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「アマゾンの商品を安く買えます…」に隠された恐ろしい真実 アマゾン急成長が生んだ「死角」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/60003
2019.03.12 林部 健二 株式会社鶴・代表取締役 現代ビジネス
アマゾンで売られている商品をいつでも割引価格で…
アマゾンで売られている商品をいつでも割引価格で購入できる――。そんな夢のような話を聞いたら、みなさんは利用するだろうか。
〔photo〕gettyimages
結論から言ってしまうと、上記のようなサービスは確かに存在している。少し準備をするだけで、いとも簡単にアマゾンの商品の値段を割り引くことができるのだ。多くのユーザーにとって非常に喜ばしいことに違いない。
しかし、その仕組みの裏側を知りながらサービスを利用しているユーザーがどれだけいるのか、筆者は疑問を感じている。真実を知った時、おそらく手放しにサービスを利用することができなくなってしまうはずだ。
もはやインフラと呼べるレベルまで大きくなったアマゾン。その影響力がゆえに生まれてしまった負の側面を、海外で注目されるアマゾンの割引サービスの仕組みを紹介しながらお伝えしていこう。
2014年、アメリカで「Purse(パース)」というサービスがスタートした。 アマゾンの商品を安く買いたいユーザーと、アマゾンギフト券を換金したいユーザーをマッチングするプラットフォームである。
使い方は非常にシンプルだ。まず、アマゾンで商品を購入したいユーザーが、アマゾンのサイトで「ほしい物リスト」を作成し、割引で購入したい商品を追加する。次に、それをパースに登録すると、ユーザーは最大33%までの割引率を設定することができる。あとは、代理で購入してくれるユーザーとマッチングするのを待つだけ。
一方で、アマゾンギフト券を換金したいユーザーは、すでにパース上に登録されている欲しいものリストの中から、自分が購入できる金額の商品を選ぶ。そして、安くアマゾン商品を買いたい人に成り代わって、自らが所有するアマゾンギフト券で商品を注文し、配達処理を行う。
例えば、10,000円のイヤホンを、20%割引の8,000円で購入したいというリストがあるとしよう。アマゾンギフト券を換金したいユーザーは所有しているアマゾンギフト券を使い、10,000円のイヤホンを購入する。すると、商品を安く購入したいユーザーから8,000円分の代金が代理購入したユーザーへ振り込まれるという流れだ。
しかも、振り込まれるのは現金ではなく、仮想通貨であるビットコイン。アマゾンは正式にはビットコイン決済に対応していない。それでも、パースを利用すれば、アマゾンで実質的にビットコイン決済を行なうことが可能となり、なおかつ安く購入することができるという点が人気を集めているのだ。
クレジットカード現金化の温床
では、アマゾンギフト券を換金したいユーザーにとってのメリットはどこにあるのだろうか。
パースを紹介するサイトなどには、使い道に困っているアマゾンギフト券をビットコインに換金したいニーズが多く存在していると記されていたりする。
だが、よく考えてほしい。さきほどの例で考えると、アマゾンギフト券の換金を希望するユーザーは、8,000円分のビットコインを購入するのに、10,000円を支払っていることになる。その手数料は実に2,000円。
仮想通貨取引所で10,000円分のビットコインを購入しても、2,000円もの手数料を取られるところはまずないだろう。取られるとしても手数料は30円以下で、なかには手数料ゼロでビットコインを購入できるところもあるくらいだ。にもかかわらず、なぜわざわざパースでビットコインを手に入れることがメリットになると言えるのだろうか。
筆者は、このサービスがクレジットカード現金化の温床になっているのではないかと疑っている。
クレジット現金化自体は昔からよく知られており、主に手を出してしまうのは多重債務者だ。多重債務者とは、複数の消費者金融あるいはクレジットカードのキャッシング枠による借り入れがある人間を指す言葉である。
金融庁などの調査を見ると、多重債務者の数は年々減少してきていることが確認できるものの、それでも2017年度にはいまだに115万人の多重債務者がいるとされている。
最初は、お金のちょっとした使い過ぎから始まる。クレジットカードの引き落とし日などにお金を用意できなくなった利用者のなかには、消費者金融にお金を借りて工面をしようと考える人間もいるはずだ。何度か利用しても、その後全てを綺麗に返済できたならば何ら問題はない。
しかし、そうもいかないケースもある。消費者金融では非常に簡単にお金を借りることができることから、自分の口座からお金を引き出しているのと錯覚してしまう人間も出てくるのだ。
そうなると、もはや歯止めがきかない。最初に借り入れを行なった消費者金融Aの返済をするために、消費者金融Bでさらなる借り入れを行い、消費者金融Bの返済をするために別の消費者金融Cで新たな借り入れを行う−−。
まさに自転車操業の状態。一度ハマってしまったら金利分を支払うので精一杯となり、なかなか抜け出すことができなくなってしまうのである。
マネロンに利用される可能性も…?
