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5Gが破壊的インベーションにならない理由 AbemaTV地上波超える野望 どん底、JR貨物を再生に導いた「運命の2日間」
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/579.html
投稿者 うまき 日時 2019 年 3 月 19 日 13:14:19: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

5Gが破壊的インベーションにならない理由
03.03.2019

Photo: renegadetribune.com

 Sub-6Gと呼ぶ6GHz以下の領域の擬似的5Gを5Gとして、詐欺的商法を行うキャリアがある。例えばATTはLTE-Advancedを5Gサービスとしているが、LTE-Advancedは4Gに区分されるべきものである。国内では各社が5Gへの積極的な取り組みをみせているが、各社の5Gネットワーク構築へのロードマップは不透明で、要するに技術課題が多すぎて長期計画が立てられない状況の中で、5Gネットワークが独り歩きしていることに危惧を覚える。

5Gの致命的な欠点
 5Gをミリ波(28GHz)と定義するならば、広域通信媒体に使うには致命的な欠点がある。直進性が大きく吸収減衰が大きいために、建物の壁や大気、雨などで減衰してしまい回り込みがきかないため、それこそ無数の送受信機器を設置しなければならないからだ。5Gネットワークは仮にできてもアンテナだらけの街になり、郊外での設置は期待できない。残念だがこの致命的な欠点は周波数に特有の、つまり固有の問題であり、技術開発でなんとかなるものではない。いたるところに小型の送受信システム配置は可能で、無数のスモールセルをリンクしてあたかも広域通信のように見せかけることはできても都市部に限られるだろう。

 慎重なドコモも当初はその進化形であるeLTEを維持する戦略で、スタンドアローン5Gと呼ばれる4Gネットワークに依存しない5Gネットワーク構築は最終段階としてとらえ、4Gの広域ネットの傘の中に5G基地局展開を具現化するスモールセルで覆い尽くす構想である。スモールセル間の同期通信には、Facebookの開発した通信ソフトなど、特殊なソフトやアレイアンテナなどの専用送受信機材が必要になり、5Gネットワークの展開は相当長い期間、スポット的な利用に限られる。

国内企業は焦る必要はない
 一方でファーウエイが基地局機材や5G端末の販売を急いでおり、それに遅れをとったとして国内に危機感を煽る記事が溢れかえるが、焦る必要は無用だ。つまり5G広域展開には基本的な問題があり、インフラ構築に時間がかかったあげく実用化できない可能性も否定できないからだ。

 5Gが4Gから独立するフェーズは最終段階とされるが、明らかに4Gを置き換えることは不可能にもかかわらず、4Gを置き換えるイメージ戦略に無理がある。米国では1万個以上の衛星で広域をカバーしようとする企業も数社出てきたが、たとえ衛星を使っても大気の吸収でミリ波の伝搬特性が改善されるわけではない。

 結論をいえば5Gの代名詞とされるミリ波(28GHz)は、原理的に広域通信は適さないない媒体なので、高速大容量通信の意味があるアプリケーションやコンテンツ開発(ユーザーの希望があればの話だが)に時間をかけるべきだと思う。スタンドアローン5GネットワークはIoTで社会を変革するインパクトがあるとされるが、広域ネットワークが実現できての話であり、現時点ではインフラに不安を抱えた不透明なビジョンにすぎない。

破壊的イノベーションとならない理由
 5Gの周波数帯はこれまで商業サービスに使われてこなかったことから、健康被害リスクアセスメントが不十分である。それでも、民間主導で「5G=IoTによる産業革命」の名の下に進められている。キャリアや機材メーカーなどIT企業の新規ビジネス開拓の都合が見え隠れする。蛇足だがスマフォ市場は明らかに飽和状態に達していて、折りたたみスマフォや怪しげな5G対応端末を歌ってもスマフォと4Gで新たな価値が生まれたかつての市場の勢いを取り戻せるとは思えない。

