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非正規雇用140万人が7年後に職を失う、日本の格差拡大はこれからだ 「デジタル経済の嘘とホント」(2)
https://diamond.jp/articles/-/193546
2019.2.12 岩本晃一:経済産業研究所/日本生産性本部 上席研究員 ダイヤモンド・オンライン
写真はイメージです Photo:PIXTA
日本はバブル崩壊以降、新自由主義を導入し、「勝ち組」と「負け組」に分かれ、かつての中間所得層が減少し、経済格差が開いてきたとされている。
全国消費実態調査や国民生活基礎調査によると、税金などを差し引いた世帯の手取り収入(等価可処分所得)が、中央値の半分の水準の世帯の割合(相対的貧困率)は、それぞれ高まっている(図表1)。
このことは、徐々にではあるが「貧困層」が増えていることを示す。
また所得分配の不平等を示すジニ係数で、日本はOECD平均よりも格差が大きいことは、前回の記事「経済格差をめぐる誤解、原因は移民や安い輸入品ではなかった」(2019年1月9日付)で書いた。
だから、日本で経済格差はこれ以上、拡大することはないだろうと思っている人が多いのではないか。
だが、そうではない。むしろこれから一気に拡大する可能性が高いのだ。
情報化投資が遅れてきた日本
RPA導入の加速で変化
日本はこれまでさまざまな理由により情報化投資が遅れてきた。
その結果として日本企業の労働生産性は先進国の中でビリに近い状態がずっと続いているものの、幸いにも米国のような極端な経済格差のある社会にはなっていない。
だが、今、日本では、職場にAIを導入し定型的な仕事であるルーティン(Routine)業務を機械化しようという動きが始まろうとしている。
その典型的な例が、人間が行ってきた事務作業の一部をソフトウェアのロボット技術で自動化するRPA(Robotic Process Automation)である。
その結果、日本は米国の後を追って、これから活発な情報化投資により、経済格差が広がることが予想される。
しかもバブル崩壊以降の日本企業は、大規模なリストラ、労働分配率の低下、非正規の大量採用、人材育成投資の大幅削減という「人への投資の削減」「人を冷遇する」という経営を続けてきた。
そのため、RPAが広がるこれからは、経済格差が米国よりも速いスピードで、一気に、しかも大規模に拡大する、というのが私の予想である。
米国では80年代から
ルーティン業務の雇用が減少
前回も紹介した米国MITのデイビッド・オーター(David H. Autor、1967年生まれ)教授の論文から、まずは米国でのルーティン業務の推移を見てみよう。
上の図表2からわかることは、知識や経験を必要とする「ルーティン業務」(Routine Cognitive)は、米国では少なくとも1960年代は増えていた。従って、その業務を担う人間の数は増えていたのだ。
だが、1970年代になると増加スピードは減少し、1980年代半ばになると米国内のルーティン業務自体が減少に転じ、その後、減少のスピードはどんどん加速している。
その一方で、人間を機械に代替する情報化投資は、1970年代から増え始め、1980年代半以降、一層加速していった。
では、ルーティン業務を担う労働力として、1960年代には雇用を増やしていた米国が、急に人間を機械に代替するほど情報化投資に積極的になっていった「境界線」はどこにあったのだろうか。
図表3は、IT関連機器投資の価格の1994年以降の傾向を示したものだが、情報化投資は急速にコストが減少する傾向を持つ。
このコスト低減傾向は1980年代以降にも見られた。そのため、米国企業の経営者は、合理的な判断をして、人間を雇用するコストよりも情報化投資のコストの方が安くなった時点で、人間を雇用するのを止め、情報化投資に切り替えていったものと思われる。
これが、米国における人間の機械への代替メカニズムである。
図表4に見るように、コスト低減傾向を持つ情報化投資コストが労働コストを下回る「境界点」を越えると、人間が機械に代替され始める。
米国の労働コストは日本の非正規の労働コストよりも高く、情報化投資コストは日本よりも安いので、日本よりも早く「境界点」に到達する。
