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(回答先: 伊方原発トラブル 原子力規制委員長 “原因を公開の場で議論”(これまでは非公開だった?) 投稿者 戦争とはこういう物 日時 2020 年 1 月 30 日 20:19:26)
国が押す原発再稼働を、一時的にとはいえ止めた画期的判決。その論理的根拠を読み込んで置けば、高裁で判決が出た時に反論できるだろう。
それでも論理的に異常な判決は出るのかもしれないが。
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伊方原発3号炉差し止め仮処分決定、決定要旨を読み込んでみた
https://news.livedoor.com/article/detail/17723317/
2020年1月27日 8時32分 HARBOR BUSINESS Online
*四国電力伊方発電所 2019/04/13 撮影 牧田 *写真https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/1/f/1f9ab_1434_2c85a411_178e754e.jpg
◆4県であった伊方原発運転差し止め訴訟
前回、年明け早々びっくりの伊方3号炉運転差し止め仮処分山口ルート*広島高裁決定について、その概要をご紹介しました。
〈*伊方発電所3号炉運転差し止めについては愛媛県、大分県、広島県、山口県の原告団からそれぞれ別個に訴訟が提起されている。筆者はこれをそれぞれ愛媛ルート、大分ルート、広島ルート、山口ルートと呼称している。
今回は各県における本訴と仮処分請求についてその状況を概説し、それぞれの仮処分申し立てについて比較します。
◆各県における本訴と仮処分申し立ての状況
伊方発電所3号炉は、立地県である愛媛県だけでなく瀬戸内海と豊後水道を挟んで周囲を囲む大分県、広島県、山口県で運転差し止めの民事訴訟と仮処分申し立てをなされています。
このほかに高知県でも訴訟と仮処分の申し立てを行う話がありましたが、愛媛県訴訟団の支援をすると言うことで取りやめになっています。
県庁所在地と伊方発電所の距離は、図示するように愛媛県が北西約60km、大分県が西南西約70km、広島県が北約100km、山口県が北西約110kmとなっています。なお、高知県はちょうど西側の120km圏内となります。
それぞれの訴訟、仮処分申し立ては、脱原発弁護団全国連絡会のホームページにまとめられています。
◆脱原発弁護団全国連絡会 : 全国脱原発訴訟一覧
ここで各県での訴訟の進行状況を列挙します。
1)愛媛県*
本訴2011/12/08起訴 松山地裁 係争中 次回第21回口頭弁論
仮処分2016/05/31申立 高松高裁2018/11/15棄却決定
* 伊方原発をとめる会
2)大分県*
本訴2016/09/28起訴 大分地裁 係争中 次回第15回口頭弁論
仮処分2016/06/24申立 福岡高裁 係争中(2018/05/24 地裁却下・即時抗告)
*大分県民による伊方原発差止訴訟
3)広島県*
本訴2016/03/11起訴 広島地裁 係争中 次回第18回口頭弁論
仮処分2016/03/11申立 広島高裁 2018/09/25棄却決定
仮処分(新)2018/05/18申立 広島地裁2018/10/26却下決定
*伊方原発運転差止広島裁判
仮処分広島ルートは、広島高裁で2017/12/23に運転差し止め決定となり、その期間は2018/09/30迄であった。
2018/05/18に新たに2018/10/01以降の運転差し止め仮処分申し立てが行われた。
四国電力により決定に対する保全異議申し立てが行われ、2018/09/25に運転差し止めの棄却決定となった。
運転差し止めの延長を求めた仮処分(新)の申し立ては、2018/10/26に地裁却下決定となった。即時抗告は行われていない。
4)山口県*
本訴2017/12/27起訴 山口地裁岩国支部 係争中 次回第16回口頭弁論
仮処分2017/03/03申立 広島高裁 決定書交付2020/01/17差し止め決定
* 伊方原発をとめる山口裁判の会
仮処分は、2020/01/17に期限を本訴第一審判決言い渡しまでを期限として伊方発電所3号炉の運転を差し止める決定である。本記事執筆時点で四国電力は、保全異議申し立てをしていないが今回の決定について「極めて遺憾であり、到底承服できるものではない」とコメントし、決定文の詳細を確認の上、不服申し立ての手続きを行うとしている*。
〈*広島高裁、伊方原発運転差し止めの仮処分決定 四国電は不服申し立てへ2020/01/17 ロイター、広島高等裁判所での抗告審における伊方発電所3号機運転差止仮処分の決定について 2020/01/17 四国電力〉
4県すべての差し止め訴訟は、いまだに地裁で第一審本訴係争中です。とくに愛媛県では、今年で9年目と「原発訴訟」でおなじみの10年訴訟の様相を見せており民事裁判の「審理迅速化」にはほど遠い状況です。前回解説したように仮処分は、原告側に大きな経済的、社会的リスクがありますが、このような長期化裁判における原告(債権者)の権利(債権)を保証する役割を持ちます。ただしそうであっても申し立てから地裁決定まで概ね2年かかっています。
4県における仮処分申し立ては、愛媛ルートと広島ルートで棄却決定、大分ルートで高裁係争中、山口ルートでは高裁決定後の四国電力の対応待ちという状況です。
