年筆マネー」と呼ぶ者もいる。
このように、銀行とは、通貨を創造するという機能を持つ特別な制度なのである。
銀行は預金を元手に貸し出しを行うのではなく、その反対に、銀行による貸し出しが預金を生む。
それゆえ、原理的には、銀行は、返済能力のある借り手さえいれば、資金の制約を受けずに、いくらでも貸出しを行うことができてしまう。
ただし、銀行は、預金の引き出しに備えるために、預金の一定割合を中央銀行に「準備預金(日本であれば、日銀当座預金)」として預け入れることを法令で義務づけられている。
さて、主流派経済学は、中央銀行が「現金および準備預金(いわゆる「マネタリーベース」)」を増やすと、それが民間銀行によって貸し出され、乗数倍の貨幣が供給されると説いている。いわゆる「貨幣乗数理論」である。
ところが、実際の経済では、このようなことは起きえないのだ。
なぜならば、先ほど述べたように、銀行は、貸し出しを行うに当たって元手となる資金を必要としないからである。
預金を元手に貸し出しを行うのではなく、貸し出しによって預金が新たに創造されるのである。
銀行による貸し出しが行われるか否か(すなわち預金通貨が供給されるか否か)を決めるのは、借り手の資金需要があるか否かである。
そして、銀行が貸し出しを増やして預金を増やすと、法令により、準備預金を増やすことが義務づけられているので、準備預金が増えることになる。
要するに、銀行の貸し出し(貨幣供給)の増加が、中央銀行の準備預金を増やすのだ。
現代貨幣理論は、このように説明するのである。
この銀行の貸し出しに関する説明は、通俗観念に反するだけでなく、主流派経済学の理論とも、まったく正反対である。
主流派経済学によれば「ベースマネーの増加→銀行の貸し出し(貨幣供給の増加)」となる。しかし、現代貨幣理論は「銀行の貸し出しの増加→ベースマネーの増加」だと言う。
このように、現代貨幣理論と主流派経済学は、まさに、地動説と天動説のように違うのだ。
もっとも、以上の貨幣供給理論それ自体は、現代貨幣理論に固有の見解というわけではない。
根本的に間違っている貨幣についての理解
例えば、イングランド銀行の季刊誌における解説 も、同様の貨幣供給理論に立って、主流派経済学の誤りを指摘している。主流派経済学の貨幣供給理論は、中央銀行が実際に行っている貨幣供給の実態に反しているというのだ。
貨幣を正しく理解しているのは、主流派経済学ではなく、現代貨幣理論のほうなのだ。
現代貨幣理論こそが、経済学における「地動説」(正しい説)と言ってよい。
科学が発達し、言論の自由が保障されている現代において、「貨幣」という経済の最も基本的な制度に関して、経済学の主流派が「天動説」のごとき間違った理論を信じているというのは、驚きである。
なお、黒田総裁率いる日本銀行は、2013年から量的緩和(準備預金の増加)を実施し、貨幣供給量を増やしてデフレを克服しようとしてきたが、結果は、周知のとおり失敗に終わっている。
失敗した理由は、貨幣について正しく理解している者には、おのずと明らかであろう。
デフレ下では、企業など借り手に資金需要が乏しい。それゆえ、銀行は貸し出しを増やすことができないので、貨幣供給量は増えないのである。
銀行の貸し出しの増加が準備預金を増やすのであって、その逆ではない以上、日銀が量的緩和をやっても、銀行の貸し出しは増えない。
黒田日銀の量的緩和政策は、経済学の「天動説」に基づく誤った政策なのだ。
さて、以上の正しい貨幣理解を踏まえたうえで、最近の現代貨幣理論をめぐる論争を見てみよう。
現代貨幣理論は、「自国通貨を発行できる政府が財政破綻を懸念する必要はない」と主張する。
これに対して、ポール・クルーグマン やローレンス・サマーズ ほか、多くの論者が、「財政赤字は、金利の上昇を招く」という批判を展開している。
日本でも、財政健全化を強く求める論者は、「財政赤字が金利を急騰させたら、政府債務の利払い負担が膨らんでしまう。子や孫の世代にツケを残してはならない」と主張している。
主流派経済学の理論は、巨額の財政赤字は資金を逼迫させ、金利を上昇させると説明しているのだ。
ところが、現代貨幣理論は、財政赤字が金利を上昇させるという理論を否定するのである。
なぜ、財政赤字を増やしても、金利は上がらないのか。
その原理は、先ほどの正しい貨幣理解を踏まえれば、容易にわかるだろう。
再度確認すると、銀行の貸し出しは、預金を元手としない。反対に、貸し出しが預金を生む。
この原理は、政府の場合も同じである。
すなわち、財政赤字は、それと同額の民間貯蓄(預金)を生む。
主流派経済学が考えるように、民間貯蓄が財政赤字をファイナンスしているというわけではないのだ。
貨幣供給量は財政赤字の拡大によって増える
もう少し説明すると、こうなる。
政府が赤字財政支出をするに当たって国債を発行し、その国債を銀行が購入する場合、銀行は中央銀行に設けられた準備預金を通じて買う。この準備預金は、中央銀行が供給したものであって、銀行が集めた民間預金ではない。
そして、政府が財政支出を行うと、支出額と同額の民間預金が生まれる(すなわち、貨幣供給量が増える)のである。