だがやがて、日本でも米国に遅れるものの、「境界点」に到達する。
機械化しても雇用は維持
生産性や競争力の低下招く
OECDでは、米国、EU、日本の3ヵ国について、2002年から2014年まで、スキル別の職業ごとの労働者比率の変化について計算している(図表5)。
注)例えば、米国における(高スキル労働者数)/(全労働者数)について、2002年の値と2014年の値を比較すると、2014/2002=+7%増となっていることを示している
3ヵ国を比較すると、米国が最も変化が大きく、日本が最も変化が小さい。
米国の企業は、2002年以降、中スキルのルーティン業務の労働者を解雇してきただけでなく、中スキルの非ルーティン業務の労働者も解雇してきた。
その一方で、高スキル者を自社内で養成したり、新規雇用を増やしたりするなど、高スキル者の獲得に努めてきた。
米国と比較した日本の特徴は、本来は機械化を進めて解雇できたはずのルーティン業務の雇用者でも、ほとんど解雇していないことだ。
さらに日本と米国との大きな違いは、日本企業は高スキル者の獲得や養成にほとんど無関心だったように見えることだ。
日本では、「ウィンドウズ95」が発売された95年が「インターネット元年」とされるが、これでは、その後日本が米国とのグローバル競争に負けてきたこともうなずける。
日本企業は、雇用の現状維持の傾向が強く、技術進歩に伴って本来であれば機械で代替できる部分で人間を働かせていたり、高スキル人材を養成したりしていない。
順送り人事、過去と同じ業務の繰り返し、働き方の現状維持、の結果といえる。
つまり、技術進歩に応じた雇用状態が合っていないため、生産性低下、企業競争力低下を招いているものと思われる。
技術進歩にもかかわらず、雇用の現状維持を続けることは、企業のイノベーションの足を引っ張り、生産性の低下、競争力低下につながるのだ。
AI導入で機械への
代替が一気に進む予兆
前述の図表3でわかるように、日本での情報化投資は米国よりもコストが高い。雇用慣行や人事だけでなく、このことも、日本で情報化投資が遅れてきた背景だ。
だが、情報化投資のコストは下がり続ける。日本でもいつかの時点で、多くの企業で人間を雇用するコストよりも情報化投資の方が安くなる境界点が到来する。
そのとき、機械への代替化が一気に進むと予想される。
実は、日本では現在、情報化投資が労働コストを下回る境界点に差し掛かっているのではないかという予兆が見える。
例えば、専門誌の特集、「実践RPA」(日経コンピュータ、2018年10月28日増刊号)、「まるわかりRPA」(日経コンピュータ、2017年12月30日増刊号)から主要な記事のタイトルを拾っただけでも、次のような動きがある。
「AIとRPAで帳票処理の8割を自動化、みずほ銀行が2019年春にも」
「電通社長、メモ見て即決、目を付けたのはPC業務を自動化するRPAだった」
「日本生命がRPA導入拡大、仕事を5倍速く、15%少なく」
「三井住友海上火災保険、18%効率化を目途にRPAを本格導入へ」
「RPA導入を先行した金融機関、作業時間が10分の1に」
また、地方自治体の中で先導的な役割を担っているつくば市では、RPAの実証実験をして結果を以下の通り公開している。
この実験は、2018年(1月〜4月)に、市民税課や市民窓口課の電子申告書の印刷や異動届受理の通知など、5業務をソフトウェアのロボットでやることで、作業時間などをどの程度、削減できるかを実証したものだ。
図表6は、つくば市の基幹系6業務で、40の作業があったものの、そのうち32作業がRPAで代替でき、人間がしなくてはならない作業は17作業だったことを示している。
これは、もし基幹系6業務に100人を充てていたとすれば、そのうち32/(32+17)=65%、すなわち65人は不要になったことを示している。
また銀行業界では、RPAにより人員を減らす動きが現れている。
来春卒業の大学生の採用では、メガバンク3社は、一般職を合計900人の採用を減らすという。みずほフィナンシャルグループの場合、一般職は約7割減とのことだ(出典:朝日新聞2018年9月1日)。
またメガバンクは、今後、AI導入を進めることによって3社合計で約3万人規模のリストラをすると発表している。
銀行業界は、RPAの導入を急速に進めており、ルーティン業務の機械への代替は一気に進みそうだ。