どうしても現金が必要になった時、多重債務者は違法な手段に手を染めてしまうこともある。そのひとつが、クレジットカードの現金化だ。借り入れのためのキャッシング枠は使えないが、通常の買い物に使用できるショッピング枠は残っていることがある。
そして、その枠を現金化をしてくれる業者も存在している。クレジットカード現金化を謳う看板や広告を目にしたことがある方は多いかもしれない。
代表的なのは、ショッピング枠で換金率の良い商品を購入させ、それを業者が買い取るという手法だ。例えば、高級ブランドショップで30万円のハンドバッグをクレジットカードで購入させ、業者はそれを20万円の現金で買い取る。利用者は10万円という多額の損をするが、すぐに現金がほしいという誘惑に勝てずに20万円を手にしてしまう。
利用者も損をすることは分かっているのだ。しかし、分かっていながらも手を出してしまう。それだけ切迫しているか、もはや自分をコントロールできない状態なのである。
話をパースに戻そう。パースはアマゾンギフト券を換金するという形になっているが、実質はクレジットカードの現金化と変わらない。
なぜなら、アマゾンギフト券はクレジットカードでも購入することが可能で、購入の対価として得られるビットコインは仮想通貨取引所で現金に変えることができるからだ。
もちろん、純粋にアマゾンギフト券をビットコインに換金したいユーザーがいることは否定しない。何かしらの報酬あるいは贈り物としてアマゾンギフト券をもらいながら、使い道に困っているユーザーもいるだろう。
それでも、アマゾンは日用品から家電まで、なんでも揃っていると言っても過言ではないほどの品揃えを実現している。アマゾンギフト券で購入するものがないというシーンがあるのだろうか。
百歩譲ってそうだとして、通常よりも高額な手数料を支払ってまで、パースでビットコインを購入したいユーザーがどれだけいるのだろうか。
実際のところは、パースで換金したビットコインを、さらに自国通貨に換金して現金化を図っているユーザーは少なくないはずだ。そこには、そうまでして現金が必要な多重債務者や、お金に苦労している人間が含まれている可能性が非常に高い。
また、犯罪者がマネーロンダリングのために利用するケースもあるだろう。使われるのは盗まれたクレジットカード情報だ。
店舗でクレジットカードを使う場合は実物のカードが必要となるが、ネット決済の場合はカード番号やセキュリティコード、住所などの個人情報が分かっていれば使用することができる。何かしらの手段で盗難に成功したクレジットカード情報で、アマゾンギフト券を大量に購入してビットコインを獲得。それを現金化できれば、犯罪者にとってはメリットになる。
実は、ここ日本にもパースと類似のサービスは存在している。
詐欺まがいの事例も
あえてここではサービス名は出さないが、 アマゾンの商品を安く購入したいユーザーと、アマゾンギフト券やクレジットカードのショッピング枠をビットコインに換金したいユーザーをマッチングするという仕組みもほぼ一緒である。
他にも、アマゾンギフト券の現金化を行う業者は多くおり、詐欺まがいの事例も少なくないのが現状だ。アマゾンギフト券のコードだけ送らせて実際に買取をしなかったり、高額買取を謳いながらも細かな利用規約に「1枚しか高額買取をしない」と書かれてあったために二束三文にしかならなかったりという具合である。
アマゾン側も対策をしていないわけではない。公式サイトでは「Amazonギフト券のご購入に関する注意」 というタイトルで、アマゾンギフト券を特定の転売サイトから購入しないように注意を呼びかけている。
同様に、アマゾンギフト券を転売サイトなどに売ることも禁止している。もし、転売が発覚した場合には、アマゾンの規定に則りアカウント停止などのペナルティが課せられることもあるのだ。
ただ、パースのようなサービスは従来の転売サイトとは異なるため、現時点でアマゾン側の注意喚起やペナルティには限界があるだろう。全てはユーザーの良心に任されていると言っていい。
豊富な品揃えや即日配送をはじめとする様々な方法でECの常識を覆していったアマゾン。破竹のごとき勢いで成長した結果、私たちの生活がより便利になったことは間違いない。
その一方で、アマゾンが世界中で支持されるがゆえに、アマゾンギフト券にも価値が生まれ、換金性も高くなっていった。そして、その換金性の高さは、ときに現金がほしい人間のニーズを満たすために使われることすらある。
アマゾンの商品を割引価格で購入できるパースやそれに類するサービスは、表面上は画期的で思わず使いたくなってしまうだろう。
しかしながら、利用する前によく考えてほしい。もしかしたら多重債務を抱える人間がアマゾンギフト券を現金化してしまっている可能性を。もしかしたら犯罪者のマネーロンダリングに手を貸してしまっている可能性を。
あなたが割引を受ける代わりに、誰かが大きな損をしているかもしれない。
アマゾンで売られている商品をいつでも割引価格で購入できる――。そんな夢のようなサービスがある。しかし、その仕組みの裏側を知りながら利用しているユーザーがどれだけいるか。真実を知った時、おそらく手放しにサービスを利用できなくなるはずだ。https://t.co/KFq8AWhOzs #マネー現代
— マネー現代 (@moneygendai) 2019年3月12日
AMLの考えがまだ世間には全然浸透してませんから、「割引になるなら何だって良くない!?」という利用者が大半でしょう。
— サクライ_ヨシミ(本垢) (@39lie44me) 2019年3月12日
日本の場合はもっと簡単に現金化できる気がしますけどね…。ショッピング枠の買取だって、身元... #NewsPicks https://t.co/2jg84KE16M
Amazonにも、パース運営会社にも、パース利用者にも重大な過失はないけれど全体としてみると将来的な社会不安につながる致命的な問題。。こういうときにAmazonがしっかり問題根絶に動いてくれるとカッコいいなあ。 #NewsPicks https://t.co/ZyyD1zzU4y
— Takahisa Ishizaki (@takapbrian) 2019年3月12日
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