貨幣供給量は、量的緩和ではなく、財政赤字の拡大によって増えるのだ。
したがって、「財政赤字によって資金が逼迫して金利が上昇する」などということは、起きようがない。
実際、日本では、過去20年にわたり、巨額の政府債務を累積し続ける中で、金利は世界最低水準で推移してきた。多くの主流派経済学者が「いずれ金利が急騰する」と予測してきたが、その予測はことごとく外れてきた。
その予測は、今後も実現することはないであろう。貨幣についての理解が、「天動説」並みに間違っているからだ。
日本で、現代貨幣理論が「極端」「過激」な主張として紹介されることが多いのも、わかるであろう。天動説を信じている者からすれば、地動説は「極端」「過激」に違いない。
しかし、その日本は、量的緩和の失敗といい、巨額の財政赤字の下での低金利といい、経済学の「地動説」たる現代貨幣理論を実証(主流派経済学を反証)しているのだ。
そして、現代貨幣理論に従えば、日本が貨幣供給量を増やしてデフレを脱却するための政策は、財政赤字の拡大だということになる。まさに、天動説から地動説へのパラダイム・シフト並みの大転換だ。
だが、このパラダイム・シフトは、やはり容易ではないだろう。
長年、既存のパラダイムを信じてきた人々にとって、そのパラダイムを変えることは精神的な苦痛だからだ。
また、異端とされる説を唱えると、主流派によって社会的な制裁を受ける可能性もあろう。
かつて、ガリレオは、天体観測により地動説を実証した結果、異端として宗教裁判にかけられてしまった。
もちろん、そこまで酷(ひど)くはないものの、現代貨幣理論は、主流派経済学者や政策当局者あるいは投資家からの批判にさらされている。
それにもかかわらず、アメリカでは、アレクサンドリア・オカシオコルテスという若い政治家が、異端説である現代貨幣理論の支持を堂々と表明した。
また、ステファニー・ケルトンをはじめとする現代貨幣理論の論者たちは、批判に対して果敢に反論して屈する気配がない。
これは、実に驚くべき光景である。
ここで注目すべきは、アメリカでは、この異端の現代貨幣理論が、もっぱらSNSを通じて広まっているということだ。
異端の経済理論が、学界の一部にとどまらずに、政治や言論の表舞台に躍り出るようなことは、以前であれば、考えにくかった。
SNSには、もちろん、フェイクニュースも広めてしまうという弊害がある。
だが、他方で、主流派や権威による無視や抑圧をすり抜けて、異端派・少数派の正しい議論を世の中に広めるという興味深い効用もあるようだ。
現代貨幣理論を「実証」した日本
さて、日本は、皮肉にも、現代貨幣理論を実証した国である。
ならば、現代貨幣理論は、日本でも一大ムーブメントを起こすであろうか。
それに関して、残念ながら、筆者は悲観的である。
権威に弱く、議論を好まず、同調圧力に屈しやすい者が多い日本で、異端の現代貨幣理論の支持者が増えるなどということは、想像もつかないからだ。
そうでなければ、20年以上も経済停滞が続くなどという醜態をさらしているはずがない。
とはいえ、まもなく元号が改まり、新たな時代を迎えようとしているというのに、悲観をかこってばかりというのもよろしくない。
(合理的な根拠は何もないのだが)改元を機として人心が改まり、経済学や経済政策のパラダイムもまた改まることに望みを託して、言論を続けたいと思う。
なお、現代貨幣理論に関心を持った方は、有志の方が作成したリンク集もあるので 、是非参照してほしい。
http://econdays.net/?p=10126
https://toyokeizai.net/articles/-/273275
財政拡大理論「MMT」理想の地は日本か「財政赤字は悪くない」大統領選にらみ経済学論争ブラックロックCEO現代金融理論クズ - うまき 2019/3/08 22:51:58 (コメント数:2)
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/434.html
アメリカで大論争の「現代貨幣理論」とは何か
「オカシオコルテス」がMMTを激オシする理由
中野 剛志 : 評論家 2019年03月26日
オカシオコルテスはアメリカ史上最年少の女性下院議員(写真:AFP=時事)
今、アメリカで大論争中の「現代貨幣理論(MMT)」をご存じだろうか。「財政は赤字が正常で黒字のほうが異常、むしろ、どんどん財政拡大すべき」という、これまでの常識を覆すような理論である。
この理論にアメリカ民主党29歳の新星で、将来の女性初大統領ともいわれているオカシオコルテス下院議員が支持を表明したことで、世論を喚起する大きな話題となっている。これに対しノーベル経済学賞受賞の経済学者クルーグマン、元財務長官のサマーズ、FRBのパウエル議長、著名投資家のバフェットらがこぞって批判。日銀の黒田総裁も否定的なコメントを出している。
はたして、この理論は、いったいどういうものなのか。著書『富国と強兵 地政経済学序説』で、「現代貨幣理論(MMT)」をいち早く日本に紹介した中野剛志氏が解説する。
地動説や進化論も「異端」だった
