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崩壊に向かう日本の「終身雇用」
迷走する日本の「働き方改革」への処方箋(6)
2019/03/06
立花 聡 (エリス・コンサルティング代表・法学博士)
日本は資源国ではない。胡坐をかいているだけでは食べていけない。日本人には勤勉要件を課されている。勤勉でさえあれば、将来という「約束手形」が保障されている。(参照:日本人に襲いかかる「経済的不安」の正体とは?)。しかしながら、バラ色の時代は終わった。
iStock / Getty Images Plus / tiero
ジャパン・アズ・オンリーワン
「約束手形」制度とは、将来の分配に供される資源が保障されていることを前提としている。この前提が崩れると、手形の現金化が難しくなり、「約束手形」の不渡りリスクが高まり、日本社会で善とされる「安全」や「安心」も毀損される。ところが、世界を見渡しても、「約束手形」制度がある特定の時期に成功を収めたのは日本くらいしかないことが分かる。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ではなく、「ジャパン・アズ・オンリーワン」なのであった。
私はアジアで長く経営コンサルタントの仕事をやってきたが、こんな制度を見たこともない。現地の人に聞いても、「約束手形」によって将来が保障されるなど想像すらできないし、たとえそれがあっても絶対に信用しないというのである。
しかし一方では、非常に面白いことに、現地に進出した多くの日系企業は、日本本社の人事制度をそのまま持ち込んで使っているのである。つまり日本型の正社員終身雇用制度もどきの「約束手形」制度を現地で実施しているということだ。
私はそうした日系企業の日本人経営トップにいつも少々意地悪な質問をする。「貴社は日本以外の海外拠点でも、終身雇用制度なのですか」。すると、十中八九は答えないか、言葉を濁すかで逃げるのである。そこでさらに掘り下げる。「海外で終身雇用をやってもいいのですか」……。さすがにこれ以上続けたら、敵視されかねないので、この辺で打ち止めにする。
現地の雇用慣習はさておき、日本企業をはじめとする外国企業に限っていえば、途上国や新興国に工場をつくって操業したり、製品を販売したりするのは、安い人件費や市場のポテンシャル目当てであろう。状況が変われば、次の地域へ移動する。というのも、フロンティアを求めるのが資本主義の本質であるからだ。このような流動性を前提に終身雇用云々を語れるはずがない。そこで日本型の正社員終身雇用制度を導入したところで、高い確率で問題になる。ときには深刻な問題が起こる。
「終身雇用制度もどき」の災い
日本型の終身雇用制度には3つの大きな特徴がある――。解雇しない(できない)こと、定期昇給(昇格)をすること、定年退職金が出ること。
アジアなどの海外、特に新興国や途上国に進出した日系企業のほとんどは、現地で解雇しないことと定昇することの2項目だけは忠実にやっている(欧米企業よりはるかに温情的な雇用政策を取っている)ものの、退職金を出す企業は皆無に近い。なぜなら、現地拠点は一種の時限措置としての出先に過ぎず、いつその国から出るか、次はどこに移るかも分からないからだ。むしろこれは至極真っ当な経営判断ではあるが、問題は3分の2しかやっていない不完全終身雇用制度が引き起こす副作用にある。
たとえばアジアの場合、ほとんどの国では慣習的な終身雇用制度がなく、その代りに法制度による厳格な解雇制限(シンガポールや香港などを除外)が課されている。これは日本の終身雇用と本質的な違いがある。生涯視野の「約束手形」ではなく、強制された「現金取引」に近い雇用関係なのである。
さらにいえば、現地人従業員はこの点についてもよく理解している。彼たちはあえて日系企業に終身雇用の問題を提起しない。とりあえず目先の3分の2でも制度もどきでもいいから日本型終身雇用の「現物(現金)特典」を享受しながらも、「約束手形」にはかけらほどにも期待していないのである。
一方で、日本人経営者だけは蚊帳の外に置かれ、「現物特典」を年々積み上げ、従業員の既得権益を肥大化させながらも、賃金支払額と生産性が乖離する年長従業員、特にそのうち一部モンスター化した従業員や管理職を目の当たりにしても、なす術がない。
海外との対比事例から、日本型の終身雇用を中核とする「約束手形」制度の特異性が明らかになり、日本の常識が世界の非常識であることが示された。
日本の終身雇用の本質とは?