 同様にIoTの代表であるコネクテッドカーが標準になっても車の販売が増えるとも思えない。要するに過度に期待したIT産業の限界が見えてきたため、突破口としての新たに付加価値を考え出したととれる。4Gとスマフォが連携して働いた結果、クリステンセンの定義する破壊的イノベーションとなったが、破壊的イノベーションになるためには、万人がその登場を歓迎するというヒューマンファクターがあったはずだ。それがない「メーカーに踊らされた」イノベーションでは破壊的にならない。誰でも電磁波による健康被害を避ける権利があるが、スタンドアローン5Gネットワークの中で生活する人々は、「受動喫煙」のように電磁波漬けになる。これを万人が好まない限り破壊的イノベーションにはなり得ない。


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https://www.trendswatcher.net/211118/geopolitics/5g%E3%81%8C%E7%A0%B4%E5%A3%8A%E7%9A%84%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E7%90%86%E7%94%B1/


 


 
ビジネス2019年3月18日 / 13:11 / 4時間前更新
アングル:
若者の拡散力に賭けるAbemaTV、地上波超える野望
Reuters Staff
3 分で読む

[東京 18日 ロイター] - 10代の女子高生から絶大な支持を集める雑誌「Popteen(ポップティーン)」の表紙を飾る専属モデルの座を獲得するのはだれか──。2月22日夜、都内のテレビスタジオで「あやみん」や「きょうきょう」など可愛らしいニックネームを持つ10代のモデル12人が、緊張した面持ちでその瞬間を待っていた。

<若者をターゲットに>

インターネットテレビ「AbemaTV」で人気急上昇となった「Popteenカバーガール戦争」は、日本のテレビの新しい方向性を示しているのかもしれない。

米国の新興メディア、ネットフリックス(NFLX.O)などはコストがかかる「シリーズもの」のドラマやスターが出演する映画などを配信することで伝統的なテレビ局のビジネス領域に侵食しているが、AbemaTVは低予算の中で、ソーシャルメディアで拡散力を持つ世代に焦点を当てた番組づくりを進めている。

この戦略は何百万人もの若い視聴者を引きつけるとともに、もうかるビジネスに大化けする可能性があるとして、広告主や業界アナリストも納得させた。

地上波などのテレビ局は、全世代を意識した番組づくりをしているため、若者にとっては物足りなく感じることもある。

これに対し、AbemaTVは若者に的を絞っているだけに展開が速い。サイバーエージェント(4751.T)の谷口達彦執行役員(AbemaTV編成制作本部制作局長)は「情報処理に長けた世代なので、問題なくついてくる」と指摘。ドラマは「イメージだが、2倍の脚本をぎゅっと詰め込んでいる感じだ」と語った。

<赤字続きも先行きに自信>

AbemaTVは、2015年4月にサーバーエージェントとテレビ朝日(9409.T)が共同で立ち上げた。

サイバーエージェントは、インターネット広告やゲームとともに収益の柱として育てたい考えだが、足元ではまだ実績を出せていない。AbemaTVの2018年9月期の営業損益は、先行投資がかさみ208億円の赤字だった。2019年9月期も200億円の営業損失を見込んでいる。

インターネットテレビを巡っては、海外プレーヤーの参入も相次ぎ、競争環境は厳しさを増している。

彼らは保有する豊富なコンテンツに字幕を付けて提供するだけでなく、ネットフリックスの恋愛リアリティーショー「テラスハウス」のように日本発の番組も提供しながら、日本の視聴者を取り込んでいる。

しかし、サイバーエージェントの藤田晋社長は、事業の先行きに自信を示す。

AbemaTVは2016年4月の開局以来、ダウンロード数が3700万件にのぼり、1週間あたりの視聴者数(WAU)はこの年末年始に918万人に達した。

ゴールドマン・サックス証券のアナリスト、杉山賢氏は2020年9月期に事業が黒字転換し、2024年9月期に売上高が1621億円、営業利益が721億円になると予想している。

最終消費者が対象の企業は、インターネットで効果的な広告機会を模索している。その際、問題となるのが広告を出すにふさわしいコンテンツ不足だ。杉山氏は「インターネットではプロがつくるコンテンツが必要とされているが、特に日本では不足している」と語った。

良質なコンテンツを提供できれば、広告売り上げを伸ばせる余地は大きい。

<ソーシャルメディアでの反応>

AbemaTVは、オリジナルの生放送コンテンツやニュース、音楽、スポーツなど約20チャンネルを無料で視聴できる。ソニー(6758.T)の4Kテレビ「ブラビア」などにAbemaTVボタンを搭載、伝統的なテレビ局の番組視聴者も取り込みながら、視聴者数を増やしている。

