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ホンダの英国工場閉鎖は歴代経営者による「人災」だ
https://diamond.jp/articles/-/195241
2019.2.27 井元康一郎:ジャーナリスト ダイヤモンド・オンライン
英国工場の閉鎖を会見で発表したホンダの八郷社長 Photo:AFP/AFLO
ホンダによる英国工場閉鎖は、「ブレグジットの影響」と言われ、英国現地では衝撃的なニュースとして伝えられた。しかし、欧州ビジネスが低迷するホンダの実情を見れば、「英国離脱」は当然であった。問題なのは、それを「ホンダの四輪事業の生産体制の進化」だと“自画自賛”するホンダ経営陣である。(ジャーナリスト 井元康一郎)
ホンダの欧州ビジネスは最悪
“英国離脱”は当然だった
「ああ、とうとうこの日がやってきたんだね」
ホンダが2021年に英国工場を閉鎖するという一報が飛び出し、「すわ、ハードブレグジットがらみか」と世間の耳目をにわかに集めたが、筆者は正直、この程度の感想しか持たなかった。
自分だけではない。多くの経済人もとっくに予想していたことだろう。聡い人なら、ホンダの企業風土にかんがみて、ハードブレグジット(合意なき離脱)にひっかけられる今がそのタイミングになるということまで読み切っていたに違いない。
八郷隆弘社長は新聞報道が出た直後に記者会見を行い、その席上で「ブレグジットは関係ない」と明言した。それはそうだ。仮に今、英国政府が「ブレグジットをやめました」と言ったとしても、ホンダは工場閉鎖に踏み切ることだろう。
すでに多くのメディアが報じているように、ホンダの欧州ビジネスは最悪の状況に陥っている。2018年のホンダのEU、英国での販売台数は13万6000台にすぎない。SUVを主体とし、ホンダより平均売価がずっと高い三菱自動車にも販売台数で負けた。シェアは1%にも満たず、ヨーロッパ大陸ではもはやカルトカー(珍品)レベルだ。
英国スウィンドンにある工場のキャパシティは年産25万台だが、それに対して実生産台数は16万台。生産したクルマのうち55%を北米、10%を日本に輸出して実績を必死に“お化粧”しても、稼働率はなお6割強しかないのだ。
もともとホンダは商品を必要とされているところで作る“地産地消”の考え方が強いメーカーだ。その文法に従えば、販売がまったく伸びなかった欧州を切るのは当然の判断と言える。
実際、ホンダは“英国離脱”の機を虎視眈々(こしたんたん)と狙っていた。
欧州でアコード販売をやめたのは
自らショボいと宣伝するようなもの
本田技術研究所の幹部は言う。
「2015年に欧州でのホンダのラインナップにおいて実質トップモデルであった『アコード』(フォルクスワーゲン『パサート』、日本車ではマツダ『6(日本名アテンザ)』などと同クラスの中型乗用車)の販売をやめましたよね。あれは伊東(孝紳・前社長)時代の判断ですが、欧州ではこのクラスはDセグメントと呼ばれていて、それをきちんと作れることが一流と認められるパスポート。
それをやめて格下のCセグメント『シビック』が実質トップなんて、現地の顧客に“自分たちはショボい”と宣伝しているようなもの。小さいクラスだけで成功しているメーカーもありますが、ホンダはそういうブランドではない。そのことは経営陣もよく知っているはずです。そのアコードをフェードアウトさせたということは、競争の激しい欧州から逃げるということだったんですよ」
アコードの販売を終了させたのと前後して、欧州現地法人に社長を常駐させなくなった。
ホンダの経営方針の1つである世界六極体制における欧州の位置づけも、以前は単独で1極とされていたものを、今は中東・アフリカをひっくるめた“マイノリティ市場”へと格下げしている。つまり、着々と“英国離脱”の準備を進めてきていたのである。
今回、念願かなってそれを実行に移すことができた。
そのこと自体は別に非難されるようなことではない。何しろ今のホンダには、欧州に赤字の工場を抱えている余裕など微塵(みじん)もない。四輪車の収益性は非常に低く、今年の第3四半期には利益率が完全な危険水域の1%台をつけた。
また、グループの中核となるべき日本のホンダの単独決算も「2018年度の決算が出ていないうちからこのままだと400億円以上の赤字になるから何とかしないと、管理職に通達が出て、対策に追われている」(ホンダ関係者)など、ぐらついている。
ホンダの欧州ビジネスは
最初から悪かったわけではない
ホンダ版“ブレグジット”は喫緊の課題だったわけで、このこと自体はホンダにプラスに作用する可能性が高い。
だが、記者会見で八郷社長も今回の判断を「ホンダの四輪事業の生産体制の進化」だと“自画自賛”したことについては、素直に受け止める気になれない。
