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元金融庁幹部が地銀の副頭取に就任!異例人事にざわつく銀行業界
https://diamond.jp/articles/-/197699
2019.3.25 週刊ダイヤモンド編集部 田上貴大:記者
奈良県にある南都銀行の本店。「壊せ、南都。」という先鋭的なキャッチコピーの看板が設置されている Photo:森田直樹/アフロ
2月下旬、ある地方銀行の首脳人事に業界がざわめいた。奈良県に本店を構える南都銀行が元金融庁幹部の石田諭氏を招聘し、6月から副頭取に据えると発表したからだ。
旧第一勧業銀行出身の石田氏は経営共創基盤に在籍中、前金融庁長官の森信親氏に請われて金融庁に出向したという人物。石田氏は2013年から18年までの間、地銀に経営改革を促す地域金融企画室長など要職を歴任した。石田氏の「鋭く物申す」(金融庁幹部)姿勢が、地銀に容赦なく自己変革を迫った森前長官に評価され、「任期延長となった」(同)という。
そんな“森金融庁”の実力者が、監督対象だった地銀のナンバー2に、しかも44歳の若さで就任したため業界の耳目を集めたわけだ。
就任の経緯について、南都銀は「今年1月ごろにこちらから石田氏に打診した」(経営企画部)と明かす。ただ、伏線は数年前に敷かれていたもようだ。
石田氏は一時期、地銀の検査を統括する立場にいたが、当時の検査対象の一つが南都銀だった。そのときに南都銀の橋本隆史頭取と接点を持ったという。
18年7月に森氏が長官を退任すると、後ろ盾を失った石田氏も金融庁を去り、経営共創基盤に出戻った。そこで、以前から経営のアドバイザーを外部から積極的に登用していた橋本頭取と、自身の再就職先を模索していた石田氏との趣旨が合致し、今回の人事が実を結んだという。
懸念される現場への悪影響
古巣もこの人事には「驚いた」(前出の金融庁幹部)が、地銀改革の観点から「金融庁の上層部も期待している」(関係者)ようだ。
だが、楽観ばかりもしていられない。気掛かりなのは、南都銀側の現場のモチベーションだ。この懸念に対し、「対策は取ってはいない」(経営企画部)とし、現段階では現場から不満の声は聞こえてこないという。ただ、昨年代表取締役に就いた「有望株」(南都銀関係者)の役員が、石田氏の就任と同時に、1年で退任するという“政変”も起きてはいる。
昨今、地銀全体の業績悪化が著しく、県内唯一の地銀として強固な経営基盤を持つ南都銀でも、17年からの中期経営計画で「変革と挑戦」を掲げ、行員の意識改革に着手中だ。石田氏の登用はこの流れを象徴する出来事に映るが、数字が伴っていないのが現状だ。
本業のもうけを示す「業務純益」は、17年3月期の147億円から、18年3月期は106億円となり、今期は4〜12月までの累計で52億円と振るわない。
4月以降、石田氏は経営企画や人事などの中枢機能に加え、デジタル推進という新領域を同時に所管する。革命に反発は付きものというが、今回の異例の人事を含め一連の改革が実を結ぶか否かは、“扇の要”を担う石田氏の手腕次第といえる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大)
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