http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/241.html
Tweet |
銀行が信用力に問題がある「ゾンビ企業」の融資を切れない理由
https://diamond.jp/articles/-/194836
2019.2.22 塚崎公義:久留米大学商学部教授 ダイヤモンド・オンライン
最近、銀行が「決算が苦しいので、信用力に問題がある融資でも構わず貸している」という報道を目にする機会が増えた。銀行が、今期の決算だけを考えて行動しているとすれば大問題だが、実はそうした「ゾンビ企業」を生かしておく方が得だという事情もあるのだ。どういうことなのだろうか。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
背に腹は代えられないという
銀行の事情
現在、地銀の置かれた状況は非常に厳しい。まず、「ゼロ金利」であるため、預金部門のコスト分がそっくり赤字になるからだ。
銀行の本業は、預金を集めてそれを貸し出し、利ざや(貸出金利と預金金利の差)を稼ぐことだが、これを預金部門と融資部門に分けて考えてみよう。
預金部門は、集めた資金を他行に市場金利(現在はゼロ)で貸し、融資部門は必要な資金を他行から借りる。となると、預金部門は収入がゼロだから、コスト分だけそっくり赤字となる。
ゼロ金利で他行が貸してくれるのに、わざわざ預金部門が人件費を払ってまで預金を集めているのは、将来ゼロ金利でなくなったときに備えてのことであり、今期の決算としてはコスト分だけ全て赤字になる。
加えて、「日本経済のゼロ成長」というのは、普通の業界にとっては「前年並みの売り上げと利益」を意味するが、銀行業界にとっては意味が違う。借り手が、配当しなかった利益を借入返済に回すため、前年より貸出残高が減ってしまう要因となるのだ。
貸出残高が減れば利益が減るので、銀行は「リスクの高い先にも貸す」「ライバルの客を奪うため、貸出金利の引き下げ競争を繰り広げる」といった誘惑にかられることになる。
そうなると、既存の融資先が危なくなっても、追い貸しをするインセンティブさえ出てくる。倒産されてしまうと今期に損が発生するが、追い貸しをしておけば今期には損が発生しないからだ。
人事評価システムに
問題の一因が
貸し出しが不良債権化したとき、誰を罰するのか(誰の人事考課を引き下げるのか)は、難しい問題だ。貸出時の稟議書には係員から支店長までの印が押してあるのが普通だから、その全員を罰するという選択肢はあろう。しかし、話は簡単ではない。
そもそも30年前に取引を開始して以降、3ヵ月ごとに借り換えをしてきた借り手が倒産したとして、いつの時代の担当者を罰すべきかといった問題がある。また、「借り手が多少傾いたとしても、回収するより追い貸しをして借り手の回復を待つべきだ」という判断を、これまでの担当者がした場合もある。その場合、今の担当者を罰するのは気の毒だ。
とはいえ、貸し倒れが生じたタイミングの担当者を罰する人事システムとなっている場合も多い。そうだとすると、現在の担当者には、次の担当者に引き継ぐまで追い貸しをして借り手を生かしておくというインセンティブが生じる。
これは、銀行にとって全くもって悩ましい問題だ。予期せぬ事情による倒産はともかく、そうでない倒産については誰かを罰しておかないと、次からの貸出担当者の貸出判断が甘くなってしまうからだ。しかし、罰しすぎると皆が追い貸しをするようになってしまうという状況に陥ってしまうためだ。
ゾンビ企業を
生かしておいた方が得な面も
以上、ゾンビ企業に追い貸しをして生かしておくのは銀行にとって不利益だという前提で論じてきたが、実はそれも場合によっては正しくない。その理由は、借り手企業には「減価償却」という制度があるからだ。
銀行から100万円の融資を受けて、100万円の設備機械を購入した会社があるとする。機械の耐用年数は10年で、借入は毎年10万円ずつ10年かけて返済する予定だと仮定しよう。
ところが借りた瞬間、ライバルが新製品を開発したため、今後10年間赤字が続いて債務超過になることが確定してしまう。まさにゾンビ化だ。銀行には「今後毎年、1万円の赤字が続いてしまいます。申し訳ございませんが、借りた金を全額返すことはできません」という連絡が入ることになるが、銀行としてはどう判断すべきなのだろうか。
第1の選択肢は、当初の約束通り、担保を実行して設備機械を競売にかけるというものだ。この場合、真新しい設備機械がスクラップ業者に買い叩かれ、30万円でしか売れなかったとすれば、銀行は70万円の損失を被ることになる。