仮処分の制度は、一般にあまり知られていませんので前回ご紹介した関口法律事務所による解説記事を再度ご紹介します。広島ルートでの伊方3号炉差し止め仮処分決定に関する記事ですので、今後の動きについてたいへんにわかりやすいです。解説にあるように最高裁では事実認定を行わず、違憲か否かの法判断を行いますので、基本的に高裁決定でおわりとなります。
◆仮差押え・仮処分に関する不服申立手続について 即時抗告・保全異議・保全抗告とは2017/12/18関口法律事務所(再掲)
◆今回決定の特徴(前半 地震に対する安全性を中心として)
ここで今回の仮処分決定となった広島高裁決定要旨と取り消された原決定である山口地裁岩国支部による決定要旨を比較しながら今回決定の特徴をご紹介します。
本件での争点は、原審に引き続き争点は次の6つです。
1)司法審査の在り方
2)本件原子炉の必要性
3)地震に対する安全性
4)火山事象の影響に対する安全性
5)避難計画等
6)保全の必要性
これらの中でとくに主要な争点となったのは、1)4)5)と3)のうち中央構造線の評価とそれに関連する問題と記してあります。
原審判断(地裁決定)では、新規制基準は合理的であって、伊方3号炉が新規制基準に適合するという原子力規制委員会(NRA)による判断は合理的であるから、申立人の被保全の立証はできていないとして運転差し止めの申し立てを却下しています。これを不服として即時抗告によって広島高裁で争われてきました。
◆争点1)司法審査の在り方
まず、1の司法判断のあり方についてです。
原審では、債務者=四国電力が大量の放射性物質放出によって債権者=申立人(原告)の生命、身体等を深刻に脅かすことがないと証明する必要があるとしつつも、それに代えて新規制基準が合理的であり且つ、伊方3の適合性審査に誤りがないことで証明できるとしています。
一方、高裁決定では、この件について四国電力が相当な根拠、資料に基づいて証明できなければならないとしつつも、それに代えて新規制基準が合理的であり且つ、伊方3の適合性審査に誤りがないことで証明できるとして地裁判断を継承しています。
◆争点3)地震に対する安全性
つぎに地震に対する安全性で、その中でも中央構造線の評価とそれに関連する問題についてです。
中央構造線断層帯の震源断層については、中央構造線断層帯長期評価(第二版)をもとに不確かさを論じ、四国電力による申請とNRAによる判断は合理的と結論しています。
その一方で、伊方発電所に近い佐田岬半島沿岸について四国電力は、「佐田岬半島北岸部には活断層が存在せず、活断層が極めて近い場合の評価は必要ない」と判断して、活断層が極めて近い場合の地震動評価を行っていません。
中央構造線断層帯長期評価(第二版)には、“四国電力は、詳細な海上音波探査を行い、伊方発電所敷地沿岸部に活断層がないことを確認していると主張するが、中央構造線断層帯長期評価(第二版)には、伊予灘海域部については四国電力により詳細な調査がなされたことが記載されている一方で、佐田岬半島沿岸については、そこに存在すると考えられる中央構造線について、「現在までのところ探査が行われていないために活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる。」と記載されていることを指摘し、四国電力の主張する海上音波探査の欠落箇所であることを前提にした記載である”と指摘しています。
四国電力は、「現在までのところ探査が行われていないために活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる。」との中央構造線断層帯長期評価(第二版)での記述について、原審に引き続き「四国電力による海上音波探査の見落としか、これを意図的に排除した一委員の個人的見解に過ぎない」と主張してきましたが、原審での「佐田岬半島沿岸部には活断層が存在するとは言えない」という判断に対して、高裁決定では、「そのように断ずることはできない」と判断の変更を行いました。
これは伊方3号炉運転を差し止めた広島ルート仮処分決定(その後、保全異議申し立てで棄却決定)でも見られなかった新たな判断で、たいへんに驚くべきものです。*
〈*但し、中央構造線断層帯長期評価(第二版)は、2018年12月29日発表であり、広島ルートにおける広島高裁での保全異議申し立てによる棄却確定後である〉
山口ルートの原審では、四国電力側の主張を採り入れ、従来通りすでに調査済であるとしており、司法判断が正反対となっています。
科学的に正当な手続きでは、このような調査、観察自体の存在について意見が対立した場合、徹底して原典遡及したうえで、合意に至らない場合には新たに調査を行い結果を公開します。調査には多額の資金と時間を要しますが、伊方3号炉の設置許可の根本に関わる調査の存在について合意が得られない場合には、今後も運転差し止めという重大な「司法リスク」の火種になり続けますので、公開調査を行うべきでしょう。
活断層がなければ万々歳ですし、もし活断層があった場合、それによって将来、伊方発電所が甚大な打撃をうけて原子力過酷事故を起こせば、東京電力に比して経営規模が遙かに小さな四国電力の経営は即日吹き飛びます*。「司法リスク」**と泣き言を言う前に、重大リスクの不存在を証すことが正攻法と言えます。
