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米FRBが開けた「催促相場」の扉、日銀手詰まりなら円高はどこまで進むか
https://diamond.jp/articles/-/197661
2019.3.21 村田雅志:マーケットストラテジスト ダイヤモンド・オンライン
ハト派的決定を下したものの、パウエルFRB議長は米国経済に関し楽観的な見方を示した。Photo: Federal Reserve
3月19日から20日にかけて開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)での決定は、すでに織り込まれていたものが多く、市場関係者にとって大きなサプライズとならなかった。ただ、今回のFOMCを受け、米国株式市場が米連邦準備理事会(FRB)に利下げを催促する可能性もあり、為替市場ではドル売り先行の展開も視野に入る。
FRBは20日、FOMCでフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を2.25〜2.50%で据え置くことを全会一致で決定。FRBの保有資産の縮小(いわゆる量的引き締め)は、今年5月より縮小ペースを毎月最大300億ドルから最大150億ドルに減速させ、経済と金融市場の情勢が予想通りに推移すれば、同年9月には停止することも併せて発表した。
FOMCメンバーによる政策金利見通し(ドット・チャート)では、回答者17人中11人が今年(2019年)の利上げが見送られること(FF金利の据え置き)を示唆。来年(2020年)も7人がFF金利の据え置きを見込んでいることが示された。
パウエルFRB議長は、FOMC声明やドット・チャートの公表後の会見冒頭で、米国経済は好状態にあるとしながらも、状態を維持するために金融政策ツールを使用し続ける意向を表明。FRBの保有資産規模については、必要な水準を上回っている可能性を認めながらも、当面は一定に保つ考えを示し、雇用とインフレの見通しを通じた金融政策の変更には、しばらく時間がかかるとの見方も示した。
FOMCでの決定を受けて為替市場ではドルが下落。ドル円はFOMC声明の公表後に111円台半ばから111円ちょうど近辺に下落。その後もドル円はドル売り優勢の展開となり、一時は110円台半ば近辺まで下げたが、ニューヨーク市場終盤には110円台後半に持ち直した。
今回のFOMCで決まった追加利上げと量的引き締めの休止は、昨年までのFOMCと比べればハト派的であり、FOMC声明公表後にドルが下落したことも自然な反応と言える。
しかし、今年1月のFOMC声明や、その後のパウエル議長の発言を把握していれば、今回の決定はある程度予想されたものであり、大きく騒ぎ立てることもない。FOMC決定公表後のドル円の下げが(せいぜい)1円程度だったことも、こうした見方を裏付けている。
株安とトランプ大統領の圧力が
FRBの決定に影響を及ぼした可能性
むしろ注目すべきは、FOMCがハト派的な決定をしたにもかかわらず、パウエル議長やFOMCメンバーが米国経済の先行きに対し楽観的な見方を示したことである。パウエル議長はFOMC後の会見で、(慎重な言い回しを使いながらも)米国経済のファンダメンタルズは非常に強いと語り、現状や先行きについて前向きな見方を示した。
ドット・チャートと同時に公表された米国経済見通しでは、今年の成長率が2.1%と昨年12月の2.3%から下方修正される一方、失業率は3.5%から3.7%に上方修正されたが、これは足元での経済指標(景気減速)の結果を織り込んだためだろう。インフレ(コアPCE)見通しは2.0%で変わっていない。
同議長が会見で、FF金利が現在、中立とされる広い範囲に収まっており、利上げ休止など今回の決定が足元の経済見通しに適していると述べたことや、「忍耐強く(patient)」といういつものフレーズを使いながら、金融政策の変更を急いで判断する必要性はなく、金融政策見通しの変更は当面先となるだろうと述べたことも興味深い。一部市場関係者が指摘する年内の利下げの可能性を暗に否定したかったのかもしれない。
ただ、これをもって、FRBはFF金利を年内維持し、来年は追加利上げを視野に入れるとみる市場関係者は少ないだろう。今後も株式市場関係者を中心に、年内の利下げ開始を見込む声が続くと思われる。
そもそも今回(3月)のFOMCで利上げが休止されたきっかけは、米景気の減速などではなく、昨年12月の米国株下落とトランプ米大統領のFRBに対する圧力との見方が根強い。昨年12月のFOMCでは、追加利上げが決まり、声明文では「漸進的な利上げが整合的」との文言が維持され、ドット・チャートでは今年(2019年)には2回の追加利上げが示唆された。パウエル議長は会見で量的引き締めのペースは非常に小さく、金融政策の正常化はスムーズで変更するつもりはないと語るなど、緩やかなペースでの金融引き締めを続ける意向を示していた。
しかし、12月FOMCを受けて米国株は続落。12月下旬には、トランプ大統領が、パウエル議長への不満を募らせ、同議長の解任を話し合ったと報じられるなど、利上げを続けるFRBに対する圧力を強めたとされた。
昨年12月からわずか1カ月後の今年1月のFOMCでは、金融政策の現状維持を決めたものの、声明文では「漸進的な利上げが整合的」との文言が削除。代わりに「FOMCは、今後の政策調整を決定するうえで忍耐強くなる」との文言が挿入され、追加利上げ休止を示唆した。
今年に入り世界経済の先行き不透明感が強まったのは事実だが、これまで着々と続けてきた金融政策の正常化を急転換するほど米経済のリスクが高まったとみるのは無理がある。タイミングを考えれば、米国株安とトランプ大統領の圧力が、FRBの意思決定に影響を及ぼしたとみるほうが自然である。
パウエルFRBが催促相場に応じれば
1ドル105円台への円高進行も視野
こうした見方が市場関係者の間で共有される限り、FOMC声明やパウエル議長の発言が、市場関係者に強い影響力を及ぼすとは期待できず、米金融政策の先行きは米国株の動向次第となる。
今回(3月)のFOMCの決定公表後、米国株は下げ幅を縮めたものの、後半には再びマイナス圏に沈んだ。ダウ工業株30種平均は141.71ドル安の25745.67で終わった。利上げ休止を受けて金融株が指数を押し下げる展開ではあったものの、米国経済の先行きに対し楽観的な見方を示したパウエル議長に信認があれば、米国株が下げて終わることもなかったかもしれない。
今後の米国株は、利上げ休止というサポートと、欧州や中国を中心とする世界景気の減速感の強まりの中で方向感が見いだしにくい展開となりそうだが、先行き不透明感を背景にFRBに利下げを迫る「催促相場」の様相を強める可能性も考えられる。株式市場からの催促にパウエル議長が応える行動をとれば、米国株の一段高が確認できるまで市場の催促は続くことになるだろう。
この場合、為替市場ではドル売り先行の展開が容易に予想される。日銀の追加緩和を期待する声も一部にあるが、量的拡大は上場投資信託(ETF)に限られ、円高を阻止できる水準でマイナス金利を大きく広げることを期待するのは難しい。ドル安相場に日銀の手詰まり感が共有されると、ドル円は年始早朝に記録した105円近辺が当然、視野に入る。
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