なぜならホンダの欧州ビジネスは、最初から悪かったわけではないからだ。
トヨタが90年代後半にフランスのヴァランシエンヌ県に生産拠点を設立し、シェア5%を達成しようと懸命になっていたとき、ホンダはそこまで力を入れずとも、トヨタのシェアの半分強を涼しい顔でゲットしていた。
ホンダの欧州ビジネスがここ20年ほどで壊滅するに至ったのは、経済的な環境要因のせいでもEUの政治力のためでもない。純粋にホンダ自身の欧州戦略がつたなかったからだ。
言い換えれば、歴代経営者による“人災”ということだ。
その失敗をなかったことにして分析を怠れば、次につながらない。が、八郷社長は技術の変化や市場など外部環境要因のみを理由として挙げ、自身を含めた歴代経営者のストラテジーのまずさという根本原因についてはとうとう口にしなかった。
「失敗が許される会社」は
口先だけの話
前出の本田技術研究所幹部は言う。
「われわれホンダマンは、『ホンダは失敗が許される会社だ』とよく言います。が、それは口先だけだというのはみんなわかっています。誰かが明白な失敗をしようものなら、そいつを引きずり下ろすために攻撃材料にするのは日常茶飯事。
なので、とくに出世が期待されている人材にはとにかく失敗させないということが大事。放っておいても成功することをやらせるか、失敗をなかったことに、あるいは成功したことにするかのどちらかです。八郷さんの言葉のはしばしに、それがにじみ出ているのが情けないやら悔しいやら」
筆者は2018年、ホンダのクルマ数台で長距離ドライブをやってみた。その1つが英国工場で作られたシビックハッチバックというCセグメントコンパクトモデルだったのだが、そのパフォーマンスたるや、素晴らしいものがあった。
極太のスポーツタイヤを路面にしっとり貼りつかせるサスペンションのセッティングは出色で、Cセグメントに力を入れている欧州メーカーでもシビックハッチバックに対抗するのは大変であろうと思われたほどだった。
そのシビックハッチバックだが、欧州市場ではほとんど存在感を発揮することができなかった。もちろんホンダブランドが弱体化している中で販売スコアを伸ばすこと自体、並大抵のことではないのだが、クルマの“出来の良さ”を思うと哀れですらある。
理由の1つとしてホンダマンが挙げるのは、決まってデザインである。
「シビックと言っても、セダンとハッチバックではターゲットとなる市場が違う。セダンはアメリカ、ハッチバックは欧州。ですが、今のシビックハッチバックはデザインがモロにアメリカを向いていて、欧州ユーザーの心には響かなかった。
しかも、全長もCセグメントのハッチバックとしては長すぎ、これもネガになりました。シビックに限らず、研究所の仲間内ではしょっちゅう話題になるんですよ。このクルマ、『誰のために作るんだろうね』って。我々はまず、自分たちが何をやりたいのかということを明確にすべき」(前出の本田技術研究所幹部)
「自分たちが何をやったらいいのかわからない」という病気はもう、かなり前からホンダを深々とむしばんでいる。
ホンダというのは
よくよく運のいい会社
前々社長の福井威夫社長時代、ホンダはアメリカのセミ高級車チャネル「アキュラ」を日本展開しようとしたことがある。もちろんトヨタが「レクサス」を日本市場に導入したことへのライバル心をむき出しにしてのことだ。
しかし、驚くことに社内で誰が「アキュラをやりたい」と言ったのかは、実は明確でなかったのである。アキュラをやろうとした一派は、かつて北米ホンダ社長を務めた人物がやりたいと言っているということを根拠に、プロジェクトを推進した。
当時ホンダマンだったあるOBが、「アキュラなんか絶対に失敗するに決まっている。そんなブランド力も商品もないんだから。自分のまわりの人はほとんど皆そう言っているのに、プロジェクトが止まらないんですよ。助けてください」と筆者に言ったことがある。むろん、筆者にはそれを止める力も助ける力もないのだが、まさしく悲鳴に近いものを感じた。
ホンダというのはよくよく運のいい会社で、何か不都合があったときにたまたま大きな出来事が起きて、撤退の口実ができる。このときは2008年のリーマンショックだった。
2007年に計画の進捗が思わしくなく、2年延期された翌年のことだったが、その延期のとき福井氏は「遅れるが絶対やりますよ」と言い張っていた。
「完全中止は本当によかった。だって、出す予定だったクルマがアコード(北米におけるアキュラ『TSX』)だったんですよ」(前出のホンダOB)
この話には後日談がある。北米社長をやったその人物が、自分自身の発言がアキュラをやる根拠になっていることを知り、「俺は一言もそんなこと言ってねーぞ」と腹を立てたというのだ。
このように、ホンダは企業統治に重大な欠陥を抱えている。
トップが明確な
ビジョンを示さない