第2の選択肢は、設備資金の返済を猶予するとともに、毎年の生産に必要な材料費を貸し出すというもの。借金が返せないと分かっている借り手に、新たな貸出をするのだ。
この企業は、「毎年10万円で材料を仕入れたり、労働者を雇ったりして製品を作り、19万円で売る」ということを10回繰り返すことになる。売り上げは19万円、費用は減価償却の10万円と材料費などの10万円だから決算は毎年赤字だが、キャッシュフロー(現金収支)は毎年9万円の黒字となる。減価償却は決算を悪化させるが、キャッシュフローは悪化させないからだ。
つまり、この企業は毎年借りた材料費はきちんと返済し、その上で設備投資資金も毎年9万円ずつ返済することになる。そうなると、銀行としては100万円貸した設備資金のうち90万円は回収できることになるから、設備機械を競売にかけてしまうよりも最終的な回収額は大きくなるのだ。
ゾンビ企業の全てが
追い貸ししてもらえるわけではない
もちろん、全てのゾンビ企業が追い貸しをしてもらえるわけではない。減価償却が小さい企業はダメだろう。設備を競売で高く処分できそうな場合もダメだ。中でも中小零細企業は、追い貸しをしてもらえる可能性が小さい。
赤字企業に追い貸しをするのは、銀行として面倒なこと。だから、「100億円のうち90億円戻ってくる」という案件ならば追い貸しをするインセンティブは大きいが、「100万円のうち90万円戻ってくる」という案件だと、諸事情を考えて競売にかけてしまうかもしれない。
「銀行は大企業ばかり優遇する」といった声も聞かれるが、銀行には銀行なりの事情があるのだ。もちろん、大企業が倒産すると連鎖倒産なども発生しかねないので、各方面から「大企業だけは助けてほしい」という有言無言の圧力があるのも事実だ。
そうした中で、もしもゾンビ企業を存命させる事例が増えているのであれば、「背に腹は代えられない」と考えた銀行が、手間暇をかけても中小零細企業から90万円を回収せざるを得なくなっているのかもしれない。
本稿は以上だ。なお、銀行がゼロ金利とゼロ成長で苦しいという点に関しては拙稿「苦境の銀行が一斉に手数料を引き上げる事情」を併せてご参照いただければ幸いだ。
ちなみに本稿は、筆者個人の意見であり、筆者が現在あるいは過去に属した団体などの見解ではないことを付け加えておく。
銀行がゾンビ起業への融資を続ける理由としては、人事評価制度上の問題等々もあるのでしょうが、「融資を続けた方が最終的な回収額が多くなるから」という前向きな理由も重要です。 #NewsPicks https://t.co/fDUkza1J9d
— 塚崎公義 (@tsuka00738289) 2019年2月21日
なるほど(T ^ T) https://t.co/WSwL8s4thE
— Ken Negami(肉球新党「猫の生活が第一」) (@debu4649) 2019年2月21日
銀行が信用力に問題がある「ゾンビ企業」の融資を切れない理由 ダイヤモンド・オンライン 最近、銀行が「決算が苦しいので、信用力に問題がある融資でも構わず貸している」という報道を目にする。実はそうした「ゾンビ企業」を生かしておく方が… https://t.co/49T0rFgaVh
— 銀行ガイド (@Ginkou_Guide) 2019年2月22日
人事制度に関しては「短期資金を貸すくらいなら返済の緩やかな長期資金を貸す」という妙なインセンティブも生む。
— feever (@feeverfree) 2019年2月22日
本来は期間が長いほど高リスクだが、長期資金だと返済が緩やかな分、... #NewsPicks https://t.co/vgh9jWrwDL
「高橋:でも、黒田(東彦・日銀総裁)さんもまだ甘いですね。マイナス金利は当座預金のうち新規分についてだけで、これまでの250兆円の残高のほとんどには依然として0.1%が付く。」
— Hiroshi (@Hiroshi7564) 2019年2月22日
マイナス金利に関してマスコミから一... #NewsPicks https://t.co/LmpRRVVmjv
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民131掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民131掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。