有料ビデオやダウンロード機能などを備えた月960円の有料会員は、この1年間で約8万人から35万8000人まで増えた。今後は広告と課金の2本柱で収益を拡大していく。

AbemaTVのヒット番組には、元SMAPメンバーが出演した「72時間ホンネテレビ」や、恋愛リアリティーショー「オオカミくんには騙(だま)されない」シリーズなどがある。

「オオカミくん」は本気で恋をしたい女子高生が、イケメン男子とデートを繰り返しながら恋に落ちて行くまでを追いかける番組。

イケメン男子の中には、気を引くために嘘をついている「オオカミくん」が紛れ込んでおり、視聴者は投票で「オオカミくん」を脱落させることができる。

「Popteen」番組も視聴者参加型で、視聴者ランキングは専属モデル選びの重要な要素となった。制作局の月岡愛理氏は「単に可愛いというよりも、自分の弱いところなどをさらけ出した子が結果的に得票につながった」と話す。ソーシャルメディアでの反応が番組の行方を盛り上げた。

<テレビに迫るネット広告>

サイバーエージェントが60%、テレビ朝日が40%を出資して設立したAbemaTVは昨年10月、電通(4324.T)と博報堂DYメディアパートナーズへの第三者割当増資を実施。現在の出資比率は、サイバーエージェントが55.2%、テレビ朝日が46.8%、電通が5.0%、博報堂DYメディアパートナーズが3.0%となっている。

この出資により、AbemaTVは広告拡販に加え、コンテンツ調達の強化を目指す。

電通は2月、2018年のインターネット広告費が前年比16.5%増の1兆7589億円になったと発表した。5年連続の2桁成長となり、地上波テレビ広告費1兆7848億円に迫る数字となっている。

電通の曽我有信・最高財務責任者(CFO)は「新しいメディアを育てていきたい」と語った。インターネットテレビが、伝統的テレビを超える日はそう遠くないのかもしれない。

サム・ナッセイ 翻訳編集:志田義寧 
https://jp.reuters.com/article/abema-tv-idJPKCN1QZ09R

 


日銀の国債保有シェアが低下、異次元緩和開始の13年以降で初
日高正裕
2019年3月19日 10:59 JST
• 金利低下による時価変動と短期国債買い入れ減少が影響−日銀
• 海外は保有残高134兆円、シェア12.1%といずれも過去最高

日本銀行の国債保有比率(シェア)が2013年の異次元緩和開始以降で初めて低下した。日銀が19日発表した昨年10−12月の資金循環統計(速報)で明らかになった。
  日銀が昨年12月末時点で保有する国債等(国庫短期証券と国債・財投債の合計)が市場全体に占める比率は42.99%と昨年9月末(43.00%)からわずかに低下した。国債等の残高は前年同期比1.6%増の1111兆円と過去最高を更新。日銀の保有残高も478兆円と過去最高を更新したが、シェアは12年3月末以来の減少に転じた。
  調査統計局の二宮拓人経済統計課長は日銀の保有シェア低下の理由について「日銀が保有する国債と市場全体の構成が異なるため、金利低下による時価変動が影響したほか、日銀が短期国債の買い入れを減らしていることが影響した」と説明した。
  日銀は13年4月、2%の物価目標実現を掲げ異次元緩和を開始。14年10月の追加緩和で国債保有残高の年間増加ペースを80兆円まで拡大したが、16年9月に金融調節の操作目標を量から金利に変える長短金利操作を導入。国債の年間増加ペースは「めど」として80兆円という数字は残したが、足元では30兆円前後まで買い入れペースを縮小している。
  日銀が大量の国債を買い入れる異次元緩和の下、預金取扱機関(金融機関)は国債保有残高を落としており、12月末の残高は167兆円と過去2番目に低い水準で、シェアは15.1%と過去最低となった。対照的に買い入れを増やしているのが海外で、保有残高は134兆円、シェアは12.1%といずれも過去最高を更新した。

  12月末の家計の金融資産は前年同期比1.3%減の1830兆円と、株価の下落の影響で10四半期ぶりに減少した。暦年ベースで減少したのはリーマンショックに見舞われた08年以来。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-19/POLALM6JIJV001

