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ゴーンもかつてそうだった…組織のトップは概ね「ゴマすり屋」である プーチン、ノリエガ、豊臣秀吉……
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63756
2019.03.30 大原 浩 国際投資アナリスト 人間経済科学研究所・執行パートナー 現代ビジネス
日本史上最大のゴマすりは?
たぶん読者のほとんどは「ゴマすり」という言葉によからぬイメージを持っているであろうし、筆者も同様である。
しかし、「ゴマすり」を「上司の意図を素早く理解し、迅速に実行する。かつ、上司の気持ちを安らかにする」人材と言い換えたらどうだろうか?かなり印象が変わるのではないだろうか?
筆者は静岡県浜松市の生まれだが、少年期・青年期の大部分を関西(大阪・京都)で過ごしたので、「太閤さん」には敬意を払うとともに大いに親しみを感じている。
しかし、それでも、日本史上最大の「ゴマすり」は豊臣秀吉だと思う。有名な「織田信長の草履を胸元で温めた話」は木下藤吉郎の機転をほめたたえる逸話だが、藤吉郎の同僚たちが「このゴマすり野郎!」と叫んだであろうことは確信できる。
また、木下藤吉郎から羽柴秀吉に改名するときには、 織田信長の臣下でも最も有力な武将(藤吉郎の上司とも言える)である丹羽長秀と柴田勝家の「羽」と「柴」をもらった。かなりあからさまな「ゴマすり」だ。
織田信長のような「創業者」を別にすれば、戦国武将といえども、天下という組織のトップにはゴマすりをしなければなれない。否定的な意味だけでは無く、上司に忠実でコミュニケーション能力が高いということである。
カルロス・ゴーンと明智光秀
いわゆる「カルロス・ゴーン事件」については、色々なメディアで多くのコメントがなされているので、裁判で争われている内容などについてはここでは触れない。
むしろ筆者が注視するのはゴーン容疑者の鮮やかな「ゴマすり」ぶりである。
ゴーン容疑者の両親はレバノン人だが、彼自身はブラジル生まれで、中等教育はレバノンのベイルートで受けた。フランスの工学系グランゼコールの1つであるパリ国立高等鉱業学校を卒業しているので、エリート階級に属する。
しかし、同じくレバノン人である「ブラック・スワン」(念のためバレリーナの話では無い。金融の本)で有名なナシム・ニコラス・タレブの著述を読めば分かるように、1975年のレバノン内戦以後の状況が、ゴーン容疑者の内面で「ハングリー精神」を強化した可能性を否定できない。
何しろ、血統正しいフランスのエリート中のエリートであるグランゼコール卒業生の集団の中で生きてきたのである。この集団の中では、ゴーン容疑者は決してエリートではない。
彼が実力を発揮したのは「クビ切り屋」としてである。フランスをはじめとする欧州では、労働組合が強く、労働法の規制も厳しいので、従業員を解雇することは簡単では無い。だから、リストラは「血みどろ」になりがちなので、貴族やグランゼコール卒業生が中心の経営陣は手を汚したくない。
実際、欧州系企業は東京支店などに、「クビ切り屋」を兼ねた支店長を送り込むことがよくある。それまでの支店長は、スタッフとの人間関係もできているし、大概エリートなので自分の手は汚したくないため、リストラの前にさっさと本国に帰る。
新任のクビ切り屋の支店長は、容赦なくリストラを2〜3年かけて行い、そのクビ切りで節約できた人件費の何割かをボーナスとしてもらって、凱旋帰国する。その後は、またエリートが後任の支店長としてやってくるのだ。
ゴーン容疑者は、その汚れ仕事を進んで引き受け上司にゴマをすって気に入れられたため、日本を代表する日産自動車の社長兼「クビ切り屋」として抜擢されたのである。
ただ、機知に飛んだ豊臣秀吉は、「墨俣一夜城」や「中国大返し」のような前向きで大胆な戦略も多用したが、ゴーン容疑者の能力は「コストカット」に尽きる。
企業経営における経費削減努力の重要性は、投資の神様ウォーレン・バフェットも常々強調するが、それだけでは会社は発展しない。
秀吉の成功の重要な点に「部下にもゴマをすった」ことがあげられる。庶民の心理を理解し、彼らをうまく誘導したからこそ、「墨俣一夜城」や「中国大返し」のような劇的な作戦が成功したのだ。豊臣秀吉が「人たらし」と呼ばれるのも当然だ。
それに対して、リストラという汚れ仕事で多くの人の恨みを買ったのに、そのまま帝王のように居座ったゴーン氏が、明智光秀ならぬ西川廣人社長に謀反(クーデター)を起こされたのも当然といえよう。
明智光秀同様、西川社長の「本能寺の変」の動機もはっきりしないが、ゴーン容疑者が多くの人々の恨みをかっていることだけは確かである。ゴマをするべきなのは上司だけでは無く、部下に対しても同様なのだ。部下にゴマをすることができるかできないかが、豊臣秀吉とゴーン容疑者の差といえる。
また、晩年の豊臣秀吉が失策続きで、死後ほどなくして徳川家康に天下を取られることになったのも、権力に酔いしれて「部下にゴマをする」ことを怠ったからかもしれない。
独裁者は自分がやってきたことを部下に求める
世界を見まわしたときに「ゴマすり」として突出しているのが、ウラジミール・プーチンである。
2000年の第2代ロシア大統領就任以来約20年間もロシアの実質的独裁者として君臨してきたので、一般的には「ゴマすり」よりも強面(こわもて)の印象が強いはずだ。
しかし、プーチン氏は元KGBとはいえ、事実上の事務職・書類整理係で、赴任した東ドイツの支局も閉職である。
