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ルネサスが隠す、異例の2カ月工場停止の“不都合な理由”…経営危機下で巨額買収の暴挙
https://biz-journal.jp/2019/03/post_27254.html
2019.03.28 文=湯之上隆/微細加工研究所所長 Business Journal
■前代未聞の操業停止
車載半導体マイコンの売上高で世界第3位のルネサス エレクトロニクスが、国内外の13工場で前代未聞の操業停止に踏み切る。特に国内主要6工場の停止期間は、最大2カ月に及ぶという。
帝国データバンクによれば、ルネサスの一次下請けは390社、二次下請けを含めると3323社にのぼり、これら下請けの総従業員数(非正規社員を除く)は約20万5800人になるという。ルネサスの社員は約2万人なので、その10倍もの規模の従業員に操業停止が影響することになる。この数字からも、ただごとではないことがわかる。
では、なぜルネサスは操業を停止しなくてはならないのか。
新聞やテレビでは、米中ハイテク戦争により中国経済が失速したこと、特に産業向け半導体が落ち込んでいること、さらには過剰在庫がルネサスの財務を圧迫していることなどに原因があると報じられている。しかし、本当にそうなのだろうか。
筆者はルネサスに関する各種のデータを分析したが、現在のところ、上記の原因ではルネサスが操業を停止する事情を説明できない。しかし、窮地に陥る兆候は2018年後半にすでに現れていることを発見した。そして、その原因が2017年2月に約3200億円で買収した米半導体メーカーのインターシルにあるのではないかと考えている。本稿で、詳細を論じたい。
■中国経済の失速は関係していない
ルネサスの地域別の半導体売上高推移を図1に示す。2011年に約6200億円あった日本の半導体売上高は、2016年に約2100億円にまで落ち込み、その後やや回復して2018年には約3000億円になった。
一方、中国における半導体売上高は、2011年に約1700億円あったが、2016年に676億円に落ち込み、その後、1500億円超に増大している。確かに、ルネサスの全売上高に占める中国ビジネスの割合は、約20%を占めるまで大きくなってきている。しかし、中国経済の失速によって、ルネサスの中国ビジネスに影響が出ている気配はまったくない。したがって、ここには、国内外13工場が操業を停止する根拠は見当たらない。
■産業向け半導体の落ち込み
次に、ルネサスの用途別の半導体売上高を見てみよう(図2)。ルネサスは2014年第1四半期と2017年第2四半期の2回、セグメントの分類を変えている。
まず、2010年〜2013年までは、主として自動車などに使われるマイコンと呼ばれる半導体、アナログ&パワー半導体、デジタル家電などに使われるシステムオンチップ(System on Chip、SoC)の3本柱で売上高が構成されていた。
このなかで、SoCが赤字を垂れ流す元凶であった。四半期毎の売上高で2010年に約800億円あった売上は、2013年には半分の約400億円に減少している。
一方、ルネサスの大きな収益源であるマイコンは、2014年以降は「自動車向け半導体」とセグメント名を変え、四半期毎の売上高では、約800億円から約1000億円へとビジネスを拡大させている。
また、2013年まではアナログ&パワーおよびSoCと分類していた半導体は、2014年以降は「汎用向け半導体」に統合された。そして、汎用の中のSoCをさらに縮小することにより、2014年第1四半期に約1200億円あった売上は、2016年には800億円前後にまで減少させた。
さらに、2017年第2四半期以降は、汎用向け半導体を「産業向け」と「ブロードベース向け」に分けた。この内の産業向け半導体は、2017年第4四半期に約600億円の売上高を記録したが、その後、減少し、2018年第3四半期には約420億円になった。
確かにメディアが報じているとおり、産業向け半導体は約最大600億円から約420億円に減少している。しかし、この程度の売上高の減少で、国内外の13工場が操業停止になるとは考えられない。
■過剰在庫の影響