ガリレオが地動説を唱えたとき、あるいはダーウィンが進化論を唱えたとき、学界や社会の主流派は、その異端の新説に戸惑い、怒り、恐れた。そして、攻撃を加え、排除しようとした。
『富国と強兵』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)
しかし、正しかったのは、主流派に攻撃された少数派・異端派のほうだった。
このような科学の歴史について、トーマス・クーンは次のように論じた。
科学者は、通常、支配的な「パラダイム」(特定の科学者の集団が採用する理論・法則や方法論の体系)に忠実にしたがって研究している。科学者の間の論争はあるが、それも、このパラダイムの枠内で行われているにすぎない。パラダイムから逸脱するような理論は「科学」とはみなされずに、無視されたり、排除されたりするのである。
このため、仮にパラダイムでは説明できない「変則事例」が現れても、科学者たちは、その変則事例を深刻には受け止めない。相変わらず、パラダイムを無批判に信じ続けるのだ。
ところが、そのうちに、支配的なパラダイムに対する信頼を揺るがすような深刻な「変則事例」が現れる。こうなると、科学に「危機」が訪れる。科学者たちは根本的な哲学論争を始め、支配的なパラダイムを公然と批判する者も現れ、学界は混乱に陥る。
そのうちに、より整合的な説明ができる新たなパラダイムが提案され、やがて従来のパラダイムにとって代わる。地動説や進化論もまた、そうやって現れた新たなパラダイムの例である。
クーンが明らかにしたのは、どの科学が正しいかは、合理的な論証によって判断されるとは限らないということである。科学者の判断は、科学者個人の主観や社会環境など、必ずしも合理的とは言えないさまざまな要因によって左右されるのだ。
これは、地動説や進化論が弾圧された時代に限った話ではない。現代でも当てはまる。
近年の神経科学の実証研究によれば、人間の脳には、所属する集団のコンセンサスに同調するように自動的に調整するメカニズムがあるという。どうやら、われわれの脳は、主流派の見解からの逸脱を「罰」と感じるらしいのだ。
クルーグマン、サマーズ、バフェット、黒田総裁の批判
今まさに、クーンの言う「パラダイム」の危機が、経済学の分野で起きつつある。アメリカで巻き起こっている「現代貨幣理論(MMT)」をめぐる大論争が、それだ。
主流派経済学のパラダイムでは、財政赤字は基本的には望ましくないとされている。財政赤字の一時的・例外的な拡大の必要性を認める経済学者はいるものの、中長期的には健全財政を目指すべきだというのが、主流派経済学のコンセンサスなのである。
ところが、この健全財政のコンセンサスを、「現代貨幣理論」は否定したのだ。
このため、クルーグマン、サマーズ、ロゴフといった影響力のある主流派経済学者、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長、あるいはフィンクやバフェットといった著名投資家ら、そうそうたる面々が現代貨幣理論を批判している。
その言葉使いも異様に激しい。クルーグマンは「支離滅裂」、サマーズは「ブードゥー経済学」、ロゴフは「ナンセンス」、フィンクにいたっては「クズ」と一蹴している。
日本でも、黒田日銀総裁が記者会見(3月15日)において現代貨幣理論について問われると、「必ずしも整合的に体系化された理論ではない」という認識を示したうえで、「財政赤字や債務残高を考慮しないという考え方は、極端な主張だ」と答えている。
しかし、現代貨幣理論は、クナップ、ケインズ、シュンペーター、ラーナー、ミンスキーといった偉大な先駆者の業績の上に成立した「整合的に体系化された理論」なのである。
にもかかわらず、黒田総裁が「必ずしも整合的に体系化された理論ではない」と感じるのは、それが主流派経済学とはパラダイムが違うからにほかならない。
ここで、「現代貨幣理論」のポイントの一部をごく簡単に説明しよう(参考:スティーブン・へイル「解説:MMTとは何か」)。
まず、政府は、「通貨」の単位(例えば、円、ドル、ポンドなど)を決めることができる。そして、政府(と中央銀行)は、その決められた単位の通貨を発行する権限を持つ。
次に、政府は国民に対して、その通貨によって納税する義務を課す。すると、その通貨は、納税手段としての価値を持つので、取引や貯蓄の手段としても使われるようになる(紙切れにすぎないお札が、お金としての価値を持って使われるのは、そのためである)。
さて、日本、アメリカ、イギリスのように、政府が通貨発行権を有する国は、自国通貨建てで発行した国債に関して、返済する意思がある限り、返済できなくなるということはない。
例えば、日本は、GDP(国内総生産)比の政府債務残高がおよそ240%であり、先進国中「最悪」の水準にあるとされる。にもかかわらず、日本が財政破綻することはありえない。日本政府には通貨発行権があり、発行する国債はすべて自国通貨建てだからだ。
政府債務残高の大きさを見て財政破綻を懸念する議論は、政府の債務を、家計や企業の債務のようにみなす初歩的な誤解に基づいている。
政府は、家計や企業と違って、自国通貨を発行して債務を返済できるのだ。したがって、政府は、財源の制約なく、いくらでも支出できる。