法律上における「終身雇用」とは何を指しているのか。これを理解するために、海外の労働法令と比較してみよう。
まず、日本の「労働基準法」第14条第1項「労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあっては、5年)を超える期間について締結してはならない」
次に、中国「労働契約法」第14条「無固定期間労働契約とは、雇用単位(訳注:使用者)と労働者が終了の時の確定がない旨を約定する労働契約をいう」
最後にベトナム「労働法」第22条第1項a号「無期限労働契約とは、当事者双方が契約の期間および効力を終了する期限を確定しない契約である」
この通り、日中越の労働法においていずれも、「終身雇用」という概念が使われていない。「終身雇用」は法的概念ではない。どうしてもというのなら、「終了の時(期限)の確定がない雇用」、あるいは「期間の定めのない雇用」である。つまり、「無期雇用」のことである。
中国やベトナムの無固定期間や無期限労働契約は、雇用期間の長短という「量」の次元にのみ明示規定されている。これに対して、日本の場合は、雇用期間の長短という「量」に関係なく、企業と従業員の終身における「心理的契約」という「質」の要件が黙示されているのである。つまり雇用終了の出口(通常、定年退職を指す)について心理的な契約によって「約束手形」たるコミットメントがなされているのである。
終身雇用制度が崩壊したとき
高度経済成長とバブル期を経て、今日の日本では、「約束手形」の現金化はすでに資源や財源が不足する状態になっている。その解決策というと、終身雇用制度に終止符を打つという選択肢がまず浮上する。
実際に昨今の日本では、終身雇用制度ははたして機能しているかというと、結論的には「崩壊しつつある」よりも、一部の企業ですでに「崩壊している」様相を見せている。就業規則上では定年60歳となっているが、業績悪化を受けて早期退職や希望退職を募るケースは年々増加の一途をたどっている。いずれも「約束手形」の財源不足に起因する不本意な措置とみていいだろう。
リストラ、あるいはリストラに近い非自発的な退職は日本社会でまだまだ、ネガティブに捉えられている向きが強い。社会全体に転職に有利なシステムも整備されていない。転職率は欧米に比べると低く、1つの企業に長期にわたって勤務し続けるという働き方を好む人が大多数である。このように、現時点では終身雇用制度の完全崩壊について、日本人は心の準備ができていないといってもいいだろう。
そもそも、終身雇用制度の完全崩壊とはどんな状態なのか。単純化してしまえば、正社員制度の崩壊、つまり1億総非正規雇用化である。日本人は親しみのない完全競争社会に放り込まれ、日本社会の普遍的価値観に照らして善とされない「弱肉強食」現象と共存していかなければならなくなる。
私自身も日系企業から欧米系企業への転職経験をもっている。欧米系企業に入った当初の1年は地獄のような世界だった。上司には即時成果の提示を迫られる一方、先輩はまったく仕事を教えてくれない。温情あふれる日系企業とサバイバル重視の外資、対照的な職場にストレスを感じずにはいられなかった。
終身雇用制度の完全崩壊とともに、日本社会にこのような競争メカニズムが果たして定着するのだろうか。
<第7回へ続く>
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15541
日米貿易協議、「為替条項」の扱い焦点にー輸出と相関薄れたと財務官
占部絵美、竹生悠子
2019年3月6日 5:00 JST
生産拠点の海外移転や部品の現地調達率上昇で地産地消が進展
米側は為替条項にこだわる可能性高く金融政策に縛りも−ニッセイ研
米中貿易協議で通貨安誘導を封じる為替条項を含めた合意に向け大詰めの交渉が続く中で、日米貿易協議の議題を巡り為替条項の扱いが重要な焦点として浮上している。
米国は対日貿易赤字削減のため為替問題を対象に含めるよう求める見通しだが、日本政府は為替については財務相間で議論することで首脳同士が合意済みとして取り上げない構え。安倍晋三政権が物品貿易協定(TAG)交渉と呼ぶ今回の貿易協議で為替問題を除外する論拠の一つとなり得るのは、日本企業の生産拠点の海外移転が進み、為替変動と輸出数量の相関関係が薄れている実態だ。
為替と輸出数量の相関薄れる
