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マンションの「安すぎる手付金」が招く悲劇
https://diamond.jp/articles/-/196344
2019.3.12 後藤一仁 ダイヤモンド・オンライン
「もうマンションを買ってもいいかな。でも損はしたくないし、ローンも怖い」。
そんなあなたが買うべきは、「60m²前後」×「駅徒歩7分以内」×「2001年以降完成」のマンションしかありません。
本連載の書き手は、「不動産ひと筋30年! 12000人と面談し、成約件数は6000件以上」という圧倒的なキャリアを持つ後藤一仁氏。不動産仲介会社の“現役”社長です。「不動産を通じて、1人でも多くの人に幸せになってほしい」という願いが込められた『マンションを買うなら60m²にしなさい』の著者でもあります。「損をしない、戦略的なマンション選び」を語ってもらいます。
手付金は安易に「安く」してはいけません!
手付金は、売買契約締結時に買主が売主にいったん預けて、後日、売買代金を支払う際に売主から買主へ返還するものです。
しかし実際には、預かっている手付金をいちいち返還するのは面倒なので、売買契約書に「手付金は、残代金支払いのときに売買代金の一部として充当する」としていることが多いです。
実際のお金の流れは、売買契約時に代金の一部として手付金を支払い、物件の引き渡しを受けるときに、物件価格から手付金を差し引いた残りの金額を払うイメージです。
マンション購入時、物件代金の他にさらに別途「手付金」を用意しなければならないと勘違いしている人がいますが、そのようなことはありません。
手付金は、厳密には3種類あります。
(1)解約手付
買主は支払い済の手付金を放棄することで、また売主は手付金を買主に倍にして返すことで売買契約を解除することができる
(2)違約手付
買主と売主のいずれかに契約違反(債務不履行)があった場合の「違約金」
(3)証約手付
買主が売主に対象不動産を購入する意思があることを示す
日本の不動産売買契約(実際の取引)では、解約手付として授受することが多いです。
手付金の額は少なければ少ないほど有利なのか?
まれに手付金の額をかなり低くして、購入申込をする人がいます。しかし、手付金の額をむやみに低く申し出るとマイナスになることがありますので注意しましょう。手付金は、中古マンションのように個人と個人の一般的な売買の場合、売買代金の5〜10%が目安として適切で、高すぎても低すぎてもあまりよくありません。
例えば、物件価格が4000万円なら、5%で200万円です。解約手付の場合、200万円の手付金を支払って、買主から「やっぱりキャンセルします」という場合、その200万円を放棄しなければなりません。
売主からキャンセルする場合は、預かっている200万円を返却し、かつ買主に追加で、もう200万円を支払わなければなりません。
しかし、もし手付金が30万円だったらどうでしょうか?
買主はマンションの売買契約が終わった後にも、「もっといい物件が出るのではないか」と物件探しを継続して、もし物件が出たら、そちらの物件価格から30万円値引きしてもらい、最初のマンションをキャンセルしてしまうかもしれません。
売主も、手付金として預かった30万円を返却し、追加の30万円を支払ってキャンセルし、もっと条件がよい人と契約してしまうかもしれません。
しかし200万円だったら、お互いになかなかキャンセルできません。10%の400万円であれば、いっそう契約は安定します。逆に高すぎると、今度は本当にやむを得ない事情で解約をしたい場合に額が高すぎてできなくなります。
買主は自分が解約するときのことを考えて、なるべく少なくしようとします。しかし、「少なすぎる手付金は、売主から解約されるリスクがある」と心得ましょう。
キチンとした勤務先に勤めていて年収もそれなりにあるというのに、「手付金の額を少なくしてほしい」と要求することは、売主側から見れば、「もしかしたら本当は購入意思があまり強くなく、他にもっとよい物件が見つかったらキャンセルをするのかもしれない」と思えてしまいます。
そのような可能性を懸念され、「一番手」としての購入順位が保全されないことがあります。
私は今まで、物件を探し続けているのに購入に至らないお客様にたくさん会ってきました。実際に購入申込を入れていたのに買えなかったという人もいて、詳しく聞いてみると「手付金の額がネックになったのではないか」と思えることが多々ありました。
手付金の額は、皆さんが思う以上に大きな意味を持っています。
ようやく気に入った物件が見つかって、やっと一番に申込を入れることができたのに、手付金にこだわって「買えない」のは、あまりにももったいないです。
ただ、売主の残債が購入価格を超えている場合は、手付金を仲介会社預かりにしてもらうなどして、買主として万一のリスクに備えることも必要です。
後藤一仁(ごとう・かずひと)
株式会社フェスタコーポレーション代表取締役。不動産コンサルタント。
国土交通大臣登録証明事業・公認不動産コンサルティングマスター。宅地建物取引士。
1965年、神奈川県川崎市生まれ。1989年から30年以上、常に顧客と接する第一線での不動産実務全般に携わる。大手不動産会社のハウジングアドバイザー、東証一部上場企業連結不動産会社の取締役を経て、「誰もがわかりやすく安心して不動産取引ができる世の中」をつくるために株式会社フェスタコーポレーションを立ち上げ、代表取締役に就任。
首都圏を中心に不動産の購入、売却、賃貸、賃貸経営サポートなど、今まで12000組以上の対面個別相談を行い、成約件数は6000件以上。徹底して顧客の立場に立った不動産購入・売却のガイド、コンサルティング・アドバイスを一般の個人・法人向けに、わかりやすく提供している。
親子3代にわたるクライアントや20年以上にも及ぶファンも多く、顧客層は一般人から著名人まで幅広い。2012年から7年連続で、『専門家プロファイル』の「建築・不動産」の年間アクセスランキングで全国1位をとり続ける(2012〜2018年)。
日々、実務を行いながら、執筆、セミナー講師、テレビ・ラジオへの出演・監修、雑誌・新聞等各メディアへの取材協力など、「不動産を通じて一人でも多くの人を幸せにする」ことをミッションに活動中。著書に『東京で家を買うなら』(自由国民社)がある。
なぜいま、「60m²マンション」なのか?