ただし、政府が支出を野放図に拡大すると、いずれ需要過剰(供給不足)となって、インフレが止まらなくなってしまう。
このため、政府は、インフレがいきすぎないように、財政支出を抑制しなければならない。言い換えれば、高インフレではない限り、財政支出はいくらでも拡大できるということだ。
つまり、政府の財政支出の制約となるのは、インフレ率なのである。
ちなみに、日本は、高インフレどころか、長期にわたってデフレである。したがって、日本には、財政支出の制約はない。デフレを脱却するまで、いくらでも財政支出を拡大できるし、すべきなのだ。
物価調整手段としての「課税」と「最後の雇い手」政策
さて、国家財政に財源という制約がないということは、課税によって財源を確保する必要はないということを意味する。
アメリカでの現代貨幣理論の流行を紹介した日本経済新聞の記事は、この理論の支持者が「政府の借金は将来国民に増税して返せばよい」と主張していると書いているが、これは誤解である。現代貨幣理論によれば、政府の借金を税で返済する必要すらないのだ。
だが、現代貨幣理論は、無税国家が可能だと主張しているわけではない。
そもそも、現代貨幣理論の根幹にあるのは、通貨の価値は課税によって担保されているという議論だ。
また、もし一切の課税を廃止すると、需要過剰になって、インフレが昂進してしまうであろう。そこで、高インフレを抑制するために、課税が必要となる。
また、格差是正のための累進所得税、あるいは地球温暖化対策のための炭素税など、政策誘導のためにも課税は有効である。要するに、課税は、財源確保の手段ではなく、物価調整や資源再配分の手段なのである。
さらに言えば、現代貨幣理論は、物価調整の手段として、課税以外にも、「就労保障プログラム」あるいは「最後の雇い手」と呼ばれる政策を提案している。これは、簡単に言えば、「公的部門が社会的に許容可能な最低賃金で、希望する労働者を雇用し、働く場を与える」という政策である。
就労保障プログラムは、不況時においては、失業者に雇用機会を与え、賃金の下落を阻止し、完全雇用を達成することができる。逆に、好況時においては、民間企業は、就労保障プログラムから労働者を採用することで、インフレ圧力を緩和する。
こうして就労保障プログラムは、雇用のバッファーとして機能する。政府は、同プログラムに対する財政支出を好況時には減らし、不況時には増やすことで、景気変動を安定化させる。不況時には確かに財政赤字が拡大するが、低インフレ下では、財政赤字はもとより問題にはならない。
こうして、就労保障プログラムは、物価を安定させつつ、完全雇用を可能にするのである。
現代貨幣理論を理解していない批判
以上は、現代貨幣理論の一部にすぎない。
しかし、これを踏まえただけでも、主流派の経済学者たちや政策担当者たちの批判が、いかに的を外れたものであるかがわかるようになるだろう。
例えば、パウエルFRB議長は「自国通貨建てで借り入れができる国は財政赤字を心配しなくてよいという考え方は間違いだ」と断定し、黒田日銀総裁も「財政赤字や債務残高を考慮しないという考え方は、極端な主張」と述べた。サマーズも、財政赤字は一定限度を超えるとハイパーインフレを招くと批判する。
しかし、読者はもうおわかりだと思うが、これらはいずれも、まともな批判になっていない。
現代貨幣理論は、「財政赤字の大小はインフレ率で判断すべきだ」という理論である。ハイパーインフレになっても財政赤字を心配しなくてよいなどという主張はしていない。それどころか、インフレを抑制する政策について提言している。
要するに、批判者たちは、現代貨幣理論を理解していないということだ。いや、そもそも、知ろうとすらしていない節すらある。
なぜ、そのような態度をとるのか。それは、彼らが、現代貨幣理論のことを、主流派経済学のパラダイムに属していないという理由によって、まともに取り扱うべき経済学と見なしていないからであろう。
パラダイムが変わるのが怖い主流派経済学者たち
しかしながら、その一方で、リーマン・ショックのように、主流派経済学のパラダイムに対する信頼を揺るがすような「変則事例」が起きている。それについては、主流派経済学者たち自身も認めつつある。主流派経済学者の予想に反して財政破綻しない日本も「変則事例」の1つであろう。
主流派経済学は、まさにクーンが言うパラダイムの「危機」に直面しているのだ。だからこそ、主流派経済学者たちは、現代貨幣理論の台頭が気になり、躍起になって批判しているのである。パラダイムが変わるのが怖いのだ。
だが、かつて、物理学のパラダイムを一変させたアインシュタインが言ったように、「問題を生じさせたときと同じ考え方によっては、その問題を解決することはできない」
現下の経済問題を解決するためには、経済学のパラダイムから変えなければならないのだ。
だから、現代貨幣理論についても、知りもしないで一蹴したり、利口ぶった皮肉で揶揄したりせずに、正しく理解したうえで、フェアに論争してもらいたい。
https://toyokeizai.net/articles/-/271977
MMT 日本語リンク集
有志の皆さんが作るMMTリンク集!
