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マツモトキヨシ業界4位転落なぜ? 仁義なきドラッグストア戦争の意外な内幕
https://wezz-y.com/archives/63991
2019.03.04 wezzy
(左)ウエルシア薬局(公式サイトより)/(右)マツモトキヨシ(wikipediaより)
この10年で業界全体の売上高が約1.4倍になったと言われるほど、飛躍的な成長を続けてきたドラッグストア業界。我々消費者の生活にも身近な存在だが、ある異変が起きているようだ。
2016年度までの22年間、ドラッグストア業界の売上高ナンバーワンとして君臨していたのが、“マツキヨ”の愛称でおなじみのマツモトキヨシHD(ホールディングス)だ。マツモトキヨシは1932年創業という歴史を持ち、長らく業界の雄として君臨してきた。しかし、そのマツモトキヨシが2016年度にトップから転落して以降、業界の勢力図は大きく塗り替えられている。
マツモトキヨシに代わって首位に立ったのは、M&Aによって規模を拡大してきたウエルシアHDだ。2008年の創業以来急成長を続けており、現在の国内店舗数は1700店を超え、18年2月期売上高は6952億円にも上る。さらに、19年2月期は7800億円を見込んでいるという。
一方で、現在4位に陥落したマツモトキヨシは、成長著しい5位のコスモス薬品の突き上げもあり、売上高の順位をさらに落とすのではないかと懸念されている。しかし、決してマツモトキヨシの業績が悪化しているというわけではないようだ。都市型の店舗をメインとしているマツモトキヨシは、訪日外国人観光客の消費による好調を背景に、2018年に最高益を更新したとの報道もある。
マツモトキヨシが後退し、ドラッグストア業界の売上高ランキングが大きく入れ変わったことは、単純な栄枯盛衰で語れることではないのかもしれない。そこで今回は、ドラッグストア業界に詳しい経済評論家の加谷珪一氏に、その現状と今後の予測について解説いただいた。
■薄利多売の“スーパーマーケット化”で1位となったウエルシア
そもそも、ドラッグストア市場が拡大していることには、業界のある思惑が存在しているという。
「ひと昔前までのドラッグストアといえば、主要商品はもちろん薬であり、それに加えて一定数の消費財も扱うというような業態でしたが、ここ数年で状況が大きく変わってきているのです。
現在、業界売上高1位のウエルシアがいい例ですが、ウエルシアは生鮮食料品まで扱うようになっており、そのおかげで売り上げが非常に伸びています。コスモス薬品もそうですが、現在のドラッグストアの主流派は、明らかに“スーパーマーケット化”を目指しており、薄利多売のビジネスモデルがトレンドとなっています。こうした流れによって、市場規模が飛躍的に拡大していると認識するのが的確でしょう。
加谷 珪一/経済評論家
大学卒業後、出版社を経て、野村グループの投資ファンド運用会社で、企業評価や投資業務を担当。2000年に独立し、中央省庁や政府系金融機関に対するコンサルティング業務に従事している。著書に『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。
オフィシャルサイト http://k-kaya.com/
一方のマツモトキヨシは、いわゆる従来型のドラッグストアのまま、それまでのスタンスを変えていません。つまり、マツモトキヨシが負けたということではなく、ウエルシアといった現在の主流派が、違う方向に進みつつあると言えるのです」(加谷氏)
他方で、スーパーマーケット業界は昨今、“弱体化している”と見られているという。それは異業種との競争が激化し、スーパーが抱えていた顧客が奪われているからだそうだ。そんな異業種の筆頭格がドラッグストア業界であり、多くのドラッグストアが拡大路線を取ってスーパーと争っているようだ。
「ウエルシアとマツモトキヨシを単純な売上高で比べれば、ウエルシアがかなりリードしていますが、じつは利益率はマツモトキヨシの方が高いはずです。それは、ウエルシアが拡大路線を敷くために、“スーパーマーケット化”を目指しているからでしょう。現在、マツモトキヨシを除くほとんどのドラッグストアがスーパーに対抗意識を燃やしており、かなり強引な値引き販売を目指しています。
薄利多売のビジネスも出るであるスーパーは、仕入れ先のメーカーからどれだけ安く商品を仕入れられるかが命と言えますが、それはどれだけ一度に大量の商品を仕入れられるかにかかっています。すなわち、どれだけ個数をさばけるかということ。つまり、ドラッグストアが“スーパーマーケット化”を目指すには、売上高をあげてメーカーとの交渉力を持つ必要があるということです。ですから、経営戦略的には目先の利益率は多少犠牲にしてでも、規模の拡大を狙ったほうがいいということになるのでしょう。
スーパーは店内の目立つところに目玉の激安商品を置いて客を引き付け、別の商品も一緒に買ってもらい、トータルで儲けようというような戦略を取っていますが、これまでドラッグストアはこの戦略は取り入れていませんでした。ウエルシアなど近年勢いのあるドラッグストアは、こうしたスーパー的な販売戦略で急成長していますが、薄利多売化しているため、利益率は下がっているはず。
ただ、ドラッグストアの場合、そもそもの主要商品だった『薬』が大きな武器になるでしょう。薬は利益率が非常に高い商品なので、そこで得た利益を投入し、限界まで安売りをしてでもスーパーに対抗し、売上高を拡大しようと考えているのではないでしょうか」(加谷氏)
■あえてトレンドに乗らないマツモトキヨシは独自路線を進む
ロードサイドに多くの店舗を置いているウエルシアと、駅近といった都市部に多くの店舗を置いているマツモトキヨシでは、ビジネスモデルに大きな違いがあるようだ。
「ロードサイド型の店舗の場合は、極論で言えば競合相手はイオンモールになります。イオンと戦うということになると、週末などに車で来て、野菜からビールといった何から何まで、全部まとめ買いしてくれるお客さんが対象ということになります。ですから商品はフルラインナップが原則となるのです。“ありとあらゆるものがある”という形で商品を陳列し、値引きをするので、売上高は高いですが、利益率は犠牲になります。
一方で、マツモトキヨシのような都市型の店舗では、車で乗り付けてまとめ買いをするという買い方の客は、ほとんどいません。通りを歩いている人がフラっと入ってきて、そのとき必要な商品や、興味を惹かれる商品があったら買うといったスタンスでしょう。そのため商品のラインナップも、すべてをカバーする必要はまったくありません。ドラックストアの“スーパーマーケット化”に迎合せず、高収益型の商法を維持しているのです。つまり、両者は根本的にビジネスモデルが違うと言っても過言ではないのです。
ロードサイド型主体のウエルシアと都市型主体のマツモトキヨシでは、もはや『ドラッグストア』という同一業態として、ひと括りにして比較するのも難しいというのが実情でしょう」(加谷氏)
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