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欧州で最も腐敗している国、ロシアがなぜか高成長
太る既得権益者は我が物顔、やせ細る庶民には無気力感漂う
2019.2.8(金) 大坪 祐介
2018年末のモスクワ市内中心部。ロシアでは新年の後にクリスマスがやってくる。
2月4日、ロシア連邦統計局は2018年の実質GDP(国内総生産)成長率の速報値を発表した。今回発表された数字は+2.3%と2013年の+2.5%以来の高い伸びを示した。
ブルームバーグのコンセンサス(事前予想平均値)では+1.9%、強気の予想を提示する傾向にあるロシア経済発展省は+2%であったが、今回発表値は誰の予想をも大きく上回るものであった。
現地の多くのエコノミストたちはこの数値に疑問を投げかけている。
ウラジーミル・プーチン大統領の経済ブレーンの一人でもあるクドリン会計検査院長官、長く経済省でチーフエコノミストを務めたクレパーチVEB副会長らも「せいぜい1.5%」とコメントしている。
月次で発表される供給、需要サイドいずれの統計をみても景気回復が加速する状況にはないからである。
なかには昨年12月の連邦統計局長官の交代が影響しているのではないかとのうがった見方もある。
連邦統計局は経済発展省の傘下にあるため、プーチン大統領が昨年5月の施政方針演説で述べた3.5%成長に少しでも近づける忖度が働いているのではないかとの勘繰りである。
GDPコンポーネントの詳細な分析は4月に四半期確報が発表されるまで待たなければならないが、今のところ過去の数値を遡及改定したことに伴う「技術的な」景気回復であろうとの冷静な見方がもっぱらである。
わが国同様、国家の基幹統計を巡って一騒動起きそうな雰囲気である。
他方、騒動になりそうでならなかったこともある。
ロシアでは今年初から付加価値税が18%から20%に引き上げられた。
昨年夏のワールドカップ開催日のお祭り気分に乗じて発表された税率引き上げであるが、昨年末に高額商品の駆け込み消費があったかというと先のGDPを引き上げるほどには寄与していない。
また小売現場でレジ対応の混乱があるかというと、1か月後の今では大手のスーパーやファーストフード店では全く混乱はみられない。
スーパーマーケットのレシート。品目ごとのVAT税率に加え、支払総額のうちVAT20% 13.50ルーブル、VAT10% 28.62ルーブルと記載は細かい。
普段は確認もせずに捨ててしまう買い物のレシートを今回改めてじっくりと眺めてみた(右の写真)。
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/7/9/250/img_796b91e0679eb28ee77a02aeb64dc02064920.jpg
スーパーマーケットで購入する基礎的な食料品(パンやヨーグルトなど)には軽減税率が適用されていて、税率10%との表示がある。
適用外の食品(清涼飲料)はもちろん20%が適用される。末尾には10%、20%適用のそれぞれの税額の合計まで記載されている。
またファーストフード店(ケンタッキーフライドチキン、ロシアでも人気である)でテイクアウトしたバーガーも10%であった。
しかし、スターバックスで買ったコーヒー豆は20%、レジ袋(モスクワでは有料であることが多い)も20%である。
ロシアの大手スーパーマーケットのレジはほとんどPOS化されており、レジではバーコードを読み取るだけである。ファーストフード店でも注文はカウンターではなく大画面のターミナルで行う店が多い。
税率変更もプログラムの書き換えだけで比較的容易に対応できるのだろう。
ただ、中小店舗やルイノック(市場)がどのように対応しているのかは今回確認できなかった。
短時間でここまで細かく対応するのはシステム導入なしでは不可能であろう。次回の研究課題としたい。
今回の日露首脳会談では付加価値税/消費税の引き上げなど話題にすら上らなかったと思うが、安倍晋三首相には同じ2%の税率引き上げを6か月前に発表、こともなげに実施してしまう秘訣をプーチン大統領からぜひ聞き出してもらいたかった。
