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「鳥取でおいしい東北料理が食べられるわけ
3・11被災後に石巻から避難、二つの故郷への思い」
(47NEWS 2019/11/11)
https://this.kiji.is/564300251430831201?c=39546741839462401
城下町の名残をとどめる鳥取市西部の鹿野町。その一角にある古民家で9月、「ずんだ餅」や「油麩丼(あぶらふどん)」などの東北料理を提供する「創作味処そろそろ」がオープンした。店主は宮城県石巻市出身の神山孝光(かみやま・たかみつ)さん(59)。山陰地方でなぜ東北料理なのか。そこには、料理人として復活を遂げた神山さんの人生と、二つの故郷への思いがあった。
▽ 長年続けたすし店、めちゃくちゃに
神山さんは石巻市ですし店を営んでいた。多くの客が訪れ、開店して28年目に入った直後の2011年3月11日、東日本大震災が発生。石巻市でも最大震度6強の揺れを記録した。
店内はめちゃくちゃになり、取引先の漁師や常連客も犠牲に。当時高校2年だった次男は多数の遺体を目の当たりにして精神的にショックを受けた。病院で相談した医師から「環境を変えるのが一番いい」とアドバイスを受け、故郷を離れることを決意。車に乗り込み一家で西へ向かった。
移動の途中、妻の故郷である鳥取県に立ち寄った。温泉街を訪れた際、従業員が声を掛けてくれた旅館に数日宿泊したことがきっかけとなり、県の避難者支援を受け、鳥取市内で生活を始めた。
▽ 再び包丁を手に
被災後は料理をするどころではなく、遠く離れた地では味も口に合わないだろうと考え、「もう包丁は捨てた」と料理人の道は諦めていた。ところが、鳥取市の臨時職員として勤務していた時、頼まれて公民館で料理教室を開くことに。料理を振る舞った相手が「おいしい」と言ってくれて見せる笑顔。「やっぱり楽しい」。料理への情熱がよみがえった。
市職員の任期終了に合わせて仕事を探し、知人の紹介で夜だけ鳥取市内に店を借りた。12年秋からそこに食堂をオープン。徐々に時間を拡大し、平日昼にもランチを始めた。店のオーナーの意向で、出すのは500円のワンコインランチ。神山さんは「その値段では利益は出ない」と悩んだ。が、「プロなら500円でもこれだけ客が集まるんだというところを見せたい」と気持ちを切り替え、今年6月まで続けた。
同じころ、県の支援策である住宅の無償提供が終了。住んでいた県営住宅を退去しなければならなくなった。自分の店を持てる場所を探し、鹿野町で国の登録有形文化財に指定されている古民家を店舗として使えることになった。
江戸時代中期の由緒ある邸宅。リフォームは必要最小限にとどめ、ふすま絵やきれいに手入れされた庭など、当時の趣が残る店にはゆったりとした40席の座席がある。
▽ 鳥取への恩返し
店では油麩丼などのメニューがあるほか、10品近い小鉢が付く日替わりの「御城下(ごじょうか)御膳」にも東北料理をふんだんに織り交ぜる。オープン日の9月1日。店には次から次へと客が訪れた。中には、以前のランチ店の常連客も。その一人、鳥取市内の会社員田中雅之(たなか・まさゆき)さん(45)は「前の店と変わらずおいしかった。ボリュームもあっていい」と満足そう。娘の舞結(まゆ)ちゃん(4)も「玉子丼の卵がおいしかった。また来たい」と笑顔を見せた。
「お客さんに東北料理を知って楽しんでもらえたらうれしい。喜んで帰ってもらうことが鳥取への恩返しになるのかな」と神山さん。感謝の気持ちは、店で使う食材の8割が地元産という点にも表れている。「まさかまた自分の店を持てるなんて考えられなかった。鳥取に来て本当によかった」。これからもこの土地に根を下ろしてやっていくつもりだ。
▽ 取材を終えて
取材の最後、神山さんに東日本大震災について尋ねると「あの時から時間が止まったまま」とぽつりとつぶやいたのが印象的だった。今もふとした時に故郷の親戚や店のことを考えるという。震災で負った心の傷は癒えることはないのかもしれない。ただ、神山さんの料理を楽しみにしている人は鳥取にもたくさんいる。食事が出てきた時のお客さんの笑顔が何よりの証しだろう。鳥取の人から愛される地元の名物店になる日が来ることを期待したい。(年齢、肩書は取材当時、共同通信=遠矢直樹)
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手に職があって、ヤル気があれば、避難先でも十分やっていけるという好例ですね。
地元鳥取産の食材が8割ということですが、おそらくこの方は食品汚染のことを
よく知っていて、食材の選択に注意していると思われます。
こういう料理屋さんなら安心して食べることができますね。
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