〈*フランスをはじめとした世界の原子力開発国では、1979年より2000年までにかけて国ごとに時期と取り組みのちがいはあるが、原子力過酷事故が起こリ得るという前提で原子力開発と許認可が行われてきている。日本では福島核災害を経て漸くではあるが、今日では原子力過酷事故が起こるという前提とした原子力行政となっている〉
〈**「司法リスク」とは、新造語ではなく、社会的受容を必須とする事業や施設において当然存在するものである。筆者も様々な場面で論じてきている用語である。決して原子力業界によるアクタイではない〉
この伊方発電所沿岸の海底活断層の存在・不存在の論争は核心的なもので、地震本部の指摘する新知見(新たな見解・補足意見)に対してなぜ、公開調査を行わないのか、理由が全くわかりません。調査を行うことの最大の受益者は、四国電力なのです。
結果として山口ルート高裁決定では、「四国電力は、十分な調査をしないまま佐田岬沿岸部の海底活断層が存在しないとして伊方3号炉に係る原子炉設置変更許可等の申請を行い、NRAは申請を問題ないとして許可したのであるから、NRAの判断には、その過程に過誤ないし欠落があったといわざるを得ない。」と結論づけています。
その上で、「四国電力は、NRAによる判断とは別に申立人の生命、身体への重大な危険の存在がないことを証明していない。」としています。
これによって、申立人の伊方3号炉の地震に対する安全性について被保全権利(運転差し止め)の証明がなされたとしています。
なお、伊方発電所の地盤については、四国電力の主張とNRAの判断について正当性を認めています。
◆差し止め高裁決定前半部分(主として地震安全性判断)へのコメント
ここまで伊方3号炉運転差し止め仮処分申し立て山口ルート高裁決定についてその前半部分を見てきました。
大きな争点となってきた司法判断のあり方については、原審決定ほか従前の決定、判決と結論が大きく変わるところはありません。
しかし地震に対する安全性の評価では、地震本部2018年12月29日発表の中央構造線断層帯長期評価(第二版) をもとに伊方発電所至近の海底にあると指摘される活断層に関して、その不存在を証明できていないという極めて大きな判断の変更を行っていると読み取れます。
原子炉至近に活断層があれば設置変更許可等の審査において新設置基準の定める通り、「震源が敷地に極めて近い」場合の「地震動評価」を新たに行い、評価せねばなりません。
この部分について今回決定が求めているのは、佐田岬沿岸海底の詳細な地形調査による活断層の存在・不存在の判定と、仮に存在した場合は、「震源が敷地に極めて近い」場合の「地震動評価」を行い、改めてNRAによる審査と判断を行うことです。
要するに伊方3号炉の存在を否定するのではなく、佐田岬半島沿岸海底について詳細な科学的調査を行い新たな知見に基づいた審査に適合すれば良いということです。
ここまでは、常に新たに発見される科学的知見に対応するためのごく当たり前の手順であることから筆者には極めて当然の判断であると思われます。
この問題を放置したままでは、今後も追って行われるであろう設置変更審査などの度に差し止め請求が行われることとなり、「司法リスク」は増える一方で伊方3号炉の経済的合理性を削り取ってゆくこととなります。
どのみちNRAによる特重工事猶予期間決定について極めて甘く見たが故に1年から2年の運転停止が確実であり、加えて本決定によって1年近い運転停止が見込まれますので、科学的手続きに従って詳細な海底調査を行い、その上でNRAによる再評価を行った上で後顧の憂いをなくすべきでしょう。幸か不幸か、時間はたっぷりあります。
現在のように、地震本部による中央構造線断層帯長期評価(第二版)の表記について解釈をいじり回していたところで問題の本質からほど遠く、四国電力にとっても市民にとっても重大リスクが払拭されません。
福島核災害前後では、原子力を取り巻く社会的、経済的環境は全く異なります。世界の原子力産業は、福島核災害後の新たな環境に適合した者が生き残りつつあり、アレヴァですら適合できずに国策救済となりました。一方でまさに「失敗の本質」で指摘されるとおり、過度の環境適応によって、官僚的組織原理と属人的ネットワークで意思決定と行動する事に固定化している日本の原子力産業・電力業界には経済・経営上の破局が訪れることになりかねませんし、最悪の場合は第二次核災害で社会が崩壊することもあり得ます。
今回は決定要旨前半の地震に対する安全性までを解説しましたが、後半部分は、火山事象の影響による危険性への判断を中心に解説を続けます。
『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』伊方発電所3号炉運転差し止め仮処分決定について 2
<文/牧田寛>
【牧田寛】
Twitter ID:@BB45_Colorado
まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中
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・関連:
■伊方原発3号機、運転差し止める仮処分決定 広島高裁[しっかり説明すれば覆る?]
http://www.asyura2.com/19/genpatu52/msg/432.html
投稿者 戦争とはこういう物 日時 2020 年 1 月 17 日 17:59:13: N0qgFY7SzZrIQ kO2RiILGgs2CsYKkgqKCpJWo
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