ところで、昨年末のモスクワは町全体がディズニーランドかと思うくらい華々しく煌びやかに装飾され、多くの地元民・観光客で街は賑わっていた。
年末の赤の広場。クリスマスマーケット
街中のレストランも会社の忘年会であろうか、派手に飲み食い&踊る団体で込み合っていた記憶がある。
それを思い出すと冒頭の経済成長も全くデタラメというわけではないような気もする。
しかしロシアの長い正月・クリスマス(ロシア正教では1月7日である)休暇が明けたモスクワに滞在して感じたのは、何とも言えない閉塞感である。
その閉塞感を一番感じるのはモスクワ市内で交通渋滞に巻き込まれたときである。
筆者はモスクワ市内の移動は原則地下鉄を利用しているが、さすがにマイナス20度近いマローズ(厳寒)の中を地下鉄駅まで20分以上歩くのは日本人ビジネスマンには無理である。
そこでタクシーを利用するのだが、最近はタクシーでの移動にかかる時間が如実に増加している。路側の違法駐車の排除など、市内の道路事情は以前に比べて飛躍的に改善しているにもかかわらずである。
確かにロシアの新車販売台数は昨年10%近く増加している。しかし渋滞の原因は自動車台数の増加ではないように思える。
筆者はモスクワの交通渋滞悪化の原因は「青サイレンの車」、つまり交通ルールを守らない政府関係者や政治家、おそらく彼らに連なるオリガルヒらの車が増えているからではないかと感じている。
これらの車はスピードは無制限、緊急車両のレーンを自由に走るだけではなく、警護のパトカーを先導にしている場合は信号無視も平気である。
これが閣僚クラスになると前後にパトカーを従えた車列を編成、時には道路を全面封鎖することもある。
こうなると一般の車は15分から30分、全く身動きできなくなる。クレムリンから一般道路に通じる出入り口では青サイレンの車を優先的に通行させるために警官が恣意的に信号を操作するため渋滞が恒常化している。
ボリショイ広場の前は光のティアラが並んだ
この青サイレンの車についてはかつて社会問題となって市民の間から抗議活動が起こった。
これを受けてプーチン大統領も運用の厳格化を命じたことがあったと記憶している。
しかし、最近は明らかに青サイレンの車が増えているように感じる。
渋滞するタクシーの中でその理由を考えてみた。モスクワの市民が青サイレン車に反対の声を上げたのは、ロシアの経済成長に勢いのある時期であった。
つまり多くの新たなビジネスが生み出され、中間層といわれる人々が急速に拡大していた時期である。
足許、景気低迷が長年続き以前のように中間層に勢いはなくなっている。
これに対して既得権益層、つまり資源・エネルギーを中心とする政府系企業、それに連なる政府関係者、政治家などはさほど不景気の影響は受けず、相対的に優位な立場にある。
これが青サイレンの車の増加につながっているのではないだろうか。
既得権益の分配にあずかるために重要なのは競争原理ではない。
1月末にトランスペアレンシーインターナショナルは毎年恒例の腐敗認識指数ランキングを発表した。
プーチン大統領は昨年の施政方針演説で経済成長とともに腐敗の根絶を訴えたものの、今年のロシアのランキングは前年135位から後退して調査180か国中138位、「ヨーロッパで最も腐敗した国」との不名誉な評価を得た。
開発経済学の教えるところでは、国が豊かになると腐敗は減るものとされている。ところがロシアは1人当たりのGDPが1万ドルを上回るようになっても腐敗が減らない例外的な国である。
ロシアの腐敗体質がどれほどロシアの経済成長のマイナス要因となっているか定量的に把握することは難しいが、プラスに寄与していないことは明らかであろう。
「景気は気から」とは言うが、ロシアの腐敗体質が多くのロシア国民に「無気力」をもたらしているとすればロシアの自律的な経済成長は容易ではあるまい。
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