RPA業界では、これからの最大市場は、銀行業界と地方自治体だとのうわさがされている。この2業種は、ほとんど大部分が帳票業務などの「ルーティン業務」だからだ。
どれぐらいのスピードで
雇用減や格差が広がるか
日本でこれから、AIなどに仕事や雇用がどの程度、代替され、経済格差がどこまで拡大するのだろうか。
▽日本で、IoT、AIなどのデジタル技術の導入により、今後、機械への代替や雇用者数の減少はどうなるか。
▽その結果、日本では米国の後を追う形で、どのようなスピードで、そしてどの程度の規模で経済格差が発生するか。
この2点に関しては、入手可能な数字等に基づき、ある程度の幅はあるものの、かなりの精度をもって予測することが可能である。
筆者の試算では、例えば、7年後の2025年を予測すれば、ルーティン業務量は今より7%程度減り、そうした業務を担う非正規雇用の約140万人程度が仕事を失うことが見込まれる。
ただし、この数字はかなり控えめに見た予測だ。
このことも含め、次回に詳細を書きたい。
どれぐらいのスピードで雇用減や格差が広がるか
— Masa Okumura (@mokumura) 2019年2月11日
日本でこれから、AIなどに仕事や雇用がどの程度、代替され、経済格差がどこまで拡大するのだろうか。7年後の2025年を予測すれば、ルーティン業務量は今より7%程度減https://t.co/IuNYedloSK
『日本企業は、雇用の現状維持の傾向が強く、技術進歩に伴って本来であれば機械で代替できる部分で人間を働かせていたり、高スキル人材を養成したりしていない』
— 奥田美和@ITと歌と転勤族パワーで社会問題解決! / TK-Miwa「本庄美人」埼玉ねぎPRソング (@TK_Miwa3) 2019年2月11日
この辺りをカイゼン提案したいな…と思っています。
https://t.co/9N4t9G17Hu
非正規雇用140万人が7年後に職を失う、日本の格差拡大はこれからだ | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン
— 弁護士 加藤英男 (@BengoshiKH) 2019年2月11日
『2025年を予測すれば、ルーティン業務量は今より7%程度減り、そうした業務を担う非正規雇用の約140万人程度が…』
どうこれに対応していくか。 https://t.co/2MdKMXrAQ8
非正規を正規化することで何が起こるかと言えば、新たなる差別が引き起こされる。そして、それに適合できない者は記事にあるとおり失職が待つ。
— XWIN II (@xwin2g) 2019年2月11日
↓
非正規雇用140万人が7年後に職を失う、日本の格差拡大はこれからだhttps://t.co/IR9f0xt2Aw
非正規雇用140万人が7年後に職を失う、日本の格差拡大はこれからだ(ダイヤモンド・オンライン)
— 名古屋ふれあいユニオン(公式) (@NFU_kouhou) 2019年2月11日
「例えば、7年後の2025年を予測すれば、ルーティン業務量は今より7%程度減り、そうした業務を担う非正規雇用の約140万人程度が仕事を失うことが見込まれる。」https://t.co/dsheQsxgBj
▽日本で、今後、機械への代替や雇用者数の減少はどうなるか。
— tarou satou (@kohumimetal) 2019年2月12日
▽その結果、日本では、どのようなスピード、規模で経済格差が発生するか。
この2点に関しては、入手可能な数字等に基づき、ある程度の幅はあるものの、かなりの精度をもって予測することが可能である。 https://t.co/2jJgAuTv7I
やっぱAI化は恐ろしい
— 絵を描く吃音マン (@kuma701023) 2019年2月12日
彼等は人間の仕事を奪うぞ!
人間にしかできない事を増やすしかない
非正規雇用140万人が7年後に職を失う、日本の格差拡大はこれからだ | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン https://t.co/7ypyfFCoHz
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