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2019年3月26日 The Wall Street Journal
一流大学行く価値あるか?ないかも
テキサス大学
Photo:iStock/gettyimages
――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター
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われわれはどの大学を出たかが成功のカギになるとうんざりするほど聞かされている。では、一部の親が法律に違反してでも子供を名門大学に入れようとするのは当然のことなのか?
無論、こうした親が大学のコーチや入試管理者に賄賂を送ったとして米連邦捜査局(FBI)に起訴されたのは行き過ぎたケースだ。だが法律を順守している親も無縁ではない。中には誰もがうらやむトップ校に入れるため、自分の母校に数百万ドル寄付したり、1時間1000ドル(約11万円)の受験コンサルタントを雇ったりする親がいるからだ。
一方で、これは経済的な観点からは意味をなさない。大学の学位が高校の卒業証明書に対して収入面で大幅かつ持続的な格差をもたらす証拠はある。だが一流大学であるがゆえにその差が広がるわけではない。もちろん例外はあるが、一流大学の卒業後に成功した人々の大半は、仮にそうでない教育機関に通っていたとしても成功した可能性が高い。つまるところ、裏口入学を巡って先週起訴された親たちの下に生まれた子供は裕福で、有利な人脈があり、子供のためならほぼ何事もいとわない献身的な親がいるということだ。これは出身大学がどこであっても成功へのレシピとなるだろう。
それゆえ、合法的もしくは不正な手段で子供をトップ校に入れようとする親に向けられた憤激は、理解できなくはないがピントがずれている。カントリークラブ(スポーツと社交のための会員制クラブ)と同様、一流大学への進学はステータスの証明であってその源泉ではない。他人の富によってはじき出された子供は栄誉を失うだけで、未来を失うわけではない。
エリート大学に通う優秀で野心的な子供たちがその後順調な人生を送るという事実は、前者と後者の因果関係を示すわけではない。それが最も明確に立証されたのは数学政策研究所のステイシー・デール氏およびプリンストン大学のアラン・クルーガー教授による、今や有名になった2つの論文だ。
先週末に58歳で死去したクルーガー氏は米国で最も尊敬され、多くの実績を残した労働経済学者の一人だ。同氏は曖昧なデータを用いて革新的な実験を行い、社会の通説をたびたび覆してきた。
大学に関する研究もその一つだ。同氏とデール氏は大学の出願先リストとその後20〜30年間の社会保障庁への提出資料に基づく収入額の関連性を調べた。その結果、生い立ちや学業成績、テストの点数が近く、出願した一流校・非一流校のリストが一致した2人の学生を比べると、1人が一流校に進学し、もう1人が進学できなかった場合でも、その後の収入額は同等であることがわかった。出願先リストは野心の表れであり、実際に通った大学よりもそれが成功の強い原動力となると両氏は主張する。「出身大学のランクで得られるリターンはほぼゼロに近い」と両氏は2011年に述べている。
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通った大学によって将来の収入にほぼ差が出ないという事実は、大学の質が重要でないことを意味するのではない。大学の質はむしろ、特定の学生の達成感を高めるのにどのくらい効果的かで決まるのであり、大学のランクと同義ではない。デール氏はこう指摘した。「大学の教員は指導力ではなく、研究成果に基づいて採用される。一番良いとされる大学に最良の教師がいるとは限らない」
テンプル大学のダグ・ウェバー准教授(経済学)は、デール氏とクルーガー氏が調査対象としたエリート大学は学術研究の面で非エリート大学をわずかに上回るだけだと述べた。一方、大学の質の差が顕著であれば、収入にも著しく影響するという。さらに、ある調査によるとテキサス大学に通うことで他のテキサス州立大学の出身者を上回る収入格差は生じなかったが、別の調査ではフロリダ大学に通うことで他のフロリダの州立大学出身者と比較して大きな収入格差が生じていたと指摘。ウェバー氏は、フロリダ大学がフロリダの他の州立大学よりはるかに高いランクにあるのに対し、テキサス大学と他のテキサス州立大学のランクの差はわずかだからだと述べた。
同じ現象は外国にも見受けられる。米国以上に親がエリート大学への進学に熱心な国々はある。こうした親が米国人ほど子供の入学に費用をつぎ込むかどうかは分からないが。
ノルウェー生まれで現在はシカゴ大学で経済学教授を務めるマニュ・モグスタット氏ら3人の共著者は、ノルウェーでクルーガー・デール両氏と同様の調査を実施した。その結果(年齢・性別・高校の成績による調整後)によると、エリート大学出身者の収入はそうでない人々をわずかに上回ってはいたが、それよりはるかに重要なのは専攻分野の違いだった。理系の卒業生は人文系の卒業生の3倍近い収入を得ていたからだ。
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エリート大学出身であることが将来の収入にほぼ響かないのであれば、そのどれかに子供を押し込もうと多額の金を費やし、不安にさいなまれるのは理不尽なのではないか。あるいは単に親が経済以外の要因に重きを置くことも一因かもしれない。例えばパーティーで自慢話ができるとか、子供が特定の社会集団の中で結婚相手を見つけるチャンスがあるとかいうことだ。
そうした大学に入学するのは、宝くじを買うのにも似ている。ビジネスや政治の世界でトップに上り詰める可能性は常にかなり低いが、もし未来のフォーチュン500企業経営者や米大統領と同じ大学の寮にいたとなれば、その可能性が少しは高まるかもしれない。
ただ、富裕層の利点ばかりに目を奪われると全体像を見失うだろう。デール・クルーガー両氏は次のような事実にも気づいた。アフリカ系米国人やヒスパニックの学生と、両親が大学卒ではない学生は、一流大学に通ったことで実際に収入が大きく伸びていた。それは恐らく、他の方法では得がたい貴重な人脈を広げるチャンスに恵まれたためだと両氏は分析している。
(The Wall Street Journal/Greg Ip)
https://diamond.jp/articles/-/197870
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