はじめまして。後藤一仁と申します。この度『マンションを買うなら60m²にしなさい』を出版しました。
当初「60m²」をタイトルに入れることについて、あちこちから『60m²? 狭くない?』という声が聞こえてきました。しかし単に、「これからは狭いマンションにしたほうがよい」と言っているわけではありません。人生を通じて「お金の不安」をなくすためであり、住宅ローンやその場所に縛られてしまうような人生にしないためです。
思い起こせば今から20年近く前、予算ぎりぎりで75m²以上の3LDKを希望していたご夫婦のお客様がいました。ご夫婦ともに都心で働いていて、奥様は出産・育休後、在の職場に復帰の希望があるとのこと。
お話を伺う中で、「このお客様たちには75m²の3LDKではなく、利便性のよい都心・準都心の60m²くらいの2LDKのほうがよいのでは?」と思い、提案したところ、60m²の2LDKを購入されました。結果、月々の負担が予想以上に抑えられ、貯蓄もできたうえ、約売却時にかなりの利益が出たのです。その後も「60m²前後のほうが資産性・ランニングコスト、生活利便性などを考えたときに有利では?」と思われる場合は、そのようなアドバイスをしてきました。
その結果、60m²前後の2LDKやコンパクトな3LDKを購入された多数の方々から、うれしい便りが続々届くようになったのです。選ぶ物件や購入時期によっては、買ったときより数百万円、数千万円も高く売れた事例も多々あり、少なくとも買ったときと同じ価格くらいで売れ、「管理費等はかかりましたが、家賃と比べると小さいものですし、数年間もタダみたいな金額で住んだようなものですね」とお客様が笑顔で話してくれた事例は、数え切れないほどです。
資産性のない物件を購入すると、その家に縛られ、住宅ローンの返済に追われるような人生になります。
今後の人口減少・少子高齢化が加速する日本で、新たに住宅を購入し、安心して暮らしていくためには、月々の負担(固定費)はできる限り抑え、「売れなくなったり貸せなくなったりすることにより、その家(マンション)に縛られてしまうリスク」「住宅ローン破綻のリスク」を回避することが大切です。
今までのように「家を買うなら、70〜80u以上の広さは必要」といった価値観に縛られてはいけません。
「不動産を通じて1人でも多くの人を幸せにしたい」という思いから、本書の執筆を開始しました。
著:後藤一仁 価格:1500円+税 判型:四六並製、264ページ ISBN:978-4-478-10545-0
【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】
『マンションを買うなら60m²にしなさい』
80m²マンションは、2600万円も損をする!
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【なぜ60m²なのか?】
60m²はさまざまな側面から見て最も無駄がありません。70〜80m²に比べ、価格が手ごろなのに加え、途中で売ることや貸すことになった場合でも、“守備範囲が広い”ので「売りやすく、貸しやすい」のです。
入居を希望する人たちは「夫婦2人」から「子ども1人の夫婦」に加え、「夫婦と小さな子ども2人」「シニア」「1人暮らし」「兄弟姉妹」「母子または父子家庭」と、非常に幅広いのです。自ら住む層だけではなく、「不動産投資」や「相続税対策」などの需要もあります。国立社会保障・人口問題研究所によれば、今後、「広い家」を必要とするファミリー世帯はどんどん減りますが、「1人暮らし世帯」「夫婦のみ世帯」は逆に増えていきます。
「家を買うなら、70~80m²以上の広さは必要」といった価値観は、今すぐ捨ててください。
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