 

どん底、JR貨物を再生に導いた「運命の2日間」
海運、空運のプロは経営再建請負人だった
大坂 直樹 : 東洋経済 記者 2019年03月18日

北海道のターミナルに停まる貨物列車 。JR貨物は「冬の時代」を越えて好調が続く(撮影:吉野純治)
JR貨物が元気だ。本業にもかかわらず長年赤字が続いていた鉄道ロジスティクス事業が2016年度に黒字化を果たし、連結経常利益を100億円台に乗せた。
2018年度は6月の大阪北部地震、7月の豪雨、9月の台風24号と度重なる自然災害に悩まされた。しかし、その後急ピッチで輸送量が回復し、2018年4月〜2019年2月の輸送実績は前年同期比92.2%という水準まで持ち直した。山陽線の一部区間で工事や徐行運転が行われていることもあり、今も一部の列車が運休している。もしこれらが動いていれば、2月単月については「前年とほぼ変わらぬ水準」(真貝康一社長)という。
昨今のトラック運転手不足や環境問題の高まりなどJR貨物を取り巻く状況は明らかに追い風だ。しかし、その追い風を捉えて見事に浮上することができたのは、2013年に同社会長に就任した石田忠正氏(現相談役)の経営手腕によるところが大きい。
石田氏は日本郵船副社長、日本貨物航空社長を歴任。2011年にはまったく畑違いのがん研究会有明病院の理事長補佐に就任し、病院経営を黒字化させた実績もある。海運業と陸運業のプロはどのような経営手法でJR貨物の鉄道事業を黒字化に導いたのか。石田氏に聞いた。
「意識改革」にはこう取り組んだ
――JR貨物に来て、まず改善しなくてはいけないと思ったことは?

外部の人間がいきなりやってきて「こんな問題がある」「解決するためにはここを直さないといけない」と言ってもうまくいかない。もちろん表面上は変わるだろうが不十分。たとえ私が100点満点の提案をしても、人から言われてやるのでは意味がない。社員一人ひとりが「これは私の仕事だ」という気づきを得て、本気で取り組むという意識改革が必要だ。

一人だけが気づいても、回りにも同じ考えの人がたくさんいないと、組織としての行動にはならない。どの企業にも目に見えない不文律があって、社員自らを縛っている。それを解き放してあげないと「変わらなきゃ」という行動は起きない。これはどこの組織でも同じ。病院でもそうだった。JR貨物が国鉄の体質を引きずっているのは承知していたので、意識改革を本格的にやらないと経営改革はできないと強く意識していた。


2013年の会長就任後、最初に取り組んだのは「意識改革」だったというJR貨物の石田忠正相談役(撮影:吉濱篤志)
その意味で、JR貨物に来て最初にやったことは2日間の役員合宿。社長以下、役員全員、部長、支社長も集まった。私は「ああしろ、こうしろ」とはいっさい言わなかった。「自由闊達」「役職は無関係」「何を言ってもよい」といったルールだけ決め、参加者の間でガンガン議論を行い、JR貨物の現状と問題点を洗い出し、解決策を考えてもらった。

JR貨物をどういう会社にしたいのか、そのためには何をすべきかを1つの表にまとめたら、ちゃんと形になって、全員が「できる」と思った。翌週の経営会議からガラリと変わりましたよ。また、各支社長は支社ごとに合宿をやって、現場長たちも職場で部下たちと議論をした。こうなると本物だ。

減らしていた営業マンを増員
――JR貨物が変わったのは、2日間の合宿だったということですね。では、鉄道黒字化に向け、どんな行動をしたのですか?

例を一つあげると、今までは赤字を減らすために営業部の人員を減らしてきたが、そうすると売り上げがさらに減るという悪循環になる。そこで、最初にやったのが営業マンを増やすこと。今まではお客様(荷主)への営業はトラック会社(通運事業者)に丸投げして、自分たちではほとんどしていなかった。これを改めて、自らお客様の所に営業をしに行くようにした。

――集荷して配達する両端の部分はトラックですが、間に鉄道を入れてくださいと荷主にお願いするのですか?