ここに直接作っていこうと思うので、どうか推薦ブツをTwitterで私に教えてください。。。
リンク切れなども。。。
説明
Modern Monetary Theory(MMT、現代貨幣理論または現代金融理論)の日本語で読める情報を集めようと思っています。
まじめな入門一押しは、リッキー氏の
「ティモワーニュTymoigneのブログから Money and Banking」
01、02、03、04、05、06、07、08、09、10、11、12、13、14、15、16、17、18A、18B、19A、19B、19C、20、21
新着記事
新着記事は、一旦ここに置いておきます。。。
内藤敦之の論説 『貨幣の名目制:表券主義の貨幣理論』紹介
「クルーグマンさん、MMTは破滅のレシピではないって」BY ステファニー・ケルトン(2019年2月21日) やや高度。クルーグマンのいちゃもんへの反論)
モズラー氏の金融システム改革案(2010年3月23日) やや高度。初心者脱出のための記事)
ブログ「ナショナリズム・ルネサンス」から、「政府が無限のお金を持っているという過激な理論」 こちらは入門に最適!
ブログ MMT「論」ウオッチング
パート1 日本語のもの
1-1.翻訳群
1-1-1.道草
レイの「入門」この辺からがんばっています お気に入りの第三章
モスラー「七つの嘘」この辺から 未完だけどだいたいこんなもん?
ケルトン関係 その1 その2 その3
チェルノバ、JGPその1
紹介記事系
「現代金融理論(MMT)ー 伝統的ではない経済運営提案」
「ウェイン・ゴドリー 危機をモデル化した経済学者【MMTの先駆者シリーズ@道草】」
「オカシオ-コルテスは政策の財源をどうするつもりなのか?紙幣を(たくさん)印刷せよ!」
「ジョン・T・ハーベイ 「MMT:トンでも?まとも?」」
1-1-2.ミッチェルのブログ
ここに置いていく
「MMT(現代金融理論)の論じ方」 ←最初はこれ
「赤字財政支出」 Part1 Part2 Part3 ←次はこのへん。あとは気の向くままに
「自然利子率は「ゼロ」だ!」
「納税は資金供給ではない」
「貨幣乗数、及びその他の神話」
「準備預金の積み上げは信用を拡張しない」
「銀行融資は―準備預金ではなく―自己資本によって制約されている」
「明示的財政ファイナンス(OMF)は財政政策に対するイデオロギー的な蔑視を払拭する」
「ケインズに先駆けて大恐慌から日本を救った男、高橋是清」
「貨幣乗数 ― 行方不明にて、死亡と推定」
「バランスシート不況と民主主義」
「政府のB/Sなどという愚かな道を行くIMF」
「量的緩和 101」
「マンキューの『原理』は洗脳だ」
「中央銀行のオペレーションを理解する」
「準備預金の積み上げはインフレ促進的ではない」
1-1-3.リッキー氏の仕事群
「MMT 101: A Response to Critics MMT入門:批判にこたえる(ティモワーニュとレイ)」 Part1、Part2, Part3, Part4, Part5, Part6
「ティモワーニュTymoigneのブログから Money and Banking」、目次
レイの「マネー・マネージャー資本制経済と世界金融危機」 その1 その2 その3 その4 その5
1-1-4.紹介記事群
まとも系
「スティーブン・ヘイル「解説:MMT(現代金融理論)とは何か」」
廣宮孝信さんのブログから「「財政赤字を拡大せよ!」という奇特な米ヘッジファンド・マネージャーの物語:NYタイムズ記事より」
ブログ「ゼロサム世界からの脱出」から「(拙訳)長年無視されてきた経済理論が見直されている」
アレ系
→ NRI木内登英さん 米国で広まる経済理論MMTの危うさ
→ the financial pointerさん フリーランチと経済学者の責務:ローレンス・サマーズ (ご紹介は素晴らしい。サマーズがアレという意味です)
ふざけんな系
1-1-5.そのほか
間者さんの記録(感謝を込めて)
ブライアン・ロマンチャック 「中央政府と中央銀⾏の会計を連結することは可能か?」(PDF)
1-2.論考、解説
1-2-1.アカデミック系
ないとうせんせいのを誰かが画像アップしてた場合用
1-2-2.ブログ、知恵袋とかTOGGETERなどを予定
唯一にして随一のMMTブログ。「断章、特に経済的なテーマ」
「アメリカの国家貨幣論(MMT)について」
「インターバンク市場の機能について」
「Scott Fullwiler のはなし」その1 その2 その3 これほんと面白い
1-2-3.そのほか
パート2 英語のもの
(できる気がしないけど)
http://econdays.net/?p=10126
How Much Does Heterodoxy Help Progressives? (Wonkish)
Their agenda still needs to be tax-and-spend, not just spend.
Paul Krugman
By Paul Krugman
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The center-left is feeling ambitious these days, and it’s a heartening thing to see. Anything can happen politically, but it looks at least possible that in 2021 there won’t just be unified Democratic control of Congress and the White House, but control by a much more consistently progressive party than was the case in 2009. Maybe America can finally get truly universal health care, policies that really tackle inequality, and more.