トップが明確なビジョンを示さないので、その下の階層が何をやったら経営陣が喜ぶのかを類推し、ご機嫌伺いのようなプランを提示するのだ。八郷社長は1年半ほど前、「2030年ビジョン」という中長期経営プランを出してはいる。
だが、これはホンダ社内の各セクションにやるべきこと、やらなければいけないことをリストアップさせ、それを統合しただけのもの。ボリュームはパワーポイントで何十ページにも及ぶ。
「やるべきことがズラズラと書いてあるだけで、ホンダはどういう企業でありたいのかという意思がまったく感じられない。社内ではこれをベースに議論を進めるということになっているのですが、叩き台が不明瞭なため、みんな何を議論していいかということすらつかめずにいる。たまりかねた若手が管理職に『要するに何が大事なんですか』と談判したら、俺だってわかんねえよという返事が返ってきたなどという笑い話もあるほどです」(ホンダの中堅幹部)
今回の英国からの離脱、いわばホンダ版ブレグジット自体は、コストコントロールの面ではプラスに作用するであろう。だが、八郷社長が「欧州をあきらめたわけではない。電動化技術でホンダブランドの再構築を目指す」と息巻いたのは、さすがに口が滑ったと言うべきか。
今、電動化はホンダだけではなく、この分野での先行者であるトヨタ、欧米メーカー、中国やインドの新興メーカーがこぞって取り組んでいる。エンジン車でストラテジーに破綻を来し、欧州から一時撤退に近い策を打たなければならなくなったのに、電動車なら自分たちのフィールドで、皆がホンダの作る製品に驚愕し、感動してくれるに違いないと思うのは、いくら何でも希望的観測に過ぎるというものだ。
先にも述べたが、筆者がホンダを本当にもったいなく思うのは、クルマづくりの知見についてはいまだ世界有数なものを持ちながら、経営者のビジョンが希薄なためにみすみす沈んで行こうとしていることだ。
筆者は嫌われても
これだけは言いたい
嫌われてもいいからこれだけは言いたい。
本当のビジョンを持つには「過去の失敗の歴史」に学ぶ必要があるし、従業員に対して何がダメだった理由で、それを踏まえてこれから自分たちはどうあろうとするのか、何をやっていくのかということを明示するべきだ。
「失敗を恐れない会社だ」と言うなら、経営者が自ら失敗を認められなければ嘘だ。欧州市場での敗退は“ホンダに何が足りなかったのか”を考察するには格好の材料の1つだ。
なかったことにするのは、あまりに惜しい。
ホンダの英国工場閉鎖は歴代経営者による「人災」だ | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン https://t.co/JYUeaRX33J
— yumi (@eyumi) 2019年2月26日
聡い人なら、ホンダの企業風土にかんがみて、ハードブレグジット(合意なき離脱)にひっかけられる今がそのタイミングになることまで読み切っていたに違いない/ヨーロッパ大陸ではもはやカルトカー(珍品)レベルだ / “ホンダの英国工場閉鎖は歴代経営者による「人災」だ …” https://t.co/RN0mPdlaAn
— paravola (@paravola) 2019年2月26日
ホンダの英国工場閉鎖は歴代経営者による「人災」だ #SmartNews
— IMAMURA@ (@jxdxg379) 2019年2月26日
モータージャーナリストがここまでひとつの会社を批判するのは珍しい。
今のホンダには1番必要な批判。 https://t.co/ueEYSide7z
本田宗一郎やSONYの井深&盛田コンビの様なカリスマが築いた会社はその種が失われた途端弱体化して行く。盛田さんはよく『シーズ』という言葉を使っていたけど、種の伝承ほど難しい物はないんどな。と。
— ::ruiiiiiiii:: (@ruiiiiiiii) 2019年2月26日
ホンダの英国工場閉鎖は歴代経営者による「人災」だ https://t.co/MPYOQjx8x4
ホンダの欧州ビジネスがここ20年ほどで壊滅するに至ったのは、経済的な環境要因のせいでもEUの政治力のためでもない。純粋にホンダ自身の欧州戦略がつたなかったから。井元康一郎さんのコラム。https://t.co/A0p1VoNYwU ホンダは企業統治に重大な欠陥を抱えている。
— 石川一敏 (@ik108) 2019年2月26日
ホンダというのはよくよく運のいい会社で、何か不都合があったときにたまたま大きな出来事が起きて、撤退の口実ができる。このとき(アキュラの撤退)は2008年のリーマンショックだった https://t.co/RN0mPdlaAn
— paravola (@paravola) 2019年2月26日
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