そう。われわれが新たな顧客を見つけてくると、両端の通運業者も喜んでくれる。ただし、単にコンテナを積めばいいというものでもない。列車の収支は「往復」で見る。片道のコンテナの稼働率が100%でも、逆方向がカラだったら稼働率は50%にしかならない。その空コンテナにも運転士の費用、電力費、線路使用料などのコストがかかるので、稼働率50%では食べていけない。

だから、今は「ラウンド収支」をどうやって改善できるかを考えるようにしている。空コンテナの回送率は、毎年ものすごい勢いで下がっていますよ。

提案営業も積極的に行うようになり、2017年1月にはアサヒビールとキリンビールが組んで関西の工場から北陸エリアへ鉄道コンテナによる共同輸送を開始した。従来は名古屋の工場からトラックでビールを運んでいたが、鉄道に切り替えた。

われわれにとっては鉄道貨物の利用率が低い下り路線(関西→北陸方面)の有効活用にもなる。現在はサントリー、サッポロも加わり、4社の共同輸送をそのほかの路線で行っている。とにかく提案営業を続けることで、お客様に直接提案できる会社に変わった。

黒字になったことによって、新しい投資に資金を回せるようになった。また、社員の意識改革の結果として黒字化できたわけだから、意識改革の根源である人事制度を4月から全面的に変える。今以上に働きやすくやりがいがある職場になる。

――日本の物流の主役はトラック輸送ですが、トラック輸送から鉄道コンテナ輸送に切り替えると、荷主にとってコストは安くなるのですか?

長距離輸送なら鉄道コンテナ輸送のコストは安い。鉄道輸送の強みは大量輸送。1本の貨物列車で大型の10トントラック65台分を一度に運べる。CO2排出量もトラックの11分の1で環境にもやさしい。しかも鉄道輸送は運行頻度も多い。定時運行率も94%と非常に高く、運行頻度も船と比べると高い。

トラック運転手不足が追い風に
――鉄道貨物のメリットがそれほどたくさんあるなら、もっと使われてもよいのでは?

われわれの営業努力が足りなかった。でも現在はトラックの運転手不足という問題があるので、長距離輸送の部分を鉄道に置き換えられないかという要請をトラック会社からいただいている。

――首都圏では貨物列車は深夜に出発することが多いですが、首都圏を昼間にあまり走れないことはネックになりませんか。

そういう部分はある。ただ、どのメーカーでも昼間作って夕方から夜にかけて出荷することが多い。夜中に鉄道で運んで朝到着するのでムダがない。宅配便などで昼間に運ぶ需要もあるが、圧倒的に多いのは夜間の需要だ。

――欧米では物流に占める鉄道貨物の比率が10〜30%ありますが、日本は5%程度にすぎません。営業が頑張れば、日本の鉄道貨物の比率は欧米並みになりますか。

いやいや。われわれにそこまでの輸送能力はありませんよ。

――でも、引き合いは多いのですよね?

需要が欧米並みに増える可能性はある。イギリスさえもサウザンプトン港では鉄道輸送の比率は二十数%ある。あの小さい国ですら、鉄道輸送の比率は高い。

――需要がぐんぐん増えれば、車両を増やして対応するとか……

もちろんそうなるのだが、問題が1つある。昼間は旅客列車がたくさん走っているので、貨物列車をいくらでも増やせるというわけにはいかない。もちろん路線によってはもっと増やせる余地があるし、土日はかなり余裕がある。でも東海道線などすでに過密状態の路線もあるので、現在の5%という比率をすぐに10%、20%に高めることは残念ながら難しい。

――鉄道貨物以外の事業では、東京貨物ターミナル駅に大型の物流倉庫「東京レールゲート」を建設していますね。

2棟から構成され、2020年、2022年に完成予定。東京ベイエリアで最大級の物流拠点になる。すでに鴻池運輸と賃貸借予約契約を結んでおり、メーカー、小売業、倉庫業者など引き合いは多い。

これと同じようなものを札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡にも展開する。東京レールゲートのすぐそばに東京湾も羽田空港もある。今はレールの上だけだが、今後は船と結んでシー・アンド・レール、飛行機とも結んでレール・アンド・エアといった陸海空の総合物流業に展開していきたい。