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deposits. But how those bank deposits are created is often
misunderstood: the principal way is through commercial
banks making loans. Whenever a bank makes a loan, it
simultaneously creates a matching deposit in the
borrower’s bank account, thereby creating new money.
The reality of how money is created today differs from the
description found in some economics textbooks:
• Rather than banks receiving deposits when households
save and then lending them out, bank lending creates
deposits.
• In normal times, the central bank does not fix the amount
of money in circulation, nor is central bank money
‘multiplied up’ into more loans and deposits.
Although commercial banks create money through lending,
they cannot do so freely without limit. Banks are limited in
how much they can lend if they are to remain profitable in a
competitive banking system. Prudential regulation also acts
as a constraint on banks’ activities in order to maintain the
resilience of the financial system. And the households and
companies who receive the money created by new lending
may take actions that affect the stock of money — they
could quickly ‘destroy’ money by using it to repay their
existing debt, for instance.
Monetary policy acts as the ultimate limit on money
creation. The Bank of England aims to make sure the
amount of money creation in the economy is consistent with
low and stable inflation. In normal times, the Bank of
England implements monetary policy by setting the interest
rate on central bank reserves. This then influences a range of
interest rates in the economy, including those on bank loans.
In exceptional circumstances, when interest rates are at their
effective lower bound, money creation and spending in the
economy may still be too low to be consistent with the
central bank’s monetary policy objectives. One possible
response is to undertake a series of asset purchases, or
‘quantitative easing’ (QE). QE is intended to boost the
amount of money in the economy directly by purchasing
assets, mainly from non-bank financial companies.
QE initially increases the amount of bank deposits those
companies hold (in place of the assets they sell). Those
companies will then wish to rebalance their portfolios of
assets by buying higher-yielding assets, raising the price of
those assets and stimulating spending in the economy.
As a by-product of QE, new central bank reserves are
created. But these are not an important part of the
transmission mechanism. This article explains how, just as in
normal times, these reserves cannot be multiplied into more
loans and deposits and how these reserves do not represent
‘free money’ for banks.
Paul Krugman Asked Me About Modern Monetary Theory. Here Are 4 Answers.
Deficit levels, interest rates and the tradeoff between fiscal and monetary policy.
By
Stephanie Kelton
2019年3月1日 23:30 JST
Paul Krugman during a Bloomberg Television interview in 2013.
Photographer: Scott Ells/Bloomberg
Stephanie Kelton is a professor of public policy and economics at Stony Brook University. She was the Democrats' chief economist on the staff of the U.S. Senate Budget Committee and an economic adviser to the 2016 presidential campaign of Senator Bernie Sanders.
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There is a doctrine among mainstream economists holding that: (1) government deficits push interest rates higher and (2) rising interest rates crowd out private investment. The government can take more of the economy’s financial resources, but only at the expense of lost private investment. This means that running budget deficits has at least some downside.
Paul Krugman is a believer in this doctrine. I’m not, and he’s asked me to explain why. He is responding to a columnI wrote critiquing his view of modern monetary theory.
I’m going to respond directly to the questions he raised:
Are MMTers claiming, as Kelton seems to, that there is only one deficit level consistent with full employment, that there is no ability to substitute monetary for fiscal policy? Are they claiming that expansionary fiscal policy actually reduces interest rates? Yes or no answers, please, with explanations of how you got these answers and why the straightforward framework I laid out above is wrong.
Quick responses first, followed by explanations behind my thinking.
#1: Is there only one right deficit level? Answer: No. The right deficit depends on private behavior, which changes. MMT would set public spending always to the level required to achieve full employment, and then accept whatever deficit may result.
#2: Is there no ability to substitute monetary for fiscal policy? Answer: Little to none. In a slump, cutting interest rates is weak tea against depressed expectations of profits. In a boom, raising interest rates does little to quell new activity, and higher rates could even support the expansion via the interest income channel.
#3: Does expansionary fiscal policy reduce interest rates? Answer: Yes. Pumping money into the economy increases bank reserves and reduces banks' bids for federal funds. Any banker will tell you this.
#4: Does MMT accept Krugman’s “straightforward framework”? No. We can come back to this at the end.
Is there only one right deficit level? No, because for one thing, MMT would establish a public option in the labor market — a federally funded job guarantee — thereby ensuring full employment across the business cycle. The deficit, then, would rise and fall with the cycle, as the job guarantee becomes a new stabilizer, automatically moving toward the “right size” in response to changes in the level of aggregate spending.
In the absence of a job guarantee, things get trickier. Leaving monetary (and exchange rate) policy aside, the government has to allow the deficit to go where it needs to go in order to accommodate the private sector’s net savings desires. If the private sector wants to spend less and save more, the public sector will need to accommodate that desire by running a bigger deficit or the economy will be pushed away from full employment. Krugman drew up the perfect schematic — based on the sector balance framework adopted by MMT — to explain all of this 10 years ago.