2016に発生した熊本地震で、ルネサスの熊本工場は大きな損害を被った。それを契機にルネサスは、大震災が起きた時でもビジネスに影響が出ないように、常に多めに在庫を確保しておくことにした。要するに、ルネサスは事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan )を強化したわけだが、それが過剰在庫を持つ原因となり、ルネサスの財務を圧迫しているのではないかと、多くのメディアは報じている。
ルネサスの「2018年12月期 第4四半期・通期プレゼンテーション」資料には、ルネサスの在庫状況が示されている(図3)。それによれば、ルネサスは四半期ベースで仕掛品と完成品の合計で、最大約1500億円の在庫を抱えていることがわかる。
確かにこの規模の在庫は、ルネサスの財務に悪影響があるかもしれない。その証拠に、前掲資料には2017年の第1四半期に90%を超えていたルネサスの主要工場の稼働率が、2018年の第4四半期に60%程度まで低下したことが示されている(図4)。
しかしわからないのは、ルネサスの売上高は熊本大地震直後の2016年第3四半期に若干悪化したが、すぐに回復しており、その後も安定している(図5)。さらに、営業利益率も会計基準を変更した影響で2017年第2四半期に4.8%まで低下しているが、それを除けば概ね10%以上をキープしているのである。したがって、過剰在庫を一掃するために工場の稼働率を低下させたことが、今回のルネサスの窮地を招いたとは思えないのである。
■気になる2018年以降の営業利益率の低下
ここまで論じてきたように、中国経済の失速、産業向け半導体の落ち込み、過剰在庫の影響では、ルネサスが操業を停止しなければならない理由が説明できない。
しかし、図5のグラフで2018年後半に、営業利益率が急落していることが気になる。2018年第3四半期に7.3%、第4四半期には5.4%にまで低下している。また、2018年第2四半期に260億円を超えていた最終損益も、第3四半期に75.6億円に減少し、第4四半期には24億円の赤字に転落してしまった。
なぜ、ルネサスの営業利益および最終損益が大きく毀損したのか。
■インターシルの買収が原因ではないのか
ルネサスは、米半導体メーカーのインターシルを2017年2月に約3200億円で買収した。インターシルの業績は、まだルネサスの決算には反映されていないが、この大きな買い物がルネサスの懐事情に影響しないはずがない。
そのインターシルの地域別半導体売上高構成比を見てみると、アジア向けが急拡大しており、2009年以降は約75%を占めるようになる(図6)。そのほとんどが、中国向けと見られる。
ルネサスはインターシルを買収する理由として、アナログ半導体の強化を強調しているが、筆者には拡大する中国半導体市場を攻略するための橋頭堡を目論んでいるように見える。
ところが、2018年以降、激化している米中ハイテク戦争の影響で、本当に中国経済が失速しつつある。中国ビジネスを主力とするインターシルは、その影響をモロに受けてしまったのではないか。そして、ルネサスの経営陣は、「インターシルの買収は失敗だった」ことを認めたくないために、本当の理由を公表しないのではないか。
さらにルネサスは2018年9月に、米Integrated Device Technology(IDT)を約7300億円で買収すると発表した。ルネサスは、インターシルとIDTの合計で1兆円を超える買収資金を投じることになる。そして恐ろしいことに、IDTのビジネスの約70%が、中国を主力とするアジア向けになっている(図7)。
ルネサスは、IDTの買収を即刻取りやめるべきである。
その理由としては第一に、今ルネサスは国内外13工場の操業を停止するほど財務状況が悪化している。まともな経営者なら、企業の存続が危ぶまれる時期に、このような散財をすべきでないことがわかるはずである。
第二に、米中ハイテク戦争の行方がどうなるか誰にもわからない。その展開によっては、中国経済がよりいっそう悪化する可能性がある。そのようなときに、中国ビジネスを主力としている企業を買収するべきではない。リスクが大きすぎるからだ。ルネサスは、インターシル買収と同じ過ちを犯してはならない。下手をすると、本当に会社を畳むことになりかねない。
(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)
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