「目標の明確化」で業績を伸ばす
――日本郵船や日本貨物航空時代の経験についても教えてください。


石田忠正(いしだ・ただまさ)/1945年生まれ。1968年慶應義塾大学経済学部卒業、日本郵船入社。2004年同社副社長。2007年日本貨物航空社長。2011年がん研究会有明病院常務理事・理事長補佐。2013年JR貨物会長。2018年より現職(撮影:吉濱篤志)
日本郵船では、アジア代表としてシンガポールに駐在していた時、二十数カ国に及ぶアジア各国の現地法人社長とすべて交渉した。それをまとめるとアジア全体の目標値が決まる。現地法人の社長は自分の国に帰って、部長や課長と相談して部門ごとの利益目標を決めていく。課長は課員一人ひとりの目標を決めていく。アジア全体の目標が一人ひとりの目標に落ちていくのです。外国人の社員は目標を明確化すると、競い合うように頑張って成果を出してくれる。

その後ロンドンに転勤して、今度はヨーロッパを統括したが、欧州の人たちはアジアの人たちよりもドライ。「頑張って働くからきちんとペイをくれ」ということで、ものすごく働いてくれて、業績も伸びた。本社に戻って、今度は全社の収支管理を北米、南米、オセアニアなど世界6極に移管した。世界中が一つになって頑張ってくれた。

日本貨物航空でも同じように各極に分けて収支管理をやったが、アジアとヨーロッパを結ぶ便のように日本発着ではない国際線もある。そうなると日本からあれこれ言ってもどうにもならず、現地同士で頑張るしかない。でも、その結果、現地同士の絆はものすごく強くなった。また、当時は古い機材ばかりだったので燃費が悪かった。新しい機材に切り替えることで投資効果が出てきた。こうしたことを通じて万年赤字から黒字に転換できた。

――病院経営でも収支を改善しました。

私が勤務した病院には日本トップレベルの医師や研究者が500人もいた。看護士やそのほかの職員も献身的に働く。患者さんは列を成していた。

――それなのに赤字。これもマネジメントの問題ですね。どのように黒字化したのですか。

私は、医療はずぶの素人だから「ああしろ、こうしろ」とは言わなかった。やったことは先生方や看護士さんたちに収支を見せたことだけ。でも、みんなおそらく初めて見たのだと思う。収支を見て目の色が変わった。先生方、看護士さん、事務職、みんなを集めて合宿した。そうするとみんないろいろなことを言い出した。先生方も気づくことがたくさんあった。それが改善活動に変わり、収支が改善された。先生や看護士さんの給料は上がり、最新の医療機器もどんどん導入した。

官民協力で鉄道インフラ強化を
――日本郵船、日本貨物航空、がん研、どの経験もJR貨物につながる話ですね。ところで、石田さんをJR貨物に招いたのは誰ですか?

それはちょっと言えませんが、国の要請です。

――国側も社員自らに気づいてもらうような経営改革を期待していたのですか?

どうでしょうね。私は今お話ししたようなことはご存じないと思う。

――では、海運や空運での経験をJR貨物で活かしてほしいという前提だった?

そういうことです。でも、私が「ああしろ、こうしろ」と言っても意味がない。社員自身に気づいてもらうから価値がある。

――最後に、JR貨物が抱えている課題について教えてください。


2018年の豪雨で一部区間が不通となった山陽本線を迂回して走った貨物列車(写真:JR貨物)
JR貨物は鉄道輸送の業績が改善し、不動産事業も堂々たるものだから、100億円を超える経常利益をこれから出していけると思うが、1つだけ前提条件がある。それは、鉄道輸送はレールというインフラがあってこそということだ。昨年の豪雨で山陽線が長期にわたって止まってしまった。レールがないとわれわれは働きようがない。

道路や空港、河川は何かあると国や自治体がすぐに直してくれるし、トラブルを未然に防ぐような整備もしてくれる。それと同じように鉄道のインフラ整備も必要だ。問題が起きそうな危険箇所はわかっているのだから、優先順位を付けてできるところからぜひ整備をお願いしたい。われわれも努力をするからぜひ官民協力で。3〜5年続ければ日本のインフラ基盤が本当に強化される。
https://toyokeizai.net/articles/print/271327
 

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コメント
1. 2019年3月19日 15:12:22 : hE3PRSoheQ : aDMueWFCSkFsbkU=[250] 報告
 
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