Is there no ability to substitute monetary for fiscal policy? Not much. Krugman sees MMT as saying that fiscal policy can always deliver the “right size” deficit to maintain full employment. He’s challenging that by asserting that you can have any size deficit and still have full employment because the central bank can always establish the “right size” interest rate to get you there. I disagree.
It is true that the Fed can pursue any rate policy it desires. It does not follow, however, that cutting interest rates will work to induce enough spending to maintain full employment. You can’t simply assume borrowers will always have the appetite for more private debt, even if you make it really cheap to borrow. Businesses borrow and invest when they’re swamped with customers (or expect to be). They don’t passively take on more debt simply because the central bank has dangled cheaper credit before them.
The evidence suggests that interest rates don’t matter much at all when it comes to private investment: J.P. Morgan (hereand here), the Reserve Bank of Australia (here), the Federal Reserve (here) and the Bank of England (here). It is even possible, as MMT has shown, that cutting rates could further slow the economy because lowering rates cuts government expenditures (interest payments), thereby exacerbating contractionary fiscal policy.
This is in fact what modern monetary theory suggested when the European Central Bank went to negative rates, which MMT sees as a contractionary tax. But MMT recognizes that raising rates could offset contractionary fiscal policy, though in a highly regressive manner as the interest paid by the government tends to go to those with the highest incomes.
Does expansionary fiscal policy reduce interest rates?Yes, unequivocally. You won’t see it in Krugman’s stylized graphic (below), but it does happen in the real world, where the interbank market exists.
Imagine the government is running a trillion-dollar deficit, sending out checks for military weapons, contracting to do massive infrastructure projects, and so on. All of those checks get deposited into financial institutions across the country. And each time a check is deposited, the bank gets a credit to its reserve account at the Fed.
When you pay your taxes, your bank loses reserves, but with a trillion-dollar deficit, there is a huge net infusion of reserves into the banking system. If the central bank takes no action to prevent it from happening, the overnight lending rate — the federal funds rate — will fall to a zero bid.
Why? Because all banks are flush with non-interest-bearing reserves, and everyone is scrambling to lend them to another bank. When everyone’s a seller and no one’s a buyer, the price goes to zero. To prevent this, the central bank steps in.
Before the collapse of Lehman in 2008, the Fed conducted open-market operations (selling bonds to mop up enough reserves to get the interest rate up). This was all coordinated with the Treasury Department on a daily basis, as I explained here.
Today, the Fed simply pays interest on reserves to establish a positive rate. That doesn’t change the fact that deficits, in and of themselves, put downward pressure on the short-term interest rate.
Yes, the Fed has a reaction function, and it can vote to raise rates in response to perceived inflationary pressures associated with deficit spending. But that is a different matter. That is fighting against the “natural” gravitation.
Is there some reason the straightforward framework Krugman laid out is wrong? Yes, as even its creator went on to acknowledge. MMT rejects the IS-LM framework that Krugman uses to demonstrate the conclusion that widening budget deficits put upward pressure on interest rates and crowd out private investment.
The model remains the workhorse for many mainstream Keynesians. MMT considers it fundamentally flawed. It is incompatible with much of Keynes’s “The General Theory of Employment, Interest and Money.” It was designed for a fixed-exchange rate regime, and it is not stock-flow consistent.
Here’s the framework Krugman presents as a challenge to MMT.
Each of the IS curves (1-3) represents a different fiscal stance. This framework shows that the government can expand its deficit and move the economy from a depressed condition at point A to full employment by shifting IS1 to IS2. The economy is now at full employment, but with higher interest rates and lower private investment.
Keep this in mind: Higher deficits give rise to higher interest rates, which give rise to lower investment. The last bit is referred to as “crowding out.” This is the inherent tradeoff that MMT denies and Krugman defends.
And it’s easy for him to defend it because his model assumes a fixed money supply, which paves the way for the crowding-out effect!
Krugman’s framework treats investment as a simple function of the interest rate. Higher rates mean lower investment, and vice versa. Central banks can juice (or slow) the economy simply by lowering (or raising) interest rates. It’s Pavlovian in its simplicity: stimulus-response.
Keynes’s analysis was more nuanced. Investment decisions were forward-looking, heavily influenced by “animal spirits,” and overwhelmingly dependent on the state of profit expectations. When the profit outlook is sufficiently grim, no amount of rate cutting will entice businesses to borrow and invest in new plant and equipment (think Great Recession).
Conversely, when the outlook is exuberant, businesses may borrow and invest even more, despite the central bank’s desire to slow an expansion by raising interest rates (think savings and loan crisis). The downward-sloping IS curve does not allow for either of these possibilities. Yet both outcomes can, and do, occur.
One final point. Krugman says there is an inherent tradeoff between fiscal and monetary policy. I agree, but not with the tradeoff he describes. Deficits don’t automatically drive interest rates higher, and higher interest rates don’t automatically translate into lower private spending.