財務省の浅川雅嗣財務官はインタビューで、「為替と輸出のパフォーマンスのリンケージは薄れており、ほとんど明確ではない」と説明。日米貿易協定内に為替条項を盛り込むといった「何らかの形で政策的にリンクさせるような話が持ち上がるとすれば、ちょっとしっくりこないところがある」と述べ、違和感を示した。
ブルームバーグの試算によると、実質実効為替レートと輸出数量指数の過去10年(2009-2018年)の相関係数は0.01と、それ以前の10年間(1999−2008年)に比べて大幅に低下した。自動車を中心に生産拠点の海外移転や部品の現地調達率が高まり、地産地消が進んでいることが背景にある。経済産業省によると、16年度の製造業の現地生産比率は23.8%に達した。
ブルームバーグの増島雄樹シニアエコノミストは、為替と輸出の相関関係がなくなっているとの主張は、「今の金融緩和は円安を通じて輸出を増やすためのものではないという論陣を張るため」の手段と解説。為替と輸出のリンクが切れているなら為替条項を入れても貿易収支は改善せず、「為替条項を入れる理論的根拠はなくなる」との見方を示す。
昨年9月の日米首脳会談で交渉入りが決まった日米貿易協議は、米中協議の長期化で開始時期は未定だが、交渉責任者である茂木敏充経済再生担当相は今月1日、できるだけ早急に開始したいとの意向を表明。米国側トップのライトハイザー米通商代表部(USTR)代表はこれに先立つ議会証言で、3月中に訪日して協議を開始したいとした上で、為替は中国だけではなく日本との間でも深刻な問題になっていると述べ、為替問題を議題にする考えを示唆した。
企業利益は為替に連動する面も
ムニューシン財務長官も昨年10月、今後の貿易協定では日本を含む全ての国に為替条項の適用を目指す考えを表明。米財務省は同月公表した半期ごとの為替報告書で、日本の監視対象国指定を維持した。USTRは昨年末に公表した日本との交渉に向けた基本方針に、為替操作の防止を求める方針を盛り込んでいる。
日銀は昨年4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、為替レートに対する輸出の感応度は2000年代半ばにかけて高まったものの、リーマンショック以降は急低下し、近年は影響を受けにくくなっていると指摘。黒田東彦総裁は先月の議会答弁で、「為替レートをターゲットにして金融政策は運営していない」とし、その点は米国を含めて各国からの理解が得られていると説明した。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストは、米自動車業界が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)よりも強い為替条項を日本に求める中、他の中央銀行に比べて市場への関与度が高い日本との通商交渉では、「為替条項にこだわる可能性は高く、金融政策に縛りをかけるような要求をしてくる可能性もある」と指摘。日本から譲歩を勝ち取るため、「為替条項」が武器に使われることを危惧する。
2017年
1月 トランプ大統領、環太平洋連携協定(TPP)離脱の大統領令に署名
4月 麻生太郎副総理兼財務相とペンス副大統領、日米経済対話の初会合
2018年8月 茂木敏充経済再生担当相とライトハイザーUSTR代表による通商交渉開始
9月 日米首脳会談で「日米物品貿易協定(TAG)」交渉開始に合意
同交渉中は、日本車への追加関税適用は回避されることを確認
10月 USTRは対日通商交渉入りを議会に通知
12月 USTRが対日通商交渉の基本方針を発表
2019年2月 ライトハイザー代表は3月にも訪日し、初会合を開く意向表明
慶応義塾大学の竹森俊平教授は、「金融政策の結果として為替が動くということは、金融政策の自由を認めてもらう限り、あって当然」とし、為替条項で金融政策の自由を縛ることになれば、リーマンショック後に未曽有の金融緩和をした「米国自身にも跳ね返る」と指摘。日本の場合は、「危機が起こると円高がいつ起こるか分からない」ため、事前協議付きの為替介入も含めて金融政策の「可能性を残しておくべきだ」と主張する。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-05/PNBLMW6K50XW01
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