考えてみれば当然なのだが、冷戦時代のソ連諜報戦の表舞台は、米国や欧州であり、当時ロシア国内も同然の東ドイツには、国際諜報戦略に関わる重要な仕事はまったく無かった。
ただ、当時から「言われたことを忠実にこなす誠実な部下」であるという評判は高かったようだ。
ベルリンの壁崩壊後、ソ連に戻ったが、そのソ連も崩壊してしまう。ロシアになってから、ボリス・エリツィンの配下で頭角を現し、ついには彼の後継者となった。
これは当時、「忠犬だが大した能力は無い」と評価されていたプーチン氏にとっては大抜擢である。KGB時代に収集したエリツィン氏に関する秘密情報を握っていたと噂されるが、当時「弾劾問題」で窮地に立たされていたエリツィン氏が、「「忠犬だが大した能力は無い」プーチン氏であれば、自分を安らかに引退させてくれるであろう」と考えた可能性が高い。
また、パナマの独裁者として有名なマヌエル・ノリエガ将軍(最高司令官)もゴマすりの典型であろう。元々、パナマの国民的英雄オマル・トリホスの忠実な部下として頭角を現した。政権の暗部でもある諜報機関(G2、訓練は米国・CIAが行っていた)の責任者を務め、親分であるトリホスの言うことには、何でもイエスと答え果敢に実行し、政権維持に多大な貢献をした。
しかし、実はその間もCIAをはじめとする海外の諜報機関の二重スパイの役割も果たしており、手にした秘密情報によってオマル・トリホスを脅かす存在となった。
オマル・トリホスは1981年に飛行機事故で死亡し、その後任としてマヌエル・ノリエガが権力を掌握したのだが、この飛行機事故はノリエガ氏やCIAの陰謀であると信じられている。
その後もしばらくは、CIAとのつながりが続いたので、ノリエガ氏は、自分の上司であるトリホス氏とCIAの両方にゴマをすっていたわけである。
しかし、結局は麻薬密売を派手にやりすぎたせいで、米国も放置できなくなり、ブッシュ大統領によるアメリカ軍のパナマ侵攻の際に拘束されることとなった。
プーチン氏はいまだ権力を握っているが、上司にだけゴマをする独裁者の末路は哀れだといえる。
上司にだけゴマをする人間が、苛烈な独裁者になりがちなのは、自分がしたことを他人にも当たり前のように要求するからである。
木下藤吉郎が自らの意志で、懐で上司のわらじを温めるのは問題ないが、上司である織田信長が部下に強要するのは、現代で言えばパワー・ハラスメントである。
晩年は路線を踏み違えたとはいえ、「部下にもゴマをする」豊臣秀吉は偉大であったと、太閤ファンの一人として感じる。
内部で出世した人間は環境の激変に弱い
企業などの組織が順風満帆な時は、「ゴマすり」がトップに上り詰めることが多いし、コミュニケーション能力にすぐれるが判断能力にすぐれているとは限らない彼らが経営のかじ取りを行っても問題は無い。
例えば、飛行機の離着陸は難しいが、一度大空に飛び立てばパイロットはほとんどすることが無い。セスナ機などは、上空で操縦かんから手を離しても、特別な制御をせずにそのまままっすぐ飛んでいく。
しかし、会社や組織は順風満帆の中だけを飛ぶのではない。嵐や台風の中を飛ばざるを得ないこともあるし、離着陸も当然のごとく行わなければならない。
そのような「有事」の際にはコミュニケーション能力に優れた「いい人」は頼りにならない。
むしろ、組織の中の「はみ出し者」が大活躍する。
英国の宰相ウィンストン・チャーチルがその典型であろう。彼は大酒のみのニコチン中毒で、マナーをわきまえず、頑固で自分勝手で融通がきかない人間なので、長らく冷や飯を食っていた。最近、「ウィンストン・チャーチル」(2018年)という映画が公開されたが、好意的に描いてもその程度で、絶対に友達にはなりたくない類の人物である。
しかし、だからこそ、ネヴィル・チェンバレンのようなコミュニケーション能力にすぐれた英国紳士たちの「ナチスとの平和的融和」の声を押し切って「徹底抗戦」を行うことができたのである。
はみ出し者を抱えることはリスクヘッジである
最近、内部で後継者を育てることができず、外部から「プロ経営者」なるものを移入する例があるが、これは恥ずべきことである。
「企業の経営は、企業の内部を熟知した人間が行うべきである」と、投資の神様・ウォーレン・バフェットも常々強調している。
ただ、順風満帆な時には好都合な「ゴマすり」を大量に養成している企業だと、ウィンストン・ストンチャーチルのような人材が有事に現れてこないのも確かである。
平時には、「お荷物」とさえ思える人間が、有事の際に大活躍するのは、歴史を振り返っても明らかである。だから、「はみ出し者」を抱える懐の深さこそが、有事の際の企業(組織)の命運を左右するのである。
(一部敬称略)
いわゆる「カルロス・ゴーン事件」については、色々なメディアで多くのコメントがなされているので、裁判で争われている内容などについてはここでは触れない。 むしろ筆者が注視するのはゴーン容疑者の鮮やかな「ゴマすり」ぶりである。https://t.co/HIC4S2ion9 #マネー現代
— マネー現代 (@moneygendai) 2019年3月30日
いろんな人と話してきたけど個人的に自分はゴマすり屋のほうが向いていると思ってます。まだまだだけどw ゴーンもかつてそうだった…組織のトップは概ね「ゴマすり屋」である https://t.co/5SHiqm34ih #マネー現代
— ABSさん@見た瞬間に即決した (@ABS5SBA) 2019年3月30日
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