That tradeoff is disputed, and not just by MMTers. The tradeoff that matters is the one that Hyman Minsky and James K. Galbraith have highlighted. Monetary policy “works” by driving people into debt. Fiscal policy works by driving income into people’s pockets. As Galbraith put it:
There are two ways to get the increase in total spending that we call ‘economic growth.’ One way is for government to [deficit] spend. The other is for banks to lend. For ordinary people, public budget deficits, despite their bad reputation, are much better than private loans. Deficits put money in private pockets…This is called an increase in ‘net financial wealth’… In contrast, when a bank makes a loan, the cash is not owned free and clear.
That’s the tradeoff that interests me. Should we lean more heavily on (monetary) policy that works by leveraging the private sector’s balance sheet or on (fiscal) policy that works by strengthening it?
So, there you have it. Two no’s, a not really and a yes in response to Krugman’s questions. (Un)fortunately, this will be the last response from me, since my editors have asked me to continue any further discussion offline. I thank Paul for engaging me and am more than happy to do this.
This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.
To contact the author of this story:
Stephanie Kelton at stephanie.kelton@stonybrook.edu
To contact the editor responsible for this story:
Katy Roberts at kroberts29@bloomberg.net
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https://www.bloomberg.com/opinion/articles/2019-03-01/paul-krugman-s-four-questions-about-mmt
Opinions
The left’s embrace of modern monetary theory is a recipe for disaster
The Federal Reserve headquarters in Washington in 2017. (Kevin Lamarque/Reuters)
By Lawrence H. Summers March 4
We’ve seen this movie before.
There is widespread frustration with the performance of the economy. Traditional policy approaches are not delivering hoped-for results. A relatively unpopular president is loathed to an unusual extent by a frustrated opposition party that lost the previous presidential election while running a pillar of its establishment. And altered economic conditions have led to the development of new economic ideas that reflect a significant break with previous orthodoxy.
And now, these new ideas are being oversimplified and exaggerated by fringe economists who hold them out as offering the proverbial free lunch: the ability of the government to spend more without imposing any burden on anyone.
During the late 1970s, this was the story of supply-side, Laffer-curve economics. It began with the valid idea that taxes had important incentive effects and that, in conceivable circumstances, tax cuts could raise revenue. It grew into the ludicrous idea that tax cuts would always pay for themselves, and this view was then adopted by a frustrated extreme wing of a major political party.
George H.W. Bush was right during the 1980 presidential primary campaign to call such thinking “voodoo economics.” In the decades following, that doctrine did substantial damage to the U.S. economy.
Modern monetary theory, sometimes shortened to MMT, is the supply-side economics of our time. A valid idea — that traditional fiscal-policy taboos need to be rethought in an era of low real interest rates — has been stretched by fringe economists into ludicrous claims that massive spending on job guarantees can be financed by central banks without any burden on the economy. At a moment of economic and political frustration, some in the more extreme wing of the out-of-power political party are seizing on the possibility of a free lunch to offer politically attractive ways out of economic difficulty.
Modern monetary theory is fallacious at multiple levels.
First, it holds out the prospect that somehow by printing money, the government can finance its deficits at zero cost. In fact, in today’s economy, the government pays interest on any new money it creates, which takes the form of its reserves held by banks at the Federal Reserve. Yes, there is outstanding currency in circulation, but because that can always be deposited in a bank, its quantity is not controlled by the government. Even money-financed deficits cause the government to incur debt.
Second, contrary to the claims of modern monetary theorists, it is not true that governments can simply create new money to pay all liabilities coming due and avoid default. As the experience of any number of emerging markets demonstrates, past a certain point, this approach leads to hyperinflation. Indeed, in emerging markets that have practiced modern monetary theory, situations could arise where people could buy two drinks at bars at once to avoid the hourly price increases. As with any tax, there is a limit to the amount of revenue that can be raised via such an inflation tax. If this limit is exceeded, hyperinflation will result.
Third, modern monetary theorists typically reason in terms of a closed economy. But a policy of relying on central bank finance of government deficits, as suggested by modern monetary theorists, would likely result in a collapsing exchange rate. This would in turn lead to increased inflation, increased long-term interest rates (because of inflation), risk premiums, capital fleeing the country, and lower real wages as the exchange rate collapsed and the price of imports soared.
Again, this is not just theory. Numerous emerging markets have found, contrary to modern monetary theory, that they could not print money to cover even their domestic currency liabilities. The same is true of industrial economies. The Mitterrand government in France in 1981 and the Schröder government in Germany in 1998 began with MMT-type approaches to policy and were forced to reverse course. The British and Italians both had to call in the International Monetary Fund during the mid-1970s because of excessive reliance on inflationary finance.
Supply-side economics was an unreasonable extension of valid ideas; few today advocate the top corporate tax rate of 46 percent and rates above 50 percent for a substantial swath of taxpayers that prevailed in the late 1970s. So, too, in a new era when the Fed chairman thinks that neutral real interest rates are well below 1 percent, we can approach federal borrowing with much less trepidation than we have traditionally.
But for neither the right nor the left is there any such thing as a free lunch. It’s the responsibility of serious economists, whatever their political party, to make this clear.
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Lawrence H. Summers
Lawrence Summers is a professor at and past president of Harvard University. He was treasury secretary from 1999 to 2001 and an economic adviser to President Barack Obama from 2009 through 2010. Follow
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